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美容関係の広報をしているのですが、仕事で顔を出してSNS活動するのに抵抗があります。会社に貢献したい気持ちと自分自身の違和感との狭間で葛藤しています……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室382】


✳️今週のお悩み✳️
ネットで顔出しして活動することについての相談です。インスタやYouTubeをはじめ、一般人でも顔出しをしてSNS活動をする人が増えてきたと思います。個人だけでなく、最近では企業でもショップスタッフの方がインスタライブをしたり、動画配信するケースがすごく増えていますよね。
私は美容関係の広報を仕事にしているのですが、その一環で動画配信案が社内で出ています。小さい会社で、他に広報担当者はいません。私(39歳)が一番年下で、他は50代以上なので、商品の見え方的にも業務的にも私が表に立つ感じになります。ここですごくネックなのが、私自身、顔出ししてネット上に出るのにかなり抵抗があるということです。不特定多数の人が自分を見ることができる状況で、しかもアーカイブまで残るというのに気持ち悪さを感じるんです。しかし、広報というところを考えると、動画配信は今後避けて通れない気もしています。広報業務を始めた数年前はこんな動画全盛な世の中になるとは思いもしませんでした。すごくお世話になっている会社なので、貢献したい気持ちと自分自身の違和感との狭間で葛藤しています。
宇多丸さんはもちろん、こばなみさんもネット上で顔出ししていると思うのですが、このあたり怖さや違和感のようなものを感じることはないでしょうか? 宇多丸さんは、顔出しを前提とした職業ではあると思います。しかし、ネット環境は良くも悪くもあまりに変わったのではないでしょうか。自分の知らないところでデジタルタトゥーが刻まれていたらと思うと、どうも気軽に顔出しする気になれません。しかし、こんなこと考えずに明るく楽しくSNS活動をしている方もたくさんいるわけで……。価値観はそれぞれというのは承知しています。動画配信はあくまで案段階なので、嫌なら断ることもできます。ただ、こんなにも沢山の人がやっていますし、繰り返しになりますが広報(広告)に動画配信は避けて通れない気もしています。そして、動画配信をきっかけに商品をもっと知ってもらいたい!という気持ちもあります。「案外気軽に考えて大丈夫」「まずは自分がコントロールできる個人アカウントから動画配信してみれば?」などなんでもいいです。顔出ししてSNS活動する上でアドバイスがあればお願いします。
(にこ・39歳・会社員・東京都)


宇多丸:
たしかに、その会社の人みずから、自社商品を心から愛着を持って紹介している動画みたいなの、プロモーションとしてはすごくいいんでしょうけども。

僕がまず思ったのは、VTuberでいいじゃん、って。

要は、アバター的なキャラクターを使えばいいんじゃないの、と。

なんならそれを、会社のイメージキャラクターにしたりしてさ。

こばなみ:
私も思いました。自分が顔出ししなくてもできるんじゃないかって。パペットとかで紹介するのもどうですか?

もうそれでけっこうな解決策にはなると思うんですけど。

あ、でも美容関係だから、商品を使うところだったり、ビフォー・アフターだったりが必要なんですかね。

宇多丸:
本来それはモデルさんの仕事なわけだけど……。

こばなみ:
でもお金がかかりますね……。

宇多丸:
たとえば、モデル志願者を公募したりするとか?

こばなみ:
美容家の卵さんとか、出たい人、いそうですよね。

宇多丸:
なんにせよ、ネットに出る・出ない以前に、そもそも人前に出て何かやるのが苦手な人、向いてない人というのは確実にいるわけで、やれ動画時代だからって、みんながみんなそこにトライしなきゃならない、みたいな考え方自体がおかしいんですよね。

それに加えて今は、にこさんが危惧されている通り、ネットに情報が流れてゆくことにまつわるリスク、怖さみたいなものも、現実として増大しているわけだから。

ちなみに僕だって、顔出しって言うけど、スキンヘッドにサングラスっていうビジュアルイメージを作り込んだ上で、あくまで芸名っていうかラッパーネームで表に出ているわけで、半分アバターみたいなもんですよ、事実上(笑)。

こばなみは、ほぼ本名かつ素顔でここに出ているわけだけども、どうですか?

こばなみ:
私自身はとくに気にせずやってますけども、それを他の人に強制はできないなとは思っていて。

それこそ、以前いた女子部のメンバーからは、顔出しは抵抗あると言われたこともありますよ。

ストーカーみたいなのにあったことがあって避けたい、という人もいました。

そう思うと怖いことはやっぱりありますよね。

私もまぁ、たまになにか書かれたりすることもあって、それは嫌だけども、いまのところはメリットの方が多いからやっています。

宇多丸:
その点、にこさんは明らかに気にしちゃうほうっぽいわけだから、うかつに手を出さないほうがいいのは間違いないですよね。

こばなみ:
そうですね。そしてそれは会社にも相談していいことだと思いますけども。

宇多丸:
でさ、いま話してて思ったんだけど、やっぱりここは、プロのモデルさんを使うというのが、まずは筋なんじゃないかな、という気がしてきました。

さっき言った志願者を募るって案は、モチベーションにつけ込んで負担を肩代わりさせる、みたいな構造にもなりかねないというか……。

要は、顔を公に出すことに多少なりともリスクがあるというのなら、だからこそ、相応の対価を支払って「顔を出すプロ」にお願いするべきなんじゃない?という考え方ですね。

だいたいさ、美容関係の会社なら、モデルを雇うくらいの経費をケチってちゃダメでしょ!という(笑)。

こばなみ:
手弁当な感じで中の人でやっちゃえ、みたいなノリかもしれないですが、たしかにプロが安心ですね!

宇多丸:
もちろん、商品説明を社員の生の声でやるというのは、さっきも言ったようにとてもプラスになることでもあるだろうから、そこはアバター的なキャラを使う、というのも全然ありじゃないですかね。

動画制作はそんな感じでなんとかするとして……。

さらにそこから先、こまめなSNSでの広報活動みたいなことに関しては、それこそ誰かもっとモチベーションがある人がやるべきというか、そういうのが得意な人、わりと苦にならない人がやってナンボ、というもんなんじゃないですかねぇ。

なんか、時代は動画配信だからとか、SNS発信だからとか、よくわかってないヤツならではの雑な言葉に飲み込まれてなんとなく始めた程度で効果が出るほど、甘いもんじゃないと思いますよ。

それこそ今や、みんながみんなやってるわけだから。ただやるだけじゃ誰にも見てもらえない。

まして苦手意識がある人なんか、無理してやってもあんまりいいことないんじゃないかなぁ。

こばなみ:
「まずは自分がコントロールできる個人アカウントから動画配信してみれば?」なんてこともないですし!

宇多丸:
にこさん個人ともろもろが紐づいてしまうリスクを危惧してるというときに、そんなの一番やるべきじゃないこと、なくらいじゃない?

あくまで、仕事上絶対に必要なことだけを、あらゆる意味で無理はしない範囲でやる、という線引きでいいと思いますよ。

とにかく、もし仮にホントに動画制作をするならば、の話ですけど、実際の美容効果例などに関してはプロのモデルさんにおまかせして、商品説明とかはCGキャラでも着ぐるみでもいいから身代わりのイメージを通してやる、という作戦、わりと本気でありなんじゃないかという気がするので、ぜひご検討くださいませ!

そしてもちろん、やるやらないのジャッジを慎重にするというのも、当然大事なことですからね。

さっきこばなみが言った通り、会社のほうにも、にこさんの懸念を含めて、いろいろ遠慮なく相談しちゃっていいと思いますよ。

こばなみ:
すごくお世話になっている会社ということで、文面からはポジな印象を受けましたので、上司の方ともぶっちゃけお話してみてはどうでしょうかね。

顔出し動画は、あくまで広報という目的の手段ですもんね。同じようなことをやってる競合も多いかもしれないですし、にこさんのプライバシー保護の件も含め、例えばメリット・デメリットを全部出し切って、効果は何か、リスクは何かを、会社のみなさんともう一度検討してみるのもよいかと思いました。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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