結婚できるか不安で押しつぶされそう。寂しくて元彼に連絡を取りたくなったり……、不安な気持ちを解消したい!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室221】
✳️今週のお悩み✳️
こんにちは。 誰もが思ってる悩みかもですが結婚できるか不安で押しつぶされそうです!! 3カ月前に、私から彼氏にお別れを告げ、何人かの男性と連絡を取ったり、ご飯したりしたのですが、『この人たちなら元彼のが服装おしゃれだな~、元彼のが身長高いな~』とか小さなことを何だかんだ比べてしまい先に進めてません。また元彼と毎日LINEをし、毎週会ってしまっています。ただ! このズルズルな関係をはっきりさせたく、この先どうする!?と話し合い、結局やはり性格の不一致ということで復縁をしないことになりました。そして今新しい人を探しています。ただ寂しくて寂しくて元彼に連絡を取りたいの無限ループです。元彼と復縁したいかというと、一から恋愛がめんどくさいから戻った方が早いかくらいの気持ちです。もう自分が結婚出来るかわかりません!! 不安な気持ちを解消したいです! よろしくお願いします!
(ぺしゃん子・26歳・東京都)
こばなみ:
明けましておめでとうございます!!!
今年も悩める女子からの相談に全力で解決していきたいと思います。
宇多丸:
ホント、これまでもずいぶんいろんな相談に答えてきましたけど、当然どの悩みもひとつひとつ違うし、それでいて本質として共通する真理みたいなものもたしかにある気がするし……、改めて、人の営みって奥深くって飽きないですよね。いつもこちらが勉強させていただいてます。
こばなみ:
では今年の一発目、いってみましょう!
出ましたね、結婚できるか否か問題。
私はちょっとよくわからないのですが、結婚できるか不安ということに26歳でも押しつぶされそうになるのか~、と。
一から恋愛がめんどくさいから元彼に戻った方が早いかって、なんでそんなに焦ってるのかわからなくて。
ほかにも楽しいこと、たくさんあるじゃないですか?と思ってしまったり……。
なんか見えないものに対してもやもやしている感じなんですかね?
宇多丸:
結婚したくて仕方がない相手が具体的にいるわけでも、その人とこうなってゆきたいという確固たるビジョンがあるわけでも別になく、ただただ結婚という「状態」に対して漠然とした憧れを抱いているっていう、まぁ前からちょいちょい出てくるような話だよね。
とにかく「結婚状態」に到達しさえすれば、とりあえず人並みの幸せはつかんだことになるだろう、とでも言うような……、かなり抽象的な望みというか、はっきり言っちゃえば、幻想ですよね。
誰かと付き合い続けてゆくのにはエネルギーがいるし、傷つくリスクだってつきものなわけだけど、そういうめんどくさいの全部すっ飛ばして、「幸せな状態」だけがいつか都合よく訪れてくれないかと夢見ている、みたいな感じ。
こばなみ:
恋愛とか結婚に対してって、とかくそういうイメージや刷り込みがありますよね。
仕事とかは苦労したりするのが当たり前だけど、恋愛や結婚はなんかふつうにできるとみんな思ってるというか。
わたしも若いときは恋愛とか結婚とか、すぐできるかと思ってたけど、実際は仕事より難しい……(苦笑)。
宇多丸:
努力せずに稼げるとは誰も思ってないのに、恋愛や結婚は「自然に」成立したりうまく行ったりするものと思ってしまいがち、みたいな傾向はあるかもね。
まぁ仕事や勉強と違って、頑張ったからって順当に成果が出るとも限らない領域なわけだけど……、だからってそれを「自分からは努力しなくていい」と解釈して済ましてちゃ、さらにどうしようもなくなるだけなのにね。
ぺしゃん子さんの場合もさ、「結婚できるか不安」って言うけど、ホントは、「今後果たして、結婚してもいいと思える人に出会えて、なおかつ付き合えるのか不安」のはずじゃん。 その二つって、同じこと言ってるようで実は全然違くて……、要は、「具体的な他者」と向き合う話をしてるかどうか、っていう。
本来、今のぺしゃん子さんは、単にその相手探しの途中ってだけ、元彼よりマシと思えるような人と今のところ出会えていないというだけで、それ以上でも以下でもないはずなんですよ。「結婚できるかどうか」は別に個人の属性でもなんでもないんだからさ。
なのに、ぶっちゃけ要は「一人は寂しいからとにかく誰かとくっついてたい」っていう、気持ちとしてはわからないじゃないけど、そこを自堕落に優先させていくと間違いなくロクなことにはならなさそうな一人相撲モードから抜け出せなくなっちゃってて……。
こばなみ:
そう言うわりには、結婚相談所にいくとか、それだけを求める動きをしてないですしね。
宇多丸:
そうだね。
結婚そのものはさ、本気でしようと思えば、すぐにでもできるはずなんだよね。
婚活アプリでもお見合いでも結婚相談所でも、あとはそれこそ過疎地の嫁さん募集とかさ、行くとこ行きゃあ引っぱりだこだよ、きっと。
でも、当然ながらみなさん、そこにはいろいろ条件をつけだすわけじゃん。 つまり、結婚というのを抽象的なイメージとしてぼんやり夢見てるうちは、さっきから言っているようにそれがあたかも幸せのゴールのように思えてるんだけど、いざそれが具体的な話になりだすと、途端に現実的になって腰が引け始める。まぁ、当たり前っちゃ当たり前のことだけど。
だからとにかく、相手探しを頑張って、いい相手が見つかったらその人との関係性を大切に育んで、っていう最低限のプロセスもめんどくさがってて、やれ結婚できるのできないの言ってもさ……、しかも、人に対するジャッジはわりと厳しめっていう(笑)。 まぁ、よっぽどモテる人じゃないかぎりは、もろもろ成就するのは普通に難しくなりますよね。
こばなみ:
モテない人にかぎって、その傾向はあるかも。
宇多丸:
具体的な経験に乏しいから、余計に理想ばっかり高くなっちゃって……みたいな。
ていうかさ、そもそも現実には「理想」なんてものはないよ!
それこそ福山雅治にだって、実際に付き合えばいろいろ問題は出てきますよ、当然。
こばなみ:
石原さとみだって恋の悩みはある!
宇多丸:
だし、付き合ううちに、「あ、こういうとこ嫌だな」という部分は必ず見えてくる。人間だから。
だから、そういう個別の具体的問題と向き合うことなしに、恋愛や結婚、あるいは出産とかを、人生にとっての一種のゴールのように仰ぎ見る物言いっていうのは……、シンプルに三文字で表すとね、「ね・ご・と」なんですよ!
巨乳の子がいいなぁ~、みたいに言ってる中学生男子と変わらないよ。 巨乳はあくまで条件のひとつであって、巨乳がすべてを解決するわけじゃないんだからさ。 そりゃあ、巨乳は百難を隠す!っていうくらい巨乳好きなら、そしてそれをしっかり自覚してるなら、その一点買いで行くのも全然アリなんだけどさ。みなさん、そこまで自分っていうのがわかってるわけじゃないじゃん? 自分が「本当にはどうしたいのか」をきちんと把握しながら生きてる人は、驚くほど少ない。
ホント、結婚さえできればって言いふらしてるような人にはさ、本当に結婚さえできれば文句言わねぇんだな?って聞きたくなっちゃうよ。
こばなみ:
絶対に文句言うに決まってる!
宇多丸:
でも、まぁね、寂しいっていう感情は超強力だから、そこに突き動かされて若干とんちんかんな行動をとってしまうときもあるというのは、人として理解できなくはないですけど。
こばなみ:
その場合、元彼に連絡しますかねぇ?
宇多丸:
仲が悪くなってなければ、全然あり得るでしょ。
特に、ズルズル復縁するというんじゃなくて、良き理解者同士としての関係は続くという感じであれば、僕はそこまでアウトじゃないですけどね。自分自身も経験あるし。
いずれにせよさ、これは恋愛に限らずだけど、本当には自分が何がしたいのか、どうしたいのかをちゃんと見据えないまま、なんとなくの欠落感や焦燥感に煽られてばかりで生きてると、ほぼそれが満たされることはあり得ないし、うっかりわけわかんないとこに飛びついたりしてしまいがちだったりして、なかなか危険な状態でもある。
ぺしゃん子さん、26歳にして「結婚できるか不安で押しつぶされそう」とまでおっしゃってますからね……。
こばなみ:
押しつぶされそうになったこと、ないからなぁ。
宇多丸:
やっぱり根本に、「結婚しないのは不幸な生き方である」っていう思い込みが強烈にあるんだよね。
それ以外の人生観が思い描けてないというか。
こばなみ:
まわりもそういう人ばっかりなんですかね。
こんなに離婚とか不倫とか溢れてるのに。
宇多丸:
『ゼクシィ』のCMの見すぎなんじゃない?(笑)
あのCMってひとつ特徴があって、男性が出てこないんだよね。花嫁姿で、幸せそうな顔した女の人しか出てこない。
つまり、これぞまさにさっきから言ってる、「具体的な他者とのかかわりをすっ飛ばした、イメージとしての“結婚状態”への憧れ」そのものなんですよ。
「結婚というゴールにたどり着いた自分」アピールへの願望だけがそこにあるというか……、ホントはそのすぐ横には、これから何十年と一緒に生活してかなきゃならない、いずれただのむさ苦しいおじさんになってゆくであろう誰か、がいるはずなのに。
冷静に考えると、ほとんどビョーキ!ですよ。 結婚、それは究極の「他者との共生」の始まりなのに、ある意味その真実とは真逆の幻想を刷り込んでるわけじゃん。 いずれ遠からず、私の考えてた「結婚状態」と違う!となる人が続出しても当然だと思う。
これがね、「このまま私、一生誰とも恋愛とかできないんじゃないか?」みたいな不安を抱いてるっていうんなら、まだわかるんですよ。
こばなみ:
その不安は、思ってたことある!
宇多丸:
つまり、「自分はいずれ他者と深くつながり、理解しあうことができるのだろうか?」ってことだからさ。謙虚に反省して、いずれは成長する余地がまだある。
寝っ転がったまま「とにかくお嫁さんになりたーい」とか言ってるのとは大違いですよ(笑)。
で、それをなんとかするためには、よっぽどの生まれつきモテ体質でない限り、泥だらけ傷だらけになりながら、ひたすらトライ&エラーを重ねていくしかないわけじゃん。こればっかりは自分自身が、それぞれ個別のケースから学んでいくしかないことだからさ。だからこそ、成否にかかわらず経験として尊いわけだし。 そこまでやっても、うまくいくとは限らないのに……。
そこへいくと、ぺしゃん子さんは今のところ、「何人かの男性と連絡を取ったり、ご飯したりした」って程度の段階で、もう目先の寂しさに負けちゃって、一番手軽なとこに逃げ帰ろうとしたりしちゃってるわけじゃん。 もちろんそれだってひとつの選択ではあるんだけど、少なくとも今のご自分が、そういう極めて中途半端なところでウロウロしてるだけなんだ、ということはわかっておいたほうがいい。
とりあえず、元彼との復縁という安直な退路が絶たれたのは一歩前進だと思うので、あとはもう、もう少し根気よくお相手探しをやってみなよ、としかアドバイスしようがないかな……。
あと、あえてもうひとつ大きなお世話を付け加えておくなら、こばなみも最初に言ってたように、そんな風に恋愛や結婚ばかりにやたらと気をとられながら生きてくっていうのも、それはそれでどうなの?というのも、ちょっと思わなくはない……、寂しさに負けてしまう早さ含め、ぺしゃん子さんの場合は特に、そういう外部要因みたいなものに依存しないでもある程度は平気な「自分」の構築、というのをこそ、30代までの目標にしてみてもいいのでは?という気はします。あくまでも参考までに!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年1月6日に公開したものを再編集し、掲載しています。