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リアクション下手、謎のマウンティング、否定から入りがち……、彼氏のコミュニケーションスタイルにストレスを感じます。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室253】


✳️今週のお悩み✳️
彼のコミュニケーションスタイルに疑問を持っています。リアクション下手、褒め下手、謎のマウンティング、謎のアドバイス、自分の話に持っていきがち、否定から入りがち、などです。悪意があるわけではなく、基本的に他人に興味が薄いのと、考え方が批判的なのと、思ったこと正直に出してるだけだと思います。全体的に「互いに楽しい会話のコツ」みたいなことを聞いたことも考えたこともないんだろうな~という感じです。私の気持ちから完全に独立に自分の考えを表現するので、私の考えをジャッジされる気分になるのがストレスです。具体的には、もし私にとって大切な映画を紹介しても、「まあ普通かな」もしくは「でも主人公のあの行動変じゃない? そこが嫌だった」とかいう反応をされて落ち込みそうです。上下10%以外は全部普通評価になってしまう人なのはわかってるけど! 私だったらたとえどうしても好きじゃなくても評価じゃなくて「どの辺が好きなの?」とか聞いてあげられるんだけど! 私はもともと会話をしていて自分の望まないような反応をされると自分が否定された気分になって必要以上にショックを受けてしまうタイプで、前もって頭の中で最悪の反応を予想して言い返し方もシミュレーションしてひと通り不快な気分になっておくことがあるくらいです。代わりに、会話をしていて相手が望むものが肯定なのか批判なのかアドバイスなのかカウンセリングなのか見極めてリアクションすることができます。そのため相手に高い水準を求めすぎなのかな?とも思います。彼が私にまったく興味ないようにも見えますが、興味ない人にこんな尽くせるのか?と不思議になるくらい愛情深く優しくされています。逆に手放しで愛されているようで嬉しい。興味あるのにコミュニケーションが下手なだけかな? でも興味ないのに愛情を注げるの? 私が愛情だと思ってるものは尽くしたい彼の自己満足? 私が求めすぎなのか? などと不思議な気持ちです。根本的な問題はどこにあるのでしょうか?
(まどか・26歳・学生・東京都)


宇多丸:
一応確認だけど、まどかさんにとって大切な映画を紹介しても……云々のところは、実際にそういうやりとりがあったというわけじゃなくて、十中八九その手の返答がかえってくるだろう、という話だよね? 
ま、それくらい普段から、言動に一定の傾向があると。
かなり無神経なところがある彼なのはたしかみたいですよね。

自分はすごくお利口なんだっていうのに酔っちゃってる状態というか……、その、強い自己肯定感の良さももちろんあるんだけどね。よく言えば、無邪気。
「ボクちゃん知ってるんだよ~!」っていうね。

ちなみにまどかさんは、彼の言うことに疑問や反発を感じたとしても、それを伝えるということはしてないんだよね、たぶん。

こばなみ:
表には出してなさそうですね。

宇多丸:
ゆえに彼も、際限なく調子に乗っていってしまう。

いっぽう、まどかさん自身も、彼とは対照的に相手がどう思っているかを気にするあまり、ではあるんだけど、想定外の返答を受け入れづらいとか、結果的にはやはり、壁を作るようなコミュニケーションの仕方をするようになってしまっている、ようにも見えます。

つまり、彼は自分の主張を一方的にしてるだけだし、まどかさんはまどかさんで、表面上相手の望みに応えてみせているだけで、実は自分の考えからハミ出るリアクションには拒否反応を起こしてしまいがちでもある、という……。

こばなみ:
お互いに歩み寄りなし、なんですね。

宇多丸:
そうそう。
厳密な意味でそれは「コミュニケーション」なのか?とすら言えそうな。

特にこの彼に関しては、本当によくいるタイプのダメな人ですよね。
間違ったカッコつけ方をしてしまいがちな年頃、というか。

こばなみ:
彼がまどかさんと同じ年くらいだとしたら、相手より上に立ちたい!って気持ちとかが強かったりするんでしょうね。

宇多丸:
いや、なんであれ「マウンティングするのがカッコいい」と思っちゃってる迷惑な人、ってことなら、年齢性別関係なく、ホント、そっこらじゅうにいるんじゃない?
それこそ、誰しもそうなっちゃうときはあるのかもしれないし。

僕もぶっちゃけ、30代いっぱいくらいまでは、この彼みたいなノリ、けっこう色濃く残ってたと思いますよ。
いや、今もかな……、恥ずかしいな。

20代なんかもう、完全に全開!ですよね。
「あんまり他人に興味ないし、思ったこと言ってるだけだし……、俺の言ってること何か間違ってる?」みたいな。

こばなみ:
ふへ~! それがどこで変わったんですか?

宇多丸:
改めて考えてみると、たとえば映画の話で言えば、無意識的にせよ意識的にせよ、ひとつの「正しい」評価基準というのがあるんだとどこかで信じこんでしまっていて、なおかつ自分はそれをまぁまぁわかってる側なんだ、みたいな思い上がりをしてるときに、その手の発言が出やすいんだよね。
しかもその自信の根源は、前に誰か権威がある人が言ってたことだったりしたと思う。
まぁ、そういうところから学んでゆくしかない初期段階、というのも物事には間違いなくあるので、いろいろ鵜呑みにしてしまう時期というのが、いちがいに否定されるべきでもないと思うんだけど……。

とにかく、その「正しい基準」と違うことを言ってる人がいると、「それ、違うから」「浅いから」みたいなことを言って回りたくなっちゃってた、って感じだよね。

今の彼の姿もきっとまさにそれで、小利口な人は必ず通る道なんですよ、ある意味。

で、僕がなぜそういう態度を相対化してったかというと……。

ひとつはもちろん、唯一絶対の「正しい」評価基準などありえないと、身をもって悟ったこと。そのへんはそれこそ、手ごわい議論仲間とお互い全力で主張をぶつけ合うなかで、ようやく学んだことでもありますね。

あと、そういうガチの「評価」と誰かの「好き」はまたまったくの別問題、っていう当たり前のことに改めて思いが至った、というのもあるし……。
これもあれだね、ほかの映画詳しい人に自分の大事な一本を悪し様に言われる、っていう経験を通して、遅まきながら真に理解していったことかも。

そしてなにより、そんな議論に勝ったところでなんの得もないという(笑)、ひとつの真理に到達したってことですね!

ということで、いずれは彼もそうやって、わずかでも成長してゆく可能性はゼロではないはずですけど。

ただ現状は、まどかさんが「表面上相手の望みに応えてあげる」コミュニケーション・スタイルを続けてる限り、彼が考えを改める機会もないわけで。

片方はとにかく自分の主張を強く押し出すのがカッコいいと思ってて、片方は表向き相手に合わせるのが上手。
悪い意味で需給が一致しちゃってる。

だから彼はきっと、まどかさんのことをとっても心地よい相手だと思ってるはずですよ。
それで優しい、というのもあると思うし。

ただ、そこで「まどかさんが本当には何を考えているか」は、今の彼はまったくわかってないし、受け入れる度量もたぶんない。
実は自分が、「リアクション下手、褒め下手、謎のマウンティング、謎のアドバイス、自分の話に持っていきがち、否定から入りがち」なんて評価されてるって知ったら……、恐らく、まずは逆上しちゃうんじゃないですかね。

こばなみ:
ひょ~! 真っ赤になって怒る!?

宇多丸:
少なくとも最初は、どうしても感情的な反応をしちゃうんじゃないかなぁ。
無駄にプライドが高いからこそ、偉そうな言動をとってきたんだろうし。

でも、まどかさんはすでに、そういう彼との関係性の不均衡さに、内心かなり強いストレスを感じちゃってるわけじゃん?
 だから、いつかはやっぱり、表に出すしかないだろうと思いますけどね。

こばなみ:
まどかさんも”合わせる”のではなく、内心考えてることを言えるといいですけどね。

宇多丸:
まどかさんの察しの良さは、もちろん有益だし尊い能力なんだけど、それはどっちかと言うと職場とか学校とか酒場とか、そのレベルのコミュニケーションで済ませればいい場所や人に発揮すべきもので、パートナーみたいにもっと親しい間柄に持ち込みすぎると、どっかに必ず無理が出るというか、長続きしないんじゃないかなぁという気がします。

あとはまぁ、心のなかでは彼のことを思いっきり下に見る、という「知恵」もありますけどね。
要は、赤ちゃんだと思うようにする、的な。
ま、間違いなくますますダメな男になってはいきますけど……、今は若いからまだ許されてるかもだけど、その調子のまま歳だけとっちゃって煙たがられてるおじさん、いっぱいいるよ(笑)。

こばなみ:
いるいる。わははははは。

宇多丸:
やっぱ一度くらい、そのせいでフラれる、くらいの目に遭わないと、ホントに骨身にしみて学んだりはできないかな、とも思いますけどね……。

逆に、彼がまどかさんの本音を知ってなお、反省するところは反省しつつ、前と変わらない優しさを保ってるようなら、それはもう本物というか、大したもの、ということにもなりますよね。

ということで、彼に学習するチャンスを与えて、人としての真価をはかる、という意味でも、僕はやっぱり、この先も付き合い続けるつもりなら、これ以上我慢するのはやめていいと思いますよ。

こばなみ:
そうやってホントにコミュニケーションできて、うまくいったらめでたいし、仮にもしダメでもそれはこの時点で話をつけてよかったということになりますしね。
まずは一歩、踏み出すのを応援しています!!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年9月29日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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