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奥様風のファッションでHIPHOP好きな私は痛いオバサン? 自分の見た目が他人からどう見えるか気になります。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室209】


✳️今週のお悩み✳️
いつも的確なアドバイスにふむふむ~と楽しく拝見しております。私は、自分の見た目が気になってしまうのが悩みです。私は地方の銀行で働いています。マニキュア、毛染め、アクセサリー、厚化粧禁止の職場で、お客様に会ってしまうこともあるので、通勤時やプライベートでもきちんとした服装を求められます。そして気づくと、すっかり清楚な奥様風の風貌になってしまいました。それは、周囲の人に福山雅治のファンでしょ~と言われたり、ディーン・フジオカに夢中だと思われるレベルの奥様風です。でも私は10代の頃からR&BやHOPHOPが好きなんです! それを伝えると、「こんなん好きなんだ……」と、ドン引きされます。私の車の選曲を「似合わな過ぎて息が苦しい」と言う人までいるんです……。別に奥様風が悪いとは思ってないんです。福山さんのファンもおしゃれでキレイな人がいっぱいいるだろうし。ただ、本来の私じゃないみたいな違和感やら、アラフォーになって容姿の衰え的なものを感じるやらで、自分の見た目が他の人からどう見えるかが気になってしょうがないんです。ライブに行っても、周りに「痛いオバサン」と思われているんじゃないかと思うと、自分自身が心から楽しめません。私、浮いてる? とか余計なこと考えちゃって、ぎこちなくなってしまいます……。でも、ライブは行きたくてしょうがないんです! まさにこれからライムスターのツアー、地元で参加予定なんですが、こんな私はどんな心持ちで行けばいいでしょうか? 宇多丸さんにこそお聞きしたいです!

(みとこんどりあ・38歳・茨城県)


宇多丸:
僕らレベルでさえいまだに、「HIPHOPのライブ行ったことないんですけど、どんなカッコで行ったらいいんですか?」とか、「怖くないですか?」とか聞かれることがよくあるんですけど……、こばなみは僕らのライブ何度も来たことあるからわかると思うけど、そんなの気にすることまったくないでしょ?

こばなみ:
わたくし、ごくふつーのワンピースとかで行っちゃっていますが、大丈夫でしたよ!

宇多丸:
当たり前でしょ! 
特に僕らのワンマンとかは、ライブDVDとか観てもらっても一目瞭然なように、誇張でもなんでもなく、本当に老若男女、ありとあらゆる年齢、ジャンルの人が混ざってますよ。
男女比も比較的バランスとれてるほうだと思うしね。もちろんいかにもHIPHOP好きそうなカッコしてる若い子たちとかもいるけど、決してそれが多数派というわけでもなくて、モロに仕事帰りのスーツ着たおじさんもいれば、小綺麗な大人の女性もいるし、子ども連れも最近は珍しくないし、けっこうな高齢者もいたりするし……。
ホント、お客だけ見てもなんの集まりか全然わかんないくらいだと思いますよ(笑)。

38歳女性なんて、僕らのファン的にはむしろボリュームゾーンなくらいじゃない? 
誰も「痛い」なんて思うわけないでしょって、断言できますよ。

あえてライブ初心者にひとつアドバイスするとすれば、茨城ってことは水戸公演に来ていただけるってことだろうけど、そこはオールスタンディング、わりと小箱で人口密度もちょい高めになるだろうから、ハイヒールは避けたほうがいいかもね、くらいかな。ずっと立ちっぱなしで、きっと疲れちゃうし、人の足をグサッと踏んじゃってもまずいので。
でもまぁホント、無理くりなんか言うとしてもせいぜいそれくらいかなぁ。

ひとり参戦の人も意外と多いみたいだしね。ファン同士その場で仲よくなったりもしてるようだし、自分で言うのもなんだけど、僕らのファン、ちゃんとした人たちが多いから、そこに関して肩身狭く感じる必要もまったくない。
ということで、少なくとも僕らのライブに関して言えば、参加ハードルはかなり低めなほうだと思うんですけどね。

だいたいさ~、おばさんもクソも、僕48歳なんですけど!

こばなみ:
私も41歳なんですけど!

宇多丸:
でも実際、みとこんどりあさんの周囲は、年齢とか服装とかで「らしくない」って決めつけを平気でしてくる人が多いってことなんだもんね。
それ、ホントイライラする!

「福山雅治やディーン・フジオカが好きそう」って、どういう根拠なのか知らないけど、彼らに対しても明らかに、浅はかな偏見だけでものを言ってるよね。あらゆる意味で、失礼極まりないよ、マジで。

話は少しズレるけど、こないだ公開された『ワンダーウーマン』の日本向け宣伝が、わりとベタベタな「女の子向け」仕様というか、やたらとピンクを多用したり、ラブコメ風のコピーやナレーションが付け足されてたりして、一部でちょっと問題になったことがあったでしょ。
たしかに今回の『ワンダーウーマン』、実は可愛らしい、胸キュン的な要素がけっこう入ってたりもするんだけど、それにしたってやっぱり……、もちろん、マーケティング的な理屈の裏づけみたいなのもちゃんとあったりするんだろうけどさ、なんかこう、「こういうパッケージングにしとけば女は喜ぶでしょ」的な考え方が透けて見える気がして、僕も正直、あんまりいい印象は持たなかった。
女の人側だって、なんだか上から目線で勝手に「見切られてる」感じというか、なんなら馬鹿にされてるような気分になったりしないのかな?  そういう、あまりにもステレオタイプな「女性向け」打ち出しみたいのってさ。

こばなみ:
まさにそれ、わかります。
それをなくしたいんですよ、私たちも。なので、女子部JAPAN(・v・)では、女子の本当ってこうだよ~!という記事も最近配信しているんですけど。

たとえば家電とかもピンクにしとけば女子に売れるんじゃないのかとか、女子会プランはデザートがマストとか。
女子=ピンク、女子=スイーツって思った施策なんだろうけど、そうじゃない女子も確実にいるわけで、それを企画者に知ってほしい!

宇多丸:
逆に、甘いもん大好きな男だって、当たり前だけど普通にいっぱいいるわけだしね。
だからもう、なんかそういうの、つまんないからいいかげんみんなやめない?みたいな感じはちょっとあるよね。

なので、みとこんどりあさんのケースも、自分から見て「らしくない」からと言って人様の趣味にあーだこーだ言ってくるような、周りの連中が低級なだけですよ、というのはまずはっきり言ってあげたい。

僕の知り合いの女性も、ちょうど『パシフィック・リム』がもうすぐ公開されるっていうときに、すごい観たい!とか周囲に言ってたら、同僚の女の人に、「またそうやって、男に受けそうなこと言っちゃって~」とか言われて、マジでむかついた、というような話をしてましたよ。
その人は、ホントにもともと、たとえばアメコミも普通に好きだったりするような女性なのに、見た目が「それ風」じゃない、それこそおとなしそうなOL、って感じだったりするだけで、すぐまた「男の影響でしょ」みたいなこと言われがちだったりとかさ。どいつこいつも、失礼すぎるだろ!って話ですよね。

ただ、みとこんどりあさんの場合、職場の要請から結果として「清楚な奥様風」になっているけども、なおかつそれ自体が悪いとも思っていないんだけども、そこに自分自身、軽く「本来の私じゃないみたいな違和感」を覚えてもいるという、自意識のほうの問題もあるんですよね。
普通に考えたら、少なくともプライベートな時間は好きなカッコすりゃいいじゃん、って話なんだけど、ひょっとしたらみとこんどりあさんの地元では、僕らが思ってる以上にコミュニティ的な同調圧力が強い、ってことなのかもしれないよね……、だとしたら、ご愁傷様です、としか言いようがないけど。

たとえばだけどさ、ライブだったら、もちろん地元に近いところに来てくれるのも全然いいんだけど、休日とかにちょっと足を伸ばして、周囲のしがらみとかを感じないで済むような場所に行ってみる、っていうのはどう?
で、そこでは思いきって、ホントはしたかったカッコ、「なりたかった自分」に変身する!

こばなみ:
全国各地のツアーチケット、発売中ですよ!!!

宇多丸:
ねぇ。コスプレ感覚でもいいからさ。
プライベートでは職場の連中とかが想像もできないようなモードになりきっちゃう、みたいなのって、僕はけっこう好きですけどね。なんかワクワクするじゃん、それだけでも。
まぁとにかく、あまりに周囲のみんながみんな保守的だったりすると、自分が間違ってるのかな、みたいな気分になってきてしまうのもわかるけども、それはやっぱり、『余計なお世話だバカヤロウ』ってことに尽きるんだからさ。

こばなみ:
言われすぎると、そう思っちゃう気持ちはわからなくもないですね。言われっぱなしも嫌だけど……。

宇多丸:
とは言え、いちいちそいつらの圧力と戦ってまわるのも疲れちゃうしね。
そこまでの労力払って、わざわざ余計に煙たがられたりするのも、アホらしい。

要はさ、この件に限らず、いつも自分がいる場所やメンツ、そこで適用されているルールとは異なる、「また別のチャンネル」を自分のなかに確保しておく、ということが、心の平穏を保つためにもというか、より豊かな人生を歩んでゆくためにも、一番有効だということなんじゃないかと思うんですよ、僕は。

みとこんどりあさんのケースで言えば、そもそもその同僚たちとは根本的に趣味や考え方が合わないっぽいのに、それでもやっぱりそこの人間関係だけに依存しなきゃならないとしたら、それは絶対ツラくなるに決まってるじゃん?
でも、たとえばR&BやHOPHOPが好きっていう方向で、またまったく別の人的ネットワークが実はよそにあったり、少なくとも彼らには決して冒せない自分だけの時間や領域……僕らのニューアルバムの『Diamonds』って曲が、まさにそういうことを歌っているんですけど……、とにかくそういう、「ヤツらにはタッチできない自分だけの聖域」みたいなのがしっかり確保できてさえいれば、たとえ嫌なことがあっても、そこまでいちいち食らわないで済むというか、結果としてそっちの「合わない」チームにも、適切な距離で心穏やかに接することができるようになったりするんじゃないか、と思うんですよね。

自意識的にも、メンツや環境が変われば「自分」だってそれに応じて変化してゆくものなんだから、いまいる場所でただじっとしたまま「本来の私じゃないみたいな違和感」を抱えているんじゃなくて、「なりたい自分」を見つけに、どんどんいろんなとこに出ていって、いろんな人と会ってったほうがいいんじゃん?と思いますよ。

とりあえず、僕らのライブ参戦がその第一歩になるなら、それに勝る喜びはないですけど。
会場で、お待ちしていますね!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年9月30日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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