【長崎】立ち寄った人と町の人がつながる拠点づくりをおこなう「たちまち」
日本全国でがんばっている女性を紹介する「のぼり坂47」プロジェクト。今回は、長崎県壱岐市で交流拠点を生み出す活動をおこなう「たちまち」の篠﨑千恵美さん・大川香奈さんに聞きました。
人と人とが繋がれる場所づくり
私たちは長崎の壱岐島で、旅人と地元の交流地点を作ったり、子どもたちの立ち寄り場としてフリースペースを開いたり、移住の受け入れなどの活動をしています。
大きな活動内容としては、以下の2つです。
●フリースペースの開放
月曜日と金曜日の放課後の時間帯(15時半~17時)に小学生が気軽に集まれる場所として、「たちまち」の拠点を開放。このエリアには公園はなく、小学校の校庭や神社など、子どもたちが気軽に立ち寄れる場所は限られています。そこで、子どもたちがふらっと立ち寄れるもう一つの場所として、「たちまち」を無料で使ってもらっています。
町の人たちが使わなくなったおもちゃや文具など、いただきものがたくさん。それを子どもたちが自由に使って遊べるようにもしています。
「たちまち」メンバーの大川夫妻が運営している「チリトリ自由食堂」が隣にあり、そこを訪れた町民や観光客などとも触れ合う機会が生まれ、子どもたちにいい刺激となっています。
●住まいの準備のお手伝い
主にUターンや移住者の移住相談をメンバーみんなでおこなっています。
今は、壱岐市の移住担当の方が週1回「たちまち」に来て、空き家・移住の相談所として窓口対応をされています。「たちまち」メンバーの篠崎夫妻が設計事務所を運営しているため、空き家の改修や住まいづくりの相談にも乗ることができます。
そのほか、ワークショップも定期的に開催。3~4ヵ月に1回ほどのペースで、空き家の片付けや改修など、地域の方を巻き込んだ活動もおこなっています。
写真は第一回のワークショップ「こわして!ぬって!」で空き家の改修をした際のものです。拠点をつくるにあたって、空き家であった内部を解体し(こわして)、落書き(ぬって)をしようというものです。
同じ問題意識を抱えていた3組の夫婦から「たちまち」が誕生
壱岐のなかでも芦辺浦は観光地でもなく、観光地まで通り抜けができるトンネルができたことで、まちに寄る人がずいぶんと減り、ある意味素通りされてしまう場所でもありました。
大川夫妻が外から来た人が町と交流できる場所として「みなとやゲストハウス」をやるようになり、徐々に旅人も増え、泊まりに来てくれる旅人と町民の交流が生まれるようになりました。しかし、旅人が立ち寄れる場所が少ないという現実……。当時はランチを食べることができる食堂も「チリトリ食堂」一軒だけ。そこもおばあちゃんが長年一人で切り盛りしており、おばあちゃんが亡くなってしまったことで継ぐ人もいなく、閉店してしまいました。
それならば「自分たちでやればいいのでは!?」と思い立ち、LIGHTHOUSE設計の篠崎夫妻に相談したことが「たちまち」誕生のきっかけでした。
食堂づくりの相談をするなかで、食堂だけのことではなく、町全体のことを考えていかなければならないと思うようになりました。子どもはどんどん少なくなり、高齢者が増え、空き家も増えている。今、取り組むべき課題はたくさんあり、1事業者だけで動くのではなく、動ける者同士がこの町のことを考え発信していかなければ、町全体が抱える問題の解決にはつながらないのではないか。集まって発信し活動することでより広がり、町全体を巻き込んでいけるのではないか、そう考えるようになりました。
そこに芦辺浦のまちで夫婦でピザ屋を営んでいるPIZZERIA Pottoの平山夫婦も加わり、3組の夫婦、6人で『たちまち』がスタートしました。町の発信をすることから始め、子どもが少ないため子どもたちの寄り場を作り、「まちを人と人の交差点にする」をモットーに活動を続けています。そのために、住まえる準備として空き家のことや移住相談をしてるという現状です。現在は「たちまち」拠点の隣に、チリトリ食堂の名前を受け継いだ「チリトリ自由食堂」もオープンしました。
町全体の底上げにつながれば嬉しい
たちまちの活動は、種まきのようなものだと考えています。たちまちの活動単体で収入を上げるというよりは、人が流入してくることで、徐々に自分たちの事業にも還元されるものがあると思っています。種まきをして、ゆっくり町全体が底上げできればいいですね。
活動を始めてすぐに結果がでるようなことではありませんが、関わってくれる町の人たち(子どもたちからお年寄りまで)みんなが楽しそうで、なんだかソワソワしている感じで(笑)。これまでの活動の成果が、少しずつ芽吹いてきたのかも?なんて思っています。
家族単位で芦辺浦に来ていただけるような、どの年代にも温かい環境づくりをこれからも目指していきたいです。
フリースペースが子どもたちに定着してきたので、今後はこの拠点から飛び出して、子どもたちだけでは危なくて行けないような場所に行ったり、学校区の先などにも子どもたちを連れていってあげたいですね。
これまでも各メンバーの得意なことを活かしたワークショップはやってきましたが、今後はさらに、この町に住んでいる大人たちの持っている技術や経験を子どもたちに伝えていけるような、そんなおもしろい機会をたちまちで提供していけたらと思っています。
何よりも大切なのは、自分たち自身が楽しいと思えること!それを忘れないように、いつもメンバーで話しています。
全国の女性へメッセージ
少しずつでも行動していると、必ず次につながっていくものだと思います。熱をもって活動していれば、きっと感じて理解してくれる人もいるはず!
別の場所に住んでみたいなんて方でも、知らない場所でも応援してくれる人はきっと見つかるはずですので、ぜひ熱量をもって突き進んでいってください!
★好きな言葉★
passion(情熱)、いつも仕事のボスから言われていた言葉です。何をやるにも「passionでしょ!」と言われてきたため、これからも心にpassionを忘れずに活動していきたいです。(篠崎さん)
行きづまることはありますが、別の方向から考えてみたり、その時は難しくても巡りめぐって叶ったり。だからこそ「大丈夫!」の精神が大切だなと思っています。(大川さん)
「たちまち」
HP:https://www.tachimachi.net/