職場の窓閉め、ゴミ捨て……etc. 言わないと気づかない、お願いしないとやらない同僚にイライラします!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室328】
✳️今週のお悩み✳️
まだまだコロナ禍ということもあり、私の部署は私ともう1人の男性(5歳ほど年上、既婚)の二人きりの出社です。二人とも中途入社で私の方が少し早く入社し、年上のほぼ同期?のような関係です。この男性があまりまわりが見えない方のようでして、言い方は良くないですが気がきかない……と思います。本当に些細なことなのですが、帰りに自分の席のすぐ隣の窓を閉めない、帰りに自分が最後に部屋を出るのにエアコンをつけっぱなしだった(次の朝私が先に出社して気づいた)、日替わりで掃除しているけどキッチンのゴミがいっぱいなことに言われないと気がつかない……などなど。あとなぜか絶対に自分にかかってきた電話以外に出てくれません。完全に相手の方が社歴も先輩であれば私がします。相手が年上なこともあり、正直注意というか指摘自体したくありません。そもそも年下の私にこんな風に思われる時点でどうなの?と考えてしまいます。ただ過去に我慢していると、「イライラが顔に出てる」とか「厳しそう」と他の知人から言われたこともあるので、それは自分の欠点だから改善したいと思い、なるべく穏便に明るく「~してもらっていいですか?」と言うようにしました。窓閉めに関しては2、3度毎日言いましたがそれでもうっかり忘れてしまうようなので、「雨が降って部屋が濡れたら大変ですから、窓閉めてもらって良いですか?」と言ったらようやく毎回ちゃんと閉めるようになりました。正直そこまで言わないとダメ? 私は小学校の先生か?と思いました。自分がやりたいことは積極的に動くのに……とモヤモヤしています。雑談で相手のことを知ると一旦イライラを抑えられることには最近気づきました。でも気づかないということが積み重なると、なんで気づかないの!? しかもなんでこっちが下手に出てお願いしないといけないの?みたいに結局またイライラしてしまいます。多分年下だとここまでイライラしないと思います(同い年はやっぱりイライラすると思います)。年上の人にはちゃんとまわりを見られる人であってほしいという私の願望なのか、でも正直この男性だけに限らず、本当にまわりのことに気づかない、って方は割といます。この先自分が厳しそうな人間に思われるのも嫌です。最近よくツイッターでも「察して」はわからないからやめた方が良いというのが流れてきます。私もやめたいです。でも……、なんだか不公平なのでは?とも思ってしまいます。気づいた方が毎回声かけやら何やら気を回さないといけなくて、気づかない方は「だって言われないとわからないんだから」で済まされるのもなんだかモヤモヤします。気づかないなりに思いやりとか何かあったらすごく嬉しいなー!と思うのですが、諦めて自分が変わるしかないのでしょうか。
(ズッキーニ・26歳・会社員・大阪府)
宇多丸:
まぁ、なんにつけても気がきかない、気がつかない、少なくともこちらから見るとそうとしか見えない人、というのはいますよね。
こばなみのまわりはどう?
こばなみ:
私はこれ読んでいて、窓とか掃除とかそういう類では、自分が気づかない方で言われることがあるので、グサーッてきたんですけども、でも反論もあって。
ズッキーニさんがそうかはわからないですけど、こういうことを言われる場合って、そう言うけど、あなたも気づいてないことあるじゃん!って思っちゃうことは正直ある。細かいことは気づくけど、肝心な仕事内容については抜けてるじゃん!とか、反撃したくなっちゃうときがあるんですよ……。だから、そんなイライラされても……、お互い様じゃないっすか!とかとか。
宇多丸:
それはもう、人生全体にも言えることではあるよね。
相手も人間なんだから、向こうには向こうなりの言い分があるのかもしれない、と考える余地は常にある。
ただ、この年上同僚の場合、窓・エアコン・ゴミはまだそういう議論の可能性がある件かもしれないけど、「自分にかかってきた電話以外絶対出ない」は、仕事に直接支障をきたしかねないという点で、はっきり困った問題じゃない?
こばなみ:
ズッキーニさんが別のことで対応中だったらどうするんだろう? 会社自体の損失になりますよね。
宇多丸:
そうだよねぇ。
一方で、この相談でおもしろいのは、「雑談で相手のことを知ると一旦イライラを抑えられることには最近気づきました」ってところだよね。
なかなかの真理でしょう、これは。
他者性が高い状態だと単に怒りや憎しみにカテゴライズされていた気持ちが、あっちの人となりをちょっと知るだけで、つまり、言っちゃえば「ひとりの生きている人間として見る」ようになっただけで、少しだけ和らいだ、と。その人に対して、より想像力が働くようになったわけですよね。
人類がみんなこの境地に達することができさえすれば、世界も平和になるのに……級の話ですよ! 軽く感動しちゃいました。
たとえばこの方向でさらにコミュニケーションを重ねてゆくことで、さらに腹立ちも減退してくし、「ぶっちゃけここは直してほしいんですけど!」とかも言いやすくなる、みたいのがひとつの理想ではあるんじゃないですかね。
こばなみ:
たしかに距離が縮まれば、相手の意図とか、他にやってることもわかったりしますもんね。
知らないから一方的に被害者みたいに思っちゃうのかもですね。
宇多丸:
あと、実際この方、少なくとも窓のことに関しては、なぜ閉めるべきかの理由をズッキーニさんから改めてしっかり説明されて理解したら、ひとまずちゃんとやるようにはなったわけじゃん?
ズッキーニさん的にはそこまで言わせんなよって感じなんだろうけど、僕はこれ、「話せばわかる」は、はっきり希望がある部分だと思うんですけど。
あるいは、ひょっとしたらエアコンつけっぱだった件だって、「朝、出社した時に暑いの、みんな嫌でしょ? だから昨日帰りぎわにタイマーかけておいたんだよ」とか、意外や意外あっちはあっちで気をきかせた結果だった……とかかもよ? まぁまず違うでしょうけど(笑)。
とにかくそんなのだって、話してみなきゃわかんないことなのは間違いないんだからさ。
それでもズッキーニさん的にはあくまで、「いやいや、そんなしつけレベルのことを、いちいちわかるまで言って聞かせてあげるほどのモチベーションはヤツに対して持ちあわせてないよ」という感じなんだったら……、あとはもう、もっぱらこっちサイドで、実害や要らぬいらだちが最小になるよう、ひたすら合理的に動いていくしかないですよね。
たとえば、窓やゴミくらいは自分で処理しちゃったほうが早いし、などと考えるようにして、過度に気にしないようにする、というのも一種の知恵ではありますよね。
これ要は、もちろん彼側がボケッとしてるというのも事実なんだろうけど、「自分にとっては自明なルールが、隣の誰かにとってもそうとは限らない」っていう、この世を生きてゆくうえでの大前提に関する話でもあって。
当然、考えが合わない人たち全員を正して回ることなどできないんだから、ある程度はそういうもんだと諦めて、不快なところとは距離を置いたりあまり考えないようにしたりする必要があるわけだけど、彼が最終的には窓を閉めるようになったみたいに、状況への働きかけが効果を生むことだって一応やっぱりありうるんだから、ハナから絶望しきってしまうこともない。
結局はだから、こちらの被害度や向こうとの距離感との、バランスですよね。
心底どうでもいい人だったら、僕なら黙って窓を閉める。いろんな意味で。
でも、これからもずっとその人と二人きりで仕事してゆかなきゃならないのだとしたら、自分がより心地よく暮らしてゆくためにも、やはりなんらかのアクションは起こしてゆくんじゃないかな。
できるだけちゃんとコミュニケーションを取って、相手のことも尊重したうえでこちらの主張を理解してもらう、とか……、ま、要はズッキーニさんがやってきたことですよ。
だから、別に今の方向性で間違ってはいないんじゃないのかな。
窓での成功例を他にも転用してけばいいんじゃね?
こばなみ:
ただ、電話に関しては、業務ですからね。
宇多丸:
あちらに明白に落ち度がある案件なぶん、実は一番指摘しづらいところかもね。
社会人としての常識、ビジネスマナー、みたいな次元の話だもんね。
僕だったらどうするかな……、やっぱりある程度距離を縮めたうえで、あくまでツッコミっぽくではあるけど、「◯◯さんいいかげん電話出てくださいよ! 留守番の子どもじゃないんだから!」とか、わりとズケズケ言ってくかもしれないです。
一度言っちゃえばあとは楽になるし。
こばなみ:
その調子で、その男性社員とコミュケーションしていけば好転しそうですよね。
宇多丸:
年上ではあるけど現職場では事実上「ちょい先輩の同期」なんだし、普通にサラッと注意、ってことでいい気もするけどね。
なんか、話の流れから勝手になかなかのおじさんをイメージしちゃってたんだけど、よく考えたらそいつ、まだ三十そこそこじゃん! ぜんぜん叱られ盛りだよ!
なんにせよ、こちらから見て「気がきかない気がつかない他者」というものに、一方的に期待をつのらせておいて裏切られたと怒る、みたいな思考のサイクルは、あんまり建設的ではないのは明らかだと思うんで。
むしろ向こうからすれば、こちらこそそういう存在である可能性すらあるわけで……。
なので、「気づかないなりの思いやり」なんて原理的に機能しえない見返りなど期待する前に、やはりちゃんと先方と言葉を、意見を交わしあって着地点を見つけてゆく、というプロセスを重ねてくのが、当たり前すぎるし、かったるいかもしれないけど、たぶん結局は一番マシな道なんじゃないかなぁという気がしますね。
そのうえでやっぱりサジを投げるという結論なら、それもやむなし、だし。
ちなみにいま思い出しましたが、ライブの楽屋とかで飲みかけの冷えたコーヒーが放置されてたりするのが僕はホントに大嫌いなんですが、いちいちやったヤツに説教するのも面倒なんで、内心イラつきつつも、なにも言わずに速攻自分で片付けています……、だから、ズッキーニさんの気持ちもよくわかる!
こばなみ:
あ、やっぱり私、完全にそっち側の人間ですわ。置きっぱなし、やりっぱなし、悪気はないんですよ、忘れちゃっただけで……って、こういうのが、さらにイラつかせるのでしょうね(笑)。気をつけます~! すみません!
【今週のお絵描き】
*** *** *** *** *** ***
この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年7月11日に公開したものを再編集し、掲載しています。