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結婚の話が出ているのに、私が外国籍だからなかなか両親に紹介してくれない彼。混乱しています……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室115】


✳️今週のお悩み✳️
先日掲載されていた結婚に関する相談について、関連する悩みがあり、投稿させていただきます。私は外国籍の人間です。日本生まれ日本育ちですが、外見・名前では明らかに外国人とわかります。苦労した部分もありましたが、基本的には差別などに合うこともなく、すくすく育ったと思っています。私は5年交際している彼氏がおり、結婚の話が出ています。とりあえず30歳になる前に、というリミットを定めて結婚への準備をすることになり、私と両親と彼は顔合わせをしています。ただ、彼はなかなか彼の両親に結婚の話をする様子がなく、先日その理由を質問したところ「やはり外国人ということは警戒されるので、言い出すタイミングを計っている。下手に話を出すと誤解されて過剰に反対されそうで」というようなことを言われました。 そのときは「あー確かにそうだよねー言いにくいよねー」と流しましたが、じわじわショックが襲ってきて、今はすごく悲しくなっています。「でも、そんなナイーブに受け止めるのは子供っぽいかな……」と思っていたのですが、先日の相談に対する宇多丸さんとこばなみさんの返答を読んで、背中を押されたような気持ちになりました。 その相談を彼にも読んでもらい、「やっぱりショックだった。自分が一段低い人間のように扱われたように感じた」というのを伝えたところ、「そこまで傷つくとは思わなかった。ごめん」と謝ってくれたのですが、「ただ、状況を正確に伝えたいと思った。うちの親は考えが古いし、それを伏せておくのもアンフェアだと思ったので伝えた」という返事でした。 彼はすごく誠実な人ですし、今まで交際してきてもとても楽しかったです。ですが、彼の返答に対して割り切れないものも感じています。やっぱり、偏見に対しては一緒に怒ってほしいし、抗議してほしいです。恋愛の場でぐらいナイーブでいたいと思います。ただ、それとは別の問題として、彼が結婚に踏み切れないのもわかります(人生の大決断なので)。私は彼にどういうスタンスで何を求めればいいのか、混乱してよくわからなくなっています。考え方のヒントを教えていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

(マグ・29歳・東京都)


宇多丸:
文中に出てくる「先日の相談」っていうのは、「10年付き合ってる彼にプロポーズされているけど、両親からよく思われていない&セックスレス……。このまま結婚していい?」ってやつのことですね。

ただ、それと今回のケースが決定的に違うのは……、彼の親御さんは別に、実際に偏見に基づいて結婚に反対してたとかマグさんをディスってたとかってわけじゃないんだよね、少なくとも今のところは。

こばなみ:
いまの時点では彼が勝手に心配しているだけなんですよね。

今回、女子部員さんからの意見としては、彼に対してけっこう厳しいものが多かったです。

「両親は血が繋がっていても自分ではありません。気にする必要なし。言って、両親に古い考えで反対されるのが嫌で言い出すタイミングが無いなら言う必要なし。 むしろ、言えないことをしている自分を恥じるべし。古い考えを押し付けられるのが嫌なら、両親との付き合いをやめればいい」(mu)

「彼の両親の”古い考え”ってのがどの程度かわからないですが、私なら別れる覚悟も持ってハッキリ言ってもらいます。それで許されればいいし、揉めるようなら別れたほうがいい。
5年は長いと思うかもしれないけれど、結婚したら下手したら50年付き合うんですよ。あとあと後悔するくらいなら、今、別れます。そもそも5年付き合っていて、一度も親に話ができていないってのは、どうなの? 
彼には『彼女よりも両親の気持ちを大切にしたいというなら、それはある意味立派な心がけです。親孝行できる彼女を見つけて今の彼女は解放してあげてください。もし彼女が大事なら、ちゃんと彼女と両親の間に入って取り持ってください』と言いたい」(ちゃたらー)

「古風な親御さんだけども、外国籍の女性を好きになるような息子に育てたのはその親御さんなんだからきっと想いは伝わる! だいじょぶ!」(カティ)

宇多丸:
非常にネガティブな捉え方をするならね、そもそも彼自身のなかに無意識的にせよ人種偏見みたいなものが根付いちゃってるからこそ、先回りしてまでそんな心配をしちゃうんじゃないか、みたいな見方もできちゃうだろうけど。
マグさんもまさに、そこに引っかかってるわけだよね。

こばなみ:
実際、両親にトライしてみたわけでもないのに、そういうことを言ってるから……。

宇多丸:
ただまぁ、とはいえ2人の間では結婚しようって意思確認はちゃんとできてて、だからこそ彼も、マグさんの両親には会いに行ったりしてるわけでしょ? 
普通に考えたらやっぱり、彼の真意をそこまで疑うこたぁないんじゃないの、とも思うけど。
僕らの、あんな攻撃的な回答をおとなしく読んでくれた上で(笑)、マグさんに謝罪して釈明しようともしてるんだしさぁ。

それに、彼にも、自分の両親の反応をそこまで危惧するなりの理由が、実はもっと明確にあるのかもしれないよ。

たとえば、一緒にテレビとか観てるときに、国際結婚の話題が出てきたりすると、常に否定的な意見を吐いている、とか。
最悪の場合、わりとはっきり人種差別的な発言を日常的にしてるタイプだとかいう可能性だって、残念ながらゼロじゃあない。

こばなみ:
うちのおばあちゃんも昔、プロ野球を見ながら外国人選手の文句を言ってて、子ども心に傷つきました。だからって、そんなこと言わないでよー!って言っても聞いてくれないし。

宇多丸:
そこまで露骨なんじゃなくとも、一般に日本人って、自分らで思ってるよりはずっと根深く、無神経な人種偏見や差別意識、ちゃーんと持ってたりすると思いますよ。
言うまでもなくそんなのは、21世紀に生きる人間としてできるだけ早く改めていかなければならない、恥ずかしい話なんだけどさ。

ただ、こばなみのおばあちゃん同様、言っても聞かない、聞けない年齢になっちゃってる人ってのも一定量確実にいて。
だからって、その一点をもっていきなりおばあちゃんという人のすべてが嫌いになっちゃうとか、今日限りで袂を分かたせていただきます!とか、そういう話でもないわけじゃん?

要は、この連載でも何度も言ってるように、家族だって当然「他者」なんだけど、だからこそ、お互い本当は絶対に相容れない部分を持っているのは知りつつも、それでもまぁなんとかだましだまし共存している状態、というのも、全然普通にあることだと思うんですよ。

彼だってひょっとしたら、こばなみと同じく、何度もたしなめたんだけど聞く耳持ってもらえなかったのかもしれないし。
で、困ったもんだなぁとは思いつつ、決定的にぶつかり合うのも避けてここまで来たけど……みたいな。

そう考えると、「状況を正確に伝えておかないとアンフェアだと思った」っていう彼の言い分も、後から重大な問題が発覚して「聞いてないよ!」ってなるよりは……的な配慮として、ちょっとだけわからないじゃない気もしますけど。
むしろ、自分の親のほうを少し恥じてるくらいのニュアンスかもよ?

いずれにしても、結果的には裏目に出ちゃったところもあるけど、根っこにはマグさんを傷つけまいという配慮があったのは間違いないんじゃないかなぁ。

こばなみ:
なるほど、そういう見方もありますか。

宇多丸:
ただまぁ、それにしたって、本気でマグさんと結婚する気があるならば、いずれは結局、正面から向き合わなきゃならない問題ですからね。

「タイミングを計ってる」って言うけど、それっていつよ?
 今でしょ!

こばなみ:
古いっ!

宇多丸:
ということで、彼に関してはとにかく、とっとと両親にマグさんと結婚したい意思を伝えろ、ごちゃごちゃ言ってくるようなら縁切る覚悟で説得しろ、としか言いようがないよね。まぁ、言われんでも最初からそうしろよ!って話ではあるんだけど。
マグさんも、そこについては当然の権利としてせっついていいんじゃないの。

それでもまだ彼がグズグズしてるようだったら……、正直、このまま付き合い続けていいのか、ちょっと考え直したくもなっちゃうよね。
そんな調子じゃ、仮になんとか結婚までこぎつけたとしても、やっぱり何かって言うと親の顔色ばっかりうかがって、こっちの気持ちとかは二の次にされちゃうんじゃないかって気がしちゃうもんね。
そういう不安や不満も、彼にちゃんと伝えていいと思いますよ。

何より、マグさん側にいったん生じてしまった不信感を解消するためにも、改めて彼からの誠実な回答が欲しい、というのは切実に訴えていいんじゃないですか?

こばなみ:
したことないからわからないですけど、結婚って親も含めての話なんだろうけど、でもそもそもは本人同士の問題ですよね?

うちの弟が、1回目の結婚のときに、親に相談なしに結婚を決めたんですよ。
結局、離婚しちゃったから、よかったのかどうかはわからないけど、正月に急に彼女を連れてきて「3月にグアムで結婚するから」って。両親はやや反対気味ではあったんですが、でも決めちゃったもんだから、もちろん止められるわけもなく……。
理解を得てしたほうが絶対にいいけれども、けっこうぐいぐい決められるもんなんだなぁと。

宇多丸:
それはそれでちょっと極端な例って気がするけど……、ま、最終的にはもちろん、リスクを負うこと含めて、自分の人生ですからね。

こばなみ:
ちなみにマグさん、日本生まれ日本育ちなんだから、コミュニケーションとか文化的ギャップの問題はまったくないんですよね? 相談文だって普通にちゃんとしてるし。

宇多丸:
そうそう。実質上、国際結婚なんていう大げさなもんじゃ別にないはずなんだよね。

その意味では、さっさと一度直接会っちゃったほうが意外と話早いんじゃないかなぁ、って気もするんですけど。

「あら、日本語ずいぶんお上手なのね」「だから日本生まれ日本育ちだって言ってんだろ母さん!」的な、しょーもないくだりは間違いなくあるだろうけども。
いずれにせよ、実際に話してみたら普通に日本人じゃん!ってことがすぐわかると思うんで、そしたら一気に安心して、コロッと旗色変えてきたりするんじゃないかなぁ。よっぽど偏狭で確信的なレイシストとかってんじゃない限り!

一般論として、あらゆる偏見っていうのは、要は対象を「よく知らない」ことから来る不安や恐怖を、一方的な「決めつけ」で安易に解消しようとすることから生じるものだと思うんです。
つまり、その対象と直接交流して理解を深めていく機会があれば、そういう思い込みは徐々に解けていくかもしれない。
モーガン・スパーロックっていう人の『30デイズ』っていうドキュメンタリー・シリーズが、まさにそういう試みだったりするんだけど。

特に今回マグさんなんかはさ、カルチャーギャップは本当に実質ゼロなわけだから、たとえ溝があったとしても、乗り越えるのは比較的楽勝なケースとさえ言えると思いますよ。
この彼も、胸張って紹介すりゃいいんだよなホントに。

まぁ、いきなりベストな対応ができなかったのは残念だったけど、彼も決して成長の余地がない人ではないと思います。
マグさんの気持ちを受けて、ここからさらにどう具体的な行動を起こしてくれるのか。彼への信頼が戻ってくるといいですね……!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年10月3日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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