アプローチがあったので恋愛関係に発展させようとしたら、つれなくなった彼。これって脈ナシ?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室152】
✳️今週のお悩み✳️
大学2年の女子です。周りからは女子高出身と間違われるくらい男子と話したり仲良くなるのが苦手で、今まで彼氏がいたことがありません。しかし、去年1年間、ほのかに私にアプローチをしている?かも?と思われる同じサークルの男子がおり(お昼を誘われたり、好きな人を聞かれたりしました)、初めは何とも思ってませんでしたが、今年に入ってから彼の天然でおっとりした人柄にほだされて、好きになってしまいました。お昼も二人で食べたりして、一緒にいるとリラックスできる、貴重な人です。今まで知り合った男子の中では、ダントツで気心が知れていると思います。しかし、もう一歩関係を進めようと遊びに誘ったり、LINEをしたりと私にしてはグイグイ行っているのですが、彼からの反応がつれないです……。サークルの飲み会で、ふざけて「お前ら付き合っちゃえよ~」みたいなノリになったときには、それに付き合わず、話の輪を抜けていってしまいました……。実際に会うと楽しく過ごせるのですが、なかなか恋愛関係に発展できません。自分の気持ちは伝わっているハズです。LINEのメッセージとかでも、それとなく好意を伝えていたり、会った時もほかの人よりもちょっと親しげに振る舞っているので……(普段おとなしいタイプなので、結構露骨に見えると思います)。これって脈ナシなのでしょうか。彼は追われると冷めるタイプで、これ以上は自分からいかない方がいいですか??( ノД`) 日々悶々としています。宜しくお願いします。
(ゆきんこ・19歳・東京都)
宇多丸:
ひとつたしかなのは、その彼も、たぶんゆきんこさん以上に、恋愛経験が乏しいんだろうってことですよね。
かなりの確率で、童貞でしょう!
正直、彼がゆきんこさんに対して現時点でどこまで恋愛感情的なものを抱いてるのかってことに関しては、この相談文に書いてある情報だけではなんとも言えないところもあるんだけど……、ただ、それ以前の問題として、単純に彼、いざ女性からアプローチされてみると、「どうしていいかわからない」っていうのはあるんじゃないかと思いますよ。
サークルの連中にはやし立てられたとき、そこにまったく乗らず席を外したっていう件もさ、ホントになんとも思ってなくて、そこそこそういう話にも慣れてる人だったら、「もぉ~、やめてくださいよぉ~」とか、ヘラヘラしつつ適当に受け流したり、それこそ「じゃあ、ホン トに付き合っちゃう~?」みたく、おどけたノリで同調してみせたり、まぁ普通はそんなような反応するもんじゃない? 飲み会なんだしさ。
でも、そこで彼、何も答えずその場を離れるって……、少なくとも、ゆきんこさんをなんらかのかたちで「意識してる」のは間違いないし、それをまた露骨に表に出しちゃってる時点で、ほぼ恋愛経験ねぇんだろうなって、僕がその場にいたら確実に感じると思いますけどね。 そんで、「あれぇっ? アイツ、ガチでゆきんこのこと好きだったのかぁ~? もぉ~、童貞なんだから~!」とか、最悪の先輩っぷりを発揮したりして(笑)。
ということで、別に「追われると冷めるタイプ」とか、そんなかっこいいもんじゃないと思うけど。 じゃあ「引けば追ってくる」のかっていうと、ねぇ……。 仮にそういう人がホントにいるとしても、それはどっちかって言うと、相手を「落とす」ことに情熱を燃やすような、恋愛に自信があるタイプなんじゃないですかね。
その点この彼は、明らかに、むちゃくちゃ奥手なほうなんだからさ。 結果どうなるにせよ、とにかくまずはこっち側から積極的に働きかけてゆかないことには、ただただな~んにも起こらずに終わるだけ、なんじゃないかなぁ……。
こばなみとかも、女として自分から行くのは嫌、みたいなのがちょっとあったりするの?
こばなみ:
うーん、違ったらどうしようって、怖いじゃないっすか。
宇多丸:
それはそうだろうけど、そんなのお互い様だしさ。
お互いそうやって怖がったまま動かなかったとしたら、誰も恋愛なんてできなくなっちゃうよ(笑)。
今回のケースで言えば、事実上、ゆきんこさん側の「好き」テンションのほうがいつの間にか先行してる状態になっちゃってるわけだからさ。少なくとも僕にはそういう話に見えるけど。 そこで、今さらカッコつけたり守りに入ったりして、なんか得あんの?とはいつもながら思っちゃいますね。
だからきっともう、「それとなく」なんてこと言ってる場合じゃないんですよ、たぶん。 この彼は、そもそもそういう機微に気づけるような経験値がまだないかもしれないし、さすがに「あれ、ひょっとしてゆきんこさん……?」くらいは感じていたとしても、そんなうすぼんやりした感触だけを根拠にいきなり「脈アリ!」でゴーサイン判断できるような自信こそ、おそらくは今の彼に一番欠けてるものだろうし……、いや、それ以前に、そこでわざわざ賭けに出るほどの、明確な気持ちを現時点で彼がゆきんこさんに抱いているのかどうかも、とりあえずはまだ、まったく定かじゃないんだからさ。
まぁ、さっきもチラッと言ったように、はやし立てられたら黙って逃げちゃった、というのは、むしろ脈ゼロではないと推察できる、プラス要素ではあると僕は思いますけど……。
とにかくはっきりしてるのは、上手く行くにせよ行かないにせよ、ゆきんこさんからもっともっとわかりやすくグイグイ行かないことには、この彼の場合なにも始まらないだろうってことですよ。
なので! まずは、あれで行けばいいじゃん! 地球上の全女子が救われたという、例のこばなみの一大発明、「袖引っ張り」作戦で行けばさぁ!(笑)
「袖引き」がいいのはさ、万一向こうに気がなかった場合でも、こっちもまだ、いくらでも言い訳が効くレベルのアクションだっていうところですよね。 要は、それほど深いダメージを食らうリスクを冒さずに、相手の反応だけを見ることができる。アプローチとして絶妙なバランスなんですよね。 これ、男はちょっと使いづらい手でもあるからなぁ。うらやましいくらいですよ! あの伝説の秘技「袖引き」が使えるなんて!(笑)
こばなみ:
わたしに恋愛指導をしてくれる後輩の意見のおかげです。次はボディタッチを極めよと言われてますが……。
宇多丸:
すごい頼りになる師匠がいるんだね(笑)。
もちろんボディタッチも、前も言ったように、ベタ中のベタだけどやっぱりむちゃくちゃ有効だと思いますよ。
こばなみ:
でも恥ずかしいんですよね。席を立ち上がるときとかに、「あ、ちょっといい?」とかって肩を触るとか……。
あとは、モテ系の人とかには、「なに触ってきてんだブス」とか、思われてるんじゃないかとか……。
宇多丸:
でもまぁ、そういう、ただただ一方的に自信たっぷりな男って、要はアホってことじゃん。なにをどうしようと、偉そうなのがカッコいいと思ってるようなアホは別に治ったりしないからさ。そんなのと仮にくっついたところで絶対ロクなことにならねぇよ!
そこはまず、相手選びから気をつけようよということで。
それに、ホントにカッコよくてモテる人って、積極的にアプローチされるのに慣れてるはずだからさ。 極端な潔癖性だとか、よっぽど無礼なタッチの仕方されたとかじゃない限り、そんな、ちょっと触られたくらいで嫌ったりはしないと思いますけどね。
もちろん、たとえばクラブとかだと、酔っ払いすぎて、いきなり抱きついたり、バーン!って感じで肩とかを強く叩いたり、ふざけてにしろ股間に直接手を伸ばそうとしたり、とにかく雑で乱暴なスキンシップを取りがちで周囲から煙たがられてるような子って、たまにいるじゃない? そういう、要はデリカシーがないアプローチは、当然のことながら誰にだって嫌がられますよね。触られることが嫌なんじゃなくて、「人として正常なコミュニケーションが取れない感じ」に引くっていう。 でも、そのくらいの線引きは、みなさん普通にできるはずでしょ?
要は、ボディタッチだって「会話」なんだってことですよね。 ちゃんと相手のことを見て、聞いて、それに対して適切な反応を返して……、その積み重ねでお互い距離を縮めていくっていう、そういう当たり前の話ですよ。 たとえば、穏やかなトーンで話してるところにいきなり大声で割り込んでいったりしたら、「なにこの人」ってことに当然なるじゃん。もしくは、まだたいして知り合ってもいないうちから、急にプライバシーに踏み込んだ、ぶしつけな質問してくるとかさぁ。 逆に、向こうはすっかり打ち解けた話し方したりしてるのに、こっちだけかたくなに他人行儀な態度続けてたりするのも、それはそれでまたちょっと、おかしな雰囲気になっちゃったりするじゃないですか。
だから、一般論としてボディタッチ自体がいいとか悪いとか、単純化できるような問題じゃないんですよね。それは時と場合とやり方による、としか言いようがない。
ただ、ボディタッチに関して言えば、前もちょろっと言ったかもだけど、なぜ男に対してそれが有効かっていう、根本の原理を正確に理解してない女性は多そうかな、って気はちょっとしてますけどね。 要するに、「あなたのこと、生理的に嫌じゃないですよ、生き物として嫌じゃないですよ」っていう意思表示の部分が肝心なんですよ。
それくらい、男性の大半には、女の人からは基本「クサい、汚い、気持ち悪い」と思われてるもの、っていう恐怖が、根深く刷り込まれてるんですよ。
女の人はさ、逆に「男というのは常に女性のカラダを求めてる」と思い込んでいるから、あんまピンと来ない感覚かもしれないけど……あ、でも、こばなみもフラ れて口臭を調べに行ったりしてるじゃん(笑)。それに近い感じだと思ってくださいよ。 とにかく男側からすると、「えっ! オレのカラダ、嫌じゃないんスか!? てかむしろ、求めてる!?」っていうのを確信できたときの、驚きと喜びときたら……。
だから、「童貞あるある」として、初めてした相手のことを、「“この子だから”僕を受け入れてくれたんだ、この子を逃したら僕はやばい、この子しかいない~!」って思い込むケースが、ちょいちょい頻出するわけですよ。
こばなみ:
そうなの? でも実体験としては、そういう謙虚な人ばっかりじゃない気がする……。
宇多丸:
そりゃ、さっき出てきたような、一方的に思い上がってる男っていうのが一定量いるのは事実だけど……、それだって、「基本、男は女に嫌がられるも の」っていう認識が、前に付き合った女におだてられまくったかなんかして、クルッと裏返しになっちゃっただけなんだろうと思うし。「な~んだ、女も“オレ様のことは”嫌ってなかった、どころか、ホントは好きで好きでたまらないんだな……ムフフ」みたいな。アホか!って話だけどね(笑)。でも、気持ちはちょっとわかる。
要は「この子だから」か「オレだから」か、どっちに思い込むかってだけの違いだから。
経験を積むに従ってようやく、実際にはどっちでもないって真実がわかってくるんだけどね……。
とにかくそんくらい、「オレ、生理的に嫌がられてない!」は、男にとって大事件なのよ。
で、 ボディタッチというのは、まさにそういう、「あれっ? ひょっとしてオレいま……、別にキモがられてない、どころか、好まれてすらいる!?」っていう、男にとってはものすごーく高いハードルを越えたような、言ってみれば「承認」されたような感覚を、しかし女性側は表面上ライトなスタンスをキープしながら与えられるという、その意味でこそ真に有効性があるワザなわけですよ。
だから、身体に触ることで直接的に性的興奮を誘発するっていう要素もゼロではないだろうけど、そこはあくまでその「承認感覚」ありきの部分であって、プライオリティ的には全然上じゃないの。そこ、間違っちゃってる人多くない?
こばなみ:
大いに勘違いしてると思う。触りゃいいと思ってたところもある!
宇多丸:
触りゃいいって(笑)。発想が痴漢だよ!
でも実際、そういう風に誤解しちゃってる人が、さっき言ったように、いきなり大胆すぎるスキンシップに走って引かれたりしてるのかもしれないよね。
みなさん、強力な武器ほど、ちゃんと原理を理解した上で使わないと危ないですからね!
要はさ、「生理的に承認された」感覚を与えさえすれば男はびっくりするほど喜んじゃう、それを与えてくれた「特別な」相手には半自動的にワンランク上の好感を抱いてしまうっていう、大元の原理さえわかってれば、別に身体接触すらマストじゃないわけですよ。 たとえば、前も言ったけど、「◯◯さんって、いつもいい匂いがしますよね」とか、嗅覚絡みの肯定は、すごーく「生理的に承認された」感じがすると思う。しつこいようだけど、基本「ク、クサくないっスか?」っていつもビクビクしてるからさ(笑)。
まぁでもこれ、もっと本質的なことを言えば、性別問わず「自分のことを積極的に肯定されれば誰だって嫌な気はしない」っていう、ごくごくシンプルな話でもあるんですけどね。
みなさんも、誰かに好かれたかったら、とりあえず、できるだけ面と向かって、ほめまくってみれば? もちろん、それが恋愛感情に発展するなんて保証はどこにもないけど、間違いなく、別に損もないというか、基本得しかないはずだから。 ほめるだけならタダ!
なので、ゆきんこさんもさ、「あなたはステキな人だ!と、私は思ってる!」というのを、照れながらでいいから、まずははっきり言葉にして彼に伝えることから始めてみてはどうですかね。それだったら、別に友人同士でもアリな範囲でしょ。 ただそこに、人格だけでなく、ルックスや体臭など、「生理的な」要素の肯定も、言葉巧みに忍び込ませてゆく(笑)。「あれ? オレ、“オス”としてもほめられてる?」っていう。 それで彼の気持ちがどこまで動くのかはわからないけど、少なくとも、嫌な気持ちになるはずもないからさ。
もし、いまいちよくわかんないリアクションしか返ってこないとしたら、それはたぶん、十中八九、冒頭で言った通り、「異性から積極的な好意を寄せられたことがなくて、どうしていいかわかんなくなってる」だけですから! で、無理してカッコつけようとして、ぶっきらぼうに見える態度を取ってしまったりね。限りなく童貞に近い男あるあるですよ。 ま、内心は間違いなく嬉しいはずなので……、ゆきんこさん側がいいかげんうんざりしてこない限りだけど、彼が素直になるまで、そこは根気よくほめ殺しを続けていただいて。
あ、 ただし、さっきのはやし立てられ事件じゃないけど、彼のなかで恥ずかしさのほうが先に立ってしまわないように、そういう話をするタイミングや場所について は、要は人目ってことですけど、できるだけ二人きりの時にサラッと切り出すとか、一応気を遣ってあげたほうがいいかもしれないですね。
で、お酒が入った場など、日常よりは距離が縮まりやすいタイミングを狙って、いつもよりやや多め、濃いめのボディタッチ、スキンシップ! もちろんここでも、逆に警戒心や羞恥心を抱かせてしまうようなやりすぎは禁物ですよ。 そんなこんなで、彼も普段よりだいぶもろもろ緩んできたようなら、お店を出たところなどで、すかさず……。
こばなみ:
……「袖引き」、からの流れで手つなぎ、さらにはチューもいけるかもしれません!
宇多丸:
いや、そこまでトントン拍子にうまく行くかはわかんないけどね(笑)。
でもまぁ、考えられるとしたら、おおむねそんな流れだよなぁ、やっぱ。
こばなみ:
この歳になっても恋愛に不器用な私でもちょこっと成功したことがあるので、これでゆきんこさんたちがうまくいくといいなぁと祈っております。
夜の大学の裏道とかでやってみるのも良さそうですね。ファイト!
宇多丸:
ちなみに、念のための注意を繰り返しておきますけど、この「生理的に承認された」感覚、男性に対してはホントーッに超強力な効力を発揮すると思われるので、無用のトラブルを招かないよう、その気がない相手には、むやみに使わないことをオススメします!
ま、天性のモテ体質的な人とかは、無意識でそうしちゃってたりするもんですけどね……。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年7月2日に公開したものを再編集し、掲載しています。