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「話し方がキツい」と職場で注意されています。気をつけていても直らない。私は努力が足りないのでしょうか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室192】


✳️今週のお悩み✳️

はじめまして。いつもお悩み相談室を楽しく、時には自分にも当てはめて拝見しています。私は職歴10年以上になる看護師です。ですが、ずっと悩んでいることがあります。それは私の話し方についてです。私は普通に喋ってるつもりですが、よく通る大きい声で、声も低めで、言葉遣いが丁寧じゃなく、愛想も悪く、思ったことを割とそのまま口に出してしまうのが原因なのか、「言い方がキツイ」「もっと声を小さくして」など言われることが多いです。自分ではそのつもりがなく無意識に話しているのですが、特に職業柄忙しくて余裕がなくなると、師長さんや後輩にまでそれとなく注意されたりします。自分としては今まで何度も言われているので、直したいし気をつけているつもりなのです。正直何度も同じことを言われるのも辛いし、言わせているのも辛いです。でも自分としてはそんなつもりがないし、今でも十分気をつけているつもりなので、これ以上どう注意していけばいいのかわからなくなってきました……。
看護師は接客業でもありますし、キツイ話し方の看護師よりは柔らかい優しい話し方をする看護師の方が自分も患者ならいいと思います。 私もそうなりたかったし、なるべく近づけるように普段は気をつけているのに、注意されるたびにまだまだ自分の頑張りが足らないのかと悲しくなります……。そもそもこんな私には接客業が向いてないのでしょうか……、やめた方がいいのかなとすら最近は思います。でもこの歳で転職する勇気もなく……。友人に対してですら、あとからさっきの言い方は良くなかったかなと後悔してはひとり落ち込むことも多く、なんでこんなに自分は学習能力がないんだろう、一度頭の中で考えて発言する事が出来ないんだろうと日々落ち込んで暗くなります。一呼吸置いて、余裕を持って、ゆっくり話して、など散々言われますが、注意しているときはできるのですがそれを誰かといるときにずっとする事が自分にはできません……。どうしたらできるようになれるのでしょうか、我慢が足りないのでしょうか、努力不足でしょうか。頑張ってるつもりでも結果が伴ってないのは頑張りが足らないからなのでしょうか……。
支離滅裂になってしまい自分の言いたいことがうまく伝えることができてないかもしれませんが、もう自分ではどうしたらいいのかわからないので何かお言葉をいただけたらありがたいです、よろしくお願いします。

(ほろよい・35歳・兵庫県)


宇多丸:
「自分の話し方の良くないところが、頭ではわかってるつもりなんだけど、なかなか直すことができないでいる」っていう意味では、ほろよいさんとタイプはまったく違いますけど、僕もまぁ、そうっちゃそうなんですよね。
もちろん、曲がりなりにもしゃべることでお金をもらう仕事はあちこちでしてるけれども、別にちゃんとした訓練を受けたわけでもないですから……、たまに自分がしゃべってる番組の録音とか聴くと、我ながらどうなんだと思うところはいっぱいあって。
まずもう、どう考えたって早口すぎだし(笑) 。そのくせ、実は滑舌もところどころよくないし、なにかのきっかけで焦りだしちゃって噛みまくり、とかも年中やってるし。
あと、話し方のクセね。「要は」「要するに」がめちゃめちゃ多い。
気になる人は気になるだろうなぁ、イライラさせちゃってるだろうなぁ、とは思うんですけどね。


こばなみ:
口癖とかって難しいですよね。私もプレゼンのときとか、「なんていうか」っていうのを連発してる。自分で「あ、また言ってる」ってわかってるんですけど、何度も言っちゃう。
無意識じゃないんですけど、つい出ちゃうといいますか。


宇多丸:
まぁたぶん、アナウンサーレベルで専門的な制御訓練でもしない限り、誰だってなんかしらのクセはあって当たり前なんだろうけども。
そうやって規格化された話し方というのがいちがいにいいわけでもないだろうしね……ということで、自分のダメなとこは僕も放置したまんまですが(笑)。
ただ、ほろよいさんの場合、「よく通る大きい声で」「声も低めで」「言葉遣いが丁寧じゃなく」「愛想も悪く」「思ったことを割とそのまま口に出してしまう」っていうけど、最初の二つは生まれつきのものだからしょうがないとしても、残りの三つは、どっちかっていうと心がけの問題だからね。せめて一個だけでも、ピンポイントで意識して改善していけないかな?
今は、カードが五枚揃ってロイヤルストレートフラッシュになっちゃってる状態だからさ(笑)。どれか一要素だけでもソフト化することができれば、だいぶトータルでの印象も変わってくるんじゃないか。

こばなみ:
言葉遣いを丁寧にはできるのでは? 
あと、「思ったことを割とそのまま口に出してしまう」は、一回深呼吸してから発言するとかですかね。イラッとしたメールに即レスしないのと同じように。

宇多丸:
まぁでも、看護師の現場だから、けっこう慌ただしいというか、実際かなり緊迫してる場面もあったりするんだろうし、そういう風にいったん立ちどまってクールダウン、とかは、なかなかしてる余裕がないのかもしれないよね。


こばなみ:
たしかに、急いでるときに、ゆっくり丁寧にしゃべられると、それはそれでイラッとくることもあるじゃないですか。
だから、何系の看護師さんなのか書いてないですけど、もっと急いだ現場みたいなところだったらぴったり!とかもありそうな気も……。


宇多丸:
そうだよね。低めはともかく、よく通る大きい声で、単刀直入に要件を伝えるスタイルのほうがふさわしいし、求められてるって局面も確実にありそうだけどね。
逆に言えば、ほろよいさんがいつも指摘される程度には、基本的にはやっぱり、穏やかさのほうが必要とされてる職場なのかもしれないけどね。お年寄りや子供が多いとかさ。
それにしても、一見ぶっきらぼうに見える人ってけっこういますけど、意外とみなさんこういう悩みを抱えているのかもしれないですね。
普通にしているつもりなのに、怒ってるの?とか思われがちだったり。

こばなみ:
まわりが理解してくれるといいですよね。
その意味では、まずは言葉遣いを直してみるのはいいかも、ですね。

宇多丸:
ただ、ほろよいさんは、「今でも十分気をつけてるつもり」なのに、それでも相変わらず同じことを言われるから、「これ以上どう注意していけばいいのかわからなく」なっちゃったうえで相談してるわけだからね。
漠然と「もっと気をつけろ」ってだけじゃ意味ないんだもんなぁ……。

こばなみ:
どうしましょうか?

宇多丸:
そもそも僕自身がさっき言ったように自分のしゃべり方のクセを直せてないので、人様にアドバイスできるような立場じゃないんだけども……。
まず、さしあたって「より真剣に気をつける」方向でなにかできることがあるとしたら、あれじゃないですか、前に酔っぱらい対策として提案したこととも近いんだけど、ほろよいさんが話してるところを、誰かに録音とか録画しておいてもらって、後からそれを客観的にチェックし直す、っていう作業じゃないですか。

こばなみ:
うわ~、その手ですか。それは聞くのが本当に嫌ですね~。

宇多丸:
でもまさに、そこできっちりキツさを感じておくことこそが大事だからさ。
そこで、「えっ、アタシこんなしゃべり方してるんだ! ホントに感じ悪いじゃん!」っていう様子を文字通り“直視する”ことで、次に同じことをしそうになったときに、「自分のなかにもしっかり嫌悪感が湧く」ようにしておく、というか。

こばなみ:
しっかり嫌悪するって、なるほどね。たしかにマジで嫌だと思ったら何が何でも直さねばってなりますもんね。

宇多丸:
ただし、そういう表面的な見え方聞こえ方に関する改善努力も、もちろんできる限りは継続するべきなんだけど……、その手前にある、要は心持ちの部分で、ひょーっとしたらなにか、改めて検証するべきところがあるんじゃないか?というのは、一度考えてみてもいいかもしれない。それだけ気をつけててもまだ、同じようなこと言われるっていうのならばなおさら。
例えばだけど、「本当に相手のことを思いやりながら話しているか?」とかさ。

ほろよいさん自身も「看護師は接客業」っておっしゃっているけども、接客のいい悪いって、そりゃあテクニックやマニュアルである程度のクオリティを保つってことも大事だろうけども、一番肝心なのは、結局その根本にある、「その客がいま、なにを求めているかを察して、応えてあげる」って精神なんじゃないかと思うんですよね。
おそらくはそれを欠いているせいで、いくら表面上「スマイル」にあふれてたり(笑)、言葉遣いだけバカ丁寧でも、逆に杓子定規な冷たさとか、要領の悪さが際立つばっかりになっちゃってたりって、飲食店とかでも普通によく見る光景でしょ。
逆に、余計なこととかいっさい言わない、一見無愛想な店員でも、実はさりげなくちゃんと気が遣えているような……、飲食だったら、皿の上げ下げのタイミングが絶妙とか(笑)、そういう人のほうが、全然いいわけじゃん。

だから、声が低いとかデカいとかが真の問題なのでは、たぶんない。
それよりも、目の前の患者さんがいまどういう気持ちでいるか? どういう風に接して、どういう声をかけて欲しがっているのか?ということを、常におもんばかりながら仕事をできてるかどうか、って話なんじゃないかな。

例えば、 なにかがあってひどく傷ついてるような友人がいたとしてさ。
普通は、そういう人を前にしたら、相手の気持ちを考えながら、これ以上は嫌な思いをさせないように話すじゃん? 当然、かける言葉は選ぶし、口調も優しくなる。
そこで、「思わず」であれなんであれ、わざわざキツい調子で、人の心に土足で踏み込むような発言をしたりはしないというか、できないはずじゃんよ、仮にも相手のことを本当に心配しているのであれば。
看護師さんだって、それはたぶん同じことでさ。
患者さんっていう、確実に弱っていて、安心を求めている方々を相手にしてるんだ、という意識を常にしっかり持っていれば、少なくともその人たちを嫌な気分にさせるような言い方や言葉は、いちいち気をつけるようにするまでもなく、自然と慎むようになっているはず……ではない?

無論ほろよいさんだって、間違いなくそういう志を持って看護師になったんだろうけども……、ひょっとしたら、表面的な口調とか語調をソフトにしなきゃってことにとらわれすぎて、もっと本質の部分で大切にしなきゃいけないことには頭が回っていなかったとか、そういう傾向はなかったかなと思って。
ぶっちゃけ、地声が低くて大きいとか、ぶっきらぼうに見えがちとかは、ほろよいさん固有のパーソナリティとも密接に関係してることなわけで、そこを力づくで「直す」のは大変だし、そこまでする意味があるのかどうかも、正直よくわかんないですよ。
それよりもやっぱり、常に患者さんの気持ちや立場に立って考えるクセをしっかりつける、ってことのほうが本質だし、それがちゃんとできてさえいれば、さっき言ったようなレベルのことは、さして問題にもなんないんじゃないかと思いますけどねぇ。

こばなみ:
心持ち問題って、接客だけでなく仕事全般で言えるかもですね。いや、コミュニケーション全般か。でも逆に言えば心持ちひとつで直せる、良くなるってことでしょう?

宇多丸:
まぁ、それが難しいんだ、ということでもあるんだけどさ。
そのいっぽうで、誰だって大なり小なりそういうことでは悩んでるよ、というのもある。
「友人に対してですら、あとからさっきの言い方は良くなかったかなと後悔しては1人落ち込む」なんて、みんなやってるよ!って話だと思うけど。
それこそ、ほろよいさんとはまったく対照的に、ゆっくりおっとりしかしゃべれないような人だって、それはそれでそのことに悩んでたりって、余裕であり得るわけじゃん。
でも同時に、それこそがその人固有の個性、ってことでもあるんだからさ。そこをいちいち卑下したり、否定していても始まらないでしょ。
だからやっぱり、最後に問われるのは、「相手の心情を想像しながらなにかを言ったりやったりできているか」っていうような、コミュニケーションの基盤を成す、気遣いの部分なんだと思いますよ。
ほろよいさんも、「あの人、一見強面だけど、なにげにいろいろ細かいところにも気づいてくれるし、実はとっても優しいんですよ~」って言われるような、そういうラインを目指してゆけるかもしれないし! 
なんにしても、いつも全方位的にパーフェクトな人なんて存在しないし、そんなとこを目指す必要もないんだから、もうちょっとこう、自分の「できてなさ」みたいな部分にはユルく構えてもいいんじゃないか、逆に「できてること」「できること」を伸ばすとか、ポジティブな方向に注力したほうがいいんじゃないか、っていう感じはします。
これは我々全員に言えることだけど、腐っててもいいことないよ! ホント。


こばなみ:
私もつい先日、落ち込むことがあったんですけど、コミュニケーションの基盤の部分に立ち戻って考えてみようって思いました。心持ちのところ、難しいけど、あまりキリキリせずに、少しずつでも前進して行けたらって。ほろよいさんもご一緒に、みんなでファイトー!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年5月20日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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