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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室391】我が家で騒いだり、揚げ物の油を家具になすりつける友人の子ども。角が立つので言いたくないけど、遊びに来るたびにドキドキしてしまいます。


✳️今週のお悩み✳️
最近引越して以前よりも広い家になったことをきっかけに女友達を招いて自宅でランチをしてもてなす機会が多くなりました。友人は子持ちがほとんどです。ちなみに私は未婚です。
子どもは騒ぐもの、とはわかっているのですが、集合住宅にもかかわらず、大声で叫んだり、ドンドンと大きな音でジャンプして拗ねたり、からあげなどの揚げ物を出すと手づかみで食べて、その手を椅子やテーブルになすりつけることがどうしても気になってしまいます。
子どもの母親(つまり友人)は、放任主義で注意をしないので、私が「まわりに怒られちゃうよー」と控えめに注意するのですがもちろん聞いてくれるはずもなく。
こんな自分は小さい人間だな、と思うのですが子持ちの友人を呼ぶたびに、なんだかドキドキしてしまいます。
友人のことは好きなので、今後も楽しく招待したいのですが子どもについてはどのように考えたらいいだろうかと悩んでいます。友人に言うのも角が立つ気がしますし、子どもに怒鳴るわけにもいかないですし。第一、こんなことで小言みたいなことは言いたくありません。
特に男の子はこういうものが常なのでしょうか? 大きくなるまで見守るしかないのでしょうか? 助言をいただけるとうれしいです。
(からあげかぁさん・40歳・会社員・東京都)


宇多丸:
その子、いくつくらいなんだろう?
普通に言って聞かすことができないくらい、幼いのかな。

いやでもやっぱり、「まわりに怒られちゃうよー」とは話しかけているんだもんね。
少なくとも言葉がわかんないような歳じゃないってことだよね。

いずれにせよ、このケースに関しては、答えははっきりしてるんじゃないですかね。

「ここは私の家なのだから私のルールに従え!」っていうだけの、シンプルな話ですよ。

もちろん、子どもが元気よく遊んでいること自体をあんまりうるさがるような一部の風潮というのも、それはそれでいかがなものかというのはわかるけども。

公園とか校庭とか児童館とか、子どものために解放されているところなら、そりゃ思う存分暴れりゃいいよ。あとは、誰のものでもない自然の中とかなら。

でも同時に、子どもを好き放題騒がせたりしたら保護者が責任を問われてしかるべき場、というのも、社会には確かに存在するわけでしょう。

たとえば、ちゃんとしたレストランとか、バーとか、劇場とか、図書館とか……要は、そこにいる限りは守るべきルール、マナーというのがはっきりあって、それさえ遵守できない人は追い出されても文句は言えない場所、という。

それらは自宅と違って「他者」がいる、公共の空間だから、ってことですよね。

その意味で、ご友人たちはひょっとしたらからあげかぁさんのことを「他者」としてちゃんと見てなくて、「友達だから」もろもろの許容範囲も自分と当然同じはずだし、その家もなんなら自宅同然のプライベートスペース、と勝手に思ってるから、子どものそんな狼藉も、平気で放置してるのかもしれないですよね。

想像しただけでもぞっとしますけどね。

揚げ物を手づかみで食べて、その油を人んちの家具とかになすりつける、親もそれを見ていながら注意も何もしない……、ありえないでしょ!

僕ならその瞬間に心の中で「二度と家には呼ばないし、しばらく会いたくない」と固く決意して、疎遠を決め込みますね(笑)。

五億歩譲って、放任主義という名のしつけ放棄も、そのご家庭の勝手と言えば勝手だし、その子の不作法かつ不潔なふるまいも、てめぇんちを汚すぶんには好きにすりゃあいいよ。

でも、他の人の家はもう、「社会」の一部だからさ。

そこにお邪魔するなら、最低限あるじに失礼のないよう心がけるべき……、なんてホント、わざわざ言わなきゃわかんないことか?ってくらい、当たり前のことだと思うんだけど。

大人だってたとえば、うちではタバコは吸わないでねとかベランダで吸ってねとかのお願いを平然と無視して、ソファに灰をポロポロ落としながらスパー……とか始められたら、速攻で、てめぇは出禁だ!となるわけじゃん?(笑)

逆に、ここはホントにお互い無礼講でいいですよ、というコンセンサスがしっかりある場なら、大人だって好きなだけ暴れていいわけですよ。ライブのモッシュゾーンとか(笑)。

だから、別に大人も子どももない、普遍的な話だと思うんだけどなぁ。「お互い他者同士だからこそ、一定のルールを通すことで尊重しあいましょう」って。

たとえば子どもがお友達に接するときだって、そういうスタンスがベースとなるべき、ということに変わりはないはずでしょう。乱暴しちゃダメいじめちゃダメって、要はそういう理屈なわけだから。

こばなみ:
子どもだから仕方ない、という刷り込みが強烈なんでしょうね。

宇多丸:
子どもは社会の宝ではあっても、神様じゃないよ!

赤ちゃんじゃあしょうがないけど、会話できる程度の年齢で、家の外に連れ出してるんなら、すでにそれはもう立派な「社会的存在」ってことだからさ。

そこには家族以外にもいろんな人たちがいて、それぞれ違うルールで生きているし、それらもまた各々尊重されなければならない……ということを、時には大人たちに注意されたり怒られたりしながら学んでゆく、というのが本来の筋なんじゃないかと、僕は思いますけどね。

じゃあさ、仮にもし、子どもだからという理由で公の場や人んちでの傍若無人を世の大人たちが容認し続けたとして、その人は、いつどのタイミングで公衆マナー的なものを学ぶんですか?

単に、非常識な大人がひとりできあがっちゃうだけ、じゃないの?

こばなみ:
結果、よくないことになりますよね。

宇多丸:
僕は、もっと年寄りになったときに礼儀を知らない若者が跋扈するような世の中には絶対なっていてほしくないので、社会の一員としての責任からも、公共空間でのマナー違反が目に余るときは、本人に直接注意するようにしてますよ。

そういうとき、子ども扱いするような言葉遣いなどは決してせず、あくまで大人と同じ目線でしっかり話しかける、というのが僕の信条ですね。

要はやっぱり、ここは「他者」とダイレクトに接している場なんだぞ、ということですよね。

それをわからせるためにも、「静かにさせるよう親にお願いする」というワンクッションは経るべきではない、というのが僕の考えです。

ちなみに、「男の子はこういうものが常」でもなんでもないですから!

母の言うことを信じるならば、少なくとも僕はちっちゃいころも、表で暴れてたりわめいたりしたことがいっさいない、実に手のかからない子だったそうですよ。

逆に女の子でも、手がつけられないのなんか山ほどいるよ!(笑)

もちろん、知らない街の人たちから注意されたり怒られたりしたことは僕もあって、その時はそりゃめちゃくちゃシュンとしちゃったけど、やっぱそこからいろいろ学習して成長もしてきたわけだから、言ってもらってよかったなと、今は心底思いますけどね。

とにかくね、むしろからあげかぁさん側が遠慮してるような今の感じは、絶対おかしいでしょ。だって、自分ちだよ?

こばなみ:
からあげかぁさん、ご自身を小さい人間だなとかって気にしてますけど、そんなことないですよね。

宇多丸:
いやいや、「小さい人間」っていうのは、からあげを手づかみしてる、まさにそいつらのことを言うんだよ!(笑)

こばなみ:
気になるなら呼ばなきゃいいってのもあるかもしれないけど……。

宇多丸:
いやホント、最終的にはそうするしかないかもしれないよね。

その子たちにもご友人たちにも、なんであれされて嫌なことは嫌だとはっきり伝えていいし、それでもこっちのお願いに耳を貸してくれないようなら、言うまでもなく付き合い方自体を考え直したほうがいい。

友人とは会いたいけど、今はもれなく超絶苦手なアイツがくっついてくるから、とりあえずやめとこ、的な考え方をしてもいいかもしれない。

こばなみ:
こういうことが度重なったり、子どもだから仕方ないというほうが多勢だったので、からあげかぁさん、自分の意図しない方向に思い込んでしまったのかもしれないですね。

宇多丸:
また、それだけ今のからあげかぁさんとそのご友人とでは、実はすでにもう、いろんな感覚がズレてきている、ということでもあるかもしれないですよね。

子どもが小さいうちは特に、というのも間違いなくあるでしょう。手がかからない年齢になったらまた、前のような付き合いが戻ってきた、みたいな話もよく聞くし。

まぁ、もっと単純な話、そのご友人と会うときは、先方の家や子どもオッケーな店とかに行くことにする、ということでいいのかもしれないけど……。

自宅に招くのはマナー面で信頼できる人だけにする、みたいなのって、ぜんぜん普通の考え方だと思いますけどね。

とにかくそこも含めて、ご自分の家の中の話なんだから、全部からあげかぁさん基準でいいに決まってますよ。

子どもならいつでもどこでも何してもいいってわけじゃ、もちろんないよ!

からあげかぁさんのそのモヤりの根源には、結婚して子を持つコース以外の生き方を選んでいる人に対する、ご友人サイドの無自覚な軽視を感じてしまったこと、というのも、おそらく少なからずあるんじゃないかと思うんです。

それは本当に失礼なことだし、逆にこちらに引け目めいたものまで感じさせてしまっているこの状況は、ほとんど暴力的とさえ言っていいものだと思います。

なので、もしご友人の中に腹割って話せるような方がいるなら、一度きちんとこちらの考えや気持ちを伝えて、話し合う機会を持ってみてもいいかもしれないですよね。

どちらかが一方的に我慢しているなんて、そんな不健全な「友情」、嫌じゃないですか。

こばなみ:
嫌ですよ~。それじゃ、からあげかぁさんが「楽しく招待したい」って言ってるのも、根本的に崩れてきちゃうし。

たとえば「からあげの油をお気に入りの家具になすりつけられるのは、さすがにつらいよー(泣)」とかって自分の気持ちをダイレクトに、かつライトに話してみるのはどうですか? さすがにそう言われて「ごめん!!」ってならない人はいないと思うけれども。

友人と楽しく過ごせる仲でいるためにも、まずは第一声、ファイトです!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※3/4(土)大阪BIGCATなど、ワンマンライブ・シリーズ『ライムスターイズインザハウス』、2023年(新)シーズンの詳細はこちら

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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