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食事、家族旅行、そして同じ会社に勤務、根本的に合わないのに執拗に近づいてくる義母との付き合い方は?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室442】


✳️今週のお悩み✳️
結婚して18年になりますが、根本的に合わないのに義母が執拗に近づいてきます。

夫は一人息子で、自営業ということもあり、家族との関係が非常に密です。私も最初は、こんなに仲の良い親子っているんだな、すごいなと感心していました。しかし、時が経つにつれ、あまりの密具合に嫌気がさしてきました。結婚後、私も義父の会社で働いたのですが、そうすると向こうの両親と毎日会うことになり、帰りにご飯を食べに行こう、土日も一緒に出かけよう、友人が来たから一緒に食事、挙句旅行も家族一緒と、まったく気が休まらなくなってきたのです。

義母は一見明るくて誰にでも気さくですが、人によって態度を変えたり、リアクションが大きいだけで人の話はろくに聞いていないなど、全く信頼できません。私自身を舐めているのもわかります。10年以上前にとうとう我慢ができず一度キレた以来、誘われる回数はぐっと減ったのですが、本人はすぐ忘れるうえに、心の機微がわからない人なので話が伝わりません。義父と夫は義母と相性がいいので、私から見ると不快な点も気にならないか気づかないのです。私から見ると彼女に逆らわないようにすごく気を遣っているなと思いますが。彼女の性格が変わらないのはわかっているので、せめて近づかないでほしいのですが、そのような一件があっても何かと交流しようとしてきます。

一時期は休みの日の誘いが恐ろしくて固定電話の線を抜いたり、携帯の電源も切ったり、カウンセリングにも通い、なるべくストレスを減らそうと試みましたが、その後耐えきれなくなり一度退職しました。退職して間もなく出産し、しばらくはそのままだったのですが、気が進まなかったものの、会社に他の従業員も入社し、人の目もあるなら前よりは耐えられるかと思い復帰しました。

嫌だけど夫の母親だし、会社にいる人たちの手前、普通に接していますが、昨年の夏、久しぶりに爆発することがありました。私と夫と息子が私の実家に帰省する間に、私の家に花火を見に来ていいかと聞かれました(家から花火大会が見られるのです)。本当は嫌でしたが承諾したところ、義両親の友人の方(私も知っている人)を私の断り無しに家に上げていたのです。夫に確認したところ、彼は事前に知人も来ることを聞かされていたそうです。私だけ何も知りませんでした。夫は「言い忘れたんじゃない?」と言っていましたが、それはあり得ません。わざわざ電話でもなく、うちに突撃訪問して花火を見に来ていいかと言いに来たのに、肝心のその情報を伝えない方が不自然だからです。私に言ったら人を連れてくるのはやめてほしいと言われるのを見越したのでしょう。そういう卑怯なやり方も本当に嫌で仕方ありません。

本人に問い詰めると逆ギレ気味に「私(あなたに)言ったよねぇ!?」と言うのです。「聞いてません」と言ってもしらばっくれ、その後「(息子に)伝えてって言ったけど」と重ねて言い訳。「伝えてとは言われてないと言ってました。それに、私に直接言わない意味がわかりません」と言っても、のらりくらり言い訳します。挙句、自分のしたことは全く悪いと思わないけど、なんか機嫌悪いから一応謝っとくねという感じで、バカにしたように「それが気に食わなかったわけね。ごめんなさい」と言ってきました。

「もう私に関わらないでください」と言っても、「それは出来ない。あなたは私の息子のお嫁さんだから」と言われ、私の意思は無関係。私は何度も「気持ち悪い」と彼女に言いました。途中から「お互い性格が違うのよ」とか話をすり替えるので、「性格が違うのはわかっているじゃないですか。それに人の性格は変えられないこともわかっています。合わないのはわかっているんだから、必要最低限の付き合いでいいじゃないですか。自分の好きな夫と息子とだけ交流していればいいじゃないですか。私を巻き込まないでください」と言っても「それは出来ないねえ。今は最低限じゃないの?」などと、とにかく話も噛み合いません。自分がしたことを脇に置いて、関わりたくないと言う私を狂人を見るような目で見ていました。

その後ほぼ口をききませんでしたが、彼女は相変わらず何事もなかったかのように会社に来て、私に話しかけます。職場での彼女の机は私の正面なのですが、私がキレた日以降、机に観葉植物を置いて彼女の顔があまり見えないようにしています。職場の大嫌いな上司と思うようにしてやり過ごしていますが、ときどきこの人あと何年生きるんだろう……と絶望的な気分になります。息子がまだ小学生で、彼にとっては祖母なので完全に交流を断つことは出来ないのですが、彼もうすうす私が義母を心よく思ってないのはわかっているみたいです。

大変長く、ただの愚痴になってしまい申し訳ありません。執拗に近づいてくる縁を切りづらい人との付き合い方で、何かいいアイデアや撃退法がありますでしょうか。
(ぽぽ丸・44歳・会社役員・福岡県)


もはやはっきり気まずいレベルで対立してるのに、それでも近づいてくる、っていう。

しかも、職場も一緒というか、そもそも家業が中心にある家族形態のなかに事実上組み込まれているような格好だから、こういうときに僕らがいつも言ってる「合わない人とは物理的にも精神的にも距離を置く」というのが、なかなかサクッとは実行に移せない状態なわけですよね。


「観葉植物を置いて彼女の顔があまり見えないようにしてます」って、すごい工夫だなとは思うけど……。


面と向かって「気持ち悪い」とまで言ってるんだよ!
それでも心折れずにまたシレッと寄ってくるんだから……ハートが強いというかなんというか。

これ、要は相手の常識とこっちの常識が違いすぎる、という問題ですよね。

僕らはもちろんどっちかと言えばぽぽ丸さんの感覚のほうが普通だと思うけど、あちらからすれば、「息子の嫁」なんだからこうするのが当たり前で、それ以外の考えを受け入れなきゃならない理由がない、という感じなんじゃないですかね。


私の母もやっぱり私に比べて弟を溺愛しているので、そういう意味での義母問題はありがちだと思うけど、これはそれに加え、地域性とかもごりっと乗っかった、ちょっと度を越したパターンですね。


その意味でぽぽ丸さんは、その家族のど真ん中で生活してるわけだから、そのなかでは当然、そっちの常識が優勢、ってことにどうしてもなっちゃいますよね。

あちらのみなさんはずっとその調子できてるから、まぁまぁそんなに怒らなくても~、みたいな感じなんだろうし、その伝わってなさ加減に、さらにまたぽぽ丸さんが怒りと孤立感を深めてしまう、という構図も、容易に想像できます。

だからまぁ、お互い「話通じない!」と思ってる、ってことではあるんだろうけど。


撃退法って……?


極端な言いかたをすればぽぽ丸さんは、敵陣ど真ん中にいるわけだから、このままの条件で完全に「撃退」するというのは、ぶっちゃけ難しいんじゃないかな。

まず、本来の筋としてはやっぱり、その異なるふたつの常識の間に立って両者を取り持つべき人、すなわちダンナがもうちょっと、特にぽぽ丸さんのフォローをもっともっともっと、してなきゃダメですよね。
外から呼んできたパートナーが、こっちの身内のルールを無理強いされて、ここまで苦しんでるんだからさ。
お母さんを完全に排除はできないまでも、せめてもう少しぽぽ丸さんの気が楽になるような努力や工夫は、してくんないとね。

マジで、「言い忘れただけじゃないの」なんて言ってる場合じゃないよ!
そこは500%の平謝りしかないだろ!

なぜなら、さっきから言ってるようにこの場所ではどう考えても、ぽぽ丸さんのほうが弱い立場なんだから。
むしろ、はっきりお母さんに「外から来てくださってる人に失礼だろ!」って猛抗議しなきゃいけないはずのポジションだと思いますよ。


ではこの旦那さんにそれをお願いする?


ただまぁ現実として、ダンナもあんまり親離れできてなさそうというか、する気もなさそうな人のようには見えますよね……。親と対立してもぽぽ丸さんを守る!という気概は、これまでのところ感じられない。


相談文に旦那さんの描写もあまりないですけど、なんか頼りにならなそうな……?


お母さんの振る舞いに対するぽぽ丸さんの抗議を、なんだかあんまり真剣に受け取ってない風なところからも、本音を言えば、なんならぽぽ丸さん側に「譲ってくれないかなぁ」くらいに思っている可能性も、正直ありそうな感じはしますよね。

さてさて。どうしたもんかね。
二つの互いに相容れない考え方があって、どちらも譲歩する気はない。
「文明の衝突」だよ!

ひとつ言えるのは、「こんなに言ってるのになんでわかってくれないんだろう?」という部分でイライラしたり怒ったりしても、たぶんムダなんですよね。
向こうからすればこっちもそう見えてるわけだし。

「やめてくださいって言ってるのにやめてくれない」VS「受け入れてくださいって言ってるのに受け入れてくれない」……もちろん僕らもぽぽ丸さんの言い分のほうにより普遍性があると思いますけど、向こうは向こうで、昔からずっとこの調子でやってきたんだという「普遍性」に、確信を持っちゃってるわけだから。
だからお互い距離を保ちましょう、というのが一番妥当な意見なのも言うまでもなくだけど、相手は「同化」が前提だから、なかなかそこは通じない。

しかも、向こうの地元、向こうのホームでやり合ってるわけですからね。
その限りでこちらの分が悪いのは、まぁ目に見えていることではある。

ということで、義母が「わかってくれない」こと自体にイラついたり怒ったりしても、たぶんただただ消耗してゆくだけなので……。


どんどん体力がなくなってきますよね。


なので、そこはもうデフォということでハナからあきらめ、ひたすら回避策とダメージ軽減に専念する。という感じにややモードをチェンジしたほうが、ちょっとは気が楽にならないかなという感じはします。

とにかく、向こうの土俵にいるんすわ、現状は!

たとえば、生活基盤を丸ごとどっかに移す、というのは最も明快かつ有効な「回避策」だろうけど、今さらそれは、難しいんでしょうかね……?
ホントは、結婚前にそういうもろもろを話し合ってしっかりクリアにしておくべきだった、とは言えるだろうけど。


せめて、ぽぽ丸さんは会社に入らない、とかできたらよかったですけど。


ただ、おそらく向こうからすれば、「うちの息子の嫁なんだから、うちの土地に住んで、うちの会社で働いて、うちの跡取り息子を産んで……というのが当然だし、無関係だなんてそんな理屈は通らないよ」みたいな話なんでしょうからね。


すごい人生だ……。


いや、いい悪いは別にして、たしかにそうやって暮らしてきた人たちも、もちろんいっぱいいるわけですからね。
現実としてほかに選択肢がなかった、とかもあるだろうし。
ただしやはり今や、それをまるで自明のことのように人に押しつけるのは、もうマジでやめにしましょうよ、というのがひとまず社会的な良識となっているのは間違いない。

まぁなんにせよ、ぽぽ丸さんの我慢もいいかげん限界に近いんだから、結局はやっぱり、おりいってダンナにもっとしっかり話を聞いてもらう、ということから始めるしかないんじゃないかなぁ。
その上で、可能ならやはり生活基盤ごと改めて「独立」してしまえれば……それが一番抜本的な解決策に近いのはたしかでしょうね。

ただ、これはいつものことだけど、残念ながらダンナにも聞く耳がない、という可能性も、一応やっぱ考えとかなきゃならない。
「お前も頑固なんだよ」みたいなことを言われて余計に傷ついてしまうというような展開も、まぁ覚悟はしといたほうがいいのかもしれない。


それは地獄……!


それこそ郷に入ればなんとか、みたいなことわざがあるくらいで、そっちの理屈は理屈でなかなか強固なものがありますよ、それはやっぱり。

あとその場でできることと言えば、やっぱ義母のお亡くなり待ち……くらいしかなくなっちゃうもんね。

もし万が一ダンナが、改めてちゃんと話してみてもやっぱり、まったくこっちの味方になってくれる気配もないようなら……最悪そりゃ、離婚だって考えたっていい話ですよね。
そのくらい深刻なところまでこっちは来てるんだぞ、ということはわからせてやっていいかもしれない。 


ダンナさん、本当に頼む!


しかしこれ、この上なくミクロな揉め事に見えて、実は、世界中でずっと起き続けているいろんな問題と、ものすごく地続きの話だなぁとも思っちゃいましたね。
宗教対立とか移民とか、それこそウクライナを「同化」しようとするロシアとか……要は、どうしたって「他者」同士が隣り合わせで共存してゆかなければならないこの地球上、それゆえ生じるさまざまな軋轢や衝突というのは、人類全体が、いまだまるで克服しきっていない件でもあるわけですからね。

日本人同士、ほぼ身内に見える同士でさえこうなんだから……。

しかし、そのなかでもひとつはっきりしてるのは、相対的に立場が弱い側は、なんにせよその分を配慮されるべき、ということですよね。
今回の話で言えばやはり、ぽぽ丸さんの意思がもっと尊重されなければならない、というのは明らかだと思います。

ちなみにぽぽ丸さん、周囲に家族と直接関係ないお友達みたいなの、いないですかね?
ぽぽ丸さんの常識とも近い、「何その義母、おかしいんじゃないの?」みたいなことを言ってくれるような人たち、近くにいないのかなって。


ママ友とか?


とか、趣味でつながってる人たちとか。
要は、外側の人的ネットワークを増やしてゆくのも、さしあたっての精神衛生的にはいいと思いますけどね。

今どきだったら絶対に、そんな関係ない人を勝手に家に上げるとか考えられない!って言ってくれる人、そこらじゅうにいるはずでしょ。
ぽぽ丸さんは事実上多勢に無勢状態のなかで孤軍奮闘して疲れ果てちゃってるわけだけど、価値観が近い人とちょっと距離を置いたところから「やっぱあっちがおかしいよね?」と定期的に確認し合ったりすれば、改めて自信がついて、少なくともちょっとだけ元気は出てくるんじゃないかな。


誰か、見つかることを祈っています!


あと、息子さんとのその方面でのコミュニケーションも、今からでもしっかり念入りに取っといたほうがいいと思いますね。
要するに、気づいたらすっかり敵軍色に染められちゃっていた、なんてことにならないように。
個人の自立性やプライバシーなどに関するぽぽ丸さんの考え方をしっかり伝えておくことは、いずれ息子さんが外の社会で問題なく通用する人間になってゆく上でも、重要なことかもしれないし。
要は、義母のイズムを再生産させない、ってことですね。 

そんな感じで……何か参考になる部分、ありましたでしょうか?

ちょうどこないだ「アトロク」で時評した『ほつれる』という映画で、まさしく「義母が無断で家に出入りして悪びれもしない」ことに閉口する主人公、というのが間接的にですが描かれていたので、わりとあちこちで起こっていることなんだなぁと思いましたよ。


私も義母無断で家に入ってくる話は、知人から聞いたことありますが……。

それやめてって言っても話が平行線というのは本当に辛いと思いますが、私たちも「義母、おかしくね!?」っていうぽぽ丸さん側ですし、これを読んでそう思う人も多いと思いますので、そんなことで少しでも力になれればって思いました。

応援メッセージなど届いたら、またお伝えしますね。







【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:30の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※10月から「アフター6ジャンクション2」に! ライムスター宇多丸の聴くカルチャー・プログラムは、あなたの"好き"が否定されない、あなたの"好き"が見つかる場所。大人気週刊映画時評「ムービーウォッチメン」は毎週木曜日22時20分頃~にお引越しです。詳しくはこちら

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※現在、King of Stage Vol. 15
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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。




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