エッチ経験がない彼氏。どう接したら嬉しいですか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室74】
✳️今週のお悩み✳️
はじめまして。私には今彼氏がいます。彼はまだエッチ経験がないそうです。今回の悩みは、未経験の彼とエッチするとき、私はどういう風に接した方がいいか教えて欲しいということです。私は今まで付き合った人とは、正直自分から夢中になったわけじゃなかったのですが、今回の彼は自分がホントに夢中になっていて、心から好きって言える人です。なので、未経験だから嫌とかそういうことはまったくないです。今まで付き合った人は皆、経験があったので、こういう状況が初めてで、私が積極的にいくべきなのか、頼った感じの方がいいのか、わからないです。未経験男子的にはどうしてくれたら嬉しいものなんですか? アドバイスおねがいします(u_u)!
(ちゃきん・20歳)
宇多丸:
童貞問題!
前からちょいちょい言ってるように、僕は中高一貫の男子校育ちですからね。
ある意味、これは専門分野ですよ!
まず、僕の知る限り、童貞というのはひとつ特徴がありまして。
それは、「童貞であることを認めようとしない」ってことなんですよ。
映画『40歳の童貞男』序盤のやりとりはまさにその典型。 職場の男同士で過去の性体験を自慢しあってて……って、このノリ自体がすでにちょっとガキっぽいんだけどね。 とにかくその場で、「これまでで一番良かったおっぱい」についての話が主人公に振られるんですよ。 そこで主人公は、いかにも経験豊富そうなそぶりで、「いやぁ、あれはホントに最高のおっぱいだったね! 」みたいに返すんだけどさ。よせばいいのに、「まるで砂が詰まった袋みたいなもみ心地で……」とか付け加えちゃうんですよ。 周りの男たちは顔を見合わせて、「砂が詰まった袋……?」。 「お前ひょっとして……、童貞?!」「いや違うって! 初体験は10歳で……」「(無視して)やっぱ童貞なのか!」。で、結局バレちゃうというね。
これ、別に主人公が40歳だからこうなってるわけじゃなくて、10代だろうが20代だろうが、とにかくたいていの男は身に覚えがあるであろう、「童貞あるある」シーンなんですよ。 要は、こと性体験の貧弱さという話になると、抱えているコンプレックスが強すぎて、それを周囲に認める余裕もないっていう。
まぁ、今回の相談に出てくる彼は、少なくとも目下の彼女であるちゃきんさんには自分が性行為未経験であることを伝えているわけで、その意味ではちょっと珍しいくらい素直なタイプなのかもしれないけど。 それでも気をつけてあげるべきポイントは、本質として同じだと思います。 すなわち、彼の性的コンプレックスをことさらに刺激しないようにしてあげる、むしろ男としてのメンツを立ててあげるということ。
まぁホントは、彼がちゃきんさんと同い年だとしたら、20歳で童貞なんて別に普通っていうか、そんなに恥ずかしがるような話でもないとは思うけどね。 ただ、そんなこと言われても当人にとってはなんの気休めにもならない、というのがこの手の劣等感の難しさでもあるから……。 逆に彼は、ちゃきんさんが経験済みなのは知ってるのかな?
こばなみ:
はっきりは書いてないけど、気づいてはいるんじゃないですか? あと、ちゃきんさんが嘘ついて処女のふりしてるとかだったら、その旨も書いてあるだろうし。
宇多丸:
なるほどね。じゃあ彼もそこは知ってるという前提で。
僕ね、今回の相談文で言うと、ここが重要だと思うんですよね。
「 私は今まで付き合った人とは、正直自分から夢中になったわけじゃなかったのですが、 今回の彼は自分がホントに夢中になっていて、心から好きって言える人です」
このパンチライン! こんなこと言われて、喜ばない男はいないんじゃないですかね?
早い話が、男が何を恐れているかっていうと、とにかく他の男と特に性的に比較されて、劣っていると思われることなんですよ。 今回のように、女性のほうが経験豊富だとはっきりしてる場合ならなおさら。
だからこそ、この文のように、「今までの男は(あなたに比べれば)大したことなかった」「こんなに好きになったのは初めて」という、要は経験差なんかどうってことないんだと彼が思えるような気持ちを強く伝えておくのは、ものすごーく有効ですよ。 特に、「こんなの初めて」ってとこね。男、これ大好物!
こばなみ:
メモメモ。
宇多丸:
あとたとえばね、彼と性行為に及んだとして、最初はうまく行かない可能性も高いと思うんですよ。
男性の機能というのは、あー見えて非常にデリケートでございます。
ちょっとした緊張や焦りで、役に立たなくなってしまうものでして。
童貞なんだからさぞかし元気なんだろう、と思われるかもしれませんが、そのぶん焦りや緊張もハンパなくあるわけで、夢にまで見た瞬間がついに実現しようとしてるのに、いざというときに「あれ? あれ? おかしいな?」となってしまうことも、十分考えられるわけですよ。
っていうか、童貞だろうが既婚者だろうが、男は常にその不安に苛まれている、と言っても過言じゃないくらいで……。
とにかく、いざ彼とそういう行為に及んだとしても、最初の何回かはそんなにすんなりことが運ばないかもしれない。
そんなとき、彼の男としてのプライドは、まさに風前の灯火なわけですよ。
そこで無造作に「え、どうしたの?」とか言っちゃダメですよ、絶対! 彼からしてみれば「これまでの性体験と比較され、(明らかに悪い意味で)驚かれた」という、ほとんど最悪の反応になるわけで……、これでさらに呆れ笑いでもされたら、ホントにEDになりかねないよ!
なので、とりあえず「女の子はこうやって好きな人に抱かれてるだけで気持ちいいんだよ」とかなんとか言ってさ、優しく、気長に待ってあげてほしいんですよね。 リラックスしてくれば、そのうちスルッとデキちゃうと思うんで。 しっかしそう考えると、男の心を折るなんて、ホント簡単なことだよなぁ……。
こばなみ:
ほほう。あまり意識したことなかったけど、けっこう男って繊細なんですね。
宇多丸:
「私が積極的にいくべきなのか、頼った感じの方がいいのか」って件にしてもさ、あんまりぐいぐいリードすると、さっき言った経験差を必要以上に意識させちゃうことになるかもしれないし、かと言ってまかせっぱにしても、それはそれでスムースにことが運ばなくてやっぱり彼を焦らせちゃうだけかもしれないし……、めんどくさいよね、マジで。
ただ、ひとつ言えるのは、これは僕が脱童貞したときに嬉しい驚きだった点なんだけど、「私もあなたを性的に求めている、あなたに性的な魅力を感じている」ということは、わりとしっかり伝わるといいんじゃないかなと思う。 「俺なんかと? したいの?(嬉)」っていうね。その意味ではどっちかって言うとやっぱり、ちょっとはリードする局面があってもいいのかもね。
なんでそうかっていうと、女の子側は性行為に積極的じゃないものだ、という昔ながらの刷り込みも根強くあるし……。
でも、それもこれもやっぱり、男は不安でしょうがないんだから自信持たしてやってくれよっていう、同じ話だよね。 やたらと強がってみせたり、体面としての「男らしさ」にこだわったりするのは、完全にその裏返しですよ。
こばなみ:
なるほど。
宇多丸:
あとね、ヤったらヤったで、男って最中にやたらと気持ちいいか聞いてきたり、言わせようとしたりで、正直ウゼェな、とか女性の皆さん思ってません?
こばなみ:
私、それ聞かれるのがすごくイヤだなって思ってました。
宇多丸:
もちろん、しょーもないはしょーもないんだけどさ。
何度も言うけど、男はいつも不安でしょうがないんですよ。
他の男と比べられてるんじゃないか、満足させられてないんじゃないか、常にビクビクしてる。
で、少しでも「あれ、ホントにそうかも?」なんてのが頭を一瞬よぎるだけで、すぐショボーンとしちゃったりするんですから。
だから、バカらしいと思うかもしれないけど、ここはひとつ、付き合ってやってくださいよ。 そんなんで相手が喜ぶんなら、と思ってさ。
女の人だってさ、常に言葉や態度で示されないとホントに愛されてるのか不安になってくる、みたいな部分って、男以上に多かったりするでしょ? 髪型変わったのにすぐ気づくとか、記念日を大切にするとか、要は「ちゃんと私のことを気遣って、ケアしてくれてる」感じがポイントなのかなと思うんですが……。 なのに、男側はわりとそういうとこには無頓着、みたいな、似たような構図があったりするわけじゃん。
むしろそっちに比べりゃさ、大雑把に言えばとりあえずおだてときゃいいんだから、まだ簡単な話でしょ。 こっちもプレッシャーとかでいろいろ大変なんだよ! お互いいい試合するためにもさ、ご協力お願いしますよ!
こばなみ:
はーい!
逆に男性側に聞きたいのですけど、彼女が経験済みってのは、いざエッチ段階になって知ってしまうのはショックですか?
宇多丸:
僕は処女幻想まーったくないので、別に。
ただ、ホントに処女であるかどうかとは関係なく、女の人の過去の性経験、男遍歴みたいなものに、半ば自動的に引け目を感じてしまう傾向は、男一般にやっぱり根強いかもね……。
こばなみ:
問題はそこか……。
宇多丸:
だからこそ、別に誰彼構わずヤリまくってるってわけじゃなくて、男だったらそもそも問題にもならないような、ただ普通に性的なもの含む大人の交際を重ねてるだけの女の人を、一方的に「ビッチ」呼ばわりしたりする風潮もあったりするわけよ。
なぜならば、やっぱ怖いから。他の男と比べられるのが。
むしろ本来ならさ、ものすごーく経験豊富な女性が最後に選んだ男、っていうほうが、男としての格的には全然上ってことになりそうなもんなのにね。 たいていの男はその度量がない、つまりホントの意味では「男らしく」なんかないってことですよ!
こばなみ:
ちなみに、友達のなかには、言わなきゃいいのに(聞かれてもいないだろうに)、今カレに元カレの歴史をすべて話す人もいるのですが……。
宇多丸:
聞かれてもないのにわざわざ言う必要はないよね。
ただ、男のほうが聞きたがるってケースはあるかもしれない。
で、余計に疑心暗鬼を深めちゃったりとか……。
その件に関しては、『チェイシング・エイミー』という映画が参考になると思いますよ。 これまで話してきたような、男というものの弱さ、嫉妬深さ、根深い性差別意識などを、男の視点から「俺たち、しょーもな……」と懺悔しているような、我々にとっては本当~に身につまされる作品ですよ!
こばなみ:
私は主人公の男に、過去のできごとなんだから今とやかく言っても仕方ないじゃんね、と思ってちょっとイライラしちゃいました。
宇多丸:
それが褒められたもんじゃないってのは、本人も百も承知なんですよ!
でも、どーしても気になっちゃうんだよ!
そこ含めて、男にとってはすっごく「あるある」な気持ちが描かれた作品なので、iPhone女子部の皆さん、男性心理研究用にいかがですか?
あと劇中で、さっき言ったような「女の人がなんかするとすぐビッチ呼ばわり」な風潮に至極真っ当な反論してて、そこもすごくいいんですよね。 映画でも、こういうことをちゃんと言ってる作品って意外と珍しいと思うし……、僕も、これまでの自分の言動とか振り返って、ちょっと反省しちゃいました。
もちろんね、相手の過去もなにもかもすべて含めて受けとめてくれるような、真の意味で「男らしい」度量を持った男性だって、今も一定量はいるはずなんだけどさ。
あと、若干変態チックだけど、元カレの話とかを聞き出すことであえて嫉妬心に火をつけて興奮するっていう、そういう感覚なら、僕もちょっとわからないじゃなかったり……。
こばなみ:
今日は男性の繊細さが、よくわかった気がします。遅いかしら!? そういう男心をわかっている女性がいい女なんでしょうねぇ(遠い目)。
宇多丸:
いや、あんまり過保護にしてもつけあがるし、ほどほどでいいですよ!(笑)
最後にちゃきんさん、避妊も忘れずにね!
彼的にはたぶん、その段取りにも慣れてないから相当アセアセしちゃう局面だと思うし、そもそもそこまで気が回ってない可能性もあるので、さりげなくサポートしてあげてくださいませ。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年12月13日に公開したものを再編集し、掲載しています。