初めてのデートで「家くる?」と誘われて……。男性ってそういうことしか考えてないの?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室31】
✳️今週のお悩み✳️
先日、一回り年の離れた男性とデートしました。お会計時にはサッと財布を出して支払いを済ませていました。「僕が誘ったから気にしないで」と言われましたが、全額払ってもらうのは気が引けたため、千円だけ渡しました。そのあとスカイツリーに行きましたが、タクシー代から何から何まで払ってもらいました。最終的に「家くる?」と誘われ、結局男性はそういうことしか考えてないのか~と、残念な気持ちになりました。こんな風に思ってしまう私が変なのでしょうか?
(あやさん・23歳)
宇多丸:
整理すると、要は「やたらとお金を気前良く払ってくれるけど、それって結局やりたいから?」って思っちゃいました、ってことだよね。
言わんとしてることはわかるけども……僕はちょっとこれ、男の人側を擁護してあげたくなっちゃいますけどね。
だって別にさ、「金払ってるんだから、やらせろ」とか、強引に迫られたってわけじゃないんでしょ? もちろん、最悪デートレイプみたいなことが現実によくあるのもわかるけどさ、この場合はそういうんじゃないじゃん。 一日デートした相手に、「よかったらこの先に進みたいんですけど、どうですか?」って聞いてみるのって、そんなに悪いこと? だって、デートに応じてくれてるんでしょ? そこに性的な可能性を感じるのって、別に普通っていうか、そもそもデートってそういうもんじゃないの?
こばなみ:
そっか。
宇多丸:
もちろん男のほうも「今日はそういう雰囲気だな!」「いや、そうじゃないな!」ってのはちゃんと読めよって話だし、断られたらさっさと引き下がるっていうのは当たり前としてさ。
でも、例えば一日一緒にいて、会話も弾んだしいいムードだな、とか判断したんなら、とりあえず誘ってみること自体はそんなに悪いことじゃなくない? 最低限、異性としてそれなりに可能性を認めてくれてるからこそデートしてるんだと思ってたのに……、性的なものを絡めた途端「いやらしい!」みたいになるとしたら、ちょっと待てよ、と言いたい。 どこまで潔癖でいりゃいいのよって。
こばなみ:
でも、デート初回で家に誘うのはどうなんだろう。そう思う女子は多いのではないでしょうか。
宇多丸:
その日に誘ってくると不信になっちゃうってこと?
こばなみ:
2回目とか3回目とかだったらいい気も……。
宇多丸:
昔から雑誌のデート特集とかでも「キスは何回目のデートで」とか、よく書いてあったけどさ。
その回数主義にも、俺はここで改めて異議を唱えたいね!
1回目だと軽いなって思っちゃうってこと?
こばなみ:
その傾向はあります!
宇多丸:
でもさ、逆に、どれだけデートを重ねても結局ピンと来ない相手ってのはいるわけじゃん?
そういうヤツがさ、「三回目のデートだからそろそろ……」とかいう理屈で、こうやって(と、口をチューのかたちにして顔を近づける)迫ってきたら、それはそれで「キモい!」ってなるんでしょ。
だからやっぱ、回数じゃないだろう!
スタンプカードじゃないんだからさ、何回デートしたからとか、杓子定規に決められるものでもないじゃん。 ってことは、相性によっては、初回からオッケー!ってのも全然ありだと思うんだけどなー。
こばなみ:
この後はどうなったんですかね?
宇多丸:
どうにもなってないと思いますよ。
だってこれ、初デートだから「あえて」断ったってニュアンスじゃないもんね。
どっちかって言うと明らかに、さっき言ったような「何回デートをしようがダメなもんはダメ」側の話だよね。これ。
つまり、あやさんは、単純にこの人とは合わなかったってだけじゃない? 一日一緒にいて、「抱かれてもいいわ」って気持ちには全然ならなかった。 「私が変?」とかじゃなくて、「相手が悪い」わけでもなくて、この人と合わなかっただけじゃないの?
それは別にいいんですよ。デートってそこを見極めるためのもんなんだからさ。 それより問題はその後! 「結局男性は~」みたいな一般論的まとめ! これは良くない! じゃあさ、「結局女は~」とか言われていいわけ? この間もセクハラの件でこのフレーズ出てきたけど……。 いやもちろん、社会全体の性差別問題っていうのがあるから、両者はイーブンじゃないっていうか、「結局女は~」のほうがより有害で悪質なのは間違いないんだけどさ。
でも、ひとつ言えるのは、「結局男は~」みたいな納得の仕方ばっかりしてると、いつか肝心の相手も取り逃しちゃったりするかもよ?ってこと。
こばなみ:
たしかに、好きな人に言われたのだったら1回目でもいいのか。
宇多丸:
極端な話、出会ったその日だってさ、映画『ビフォア・サンライズ(恋人までの距離)』みたいなもんで、そのときに一線越えちゃったほうがいい場合だってあるはずだよ。
まぁ、それが「簡単にやらせる」っていうのと紙一重なのも確かなんだけどさ。だからそこはくれぐれも、見極めに慎重を期していただくということで。 とにかくその、性的なお誘いをすること自体が悪ってわけじゃないでしょ!とは言っておきたいんですよ。
こばなみ:
でも男の人の中には1回デートしてヤッちゃおう~!で、以上おしまい!って人もいるじゃないですか。
宇多丸:
そういう人はさ、最初からそもそも、「こいつとサクッとやれないかな」としか思ってなかったってことなんじゃないの?
だとしたら、デートを何回引っ張ったって、どっちにしろ一回ヤッちゃった途端に「目標達成!」で終了ですよ。
つまり、相手選びの時点で間違ってるし、デートの過程でもそこを見抜けなかったのが失敗、という話であって。
そしてこれ、「結局男性はそういうことしか考えてない」わけでもなんでもないから! 本当に好意を持ってる相手だったら、わりとすぐ深い関係になったからって、いきなり「こいつ軽い女だな」とはならないでしょ、普通に考えて! むしろ「嬉しい!できればこのままお付き合いしたいな~」ってだけだよ。 逆に、いまどきは女の子だって、「1回くらいやったからって彼氏ヅラしてくんじゃねーよ! うぜぇ!」みたいな人だって全然いるでしょ?
こばなみ:
でも相手が「最初からこいつ1日でやってやろう」と思ってるかどうかなんて、わからないですよね?
宇多丸:
だ~か~ら~、そういうのを見極める場でもあるから、デートって!
でも、そもそもさぁ……たいして気のない人とデートとかすんなよ!
こばなみ:
あはははははは。
宇多丸:
え? なぜ笑う!?
こばなみ:
いや~、誘われて断れないこともあるんじゃないかなって。
宇多丸:
いやいやいや、おかしいでしょ、それ。断ればいいじゃん!
こばなみ:
でも仕事の延長で、あら、これ!? デートみたい!? とかあるじゃないですか?
宇多丸:
それはデートって言わないでしょ! 仕事の流れでいくのはデートじゃない。
ちゃんとそれ用に約束して、待ち合わせて、利害も何も関係ないところに二人で行って、相性を確かめ合う。それがデートでしょ。
だから、お互いパートナー候補として、そこそこ意識し合ってますよ、少なくとも可能性は結構ありますよって大前提、これをあんまり共有してないのにデート的な場に行ってしまうと、そりゃ、いろいろと深刻な齟齬も起こってきますよ! なので、今回の相談文で言えば、「誘われて断る」、そこまではどっちも悪くないんです。
その人がタイプじゃないということが、デートした結果はっきりした。それだけのことですよ。 ただそこで、仮にあやさんが予想していなかったような性的な誘いがあったにしても、それが一応の礼儀を踏んだものであったのならば、つまり強引だったりしつこかったりせず、あやさんの意志を尊重したものであったのならば、過剰に不快がったりするのは相手に失礼だし、ましてその不快さを男性全般に置き換えたりしても、今後のあやさん自身になんの得ももたらさないと思いますよ。
で、できれば次からは、最低限「ひょっとしたら、やってもいいかな」と思える相手とデートして欲しいなぁ……。
こばなみ:
今年の目標はデートだな!
結論:
回数主義ってどうなのよ?
そして「結局男は~」みたいな考え方してると
いつか肝心の相手も取り逃しちゃうかもよ!
*** *** *** *** *** ***
この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年2月15日に公開したものを再編集し、掲載しています。