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見ず知らずの人が私の服装や見た目に対して悪口を言い、笑われることが増えてきました。コロナより人が怖い……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室390】


✳️今週のお悩み✳️
30代半ばを過ぎてから、見ず知らずのカップルやすれ違うグループの人から私の服装や見た目などに対して「ダサい」「あれ何?w」「あんなでかい鞄持つ意味ある?」「〇〇するくらいなら▲▲した方がいいのに」など言われ笑われることが増えてきました。気になり始めた頃は言われたこと自体を気にしすぎなのではと思っていたのですが、悪口を言って笑ってる相手が私の方を見て言っているので私の気のせいではないんだなと思い落ち込んでいます。職場の同僚や友人にも私の身だしなみや服装について相談しましたが、相談した相手は皆「特段変なところはないし、悪口を言った人がそう思うだけなんじゃない?」と言い、私自身が自分の身だしなみを何とかすることでこの悩みが解決するわけではないんだなと感じています。
最近はいきなり自分に向けられるディスに対して嫌悪感が強まり、以前に比べて一人で外出するのが億劫になり、外では変な緊張感を感じてしまいます。コロナより私は人が怖くなりそうです。何か良い方法はないでしょうか。
(まゆ・38歳・医療従事者、精神科勤務・兵庫県)


宇多丸:
たしかに僕も、知らない人とすれ違いざまに、なぜだかクスッとされたりニヤニヤされたりすると、僕が笑われてるのかな?と感じることはちょいちょいありますから、気持ちとしてよくわかる話ではありますよ。

実はそう感じがちな人って、意外と多いんじゃないかな。

要は、自分の容姿に対する自己評価が極端に低くて、コンプレックスがものすごく強い、というのがベースにあるのは間違いなかろうと思うんだけども。

とはいえ、僕含めたいていの人は、その都度、どんな理由であれ他人を目の前で嘲笑うような非常識な人間などそうそういるはずもない、とか、いつもだいたいこんな感じの格好をしてるけどまわりから何か言われたことなどない、といった経験則から、「まぁこっちの思い違いだろうけども」と即座に確信できてもいるから、そこまで心おだやかでいられないままでもなく、すぐに忘れられてるわけだけど。

ところが、そこでまゆさんは、どうしてもそうは思えないまま日々を過ごされているわけだから、そりゃあキツいよね。

ちょっとでも楽になるお手伝いができれば、と思うけど。

まず考えるべきはやっぱり、どう考えたって思い違いである可能性が高いんじゃないか、ということですよね。

もちろん、どんな格好をしてようが人から何か言われる筋合いなどないし、ごちゃごちゃ言ってくるやつが仮にいたとしたらそいつにこそ問題がある、というのは大前提中の大前提として……。

ご同僚やお友達も、まゆさんが特に変わった服装をしてたりするわけではないという点については口を揃えているわけだから、圧倒的に可能性が高い推論としてまず考えるべきはやっぱり、すれ違った人たちも実は、まったく別のことについてたまたまそのタイミングで言ったり笑ったりしていただけで、単にこちら側の思い過ごしだったんじゃないか? ……ということに尽きると思うんです。

なので、相談したみなさんの「悪口を言った人がそう思うだけなんじゃない?」って答え方も、ぶっちゃけぜんぜんおかしいと僕は思いますよ。

むしろまゆさんの不安や不信を、むやみに助長しちゃってるだけじゃん!っていう。

五億歩譲って本当にそんなことを言ってくる輩に出くわしたのだとしても、そんなのは通り魔みたいなもんで、こちらが責任を感じたりする必要などないのは言うまでもないし、事前に気をつけようもないことなわけじゃないですか。

こばなみ:
通り魔! たしかに。

万が一、そんなことが本当にあったとしたら、やっぱりどう考えても、悪口を聞こえるように口に出して言ってくる人が、人としてヤバいと思う。

宇多丸:
そして、ホントにそうである可能性は、何度も言うけど実際のところ、わりと低いはずでもあって。

立場を逆に置きかえて考えてみても、こっちには悪気も何もないのに、何かの拍子であたかも失礼な態度をとっているように人から認識されてしまうことって、この世にはちょいちょいあると思うんですよね。

僕も昔、視力がめちゃくちゃ低いくせにメガネを常時着用して生活してなかったころ、駅のきっぷ売り場で運賃表を目を細めてジーッと見ていたら、たまたま前にいた男の人に、「何? ガンつけてんの?」って威嚇されたことがありましたよ(笑)。

慌てて「あ、いや、運賃表見てて……、目が悪いもんですみません!」って言ったら、「ああ……」って気まずそうにあっち行ってくれましたけど。 

こばなみ:
そういう勘違いもあるかもしれないですよね。

宇多丸:
そうそう。

そんなふうに、赤の他人がこちらに悪意を向けているように感じられてしまう瞬間、というのは、特に都市部で生活してると意外によくあることかもしれないとは思うけども、たいがいは誤解なんだろうなとも、常識として推測できる。

ということで、これはやっぱり、まゆさん自身のマインドセットをどうしてくか、どうすれば心穏やかでいられるのか、という問題なのは間違いないと思います。

でもホント、気持ちは僕もよくわかるのよ……。

さっきも言ったように、自分の容姿に対するコンプレックスが極度に強いからこそ、それに対する一種の鎧として、たとえばお気に入りの服でバキバキに着飾る、とかがあったりするわけだけど、内心はいつもビクビクですよ。「さすがに奇抜すぎかな?」「気合い入れすぎって笑われちゃうかな?」って。

ま、最終的にはどんな格好してようが、胸を張り顔を上げて、堂々と“俺ランウェイ”を歩くのに勝る「ファッション」はない、と考えているので、背筋だけは伸ばすよう心がけてますけど……。

こばなみ:
そんな気持ちだったんですね。ドキドキしてるなんてハタから見てたらわからなかったですよ。

宇多丸:
外からそう見えてるなら無問題!

まゆさんも、それこそとっておきの春夏物でもおろしてさ、颯爽と“マイ・ランウェイ”を闊歩しているような気分に、早くなれればいいよね。

たとえばだけど、まずは信頼できるお友達と一緒にお出かけしてみる、とかはどうですかね?

街を歩いていて、何か言われたな、と感じたら、その都度「今のって、そうかな?」と、横にいるお友達に聞いてみる。

そしたらたぶん、そのほとんどが「え? そんなことないんじゃない?」「関係ないと思うよ」ってことになるんじゃないかと思うんですよ。

そういう、言わば小さな勝利体験というか、「そっか、大丈夫なんだ」という確信を少しずつ積み重ねてゆくにつれ、まわりは敵だらけ!みたいな感覚が、どんどん薄れてきたりもしないかな、と。

それでもなかなか気分が改善しないようなら、言うまでもありませんが、カウンセリングとか心療内科とか、プロの手を借りたってぜんぜんいいわけだし。

まゆさんご自身がその専門ではあるわけだけど、医療従事者が風邪ひかないってわけでも、もちろんないからね。

いずれにせよ今の状態は、さぞかしそれは辛いでしょうから。

考え方次第の話ではあるからこそ、自分の中だけで処理するのに限界があるようなら、親しい人や専門家など、とにかく「信頼できる他者」の力を借りるというのは、すごく理にかなった手だと思いますよ。

こばなみ:
知人まわりでも、軽いのから重いのまでバラバラですが、人からの見られ方を気にしている人はけっこういるなと思います。だから根本的に、わりと多くの人が悩んでいることなのですかね。お友達と出かけて、マインドをリセットできるといいですね。これ、具体策としてすごくいいと思いました!

知らない誰かのことよりも確実に信じられる人の言葉を信じた方がいいと思いますし!

宇多丸:
もっと根本のことを言えば、これは僕も含めてですが、どうでもいい人たちからどう見られようと知ったことか!と最初から自然に思えていれば、一番いいはいいんでしょうけどねぇ。

我々のような内心ビクビク派の背景には、言いたかないけどひょっとしたら、同調圧力強めな日本社会の空気感と、それをなんだかんだで自分自身も内面化しちゃっている問題、みたいなことがあるのかもしれないけど……。

そんなもんに負けないためにもやはり、日々“マイ・ランウェイ”を堂々と歩く感覚というのを持ち続けていたいな、と僕は考えていますよ。

ともあれ、「“得体の知れない他者”によって生じた疑心暗鬼は、専門家を含めた“信頼できる他者”の力を借りて中和~解消してゆこう」作戦、いかがでしょうか?

これ、まゆさんに限らず、普遍的に有効な考え方なんじゃないかという気がします。

こばなみ:
この考え方とお友達の協力で乗り切っていけることを祈っております。私もこれ、改めて心に刻んでおきます! おーっ!! 



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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