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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室439】「姉ちゃんの方が好きだから応援して欲しい」と振られたことも……。双子の姉へのコンプレックスから解放されるには?


✳️今週のお悩み✳️
私は双子の姉に対してコンプレックスが強いです。姉は子どものころから我が強く自分を曲げないうえ、物事が思う通りにいかないと気が済まない性格です。逆に私は不器用で人見知りで泣き虫でした。そんな性格のせいか成人するまではよく意地悪をされたり、扱き使われたり、機嫌が悪いと嫌がらせされていて辛かったです(私の物を勝手に自分の物にされる・パシリに応じないと殴る蹴るなどされる・私のすべてに否定的な物言いをするなど書ききれないです……笑)。
母もそんな姉には手を焼き、週に何度も怒鳴り合いの喧嘩をしており、姉がいないときによく愚痴を聞いていました。母から「あなたは姉みたいにならないでね」と言われていたし、私も姉に対する嫌悪感が強かったので、良い子でいることを心がけて今日まで生きているのですが、大人になって良い人になったはずなのに姉に対するコンプレックスが抜けません。
<仕事>
私→新卒の会社をうつ病でクビになり職場を転々とした後、現在派遣社員。
姉→3年ほど務めた会社を退職後、転職活動に乗り気では無いところに母が務めている会社にコネで入り正社員。
<恋愛>
私→20歳のころ好きな人に告白しOKを貰った3日後「お前の姉ちゃんの方が好きだから応援して欲しい」と振られ恋愛が苦手になり、好きになった人には相手にされず言い寄ってくる人はヤリモクか彼女持ちばかりで未だに彼氏いない歴=年齢。
姉→言い寄ってくる人もいるらしいが、趣味に生きるタイプのため断ることが多いそう。
自立し自分が変わればコンプレックスが消えるのではないかと思い、一人暮らしを始めて一重から二重にする・20キロほどダイエットする・メイク・ファッション・コミュニケーションの取り方を見直すなど、努力をして姉よりもキレイで善人になったと思っているのですが、それでも実家で自分の好きなようにありのまま生きている姉の方が羨ましく妬んでしまいます。
子どものころは良い人になれば愛されて幸せになれると思っていたのですが、実際はそんなことはないし、コンプレックスも消えないことに気づき、ここ数カ月テンションがあまり上がりません。コンプレックスから解放されるにはどうしたら良いでしょうか。
(スクラブ・26歳・派遣社員・兵庫県)


エグめのお姉さんに長年虐待を受けてきたことがすべての元凶であろう、というのは言うまでもなくですが……。
あとは無論、そんないびつな姉妹関係を、事実上放置してきた親御さんの責任も大だけど。

ただこの、20歳のときにコクった男の手のひら返しが、もともと深かったスクラブさんの心の傷を、とくに決定的に癒しがたいものにしてしまったんじゃないか、という感じが、僕にはしますね。

マジで、耳を疑うひどさだよ、これ。

自己肯定感も他者に対する信頼も根こそぎ崩れてしまっておかしくない、極めて暴力的な言動の被害に遭われた、ということだと思います、事実上。
本当に、大変でしたね……。


テレビドラマとかではありそうだけど、こんなの聞いたこともないセリフですよ!


でね、もちろん実際そこに至るのはなかなか厄介な道のりかもしれないけど、大筋で目指すべき方向として、外野の視点からのいわゆる正論をまずは言っておくならば……、お姉さんのことは、完全な他人と考えたほうがいいと思いますよ。

まずもって、相手がお姉さんだろうとなんだろうと、自分の人生を他の人と比較すること自体、無意味な劣等感や後悔を自動的に引き出してしまう、まったくの馬鹿げた行為だと僕は考えています。

たとえばお姉さんは、親のコネで就職&ダラダラ実家暮らしっていう、世間的に見たらむしろ「いつまでも依存的な生き方をしているダメな大人」寄りなルートを来てる人なわけでしょ。
それでも本人がいいと思ってるならべつにいいけど……くらいの話なんだけど、スクラブさんはその「本人がいいと思ってる」ところにこそ、自分とくらべてモヤモヤを感じてしまう。
でもこれ、仮に立場を逆にしたってやっぱり、今度はまさに「依存的な生き方」のほうが引け目になってしまうであろうことは、予測するだに明らかなわけで。
つまりやはり、そもそもそんな比較をすること自体やめといたほうがいいよ、ってことなんですよ。

もちろん、双子ってことで、そうではない我々には想像もつかないような「対」感みたいなものが、対外的にも内面的にもやはり強くあるものなのかもしれないけど……。
だとしても! ここまで苦しんでいるのならば!ってことですよね。


双子っていうのは、顔が似てたりで、特別な思いや、兄弟姉妹以上のつながりがあるのかもしれないですけど、仲が悪かったり、合わなかったりで、赤の他人同然の関係性であったり、まったく別の暮らしをしてる兄弟や家族同士もいますしね。


何年も口聞いてないとか顔も見てないとか、普通にいるよね。
前も言ったかもだけど、親はまだ恩とか絆を感じるなりのはっきりした理由があるけど、兄弟姉妹はぶっちゃけさ、「たまたま一緒に育てられた同士」ってだけじゃん?(笑)
だから、ウマが決定的に合わないとかも、そりゃ当然それなりの確率で出てきますよ。
むしろ、扶養されてる期間は極端に近い距離感で生きてゆくしかないぶん、嫌悪や憎しみが生じたら、通常より何倍も濃いものになっていきやすい関係なのかもしれないくらいで。
スクラブさんのところがまさにそうなんだろうけど。

あと、「良い人になれば愛されて幸せになれる」とも、コンプレックスが消えるとも限らない……、要は、努力したからと言って必ず報われるわけでもない、というのはたしかに事実だろうけども、それはべつにお姉さんと関係なく、多くの人がわりと普遍的に味わっているこの世の無慈悲な一面、というだけのことですからね、言っちゃえば。
だから、そこもやっぱり、お姉さんとは切り離して考えるべきなんですよね。

その上で強く言いたいけど、スクラブさんが重ねてきた努力の方向は、まったく間違ってないと思いますよ!
さっき言ったように、必ずしも努力が報われるとは限らない、というのは事実としても、その「必ずしも~限らない」の範囲内で、「成功確率を上げてゆく」ことはぜんぜんできるわけでしょ。
で。スクラブさんはそれをちゃんとやってると思うからさ。
ホントはそれ自体を誇りに、自信にしていっていいことのはずなんだけど。

なのにどうしてもそう思えないのは、やはりお姉さんに長年暴力的にかしずかされてきたことと、20歳のときのそいつによる手ひどい裏切りによって「やっぱり自分は姉に永久に頭が上がらないんだ!」と決定的に確信させられてしまったことが、むちゃくちゃ大きいんだと思う。
なのでつまるところ、不運にもたまたま関わり合うことになってしまったこの二大疫病神を、スクラブさんの人生と頭の中から完全に追い払うこと……、簡単じゃないだろうけど、最終的にはやっぱり、そこを目指してほしいと思います。

まぁ普通に考えてお姉さんは、まともな人からは嫌われてる、もしくは相手にされてない人だと思うんですよね。
社会性や生活力もおそらくあまりないけど、そんな自分を年齢相応に顧みることもできない、そう育ってしまったから……と考えると、一種かわいそうな人とも言えるんだけど。

それにひきかえスクラブさんは、自分の意思で人生を変えようとしてるし、実際できてもいるわけじゃん?
客観的に見れば、ぜんぜんそっちのがいいじゃん!ってことなんだけども。

ちなみに、その人が「幸せ」を感じるかどうかは、ひとえに「自分が好きな自分」でいられてるか?ということにかかっている、と僕は考えていて。
その意味でスクラブさんにも、少しずつでも頑張って、さまざまな面で向上してきた自分自身を誰よりも好きになってあげてほしいなぁ……。

第一歩として、お姉さんとはまず、物理的にもしっかりと、距離を取った方がいいと思います。
スクラブさんはすでにひとり立ちしてるようだけど、まだご実家の近くだったりするなら、そこからももう、はっきり離れたほうがいいと個人的には思いますね。
なんだかんだでお姉さんの世話を焼かないわけにもゆかないのだろう親御さんたち含め、そういう「家族の磁場」からとにかく自由になって、スクラブさん個人の人生を確立すべきときなんだろう、と思うから。

あとそうだ、切り離して考えると言えば、もうひとつ大事なこと。
説教臭く聞こえたら申し訳ないんだけど、「善き人間であろうとする」って、直接的な見返りがあるからすること、なのかな?

少なくとも僕にとって、できるだけ善行を重ねたい、可能な限り他者を傷つけるような行為に手を染めたくない、などと考える根本の動機は、さっき言ったように「自分が好きな自分」でいるためで……、なぜならそれこそが「幸せ」の実感につながるから。
一方で、他人から好かれるかどうかとかは、後から副次的に付いてくる……かもしれないひとつの可能性でしかないし、そんな当てにならないものには、はなからあまり期待しないようにしてますね、僕は。
というか、「他人から好かれる」こと自体、それだけが目的なら、もっと効率がいい方法が他にある気がするし(笑)。

逆にスクラブさんに聞きたいけど、じゃあ「お姉さんのような人間」に、仮になれるとしたら、なりたいですか?
意地悪で乱暴で無神経で……って、僕はぜんぜん「自分が好きな自分」じゃなくなっちゃうから、絶対イヤですけどねぇ。


いまはスクラブさん、けっこう「人の軸」で考えちゃうのかもですね。人と比べるのもそうだし、人の目とか。人があっての自分の立ち位置がどうなのかと考えてしまうと、少し辛いかもなと思いました。


そうね。
これもいつも言ってることかもしれないけど、やっぱその、自分の中にある程度しっかり「快」とか「納得」の軸を持って、そっちに向かってできる限り意識的に生きてゆくようにしないと、そりゃあ当然、不愉快な気分にさせられる場面は、圧倒的に増えちゃいますよねぇ。
なぜなら、他者やその集合体としての社会、要は自分以外の「世界」は、絶対に思い通りにはならないから。

唯一、コントロールの余地があるとしたら、自分にとっての「快」や「納得」を自覚して、身の回りに増やしてゆく、ってことしかないでしょう?
なんなら「幸せ」はそのなかにしかないし、他人が与えてくれるのを待っててもムダなんですよ。

なので、そこを否定してくるような圧力に対しては、戦って倒すか完全にシカトするか、どっちにしても絶対に譲らない覚悟で臨むべきだし。

実際、世の中残念ながら、ホントに悪気がないケース含め、こちらに害をなしてくる存在はひたすら後を絶たないし、だからといってそいつらを全員排除して回るわけにもゆかないわけでしょう。
ならば、自らの心身を守るためにも、そもそも不愉快な連中は視界に入りすらしないようにする、というのも、ひとつの立派な生きる知恵ですよ。

それ以前に、その20歳のときの男なんかさ、そんなサイテー発言された時点で、「何こいつ、怖っ! うっかり付き合うとこだった危ねー……、てか、今のうちに馬脚あらわしてくれてラッキー!」とでも考えておきましょうよ。
さぞかしショックだったろうけど、実際そんなウンコ人間と余計な時間を一瞬でも過ごさないで済んで、あとは相思相愛という精神的シンクロを間一髪で逃れられて、逆に良かったよ!ってことでさ。


この連載でもたまに出てきますけれども、なかなか強烈な男性でしたね……。

ちなみにお姉さんは、スクラブさんのこと今はどう思ってるんですかね。


さあ……、わかんないけど、べつに何も考えてないんじゃない?
加害者に限って自覚ないとか、そっちのパターンなんじゃないのかね、おおかた。

なんにしても、お姉さんがどう思ってるかなんて、スクラブさんがいま気にすることじゃないから。
現段階ではとにかく、マイナス思考のサイクルから抜け出すこと、そのための緊急避難!ってことを考えればいいよ。

改めてまとめれば、スクラブさんはいっこも悪くないし、これまでの努力もまったく間違ってない!
今は徒労感の方が優っちゃってるかもだけど、この時点まででじゅうぶん、あなたを傷つけた人たちとは比較にならないほどたしかな価値ある人生を、あなたは自らの手で、つかんできてるんですから。それは僕が保証します。
なので、どうかそこに自信を持って……、文字通りご自愛くださるよう、切に願っております。


つくづく「比較」って大敵ですね。自分も大なり小なりついつい頭をよぎっちゃうことはあるので。でもそこでじっと今の自分を見つめ、認める、そこまで自分と話し切ることが必要だなぁって改めて思いました。
スクラブさん、今回これで少しでも気がラクになってくれているといいですが……! もしまた思い悩むことがあったら、相談してくださいね。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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※現在、King of Stage Vol. 15
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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。




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