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指摘や指示をすると機嫌が悪くなり、部屋にこもってしまう同棲中の彼。解決策を教えてください。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室367】


✳️今週のお悩み✳️
付き合って1年半、同棲して10カ月の3つ年上彼氏がいます。困っているのは、喧嘩したり、私が家事のことや家のルールなどを指摘したりして機嫌が悪くなると、部屋に篭ってしまうことです。向こうが明らかに悪いことを指摘したら機嫌が悪くなり(共同口座の使い込みみたいなことです)、家事のことを指示すると機嫌が悪くなり(ゴミの分別は公的なルールとして決まってるし、他の家事もそうして欲しい理由を合理的に説明しているためマイルールの押し付けにはなっていないとは思うのですが……)。
特に腹立つのは私が足を怪我してしまい、ほとんど家事ができない状況なのに、ただ放っておかれ、空腹のまま寝たり自力でご飯を用意したり……。
彼は一人暮らしが長いものの家事があまりできず汚くても気にならないタイプです。家事が苦手なのを知っているので私がほとんどこなして一部任せていました。特段綺麗好きというわけでもないと思います。
普段は仲がいいものの、何かの拍子で機嫌が悪くなると速攻で部屋にこもりご飯も食べないので仲直りするタイミングが難しいです。私は一度寝たら怒りは冷めるのでだいたいこちらから歩み寄ります。「機嫌が悪くなると部屋に篭る男性」をネットで調べると「手をあげないため」とか「これ以上喧嘩をしたくないから」とか肯定的な意見もありますが、宇多丸さんはどうお考えでしょうか?
また解決策をお教えください。 普段は仲が良く一緒にいて楽しいのですが、これだけは何とかしたいです。
(赤べこ・26歳・会社員・東京都)


宇多丸:
パートナーとの関係で何か気に入らないことがあったときに、ただただ不機嫌になったりふてくされ出したりして、まともなコミュニケーションが取れなくなってしまう……っていうのは、もちろん女性だってあることかもだけど、特にやはり男性は、少なからぬ割合の人が取りがちな態度だったりするんじゃないか、という気が、残念ながらちょっとしますね。

恥ずかしながら僕自身も、特に学生のころは、そういう傾向、間違いなくあったような気がするし……、とほほ。

要するにその、自分のお気に召さない事態がパートナーとの間で起きたときに、解決のためにお互い努力しようというのではなく、一方的に心を閉ざして、言っちゃえば向こうが折れてくるのを待つ、みたいことですよね。

なぜそんな幼児的なふるまいに出てしまうかと言えば、端的に言って人間的に未熟だから、ということに尽きるわけですけど。まぁ、甘えですね。

自分とは違う意見を言われること、要は「他者」の存在に慣れてないし対処法も知らないので、なんでオレに合わせないんだ! そしてそれをオレに言わせるな!としか考えられない、という。

ゆえに、さっき言ったように向こうが折れてくるの待ちだし、赤べこさんみたいに実際折れてくれちゃったりもするから、その思考がさらに強化もされちゃう、みたいな。

おおかたそんなもんでしょ。

こばなみ:
宇多丸さんはどうやってそこから脱したんですか?

宇多丸:
完全に脱してると言いきれるのかわかんないから偉そうなことは言えないけど……、まぁ、それ込みで愛想尽かされたりして、反省するしかなかった、ってことかな。

あとはもちろん、自分自身そういうのは醜いよなぁと思ったというのもあるし。

思うに男性は、やっぱり女性に比べると、他者性みたいなところに対する意識が、基本的に低くなりがちなんじゃないかという気がする。

女性は、性差別が今もはびこるこの社会では、ある種最初からそこを意識せざるを得ないわけじゃないですか。理不尽に他者扱いされるし、逆に他者に取り囲まれているとも言えるし。

そのぶん嫌でも早めに「大人」にならざるを得ないところはあるんじゃないですかね。

その部分で男は、そこに関しては何も考えずに生きられてしまうから……、言うまでもなく、そういう世の中の仕組み自体の不公平がいまだ是正されずにある、ということだけど。

あとはやっぱり、これは同じ男性として認めたくもないことだけど、女の人から間違いを正されるというのに余計に屈辱を感じている、というような部分も、無意識的にせよ間違いなくあるはあるんでしょうね……、あーやだやだ。

だから、コミュニケーション自体をシャットダウンすることで、「異議を唱えられている状況そのものに対する拒絶」を示すことしかできないという。

言うまでもなくフォロー不能なレベルで、幼稚で卑劣な態度ですよね。

驚くのはこの、ホニャララ知恵袋だかなんだか知らないけど、ネットでの回答とやらですよ。

「手をあげないため」……暴力振るわないでいることを、ありがたく思えって?

「これ以上喧嘩をしないため」……こっちは平和主義です、みたいなこと言ってるけど、そもそも話し合いのテーブルにつくことから拒否してるんだから、事実上こちらが折れるしかないの一択なんですけど?

もう、話にならない。愚劣の極みとしか言いようのない物言いだと思います。

こばなみ:
解決に向けて協力しろよー!

宇多丸:
でもまぁ、少なくとも僕の世代の実感としては、この国では、そもそも「議論」ということがあまり重要視されない教育の仕方が主流として確かにあって、だったらそういう「話にならない」人間が多くなるのも当たり前かな、という気はしますけど。

何か意に沿わないことがあったときに、自分なりの理を主張しようとしても、「男のくせにごちゃごちゃ言うな」……これはそのまんま「女のくせにごちゃごちゃ言うな」にも転じ得るんだけど、とにかくそうやってハナから頭ごなしに、「察して、折れる」ことを求めてくる風土ではあったと思うんですよね。

ただの議論を、それこそ「喧嘩」ととらえるような空気も、まだまだ色濃い感じがするし。

赤べこさんの世代はどうなんですかね。やっぱすぐに、「言い訳すんな」とか言われなかった?

「手をあげないため」も「これ以上喧嘩をしたくないから」も、そうした「議論否定文化」を完全に内面化してしまった結果のように思えますが……。

こばなみ:
しかしそのネット記事、やばいですね。

ちょっと私もほかにも検索してたら、「謝り続けるしかない」とかってアドバイスもありましたけど……。

宇多丸:
同じ男性としてそんな回答が出ざるを得ない現実を申し訳なく思うばかりですが、かくしてクソ男社会はより強化されていってしまうわけで、そこを追認しちゃダメだよ!と思います、やっぱり。

赤べこさんの彼も、要は家事を女性に押しつけてなんの義務も責任も果たそうとしてない、っていうだけですから。

普通にウンコでしょ。

こばなみ:
赤べこさんには悪いかもですが、私はもう口座使い込みの時点でアウトだと思いましたよ。

宇多丸:
ホントそうだよね。

しかも、29歳でその調子だよ!

赤べこさんが何か頑張ると言うよりは、ソイツいくらなんでもダメすぎじゃね?っていう話ですよ。

だからね、その彼は、こういった問題を自分自身の問題としてきちんと話し合うことができる相手ですか?っていうのは、赤べこさんに問いたい。

たぶん、今の感じだと厳しいよね。またひきこもってしまったり、最悪、逆上するんじゃないかって心配になっちゃうよね。

だってね、「彼と一緒にいて楽しい」、それはそうでしょうよと。

誰だって、いいときにいいのは当たり前なんだよ。

いつも言ってるけど、特にパートナーシップに関しては、問題は、どっちかが良くないとき、もしくは両方が良くないときや状況全体が良くないときに、この2人だとどうなるんだ?ってことでしょ。

そういうときにちゃんと頼り合えるお互いなのか?ってことが問われるわけじゃないですか。

じゃあその彼は今どうかと言えば、義務を果たさない、信頼を裏切っている、話し合いを拒否する……、結構その、パートナーシップを維持するにあたっての重大なアウト言動を重ねてやらかしてて、僕らから見ると、非常に良くない状態なのは明らかなわけですよ。

赤べこさんはそれに対して、今のところ何か、対症療法的に対処することばかり考えているっぽいけども……、さっき言ったネットの回答もその一種かもだけど、彼の怒りがその場でとりあえず収まれば済む話、なんですかこれ?

彼が一方的に怒っていること、そのものに大問題があるのに。

本来はそれ、根本から正してもらうべきことだと思うんですよね。

当たり前だけど、繰り返し話し合って、少しずつでもわかってもらうことから始めるしかないわけで、ただでさえなかなかに面倒なプロセスを踏んでゆくしかない話なんだけど……、ではさて、果たしてこの彼は、どの段階まで耳を貸してくれる人なんでしょうかね?

こばなみ:
いまの感じだと、早い段階でシャットダウンしてしまいそう……。

宇多丸:
だよね。

じゃあ、そういう人はパートナーとして、果たしていい相手なんでしょうか?っていうことから、改めてちゃんと考えてみたらどうですかね。

彼は今まで、自分がひどいことしてるっていう意識は、たぶんまったくないまま来てますよね。

俺は悪くない!と本気で思ってるからこそ、一方的にふてくされているわけだから。

赤べこさんは、俺は悪くないと心底思っちゃってるその人に、いや、あんたが悪いんだよ!って話、面と向かってできます?

こばなみ:
どうすれば……?

宇多丸:
いやだからそれは、話を聞いてって、まずは伝えてみるしかないよね。

私は傷ついているし、裏切られたとも思ってるけど、あなたのことはまだ好きだから、これからも一緒にいるためには、直してほしいって。

ただし、彼にはそれに耳を傾ける度量があるのかどうか……。

こばなみ:
なかなか道のりが険しそう。

宇多丸:
さっきから「こっちが折れるの待ち」って言ってるけど、それも、「私の考えがこの点で間違ってました」というような、論点をはっきりさせるみたいなことを求めてるんじゃなくて、要は「とにかくあなたを不快にさせるようなことをしてすみませんでした」という方向で来てほしいんだよな、ヤツはおそらく。

こばなみ:
ぎゃーーーー! ホラーですか?

宇多丸:
はっきり言えば、無制限にオレを甘やかせ!って言ってるんですよ。

お腹空いたから気に入らないとかでオギャーオギャー泣く、赤ちゃんと同じだよ!

言わんでも乳よこさんかい!みたいに泣き叫んでるのと同じ。

基本的に、あらゆる「言わんでもわかれ」イズムは、すべて赤ちゃん性の現れ、と言っていいでしょうね。

とにかく赤べこさん、このまま彼を甘やかし続け自分は我慢、みたいのはまーったくおすすめしないし、できればやはり、ちゃんと話ができる人であるかどうかで、改めてジャッジしてほしいと僕は思いますね。

もちろんほかに、はるかに成熟した男性、ちゃんとした人、いくらでもいますから。

こばなみ:
まだまだお若いですしね。

宇多丸:
ちなみにその彼、赤べこさんが怪我したときだって、「何お前、動けなくなっちゃってんの?」くらいの感じだったに違いないよ……。

こばなみ:
え!? 何ですかそれ?

宇多丸:
赤ちゃんだから。「なんでオレの世話できなくなってんの?」が自動的にトップに来るんですよ。

それ以外、説明つかないでしょ。

こばなみ:
けっこうヤバくないですか?

宇多丸:
と、思うかもしれないけど、結構やっぱり、クソ男あるあるでもあるんじゃないかな、残念ながら……。

あとね、「普段は仲が良く一緒にいて楽しい」のこの「普段は」、結構危険ワードかもしれないですね。

そうじゃない瞬間が深刻な人からしか、出てこないフレーズだもん。

いずれにせよ、改めてでも話ができる人なのかどうか……、逆に言うと、話を聞いてくれる人でさえあれば、ちょっとずつでも改善される可能性は、ゼロでなくなるわけで。

一瞬だけ彼の側に寄り添ったことを言えば、閉じこもり癖ってつまり、特に男性が率直に自己開示することが良しとされていない風潮のなかで育った、弊害でもあると思うんですよね。自分の感情や弱みを素直に人に伝えるのが苦手だし、なんならタブー意識さえあるという、やはり男性社会特有の病理の現れでもあるんですよ、きっと。

「人の話を聞く」能力と、「自分の話ができる」ということは、つくづく表裏一体なんだってことですね。

だから、この彼がすごい極悪人ってわけでもなくて、やはり「正面からのコミュニケーション軽視」社会の産物、もっと言えば被害者でもあるのかな、という気はします。めちゃくちゃ視点を大きくとればね。

でもさ、プラス面を言えば、これってやっぱり、同棲して初めてわかったことなわけでしょう?

よく言ってるけど、「好き」と「一緒に住める」は、また別のレベルの相性の話だから。

そこでこうやって重大な問題が見えてきたんだから、この段階をすっ飛ばして結婚なんかしちゃわなくてホントよかった!ってことでしょ。

もし仮に彼とうまくいかなくても、うまくいかなかったことそのものが、良かったことなのかもしんないよ、という考え方はぜんぜんできますよ。

もちろん、これがいい機会になって関係が改善してゆくなら、それに越したことはないわけで。

こばなみ:
とにかく、まずは話し合いステップにいけることを祈るばかりです。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。


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