見出し画像

【ライムスター宇多丸のお悩み相談室107】油断すれば一線越えそう!? 男女の師弟関係は成立するの?


✳️今週のお悩み✳️
男女の師弟関係は成立するのでしょうか? 師匠のように慕っている男性のアシスタントをしています。私のような新米に成長の場を設けてもらったり、本当に良くしていただいてます。はじめは尊敬できる大人として信頼を寄せていたのですが、最近「信頼」以上の気持ちを持っているのではないかと思いはじめました。その方とは20歳近く年も離れていますし、既婚でお子さんもいらっしゃるので、そんなふうに思うはずがないと思っていたのですが……。正直、向こうもただのアシスタントに対する態度ではないかと思うときはありますし(もちろんセクハラとかはされていません)、油断してしまえば師弟関係を越えてしまいそうと思う瞬間はあります。しかしながら、真面目にその人から学びたいことはたくさんありますし、それが自分の人生経験になると思っているので、男女の仲には決してなりたくありません。男女の友情が成立するしない問題があるように男女の師弟関係も難しいのでしょうか。宇多丸さん、何かいいアドバイスよろしくお願いいたします!

(ちょんまげ子・22歳・東京都)


宇多丸:
まず最初にちょんまげ子さんに言っておきたいのは、「男女の友情が成立するしない問題があるように男女の師弟関係も難しいのでしょうか」って、その問い自体がおかしいから!

これね、「師弟関係」っていうのを、「会社の上司と部下」とかって置き換えてみるとわかりやすいですよ。
「男女の友情が成立するしない問題があるように男女の上司と部下の関係も難しいのでしょうか」……いきなり、あからさまにアホっぽい話になっちゃうでしょ。みんな普通に仕事しとるわ!

こばなみ:
それはわかりやすいかも。

宇多丸:
「学校の先生と生徒」
でもいいですよ。
「男女の友情が成立するしない問題があるように男女の先生と生徒の関係も難しいのでしょうか」。
『高校教師』かよ! みんな普通に勉強しとるわ!

ということで、まずはっきりしとかなきゃいけないのは、師弟がオスとメス同士だからって、みんながみんなデキちゃうわけじゃありませんから……、ていうか、たいていは皆さん、いちいちそんな関係に陥ることもなく、真面目に教え学んでるだけだと思うんですけど。

事実ちょんまげ子さん自身も、純粋にその人から色々学びたいから男女の仲にはなりたくないっていう、至極まっとうな決意を語ったりもするわけだけど……、それでもご自分の気持ちや彼との距離感が揺らいでるのを、「男女の師弟関係一般」のせいにしようとするのは、ちょっとズルいと思いますよ。

ただ、その一方でたしかに、なんらかの権威ある地位にいる男性と、彼に付き従う立場の女性がデキてしまう、もっと言えば周囲にもしっかりその関係性は伝わっちゃってて、「アシスタント兼愛人」とか陰口叩かれてたりする……みたいなのって、ホントに大昔からイヤってほど繰り返されてきた、各界のあるある話ではありますよね。

こばなみ:
わたしも目撃経験があります。

宇多丸:
で、たしかにそういうことになっていきやすいような状況は、もろもろ揃っているとも言える。

女弟子側からすればさ、その師匠に当たる男性は、本当に輝いて見えると思うんですよ。
尊敬できるし、私のためにいろいろ親切にしてくれるし……って。
で、その強力な好意的感情が、いつしか異性に対するそれと見分けがつかなくなっていっても、おかしくない。

一方、男の師匠側からすれば、前に「大雑把に言えば男はおだてておけば喜ぶ」って言ったように、無条件で自分を崇拝して、言うこと聞いてくれる女の子なんて、ある意味一番嬉しい相手なわけだからさ。

こばなみ:
弟子って言わばファンですもんね。

宇多丸:
ロックスターがグルーピー食っちゃうみたいなもんですよ!

というわけで、そういう両者の利害が、少なくとも表面上一致しやすい関係ではあるんだろうけど。
まぁ、デキちゃうもんはしょうがないというか、当人同士がそれでハッピーなら別にいいんですけど。

ただなぁ……。
そもそも対等とは言い難い関係性から始まってるぶん、キツい言い方をすれば女弟子側が性的に搾取されただけで、結果一方的に損して終わりがち、だったりするのも事実なんじゃないですかね。
さっき言った「アシスタント兼愛人」のイメージがすっかり流布しちゃってて、その業界には結局居づらくなっちゃったりとか……、あと、その頃にはこっちも師匠の実像に幻滅しちゃってて、学ぶ気も失せてたりしてね。

だからこそ、本来まずは師匠側こそが、厳に自らを戒めるべきだと思うんですよね。万が一にでも、弟子とそういう関係になってしまうことを。

これもやっぱり、「上司と部下」とかに置き換えるとわかりやすいかもですね。
上司のほうから積極的にアプローチかけてくるとか、実社会では意外とよくあるのかもしれないけど、論外でしょ! 権力構造を笠に着てるんだから、普通にセクハラ・パワハラですよ。
「先生と生徒」に至ってはもう……、即通報!の領域だよね。

逆に言えば、本当に信頼に足る師匠、上司、先生であれば、当たり前の話だけどやっぱり、そんなことになるはるか手前で、ビシーッ!と一線を引いてるはずなんじゃないかと思うんですよね。
だって、最終的には弟子側の不利益になりかねない、自分が搾取しただけになりかねない、ってことがわかってるんだもん。

こばなみ:
全国の師匠側の方にも今回はぜひ読んで欲しいですね。

宇多丸:
五百歩、いや、五億歩譲ってね、あくまで女弟子のほうから、今回で言えばちょんまげ子さんのほうから、数ヶ月にわたってこれでもかとばかりに熱烈アプローチをかけ続けた結果、師匠も人間、ある日タイミングの良さも手伝ってついに陥落してしまいました……くらいの話なら、まぁわからないじゃないけどさ。

つまり、ちょんまげ子さんが、さっき言ったリスクみたいなことも全部承知の上でなお、主体的に師匠との関係を選んでいくっていうことであれば、まぁ別に止めやしないけど、と。
いっそ「師匠にアタシが食われるンじゃなくて、アタシが師匠を食うンだッ!」「すべてを吸収し尽くして、いずれ踏み台にしてやるッ!」くらいの気概があるんなら、それはそれで面白いからいいと思いますよ。その後がホントに上手く行くかどうかは別として……。

でも、今みたいに、なんとなく雰囲気に流されているままだと……、いやたしかに、「油断してしまえば師弟関係を越えてしまいそう」なんて、ちょっとドキドキしてエロいかもしれないけどさ!
 でも結局、さっき言ったみたく、本来師匠から得られたはずのものも得られず、キャリア的にも手詰まりになってしまっただけ、ということにもなりかねないんだから。
そして、繰り返すけど、それは決して「男女の師弟関係一般」のせいじゃない。

もっと思いっきりミもフタもない言い方させてもらえば……、「まだ駆け出しのくせに、くだらねぇことに気を取られてる場合かーっ! そんなことにモヤモヤしてるヒマがあったら、もっと修行に打ち込めバカヤローッ!」 
少なくとも僕がちょんまげ子さんの師匠だったら、そう怒鳴りつけてやりますね!

だって、もしその男性が本当に師匠として信頼に足る人ならば、そして、恋愛対象としても真に相応しい相手であるならば、ちょんまげ子さんの修行期間がきちんと終わって、自分と対等に肩を並べうる存在に、つまり一人前に成長するまで、絶対に待つはずだと思うもん。

だから、たぶんちょんまげ子さんも、一刻も早くそのレベルに到達できるよう、今はやっぱりもっと、修行に集中したほうがいいんじゃないですかね。
師匠とどうにかなるにしても、それからのほうがよっぽど楽しいし、エロいって!



【今週のお絵描き】


*** *** *** *** *** ***
この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年8月1日に公開したものを再編集し、掲載しています。


【全国書店やAmazonで発売中】
「ライムスター宇多丸のお悩み相談室」、ついに書籍化!! 幻冬舎より発売中!
執拗に、フェアに、意外と優しく、時に興奮しながら、とことん考え答えた人生相談34!
★詳しくはこちら


<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



☟☟☟ 新着記事情報はTwitterでお知らせしています ☟☟☟
よかったらフォローお願いします!


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

最後まで読んでいただきありがとうございます!! 新着記事はX(Twitter)でお知らせしています☞