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挨拶やお礼を無視するなど、職場で明らかに私のことを嫌っている人がいます。仕事に支障はないけど一緒に働くのは憂鬱……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室375】


✳️今週のお悩み✳️
職場で明らかに私のことを嫌っている言動をする人がいて辛いです。私の職場はパート・正社員含めて15人もいないのですが、そのうちの1人のパートの女性(40代)が私のことを嫌っているようです。私とは目も合わせませんし、私の挨拶やお礼は無視します。業務上の最低限の質問には答えてくれる時もありますが、私の申し送りなどに返事はしません。積極的に嫌がらせをされている訳ではありません(申し送りがされていないことなどはあるかもしれませんが、他の人に聞けば済むことです)。嫌われた原因はわかりませんが、最初から嫌われていた訳ではないので、私がなにか気に障る言動をしたのだと思います。だとすれば申し訳なく思いますが、全員に好かれることは不可能だと思っていますし、嫌われたことを受け止めて粛々と仕事をするしかないと考えています。現時点では私の仕事にはあまり支障がないので、上司に相談することは考えていません。ご相談したいのは、その人と働く日はどうしても憂鬱になってしまうことです。仕方ないと思っても、無視される度に傷つかない訳ではありませんし、度重なれば怒りもわきます。どのように考えたり、どう接していくことで、嫌われている人とやっていくのが楽になるか、ヒントなどをいただけると嬉しいです。
(K・36歳・会社員・神奈川県)


宇多丸:
これはホントに、誰の身にも起こりうる話ですよね。

Kさんも言ってるけど、誰にも嫌われないなんていうのはありえないし、目指すべきでもない。

しかしだからって、こっちに対する嫌悪や悪意を一方的にむきだしにしてくるって、社会のなかで生きる人間として完全にマナー違反だと思うし、当然されたほうも平気じゃいられないよね。

とはいえ、一緒に働くメンツを自分では選べない立場の人が大半でもあるでしょうし……、というか、学校とか近所付き合い、インターネットや、なんなら家族間まで含め、とにかく人間関係においてこういう極端な「ハズレ」を引いてしまう局面というのは、やはり我々全員がほぼ例外なく、どこかのタイミングでは出くわしておかしくないことではありますよね。

こばなみだったらどうする?

こばなみ:
やっぱり全員に好かれるわけじゃないから、たぶん周囲で3割くらいに好かれてたら万々歳じゃないですか。だから、この人はそれ以外の7割の人なんだと思うしかないなぁって。

で、この人の無視みたいなのは良くない態度だなと思うから、自分は同じことをしない、とかですかねぇ。気持ちを切り替えて、もうあくまで全然普通に接して行く。動じない感じで挨拶も普通にする。無視されても。

宇多丸:
あっちがどう接してこようと、こっちはブレずにちゃんとしてるしかないじゃないか、と。

たしかに、そう考えられるようならやはり、それが一番いいかもしれないよね。

いつも言ってるけど、そういうときって、実はまわりも同じように思ってくれてたりすることも多いはずだしね。

「あの人のKさんへの態度、ひどいなぁと前から思ってた」「それに対してKさんは腐らず礼を保ってて、ホントに偉いよね」とか、見てる人は見てるもんですよ、意外と。

だから、ここでわざわざこちらも人としての品位を落とすような態度に出たりせず、むしろ株を上げてくつもりで平常心を保つよう努力する、というのも間違いなくひとつの正解ではありますよね。

逆に言えばそれって、こっちのほうがさらに無視してるも同然というか、その人が何しようがまったく関係ない、いっさい意に介してない、ってことでもあるからさ。

ある意味で最大の侮辱ですよ。

こばなみ:
この状況、宇多丸さんはどうします?

宇多丸:
人間関係の濃度にもよるかなぁって。

純粋に約15分の1の割合で接すればいいだけなら、いまこばなみが言ったように、あくまでこちらのマインドセットの範囲内でカタをつけるというか、事実上あちらの失礼な振る舞いそのものを完全シカトして「普通」に振る舞い続ける、というのがやはり一番余計なコストがかからない対処法だろうけども。

でもこれが、実際に所属する部署としては4人とかしかいないような感じで、わりと直接関わらなきゃならない局面も多いんだとしたら、とはいえ日々蓄積してゆくストレスもバカにならないレベルになってくるかもしれないしね……。

だとしたら僕はぶっちゃけ、虫のいどころによっては、これはもう言い逃れ不可能だろうというような露骨すぎるシカト瞬間をつかまえて、はっきり詰めだしちゃうかもしれないです(笑)。基本トラブルは、できるだけその場で片づけてったほうが結果ラク、という考えでもあるので。

顔を真正面に持ってきて、「僕の言ってること、聞こえてます? お返事がなかったもので!」って、ほかの人にも聞こえるように、言う(笑)。

こばなみ:
そうしたら、どういう反応するんでしょうね?

宇多丸:
たぶんだけど、すっとぼけるだけでしょ。「なんのことでしょう」とか。

そしたらすかさず「なんだちゃんと聞こえてるんですね、なら良かった!」って、心ない快活さで返して(笑)。

そうやって一度クギを刺しておけば、その後はさすがにあっちも、そうわかりやすくだんまりを決めこみ続けるわけにも行かなくなるじゃない?

仮にそれでもなお、頑なに完全拒否を貫いてくるようなら、いよいよ次の段階ですよね。

僕ならもう、「直接文句言うかその子どもっぽい態度やめるか、どっちかにしていただけます?」って、はっきり戦争しかけちゃうかも(笑)。

こばなみ:
ちょっと見てみたい感じもするけど、現場はピリピリしそうですね。

宇多丸:
まぁだから、僕だって30代までの血気盛んなころならわかんないですけど、実際にはなかなかそんなところまではいかないですよ、めんどくさいし。

全面戦争案は半ば冗談として、やっぱり普通に考えたら、上司には一度相談してもいい件だと思いますけどね。なんだかんだでずっと傷つけられ続けてるんだもん。立派に一種の暴力だし、職場的にも軽視されていい話じゃないですよ。

ただまぁ、そしたらそしたでさらにめんどくさいことになるリスクも、あるはありますよね……。

おそらくKさんとしては、そこまでこの件で「がんばり」たくもないんでしょうしね。

こばなみ:
だから「相談することは考えていません」なのですね。

ただ、そりゃあ毎日憂鬱ですよね……。

宇多丸:
さて、どうやったら楽になるか、だけども。

まずはやはりさ、同僚でも上司でも、職場の他の人たちをしっかり味方につけるというか、「当然ここでもまともな人のほうが多いし、みんなわかってくれてる」って実感を得る、というのが大事なんじゃない?

実態としてはむしろあっちこそが孤立してる、というのはホントにそうなんだろうけども、最初にこばなみが言ったような「あくまでこちらは超然としたまま」作戦も、ベースにそういう確信や安心があってこそ、より自信をもってやりきれるものだったりするんじゃないか、というふうにも思うんですよね。

ということで、周囲の信頼できる人たちにちゃんと相談して、Kさん自身が孤独を感じないようにする。なんにせよこれがまずは第一歩なんじゃないかと。

そのうえで、できればいずれは先方との関係を修復もしたい、とかでも別にないのなら、やはりただただ、物理的にも精神的にもヤツとの「接触面積」を減らしてゆく、ということに尽きるんじゃないですかね。

Kさんにとってもっと大切なことで生活や頭のなかを埋めていって、そいつが占める割合を可能な限り減らしてゆく。

少なくとも僕はそういう考え方をするようにしてますよ。自分にとって毒にしかならない人の存在感をできるだけ薄くしてゆく、という。

こばなみ:
こういうことをしてくる人って、何か気にかけてほしいからするんですかね?

宇多丸:
要は、甘ったれてるんだと思いますけどね。

挨拶とかの社会的なマナーってつまるところ、より集まった「他者」同士、考えも習慣もすべてが異なるかもしれないという前提のもと、互いにできるだけ円滑にことを運ぶための、知恵なわけじゃん?

つまり、お互い「あの人、嫌い!」が当然ありうるからこそ、せめて表面上はサラッと済ませてそれ以上は踏み込まないでいいようにしときましょうよ、ってための決めごとなわけじゃんよ。

そこをないがしろにして、たとえばそのパートの方みたいにお気持ちダダ漏れにされたりすると、むしろ関係性が無駄に「濃く」なっちゃうだろ!って話でしょ。

そういう「言わずともわかれ」派ってちょいちょいいるけど、ホント赤ちゃんだなって思うし、迷惑ですよね。

その意味でも、こちらはあくまで礼節を守りながら接し続ける、というのは理にかなってるんじゃないですかね。

相手の無礼をいちいち真正面から受けとめてると、この一番どうでもいい関係を、さらに濃くしちゃういっぽうなわけじゃないですか。

なのでやっぱり、ご自身だけでできる少しでも「楽になる」モードということであれば、「究極のシカトとしての“普通の挨拶”続行」というのが我々のおすすめかなと。

あと、40代にもなってそんな幼稚で独善的な人というのは、ほぼ間違いなく、知人とか家族とか、他の人からも疎まれてるはずだろうとも思うんですよね。

もういい歳になっちゃってて今さら成長する余地もあまりないだろうし、そう考えるとちょっとかわいそうな人だなとも、一瞬思えません?

その方向の思考もセットにするとさらに少しだけ「楽になる」かとも思います。

なんにしてもKさんご自身、あらゆる意味で無理はしないでいいですからね。

ホント、災難でしたね……。

こばなみ:
あと、人が入れ替わったり、職場環境もずっと同じではないと思うので! とはいえ大変だと思いますが、Kさんにはきっと味方もいるので!! 少しでも楽になることを祈っております。




【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。





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