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2年半付き合ってる彼が少し重い……。かわいい態度をとるのも疲れてきました。このまま結婚に向かっていいの?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室42】


✳️今週のお悩み✳️
私には、2年半付き合っている彼がいます。彼とは結婚の話も出ているのですが、何だか私は、最近彼といてもまったくドキドキ感がなく、彼と電話で話すのも億劫に感じてしまいます。彼はとても優しくて才能にあふれた人で、初めて彼と会ったときは、ビビッとしたものを感じたはずなのに、最近は何も感じなくなってしまいました。私が自由奔放な性格で、つい彼に連絡をし忘れたりするせいか、彼はしょっちゅう私に連絡をしてきます。それも私にとっては少し重く、これまでは彼の前ではかわいい態度とる努力をしてきたので、疲れてきました。私はこのまま彼と結婚に向かってよいのでしょうか。

(ひまっこ・25歳)


宇多丸:
このまま結婚に向かっていいのかと聞かれれば、いいわけないよ、と答えるしかないよね。連絡程度で疲れちゃう相手と、一緒に住めるわけないし……。

まず、2年半付き合って、出会った頃のようなドキドキ感がなくなってしまいましたって、あまりにも超フツーの話じゃない? そりゃそうだろ、としか言いようがない。

それは前提とした上で、本当に相性がいい相手同士だったら、当初のときめきは消えるかもしれないけど、より深く理解し合ってゆくことで出てくる親しみとか、信頼とか、二人で重ねてきた思い出とか、何かしら「これからもこの人と一緒にいたい」って部分も増えてゆく。それが当然のプロセスでしょ?

そうじゃない場合は別れる。これもまた超フツーの話。
なのに、陰でグチグチ言いながら「結婚の話も出ている」って……なにその他人事感? そんなんで上手くいくわけないじゃん!

こばなみ:
たしかにこんな感じだったら、結婚しないほうがいいですね。

宇多丸:
この相談文を読んでいて思うのは、「ビビッとしたものを感じた」にしろ、「最近は何も感じなくなってしまいました」にしろ、とにかく受動的というか、「自分が感じるの待ち」っていう勝手なスタンスなんだよなぁ。

とにかく「自分がどう感じたか」がすべて、みたいな……いや、そうやって生きてくのも別に勝手だけどさ。
もし、ある他者との関係を本当に誠実に維持してゆきたいのであれば、一般に「コミュニケーション」と呼ばれる相互調整、それに費やす努力というのは、絶対に必要になってくると思うんですよね。

こばなみ:
でも「これまでは彼の前ではかわいい態度とる努力をしてきた」ってありますよ……。

宇多丸:
それは単に、表面上問題が起こらないようにはしてきたけど、ってだけのことじゃん。
「ときめき」なんてひとり合点を超えて、お互いもっと深く理解し合う努力をして、長く続く関係を築いていこうっていう、そういう「努力」とはまるっきり次元が違う話ですよ。

あのさ、これはホントに、改めてちゃんと言っておきたいことだけど、「ビビッと来る」とか「ときめく」なんてのは、本当にハードルが低い、簡単なことなんですよ。
だって、本質的に「相手が本当にはどういう人か、どう思ってるか」とは関係なく成立しちゃうんだもん。極端な話、「ビビっと来る」のも「ときめく」のも、ただの勘違いだって全然成立しちゃうんだから。

でも、本当に大変で大切なのは、そこから先の話じゃん。
「ビビッ」だの「ときめき」だのがなくなってもなお、なんとかして関係を維持したいと思えるような人……、そっちのほうがよっぽど、「運命的」な相手だと思うんだけど!

こばなみ:
最初に「才能のある人」と思ってときめいたのだと思いますが、どんな感じだったんですかね?

宇多丸:
これ、年齢を考えると、出会ったのはお互い大学生の頃かな?
だとしたら、そのときは「頭もいいし、野心モリモリで、カッコいい!」と思えた男の子が、就職してみると意外と「フツーの社会人」に着地していっちゃって、なんか失望……みたいな部分もあるのかもね。

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」って映画観たことありますか?
レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットっていう、要は『タイタニック』カップルが再度共演してるんだけどさ。このキャスティング自体に、明らかな悪意がこもってて。
オープニングは、二人がまだ若い頃、イケてる感じのパーティで出会う場面。言ってみれば『タイタニック』で、金はないけど野心はある若者ジャック=ディカプリオに、ローズ=ケイト・ウィンスレットが「未来に広がる無限の可能性」を感じて恋に落ちてしまうのとまったく同じ構図が、ここで繰り返される。
ところが、そこでいきなりシーンが切り替わって、結婚後数年の彼ら。女優志望だったはずの女は、どうやらできちゃった婚で夢を諦め、今はご近所さんとの素人演劇で悲惨な初舞台を終えた、まさにその瞬間。あれほど生意気盛りだった男はというと、やはり彼女の妊娠を機に夢を諦め、今は手堅い勤め人に落ち着いている。そのくせ訳知り顔のイヤミばかりは相変わらず言う夫に、妻は明らかな嫌悪感を覚え始めている……!
 つまり、わずか冒頭数分の間に、夢多き乙女が野心あふれる青年に見た未来と、それがすべて空手形に終わったという現実が、容赦ないギャップとともに示される! もし、『タイタニック』のジャックとローズが二人とも海難事故を生き残ってアメリカで暮らしていたとしたら……数年と経たずにこんなことになっていたのではないか?とでも言うように。

要は、これって、もともとお互いに都合のいい幻想を投影していただけで、実は特に人として理解し合った上で好きになったわけじゃないんじゃないか、ということですよね。
この後二人は、まさしくすべての夫婦にとっての悪夢というべき修羅場に突入してゆくわけですが……ひまっこさんも同じ轍を踏みかねないよ!
 マジな話、「この人のこと、ホントに好きだったのかしら……」というところから、ちゃんと考え直してみたほうがいい。

こばなみ:
わたしも似たようなこと、ありましたよ。学生のときにカメラマンの人と付き合ってて、「芸能人を撮影してる」とか「◯◯って雑誌で撮ってる」とか聞いていて、「すごいー!」って思ってたんですけど、いざ編集者になってみると内情がいろいろとわかってきて……。すごい風に言ってたけど、特別すごいわけではなくて、なーんだって思っちゃったんですよね。で、それを言っちゃったもんだから、怒ってきたりして、嫌になって別れました。

宇多丸:
別にあいつがすごいってわけじゃねーんだ!って思ったってこと? 素敵って思ってた部分、なんじゃい?みたいな。

こばなみ:
そうですね。カメラマンであることは嘘じゃないし、それが好きの第一要素だったわけじゃないけど少しはそう思ってたから、「なーんだ」って思ってからは、関係を持続する努力はしなくなっていったというか。つまり、好きじゃなくなった。

宇多丸:
こばなみのケース同様、ひょっとしたら、ひまっこさんがいつの間にか彼より成長してしまった部分もあるのかもしれませんね。

だから余計、以前のように「すごいー! よく知ってるねー」みたいに、彼の前ではかわいらしく演じているのに、疲れてきちゃってるのかもしれない。

こばなみ:
そりゃ、疲れますよね。

宇多丸:
でも、これからも持続的な関係を築いてゆきたいなら、どう考えても「演技」はやめたほうがいいよね。その先、どうする気なの? 最初だけかわいい女を演じておいて、結婚しちゃえばこっちのもの!っていう考え方もあるかもしれないけどさ。ひまっこさんは別に、そういう風にがっついてるわけでもないでしょ?

2年半も付き合ってて、実は私、あなたの前では猫かぶってて……って告白も、正直、間違いなく引かれるとは思うけどさ。結婚までしようっていうなら、お互いのためにもやっぱり、自分を理解してもらう努力もそろそろ始めないとどうしようもないよね。
それもしないで「相手の魅力発揮待ち」だけしてたって、何も好転するわけないじゃん! 
とにかく「相手の魅力発揮待ち」と「演技」っていう、最悪のコンボをやめなさいってことですね。ディスコミュニケーションのダブルパンチですよ!
 ま、あくまでもこの先も付き合ってゆきたいなら、って話だけどさ。

こばなみ:
別れるのがめんどくさいってこともあるんですかね? 彼氏がいないよりいたほうがいいみたいな人もいません?

宇多丸:
「いないよりはいたほうがいい」に付き合わされるほうはたまったもんじゃないよ! 結果どっちも不幸になるようなことは、できるだけしないほうがいいと思うよ、マジで……。


【今週のお絵描き】

ビビッやときめきがなくなっても、関係を維持したいと思える。
そのほうがよっぽど運命的!


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年5月3日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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