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【岡山】女性医師による女性医師のためのキャリア支援「MUSCATプロジェクト」

日本全国でがんばっている女性を紹介する「のぼり坂47」プロジェクト。今回は、岡山県で働く女性医師のキャリアを応援する岡山大学病院ダイバーシティ推進センター「MUSCATプロジェクト」の教授、片岡仁美さんに聞きました。

大学病院の医師たちが、女性医師のキャリア・働き方を全面サポート

「MUSCATプロジェクト」は岡山大学病院ダイバーシティ推進センターにて、 学内はもとより、広く岡山県下の医療人に対象を拡大し、女性医師のキャリア支援(ライフイベントと仕事の両立など)を行っています。

岡山大学病院では、本人の希望で勤務時間などの勤務態様を決めることができるオーダーメイドの柔軟な勤務体制を導入。さらに、病児保育室の立ち上げe-ラーニングやシミュレーショントレーニングを用いた知識や技術の維持のための支援も行っています。

育児中の医師らが集まり、子育て中の勉強・スキルアップ方法や、仕事と家庭の両立方法などについて定期的に情報交換

また、この取り組みを地域医療貢献にも拡大すべく、医師不足地域でのキャリア支援、医師以外の多職種を対象としたシミュレーショントレーニングによる医療技術の向上、住民とともに医療を守る活動などを展開しています。

医師不足地域でのシミュレーショントレーニング

医師不足地域では、急変時に医師がすぐに駆け付けられないなどの理由から、現場対応力が求められます。そのため、看護師・介護士のスキルアップトレーニングを地元の女性医師が中心となり定期開催しています。

また、岡山県内の女性医師ネットワークを構築し、現場の課題を持ち寄り、解決のための方策を考えるWeb会議も2020年から立ち上げました。


「仕事とライフイベントの両立に悩む同世代の力になりたい」その想いが形に

活動の契機は、2007年文部科学省のプロジェクト募集に応募して採択されたことです。テーマは「女性医師・看護師の離職防止・復職支援」でした。

当時34歳で、自分の同世代はまさに仕事とライフイベントの両立に苦労していた時期。医療現場は常に多忙、当直や呼び出し、不規則な長時間勤務が当然という職場環境だったため、出産をすると本人は仕事を続けたくともどうしても難しく、やむなく現場を去っていく方が少なくありませんでした。

「どのような支援があれば働き続けられるか」という点について、同世代に聞き取りを行い、みんなの意見の最大公約数をまとめて企画立案し提出。そして、高い倍率であったにもかかわらず採択されました(50以上の応募の中から9大学が採択)。

企画をつくる際には、現場の意見を代弁したものであるとともに、単に子育て中の方だけを対象とするのではなく、誰もが参加でき、みんながメリットを感じられる取り組みであることを念頭に、‟緩やかなネットワークで互いに支えあえる”ことを目指しました。また、「女性による女性のための活動は、自分たちには関係ない」と男性たちに思われないよう、多くの男性にも活動を理解してほしいと思いました。

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 教授 片岡仁美さん

それまで医師としての臨床業務しか経験がなかった私にとって、そもそも企画立案したものが採択されたのは初めてのこと。多額の予算を運用するのも初めてでした。人を雇用してチームを作ることも、すべてが初めての経験でした。

活動の周知徹底のため各科の教授を訪問して趣旨説明をしていたところ、某科の教授から「女性同士で仲良しグループを作っても、現場は何の解決にもならない」と言われました。当初の企画案には、女性のネットワークを作ること、復帰時の知識、技能の維持向上のためのトレーニングが柱であり、確かにこれでは「復職する」には直接結びつかないことに気づきました。

当時10人いた女性助教に集まってもらい、どうすれば「復帰しやすい職場」になるかアイデアを募ったところ、「5人のチームの5人目ではなく、6人目として復帰できるポジションが必要」という意見で一致しました。不規則な長時間勤務、当直業務をこなさないと1人分の働きとは認められず、「子どもがいるから定時に帰宅・当直はできない」といった働き方では、他のメンバーに負担がかかってしまう。それがわかっているからこそ、現場に迷惑をかけられなくて辞めていくわけです。

それならばいっそのこと、6人目のプラスアルファの人材として復帰できれば、現場にとってもプラスになるという考えに至りました。

この形を実現するため病院長に掛け合い、通常の定員とは別枠の「キャリア支援枠」を作っていただけることになりました。増員として雇用されるほか、自分で自由に勤務時間を設定できるという働き方は2008年時点では画期的で、おそらくそのような働き方が可能になったのは全国の大学病院で初めてだったと思います。

そしてこの新たな働き方は、子育てや介護をしている医師に強く支持され、現在では150人以上がこの制度を利用し、岡山大学病院では出産や介護で職を離れる方が激減しました。

復職シミュレーショントレーニング

多様性を認め合い、誰もが活躍できる職場づくりを

今後は、ダイバーシティ&インクルージョンをさらに進めていきたいと思います。「長時間働けない方だけが柔軟に働くオプションを用意されている」ということでは、現場の長時間労働や過重労働は解決せず、かえって働く人同士の溝が深まることすらあります。

『誰もが健康や家庭を犠牲にせず、プロフェッショナルな仕事ができる』そんな職場をつくるためには真のダイバーシティの推進と全員を対象とした働き方改革が必要だと思います。

さまざまな特性を持つメンバーがそれぞれを活かしあい、尊重しあえる職場となり、患者さんにより良い医療を提供できることが理想です。

女性には女性の特性があり、男性には男性の特性があります。それぞれの良さを理解し活かすことが、職場においても家庭においても必要だと思います。

また、女性医師として、女性の一生を支えるような医療も展開していきたいと思っています。2021年より、大学病院で女性ヘルスケア外来(内科)を開設していますが、変化の多い女性の体と心を支える医療はこれからもっと発展していくはずです。

第10回岡山MUSCATフォーラム

*『MUSCATフォーラム』では、様々な分野でご活躍中の医師から、家庭と仕事をどのように両立しキャリアを積んでこられたか、またプロの医師としての心構えなどのお話を伺っています。またグループワークでは、患者さんにより良い医療を提供し続けるためにどのようにスキルアップを行うか、意見交換を行っています。


全国の女性へメッセージ

女性のしなやかさやつながる力・柔軟さは、これからの社会にとって大きな力になると思います。皆さんで素敵な未来をつくっていきましょう! そのために、分野を越えてつながれたら嬉しいです!


★好きな言葉★

「人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである。」(V.E.フランクル)

「人生という舞台で、自分自身がどう生きるか、どう行動するか、それが問われているのだ」、というこの文章が出会った時から心に響き、以来座右の銘です。どんなことにも意味がある。どう生きるか、また自分自身がどう行動するかということが問われているのだ、というこの言葉は常に自分を勇気づけてくれます。


岡山大学病院ダイバーシティ推進センターMUSCATプロジェクト

ダイバーシティ推進センター(医療人キャリアセンターMUSCAT)
・岡山大学病院

住所:岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 電話:086-235-6835
メールアドレス:muscat@md.okayama-u.ac.jp
 
URL:https://www.okayama-muscat.jp/

女性医師のキャリア支援を軸に地域医療貢献や女性の健康促進に取り組むプロジェクトです。女性医師を中心としたチームで現場目線で独自の取り組みを進めています。





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