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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室366】彼氏彼女の関係が半年以上続いたことがなく、恋愛・結婚に対してコンプレックスまみれです。自分に自信が持てません。


✳️今週のお悩み✳️
私は34歳独身、恋人もいません。過去には何人かの男性と恋愛関係になりましたが、結婚を考えるどころか、彼氏彼女の関係がしっかりと半年以上続いたこともほぼありません。お付き合いの中で私自身にも反省すべき点があったかもしれませんが、「近年距離を置いていたが実は長年付き合っていた彼女がいて、その人と結婚することになりそうだと別れを告げられる」、「急に『これだから女は嫌なんだ』と言われ音信不通に」、「毎日友人たちが自宅に入り浸っているなど不自然な理由で連絡が疎遠になり、最後にデートしたがまともに付き合おうとしてくれていないと感じ自然消滅」など、どの人ともおかしな別れ方ばかりしており、過去の恋愛に良い思い出が一切無く、すべて黒歴史です(どの人ともいきなり身体の関係になったりはせず、何度も食事などデートをしてからお付き合いするようには気をつけているのですが)。
そんな経験のせいか、恋人や伴侶、子どもがいる人に対して、ものすごい嫉妬やコンプレックスを感じてしまいます。まわりの人はみんな結婚して子どもをもうけたりしている中で、まともな交際経験すらない自分は駄目な人間なのではないか、とも思ってしまいます。恋人がいたり結婚したり子どもがいれば勝ち組なわけではない、それはそれで大変なこともある、とはいくら頭ではわかっていても、どうしてもこの感覚から抜け出せません。
ちなみに最近、とある芸人さんに恋してしまいました。見た目ではなく性格や内面に惹かれたこと、同い年で好きなものや生活圏も近いこと、芸人としては珍しく女遊びも酒もギャンブルもしない真面目さなどから、うっかりガチ恋モードになってしまい、他人に恋愛感情を抱けたこと自体が久々だったので浮かれまくっていたのですが、彼女がいると知ってショックを受け、出演番組なども観られなくなってしまいました。いい歳して何やっているんだろう、と自分でも恥ずかしいです。
とりとめのない文章になってしまいましたが、こんな恋愛・結婚コンプレックスまみれ、自分に自信も持てない私に、何かアドバイスをいただければ幸いです。ちなみにご参考までに私の情報を添えさせていただくと、趣味はオタク系や音楽など多いですが人と知り合えるようなものは無く、また仕事は人生の中心に据えられるほど好きではありません(というか嫌いです)。見た目は褒められるほうで「モテそう」「彼氏いるでしょ」とは言われてきましたが、同時に「隙が無い」とも言われます。パーソナルスペースが広く、男性は苦手です。あと、性行為もあまり経験が無いのと痛くて入らないという未熟さです。
(ひかり・34歳・会社員・東京都)


宇多丸:
ひとまず言えるのは、とんだクソばっかり立て続けに当たっちゃってご愁傷様、ってことに尽きますよね。

こばなみ:
すべて黒歴史って書いてありますけども、ここまで連続で引き当ててしまうと、自分を責めてしまうのも無理からぬ話なのかも。

宇多丸:
でもさ、ちょっと想像してみてほしいけど、もし仮にひかりさんが、交際の途中で何かを「改善」していたとして、そしたら彼らはこんな態度を取るような人間にはならなかった、「いい人」のままだった……なんてこと、あり得ます? 

そんなわきゃないでしょう?

こういうことを平気で言ったりやったりするようなヤツらは、やっぱり最初から、「こういう」人たちだったんですよ。ひかりさんのせいで変わったんじゃない。

こばなみ:
それでコンプレックスを感じてしまって、友達に嫉妬してしまうって、なんかどんどんボタンのかけ違いで、よくない方向に行ってしまってる感じがします……。

宇多丸:
じゃあそうやって順当にお付き合いできている人が、人格的によくできた人たちなのか?って言ったら、そういうことでもないわけじゃん。

あえて言えば、当たり前だけどお互いちゃんとコミュニケーションが取り合える者同士じゃないと、というのはあるかもしれないけど。

その意味では、「おかしな別れ方」になっちゃったというその彼らは、そもそも「まともな話にならなかった」感じだもんね。

はなからうまく行くわけないよ、そんな人たちとは。

そう考えると、それこそ性的な行為なんて、一番繊細なコミュニケーションが求められる局面なんだからさ。

これまであまりうまく行かなかったというのも、たぶんだけど、ひかりさんのせいじゃまったくない可能性も高いんじゃないの?って気がすごくするし、なんにせよそこで「未熟だから」とか、やはり自分を責めるような決めつけは、できればしないほうがいいと思いますよ。

ざっくり言い切っちゃえば、そいつらはたぶん、付き合った女の人全員をいずれにせよなんらかのかたちで傷つけがち、なおかつそれをなんとも思わない男たち、ってことなんだと思うよ。

ひかりさんの自己肯定感がここまで低下してしまったのも、何より彼らに「軽んじられ続けた」ってことが大きなきっかけになってるのは間違いないわけだし。

そんなのと一緒にいても、いずれ結局、より深い絶望を味わうことになるだけですよ。早めに縁切れて良かったよ!

そんなこんなで、問題にすべきはあくまで相手側の人間性であって、ご自身のではもちろんない、ということは改めてしっかり認識していただきたいなと。

無闇に自分に原因を求める自傷的な思考サイクルから、なんとか抜け出してゆけるといいんですけど……。

百歩譲って、なぜ彼らのような人間を選んでしまったのか、という傾向の分析と対策は、今後のためにちょっとはしておくべきかもしれないけどね。

その芸人さんに対しても、そこまで本格的に思い入れてしまう前に、あと少し慎重になるべきタイミング、というのはあったのかもしれないし。

たとえば、ひかりさんがお付き合いしてきた彼らのその言い草や振る舞いを並べてみると、うっすら共通項として浮かびあがってくるのは、「女、ナメてます」感、ってことなんじゃないかと思うんですよね。

それがこれだけてらいなく言動に現れるというのは、おそらくこれまでの人生で、女性の感情や立場を真剣に慮る必要がなかった、その機会がないままここまで来ちゃった人たち、ということなんだろうなと。

彼らとのデートでの会話なども、よくよく振り返ってみてほしいんだけど、雰囲気的には楽しく進んでいたとしても、実質の内容は一方的なオレ自慢が多かったとか、対するこちらの話には、聞いてます風の猫撫で声で相づち打ってるだけで実のところ積極的に興味を示してはないとか、そういうフシはなかったか……。

前に話したこちら側の事情をちゃんとおぼえていない、それについてあちらから話題を振ってきたりも決してしない、みたいなこともそうだけど。

要は、ホントにちゃんと「対話」できている相手なのか?というあたりで、ついつい甘いジャッジをしていなかったか、というようなことは、検証の余地があるところかもしれないですよね。

のちにこれだけの酷い発言が出てくる人たちだから、比較的とりつくろっているはずの交際初期であっても、にじみ出る本性、みたいなのは絶対あると思うんだよなぁ。

ちなみにこの男たち、どこで出会ったんでしょうね。

こばなみ:
友達が、マッチングアプリで出会った人と、「毎日友人たちが自宅に入り浸っているなど不自然な理由で連絡が疎遠になり、最後にデートしたがマトモに付き合おうとしてくれていないと感じ自然消滅」と同じような理由で別れたんですけど、男友達のほうが優先!みたいなこの感じ、流行ってるんですか? 

宇多丸:
ホモソ優先が当たり前、みたいなイズム、まだまだ幅を利かしてるところあるからね。

今回の件に限らず、まぁ僕も男だから偉そうなことはぜんぜん言えないんだけど、性差別や有害な男性性などに対する意識が「まだマシ」な男性を探すというだけでも、現段階のこの社会のなかでは、なかなか大変なことでもあるのかもしれないですよね……、本当に申し訳ないことだけども。

ひかりさんも今のところ、「先約済み」以外は、「嘘つき」と「無神経マッチョ」にしか出会ってないんだもん、事実上!

こばなみ:
改めて酷いですね。

宇多丸:
クソ男社会にクソ男が割合として多くいる、というのは当たり前とも言えるわけだけど。

だってさ、はっきり言って女の人は、程度の差こそあれ、これに近いような不快な経験、普通にけっこうしてたりもするでしょう?

こばなみ:
たしかに女子同士で過去の恋愛話をしてると、クソ男談義にはなりますし、1人1クソくらいは出てきますよね。

ちなみに、急に音信不通になっちゃうのは、マッチングアプリだったりする可能性もありますかね?

宇多丸:
二度と会わないとかも可能な関係だから極端に無礼な言動も取れちゃう、というような人はたしかにいるのかもね。

そういう危険をある程度避けるなら、やっぱり「知人による紹介」が一番有効なんだろうけど……、それはそれで、あらかじめしがらみがあるぶん逆に厄介、というようなデメリットもあったりするからねぇ。

あとさ、ちょっと気になったんだけど、ひかりさん、女友達の意見を聞くような場はなかったのかな、って。

ひょっとしたらだけど、ひかりさんが恋愛に関してこういう悩みを抱えているということを、まわりはまったく、気づいてもいなかったりするんじゃない?

ひかりさんはひかりさんで密かにコンプレックスを抱えているから、そんな相談がカジュアルにできる気分じゃなくなっているのかもしれないし、逆に周囲からすると、どうやらクール美人っぽいイメージのようだから、関係が長く続かないというのも、単にモテすぎている、という風に見えている可能性だってあるくらいでしょ。

こばなみ:
状況を知らなければ、見え方が違ってきますね。

そういう誤解を解く意味でも、女友達がいて、話せるといいですね。ついでに紹介も!

宇多丸:
さっきも言ったように、紹介は紹介でもちろん万能ではないわけだけども、さすがに明らかなクソ野郎をあてがってきたりは普通あまりしないとも思われ……、というか、基本はどちらかというと人柄重視になってくるものでしょうから、少なくとも「とはいえコミュニケート可能な男性も世の中にはちゃんと存在する」っていう、ギリギリの信頼を取り戻すひとつのきっかけにはなるんじゃないですかね。

ただまぁ、その前にひかりさんに必要なのは、理不尽に貶められ続けたせいで極度に低くなってしまった自己肯定力を、改めて取り戻してゆく、ということのほうなのかもしれないですけどね。

それはもちろん、いきなりすべてが一発解決できるようなことじゃなくて、徐々に徐々に回復を目指してゆく、というような、そこそこ根気がいる道のりかもしれないけども……。

しかしやはり、そのとりあえずの手始めとして、こうした痛みを共有してもらいやすい同性の友達に味方になってもらう、というのは、悪くない第一歩なんじゃないかなという気もします。

実際そんな男どもはマジでこれ以下はないってほどケチョンケチョンだろうし、あなたは悪くない!って背中叩いて、ひかりさんのいいところ、いっぱい褒めてくれるはずですよ、きっと。

こばなみ:
2時間は余裕でしゃべれますね。

宇多丸:
そういうご友人が身近にいるといいね……、あるいは今回のこの場が、多少はその役を果たせていれば嬉しいけど。

まぁ、長い人生のなかで良き出会いがあるかどうかというのは、いつも言ってるけど本質的に「ご縁」の領域で、あんまり思いつめてばかりいても、根本的に意味がなかったりするからね。

それよりも最終的に目指すべきは、そういう「他者から与えられる肯定」ではなくて、たとえすべてを奪われたとしても最後に残る絶対的尊厳としての「自分への愛」という、まさしく『Greatest Love of All』が高らかに宣言しているような精神性なんじゃないかと、僕個人は考えていますが。

ひかりさんのこれからの考え方のヒントにもなるかもしれない名曲中の名曲なので、気が向いたら歌詞の内容などもチェックしながら、ちょっと聴いてみて!

こばなみ:
歌詞読みながら聴いていたら、じんわり心に火が灯ってきました。

ひかりさん、いまもんわりしているループから抜け出せるといいですね。祈っております。

にしても……、芸人とは誰なんだろう……!?



【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※3/4(土)大阪BIGCATなど、ワンマンライブ・シリーズ『ライムスターイズインザハウス』、2023年(新)シーズンの詳細はこちら

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。




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