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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室438】女性を外見でランク付けしている上司たち。どうして男性は平然と女性の前でそんな話ができるの?


✳️今週のお悩み✳️
当方、女で、私生活に特に不満はなく、ご縁を感じながら淡々と、今の会社で働くことにそれなりに満足をしています。
職場が同じ男性同僚・男性上司・男性後輩等々……の一部が、社外の打合せで一緒になった女性に対し「さっきの子、めっちゃ可愛いじゃん!!!」といちいち話しかけてくるのが気になります。
私もさすがに大人なので、男性同士でそういうお話をしてくれればそれはそれで、と思うのですが、部署を統括している人、かつ、弊社の執行役員も兼任しちゃっているやんちゃなお兄さんが、既婚でお子さんがいながら、職場で平然と「ガールズバーがさぁ~~~」みたいな話をされるため、周りの男性たちもつられて、「ここは男子校か……!?」みたいなノリで、正直、毎日辛いです。
ガールズバーを公言するお兄さん執行役員が、また本当に実力がある方のため、職場の男性が彼のノリに引きずられるのはなんとなくわかるのですが、男子校のノリが生きてしまっているといいますか、社外の女性との打合せをするたび、アラサー~アラフォー男子チームによる当該女性に対して採点する職場の雰囲気が、いたたまれません。女として、そういった話を上司や同僚や後輩にされるような自分がなめられてんだろうな……という自覚はしており、必要以上に職場に関わらないよう、自衛しています。
どうして、男性は平然と、いま出会った女性が自分にとってどれくらいのランクの美貌か……を、お互いにキャッキャウフフと語れるのでしょうか。もちろん!!! 女性も、女性同士で、同じような話を日々、しています!!!!!(笑) でも、間違っても男性を巻き込もうと思わないし、まして、誰もが耳をそばだてているオフィスで、平然とそういう話を、しないのに。
 「男の人ってデリカシーないなぁ……」と、思わず主語を大きくして語りたくなってしまうこの頃です。プロフェッショナルとして尊敬する場面もありながら……で。なんで男性は平然と、女性の前で、自分が出会った女性がイケてるかどうかの話をできるのでしょうか?
(なかめん・31歳・会社員・東京都)


まず、なかめんさんが心底呆れ返り閉口しているのは、言うまでもありませんがいたって当然の話で。

いまどきそんな、モロにセクハラに当たるような話題を、職場という公の場で、女性もいるなか無頓着に持ち出しているということ自体、世間的に非難を浴びても仕方ない級の非常識ですよ。

大丈夫その会社?って心配になっちゃうくらい。

五億歩譲って、それが社内でも白眼視されてる厄介者だ、とかいうならまだしも、少なくともそのなかでは超デキる人、ってことみたいだもんね。


それどころか、部署統括で執行役員兼任ときたもんですよ。


そしてこれ、田舎のちっさい企業とかじゃなくて、東京の話なんだもんね。

終わったな、いろいろ……。

ちなみに僕も、ご存知の方も多い通りゴリゴリの男子校育ちだし、悪しき男性性みたいなものももちろんまだまだ引きずっているところ大だとは思うけど、そういう、男同士で女性の品定めをするみたいなノリは昔からはっきり嫌いだし、女の人の前でそういう話が始まりそうになったら、いつも「やめなよ」って強めにたしなめてきた……つもりではあるんだけど。

あくまで自己認識としては、ですが。

だし、そもそも僕がホントに親しくしてきたような人たちには、幸運にもそういうタイプはほとんどいない、というのもある。
ギリ、大学のサークルで僕より何年か上の先輩たちがちょっとそんな感じ強めだったかも、くらいで……。

まして今はもう、完全に考えられないです!
平気でそんなノリ出してくるような人がもしいたとしたら、速攻で距離を置きますよ。
一緒にされたくないもん。

だから、なかめんさんもわざわざ「思わず主語を大きくして語りたくなってしまう」と断ってくださっているように、男が全員そうだってわけじゃないよ、僕のまわりの人たちは違うよ!と、つい反射的に抗弁したくもなってしまうんだけども。

ただ、それでもどうしても一般化して論じたくなってしまう程度には、やはり、そうした無神経な男性中心主義が、この日本社会に深く深く根を張ったままであるという現実は、厳然としてあるわけですからね。

念のため付け加えておくなら、「女性も同じような話はしている」件は、ほかの多くの問題同様、性別による差別や不公平ががっつり残ってしまっている現状の社会では、実質上強者側である男性のそれと「どっちもどっち」には、構造上絶対になりえないんですよね。

実際、ルッキズムやエイジズムなどによる不利益を、より多くの局面で、より深刻に、より長期にわたって受けているのが残念ながら現時点ではもっぱら女性である、というのはもう、明らかなわけですから。

そしてそれは、「なぜ男性は女性に対してこんなに無神経なのか」という、なかめんさんの根源的な問いにもつながる話で。

要は我々男性は、男であることの既得権益があまりにも自明のものすぎて、性別間の不均衡とかには、何も考えず生きてると、なかなか気づけなくなりがちなんですよ。

それどころか、女性を露骨に品定めしたり、社会的な立場や経済力で従わせたりすることを、恥じるどころかむしろ武勇談的に語るような「男らしさ」こそが、男性社会で成功した者の典型的な振る舞いとされるような風潮が、これまでずっと続いてきたわけでしょう?

だから、なかめんさんの会社の男性たちも、単純にその醜悪なイズムを変わらず継承してるだけ、とも言える。

ちょっと話はズレるけど……、前にアトロクで、TBSラジオ澤田大樹記者による「男子校特集」をやったんだけど、そこで彼が最終的に浮かび上がらせたのは、この国の権力中枢にいる人たちの、男子校出身率の異常な高さで。

要は男性中心的な社会で出世するような「男らしい」男を再生産するような仕組みが、今に至るまでずっと続いてきてる、ってことですよね。

その中では僕は粗野な「男らしさ」に馴染まない異端的存在だったから、まだ染まりきりはしてない、と思いたいけど……。

なんにせよ、たとえば女性を外見でジャッジするような発言を目の前でされて、なかめんさんがどういうふうに思うかとかは、考えようともしていないわけですよね、その会社の人たちは。

言うまでもなく、性差別に対する問題意識とかも、ほぼゼロって感じなんでしょう。

で、おそらくですけど、なかめんさんのことは、言ってみれば「名誉男性」扱いしてるつもり、みたいなところもあるんじゃないかな、と思います。

お前なら俺たちのホモソーシャルな付き合いのなかに同列で入れてあげてもいいよ、的な……、つまり、通常なら女性の前でするのは憚られるような話題を平気でしてくるのも、彼らなりの親愛表現のつもり、である可能性はあると思う。

それはつまりやっぱり、「なめられてる」ってことなんですけど……。

とにかく、いまどきそんなノリが堂々とまかり通ってるなんて、その会社、たとえばそのうちなんらかの大失態がバレて、社会的信用をごっそり失ったりとかするんじゃないの?って気がしてならないですが……、でもまぁ現実的には、そういう力学がまだまだあちこち余裕で幅を利かしているのが日本社会、でもあるんでしょうね。

じゃなきゃ、ジェンダーギャップ指数がずっとこのレベルとか、なってないわけだもんな。トホホ……。


昔いたマッチョな人が、自分の場合はまわりにだんだんいなくなった気がしていましたが、それは環境に恵まれているって話ですね。

なかめんさん、今回の件は本当に大変ですね。


とはいえそんな会社は、その時代遅れな体質ゆえに、遠からず間違いなく、衰えてゆくだろうと僕は思いますけどね。

日本という国全体が、悲しいかなちょっとそういうふうになってるところ、あると思いますけど。


なかめんさんのこの毎日の辛い感じ、どうしたらいいんでしょうかね?


彼ら、仕事先の人のルックス品評会を、打ち合わせの直後にしてたりするわけでしょ。
普通にこれ、露見したらまぁまぁの問題になっておかしくない件だと思うんですよね。

それこそ会社の信用を揺るがしかねないようなことをやってるんだ、と考えれば、正攻法で正しにかかっていいはず、ではあるんだけども。

それこそ社内にコンプライアンス部門とかあるんなら……、でも、話を聞くだに、絶対なさそうな会社だよなぁ(笑)。


なんとなくですが、お兄さん執行役員って書いているあたり、年齢的な推測や距離感も含め、わりと中小企業なのかなと思ったりしました。

なので、このお兄さん執行役員の、さらに上の人とかには言えないんですかね?
会社のトップに常識があれば、こういうのは許しておかないはずですけども。


まぁやはり、とりあえずはそこに賭けるしかなさそうだよね。

それがダメなら、やっぱ公的機関かな。
実質職場内でのセクハラ案件なんですから、窓口は必ずあるはずだよね。


東京都労働局 雇用環境・均等部にアクセスするのがよさそうでした。
均等部の中でもいくつかの担当が分かれているので、特に雇用均等・両立支援担当(TEL 03-3512-1611)が相談内容に最も適しているのではないか、ということでした。

気持ちのモヤモヤを話す、もしくは何らかの対応を取りたい場合も相談OKとのこと。


なんにしたって内部に自浄作用力がないような会社なら、外圧に頼るしかないわけだから。

一方、なかめんさんがそのなかにいながら表立って孤軍奮闘するのはキツすぎるし、限界もあるはずなので、くれぐれもご無理のない範囲で……、たとえば告発したことがバレないような、あらゆる意味でこちらが不利益を被らないで済むようなやり方で、なんとか職場にプレッシャーをかけてゆけるといいですよね。

後から来る世代のためにも、そのアクションは無駄ではないはずなので……。

無論、今やってらっしゃるように精神的物理的に距離を置いてとりあえず乗りきる、というのだってぜんぜん間違いじゃないです。

なかめんさんが一番辛くないやり方で行きましょう!


なかめんさんにこういうお悩みを送っていただき、私たちも掲載・発信することで、少しでもジェンダーギャップの解消に貢献できたらいいですね。

職場に限らず、こういった悩みやモヤモヤを抱えている方も多いと思います。そんな方は遠慮なく、お悩みを送ってもらえたらと思います。こちらです。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。




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