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男女をやたら区別する幼稚園、3歳の娘に偏ったジェンダー観が擦り込まれている気がして……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室319】


✳️今週のお悩み✳️
3歳の娘を幼稚園に通わせているのですが、その幼稚園で男女をやたら区別することが気になって仕方がありません。園庭に出るときも、男の子グループと女の子グループに分け、準備ができた方から出る。お遊戯会では、同じクラスでも男女で演目が違う(男の子は冒険物語系、女の子はアイドル系だったり)。運動会では、ダンスの際に身に着ける飾りが男の子は青、女の子はピンク。年末の大掃除では、男の子がブロックを拭いて、女の子がおままごとグッズを拭くようにと指導があったそうです。娘には選びたいものを選べと常々伝えているのですが、例えば「◯◯くんは男の子だから恐竜好きなんだって」などと言うようになり、まったく必要のない「男の子だから」「女の子だから」を付け加えた考え方をしているようです。その都度「女の子でも恐竜好きな子たくさんいるよ、好きになるのに男とか女とか関係ないでしょ」などと話すのですが、(ママってばまたなんかごちゃごちゃ言ってる~)くらいにしか思ってなさそうで……。園側には、あまり声を上げて煩い親と思われるのも嫌ですし保育中に娘に変に気を遣われても困るので、個人面談の際に担任の先生に気になっている旨をやんわり伝えた程度です。幼稚園のママ友はまだ少ないですが、数人といろいろ話していても、皆あまり疑問視していないようです。なんなら、保護者の連絡用LINEグループも、男の子のママ・女の子のママで分けているくらいです。もろもろ管理がしやすいようにそうしているだけなのかもしれませんが、幼心に少しずつ偏ったジェンダー観を擦り込んでいっているようで気になります。ちなみに娘はこの幼稚園が大好きですし、その他の事情からも、転園などは考えられません。娘に偏見のないよう伝えていくには、どうしたらいいものかモヤモヤしています。
(こんぶぽん酢・37歳・東京都・アルバイト)


宇多丸:
言うまでもなく僕が子どものころとかは、無神経極まりない「男の子だから」「女の子だから」イズムが当たり前のようにまかり通っていたわけだけど……、いまどきの教育現場なら、もう少しそのへんの配慮はマシになっているもんかと思いきや、意外とまだ、そんな調子のところも少なくない感じなんですかね。

もちろん、こんぶぽん酢さんの問題意識はまったく間違ってないと思いますよ。

こばなみ:
保護者も「男の子ママ」「女の子ママ」とか、分けてるんですね。

宇多丸:
でもさ、この幼稚園の件に限らず、子どもっていうのはそもそも、学校の先生とか友達とか、親以外のいろんなところから影響を受けて帰ってくるものなわけじゃない?

そしてそれが、自分たちの教育方針からするといかがものか?っていう部分を含んでいる可能性は、当然常にあるわけで。

そのときに親としてどうするか?ってことだよね。まぁ間違いなく、今後も必ず何度となく直面する事態ですよ。

ストレートに考えれば、「幼稚園の先生やまわりの子はそう言っているかもしれないけど、ママはそう思わない、なぜなら……」「私の考えはこうだけど、あなたはどう思う? どうしたい?」って、お子さんと本気で真正面から話し合うってことしかないんじゃないの、とは思うけど。

こばなみ:
お子さんには言ってるけどわかんないってことなんですよね。

宇多丸:
3歳かー。

「わかるように」根気よく話す、っていうのもダメなのかな。僕は子どもいないからよくわかってないところもあるんだろうけど。

ただ、自分が幼かったころの記憶をたどってみると、その日先生が言ったことや教えられたことについて帰ってから母親に話したら、「それは私はどうかと思うな」とか、わりと批判的な意見を言われることも多かった気がするし、それに対してこっちも「だよね、ボクもなんか嫌だったもん」って感じで、子どもなりに考えたり納得したりしてたようなおぼえがありますけど。

ま、それはもうちょっと年上のときではあったかもしれないけどね。保育園年長さんとか?

じゃあ結局やっぱり、幼稚園選びからしっかりしておかないと、ってことなのかなぁ……。

幼ければ幼いほど、いろんなことを全身で吸収しちゃって影響を受けやすいわけだから、余計に心配ではあるよね。

とは言え、ただでさえ待機児童やらなにやら大変ななかで、そこまで選択肢があるもんなのか、ってこともあるだろうしね。

ただまぁ、なんにしてもやっぱり……、子どもが外で触れてくるものすべてを親がコントロールするなんてこともできないし、するべきでもないわけだからさ。

やっぱ、常日頃から自分たちの考えを子どもにしっかり伝えてゆく、あっちの理解度も見すえてコミュニケーションをとってゆく、ってことがすべての基本であることに、変わりはないんじゃないかなぁ。

先生が言うことと親が言うことが違うと子どもが混乱するかも、みたいな懸念もあるかもしれないけど、さっきも言ったように、子どもは子どもでそこは意外とちゃんと線引きできてたりするもんだろうとも思うし、そもそもそれも、親子でしっかり話し合いができていれば問題ないわけだからさ。

こばなみ:
私は幼稚園のときは覚えてないけど、小学校低学年のときは、先生に対してそれってそうか~?って違和感をおぼえたのは記憶にあります。

こんぶぽん酢さんとしては、宇多丸さんみたいに早い段階で、ん?って思ってくれたら安心なんでしょうけど。

宇多丸:
お子さんは現状、幼稚園側のイズムに比較的順応しちゃってるわけだもんね。

でもだったらなおさら、こんぶぽん酢さん側もはっきり、こちらの意志を示してゆかないと。
放っておいたら子どもは、環境に流されてゆくだけなのは当たり前ですから。

僕らだってさ、たとえばマンガとかで覚えた悪い言葉を意味もよくわからず使ってたら、親とかまわりの大人が、直接は怒らないまでも明らかに「眉をひそめた」っぽいのを幼いなりに察知して、なんとなく気まずくなってやめてゆく、みたいなことって、たくさんあったわけでしょ?

こばなみ:
ありますねー、その感じ!

宇多丸:
大人が思っているよりは、子どもは大人が発する様々なメッセージを、ちゃんと理解してる、あるいは理解してしまうもんだと思う。
少なくとも大人側はその心づもりでいたほうがいい、というのが僕の考えですけど。

つっても、やっぱりまだ3歳ではあるもんね……(笑)。

こんぶぽん酢さんの心配は、お子さんの考え方が偏ったものにならないか、ということと同時に、じゃあ仮にこんぶぽん酢さんの考えをきちんと理解させたとして、今度はそれを幼稚園のなかで「ママはこう言ってたもん!」的に主張しだしたりして、浮いてしまったり疎まれたりするんじゃないか、みたいなところにもあって、その言ってみれば二重規範的な側面が、若干ことを厄介にしてるんだよね。

要は、「普遍的な正しさの追求」と「現行社会への適応」の矛盾、でもどっちも生きてゆくには大事、だから困った!みたいな話。

実は我々大人だって一生直面してゆかざるをえない、すごく本質的な問題だったりもしますよね。

3歳児に「面従背反」を生きる知恵として教えるか(笑)。

それは嫌なんだとしたら、やっぱりその「現行社会」側への働きかけも、こんぶぽん酢さんがやってくしかない、ってことなんじゃないですかね。

つまり、幼稚園側にもっと強く意向や懸念を伝えたり、ほかの親御さんで問題意識が共有できるような人を探して共闘してく、みたいな。

実際、ジェンダーや人権に関する意識が旧態依然としたもののまま大きくなってっちゃうと、これからの世の中、いろんな問題が出てくるかもよ、大人になってから苦労するかもよ、というような面も、いまどきは確実にあるわけじゃないですか。

だから、親しい親御さん同士ちゃんと話し合って、そこのコンセンサスをとっておく、というのは、普通に必要なプロセスでもあるんじゃないかって気もしますけど。

ただもちろん、とはいえ一保護者でしかないこんぶぽん酢さんの力で、それこそ由緒ある幼稚園とかの慣習を改めさせてゆくのは難しい、という現実があるのだとしたら……、じゃあやっぱり、話は戻りますけど、娘さんとのコミュニケーションを念入りにとってゆくしかない、ってことですよ。

ちゃんと聞いてくれてなさそうと思うなら、聞いてくれるように、ことの本質や大事さが理解できるように、3歳だからわからないだろうとかそういう思い込みを捨てて、何度でも心を込めて話す。

「私はあなたにこういう考え方ができる人になってほしい」とか親に言われたら、子どもというのは基本的にその期待に応えようとするものだろうし……。

それに、伝えようとしてることがホントに普遍的に大切にすべきことなら、歳は関係ないはずですよ。

その意味ではたぶん、こんぶぽん酢さんのお子さんも、毎度その話題になるたびにお母さんが渋い顔して苦言を呈しだす、ってことはすでにわかってるわけだから、意外と頭の隅では理解しつつあったりするんじゃないか、みたいな気もしますけど。

少なくとも、男はこう女はこうという決めつけに対して、異論を持つ人が身近にいるんだ、ということはわかってるわけだから。その違いは大きいですよ。

それに今どきはさ、たとえばディズニーとかも、人間の多様性に対して配慮を強めた作品を作るようになっていたりするわけじゃない?

そういう良き教材もこれからますます増えてゆくと思いますし、エンターテインメントを楽しみながら、親子で話し合って意識を高めてゆく、みたいなこと、さらっとやっていけばいいんじゃないかな、とも思います。

しかしなぁ、ランドセルとかも、今はみんな思い思いの色を持つようになってるって聞いて、うらやましく思ってたけども……。

こばなみ:
息子さんが赤いランドセルを持ちたいって言っていて、いじめなども心配だったけど、買って応援してあげたという親御さんの話をなにかの記事で読みましたが……。

宇多丸:
男は赤だとおかしいとか、じゃあアカレンジャーはどうなんだって話ですよ。シャアなんか「赤い彗星」とか言ってるけど、どう見ても機体はピンクだよ! 

まぁ冗談はともかく、ぶっちゃけ、みなさんの息子さん娘さんがどういうセクシャリティになってゆくかもわからないんだから、いろんな決めつけをすることで彼らが一生苦しむことになるかもしれない、ということは、大人たち同士しっかり認識しておくべきですよ。

そして、大人が子どもたちにしてあげるべき最大のことは「可能性の提示」だ、というのが僕の考えですが、この件に関してもそれをぜひ、娘さんにしてあげてほしいと思います。

子どもは大人のように言語化できないだけで、ちゃんと感じているし理解もしているってこと、実感としてみなさんにもあるでしょ?

こばなみ:
あると思います。自分のことを振り返っても、言葉にうまくできないだけで思ってることはあったもの。

宇多丸:
他人の権利を侵害しない限り生き方の多様性を認めましょう、って、絶対子どもでもわかるしわかっておくべき、根本的な考え方の話じゃないですか。

だから、ここでおろそかにしないほうがいいのかもしれないですよ、マジで。

今から始めれば、ちゃんと知的な会話ができる、素敵な親子になっていきますよ。

こんぶぽん酢さんはすでにその一歩は踏み出しているようなもんなので、きっと大丈夫だと思いますけど。

逆にそうやってかないと、しょーもないおじさんばっかりふんぞり返ってるこういう社会を、彼らの世代でも再生産しちゃうよ!

こばなみ:
うむむ~。

宇多丸:
映画で言えば、もう2、3年経ってからかもだけど、『リトル・ダンサー』とか見せればいいんじゃない?

「らしさ」の呪縛や抑圧からある男の子が解き放たれてゆく、大変わかりやすい娯楽作なので。

あとは、3歳でもわかる絵本とかでも、そういうテーマを扱った作品、いまはけっこう出てるはずなので。

……とまぁ、子どものいない身で、さんざん無責任なこと言い散らかしてすみませんでしたが。

こばなみ:
そういえば、私も子どものころ、女の子っぽいのが嫌で、スカートを履きたくなくて。
でもそれを別に親もいいよって言ってたのは、救われたかもです。

宇多丸:
そのレベルのもあるよね。別にセクシャリティとかじゃなくても、単純にこの「らしさ」嫌なんですけど、って。

そんな感じで、娘さんがのびのびと幸せに生きてゆくためにも、根気よくそこは向き合っていってみてくださいませ。

あなたの懸念は間違ってないよ!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年4月25日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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