自分勝手な幼なじみに腹が立つ! 嫌なところを言おうか否か迷っています……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室39】
✳️今週のお悩み✳️
幼なじみのことが嫌いになりつつあります。自分勝手だからです。
彼女が結婚することになり、相手に会ってほしいと言われ、食事をすることなったのですが、指定された時間が平日の早い時間で職場からは遠いのでその時間は厳しいと伝えたところ、「何なら、もう1人の友達に会った後に会ってもいい。でも彼に相談かな♡」みたいなメールがきました。何ならって……。そもそも年末に女同士でお祝いしたときも自分の話ばっかりでつまらなかったし、行くのをやめようかとも思いましたが、地方に嫁に行ったら滅多に会えなくなるので行った方がいいか迷っています。でも……。彼女とは小学生の頃からの付き合いですが、ここ5~6年は、会っても電話してきても自分の話ばかり。酒乱で泣いたり、絡んできたりもしてきました。そして彼ができたらのろけばかり。ちなみに、わたしのことは何も聞かれませんし、飲み代はお金がないと言い、いつも多く出したりおごったりしているのも、友達としてなんだかなーという感じです。
長年の友達として、嫌だなと思うところをこの機に言った方がいいのでしょうか?
(たいやき山・37歳・千葉県)
宇多丸:
小学生の頃からの付き合いか……。そういう人っている?
こばなみ:
いますよ。
宇多丸:
大人になってからも会ったりする?
こばなみ:
1年に1回くらいですかね。年末年始とか。
宇多丸:
へ~。僕はそういう友達っていないから聞きたいんだけど、小学校のときからの相手って、関係性というか、付き合い方の距離感みたいなのは、ずっと変わらないものなの? それとも、そこはまた改めて大人同士って感じになっていったりするのかな? たとえば、会ってお互い何を話すのかとか、ちょっと想像がつかないんだけど。
こばなみ:
小学生の頃って、その人の肩書きとか、何をしている人かとか、あんまり関係ないじゃないですか。ただ席が近いから、家が近いから、気が合うから友達になるのであって。でも大人になると、私の場合、仕事の話がメインになってきてるから、やっぱりその頃の友達とはだんだん共通の話題がなくなってますよね……。
宇多丸:
高校くらいまでの友達だったらさ、人間性みたいなものも今の大人になった状態とほぼ地続きと言っていいだろうし、記憶も比較的はっきりしてるから思い出話とかもしやすいしで、要は「昔のままの友人関係」が持続するのも全然わかるんだけどさ。
これが小学校となるとさすがに……お互い、その頃とはもう、すっかり違う人間になっちゃってるわけじゃん? ぶっちゃけ、ただの知らないおっさんやおばさんだよ!みたいな。その間にそれぞれが歩んできた人生だって、相当な開きが出てくるだろうし。
こばなみ:
そうなんですよね。だから会っても話すことがない……。私の友達もすごく自分勝手だから、たいやき山さんの気持ち、わかるなぁ。私も自分勝手だから、うまく合わせられないんですけどね……。
宇多丸:
ということで今回の相談ですが。
恐らく、この幼なじみの方からすれば、たいやき山さんはいい意味で「気を使わなくてもいい相手」なんだと思います。酒で乱れたり、自分の話ばっかりだったりもすべて、彼女にとっては「幼なじみのたいやき山さん相手だからこそ」、気を許して見せてしまっている顔なのかもしれない。
他所では自慢げに「なんでも打ち明けられる友達なのー!」とか言ってたりするんじゃない? きっと。 だから、彼女側にしてみたら、たいやき山さんとの関係が実はとても大切なものである可能性は、意外に高いと思う。
ただ、同時にそれは、とても身勝手で一方的な「友情」観でもある。 事実、たいやき山さんはいいかげん辟易してしまってるわけで。 こういうタイプの人、結構いるんですよ。 「友達でしょ?」をオールマイティカードのように振りかざしてくるというか……、とにかく”でろーん”と、全面的に身を預け合うのが「友情」だと思ってる。
で、こっちがそれにちょっと距離を置こうとしたりすると、そこだけは敏感に察知して、「友達なのに冷たい」とかって責めてきたりする。厄介! 「親しき仲にも礼儀あり」ってことわざは誰だって知ってるはずなのにね。その線引きができない、むしろしないのが友情だと思ってるフシさえある人って、案外多いもんですよ。
こばなみ:
小学生の頃は、自分も友達もみんなが幼いわけだから、線引きとか考えなかったし、そういう場面もあまりないですからね。だから気にならなかったけど……。
宇多丸:
「親友」って言葉がまた厄介だよね。
一般的には「腹を割ってなんでも言い合える仲」というイメージがあるかもしれないけど、僕はその「○○な関係だから何を言っても or やっても許される」みたいな考え方、あまりいいことだと思ってないんですよ。
互いに”でろーん””でろーん”と際限なく甘え合うような関係もさ、双方納得しあって、好きこのんでやってるなら別にそれは勝手だけど、このたいやき山さんと幼なじみのケースのように、一方の気持ちを事実上無視したまま自分の”でろーん”だけは押し付けてくる、なんていうのは、それはもう友情とは呼ばないでしょ!と僕は思いますけどね。
そういう風に、「腹を割ってなんでも」派に限って、実は相手に対してロクに敬意を払ってもいないし、想像力を働かせようともしていない、なんてことは往々にしてあるもんですよ。
逆にさ、「お互い腹なんかいっさい割らない友情」っていうのだって、全然あると思うんですよ。 「アイツと会う時だけはカッコつけてたい」みたいなさ。ピリッとした、一定の緊張感を保っているからこそ生じる特別な関係性、というのも確実にある。 とにかく、世にはびこる「友達なんだから腹を割れ」イズムは、ホント迷惑だし有害!
こばなみ:
それ、わかります。何でも話すとか、裏の裏まで全部見せるとか、こっちにとっては、「え~、そんなこと言われても~!」ってこともありますもんね。私の友達の”でろーん”も、「あんただから言うけど」とかって職場での人間関係とか仕事状況とかマシンガントークを繰り広げてくるけど、ただストレス発散しているだけなのでは?と思ってしまうこともある。
で、一応聞きつつ「その場合、あなたも悪いところがあるのでは?」とか意見しちゃうと、「偉そうに言うな」とか言われ、「じゃ、話さなきゃいいじゃん!」とか言い返し、結局ケンカになりますね。本当は一緒にバカ笑いとかしてリフレッシュしたいのに、ケンカすることで逆にすごく疲れたり……。そうなると会うのが億劫になってきますね……。
宇多丸:
まぁ、ケンカが悪いとも一概には言えないんだけどね。
僕が一番親しい友人のなかには、議論仲間っていうか、口ゲンカ友達みたいのもいてさ。会う度に結構ヒートアップしてガーガーやり合ってるんだけど、周りが心配して止めに入ったりすると、「え? 俺たち今、サイコーに楽しいんだけど!」みたいな(笑)。
そういう友情の在り方っていうのもありますから。
こばなみ:
親友ってなんなんすかねー?
宇多丸:
それこそ、「最も尊敬しあってる他者」みたいな感じが望ましいと思うけどね。
逆に、さっきから言ってる”でろーん”タイプの人は、「友情が深まる=他者性が消えてゆく」って認識なんじゃないかな。「家族化」してくイメージというか。
でも、前から言ってるようにそれこそ本当は「家族だって他者」なんだから、やっぱり、いずれ何かしら問題は生じるんじゃないかと思うなぁ、その考え方。 こっちに”でろーん”、あっちに”でろーん”を長年重ねた結果、みんな引いちゃって周りからどんどん人が離れてゆき、もともと寂しがり屋だからこその”でろーん”だったのがさらに悪化、それがまた人を遠ざける結果に……みたいな、悪いスパイラルに入っちゃう人もたまにいますよね。
こばなみ:
たいやき山さんもはっきり嫌!って言った方がいいんですかね?
宇多丸:
そりゃ、言ったほうがいいでしょ。これ、いつも言ってることだけど、ためこむなよ。問題をためこむと、それは重くなっていくだけだから。
前にも怒った感情をすぐに伝えられないって相談があったけど、違和感を感じたらできるだけためこまず、極力ライトに、感情的にならず、その都度言うこと。
たいやき山さんはきっと優しいから、毎回彼女の話をおとなしく聞いてあげちゃって、嫌だなって気持ちは自分で抑えこんじゃってるわけだよね。 でも、それを後から「実はずっとこう思ってた」ってドサッとまとめて伝えることのほうが、幼なじみにとってのショックは間違いなく大きくなりますよ。この問題に限らず、相手を意図的に傷つけるのが目的というのでない限り、そういう事態はできるだけ避けたほうが、僕はやっぱりいいと思う。
だからさ、ミもフタもない結論だけど、「自分の話ばっかりしてないで、私の話もきいてよ!」って、そう思ったときにサクッと言うのが、やっぱり一番簡単な解決策なんですよ。
それに今だったら、メールするにしても、怒りをやわらかく伝える方法がいっぱいあるじゃない。 スタンプとかもそうだし、「激おこぷんぷん丸」とか「(怒)」とかでもいいよ。 ちなみに僕は「激おこぷんぷん丸」みたいな言い回しが生まれてくるのって、とても素敵なことだなって思ってるんです。 怒りっていう取り扱い注意な感情を、コミカルなニュアンスでソフトに表現するなんて、なんと豊かな言語世界なんだろう!って。
こばなみ:
なるほど! 絵文字なんかもありますしね。
宇多丸:
そもそもさ、「おまえ、その話つまんねーよ!」くらいは軽く言い合えて、それで別に関係が悪くなったりもしないのが友達、とも言えるだろうし。
あと、日本人の傾向として、基本「揉めたくない」っていうのがあるわけでしょ。たいやき山さんがその場で不満を表明できなかったのも、根っ子はたぶん、そういう話ですよね。
でもね……、「揉めたくない」のは、相手も一緒なんだよ! だから、恐る恐る異議を申し立ててみたりしても、意外とそんなに波風は立たなかったりすることも、実際には多いと思います。
あーでも、ちょっと待って……。 ここまで不満を引っ張ってしまったのだったら、それを本人に伝えるのは、もうちょっと後にしてもいいのかな……。 というのも、友達は今、幸せ絶頂期なわけでしょ? ただただ祝福されたい、それゆえに確かに調子にも乗り過ぎてしまっているわけですが、よりによってその瞬間に、あえて水をさすようなことを言う必要があるのかどうか。
もちろん、そもそも悪いのは友人のほうだったとしても、「なぜこのタイミングで言い出したのか非常に疑問です」、佐村河内氏ばりの逆ギレ反応を余計に招いてしまいかねない。 なので、時期は考えたほうがいいかもしれません。 でもまぁ、気持ちは本当にすごーくわかりますけどね。”でろーん”派はマジ面倒!(笑)
【今週のお絵描き】
ためこまず、そう思ったときにサクッと言おう。
怒りをやわらかく伝える表現もいっぱいあるし!
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年4月12日に公開したものを再編集し、掲載しています。