結婚後の共働きに不安。彼は家事を協力するとは言うけれど……!?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室90】
✳️今週のお悩み✳️
わたしは来月、結婚する彼がいるのですが、共働きに不安があって相談にきました! 二人とも正社員で、年齢も一歳差で、お給料はほぼ一緒です。彼は家を建てるのが夢で、できるだけ貯金して住宅資金にしたいと言います。結婚しても私には仕事を続けて欲しいと言います(お義母さんにもそう言われてます)。ただ私は、あまり器用なタイプではないので、フルタイムで働きながら、家庭のことをやれる自信がありません。それを彼に伝えると、彼は「早く帰ったら、ご飯作ったり、協力する」と口では言うのですが、いつも帰りが私より遅い22時頃。しかも、土日も休日出勤することが多く忙しいです。私は自宅から仕事場が近いこともあり、残業しても20時には帰れます。すると結果的には私がご飯を作ったり、家事全般をすることになると思います。私が不安だということを話しても彼は「なんとかなる、協力する、お惣菜とかでいい」と言って、あまり取り合ってくれません。私が将来的に家に入りたいと言うと「せっかく正社員なのにもったいない」と言われます。正直なところ、今の仕事場でフルタイムで働き、一人暮らしをするだけでもヘトヘトなのに、結婚して彼の分の食事や洗濯、お弁当をと考えると、無理だーって 落ち込んでしまいます。最近はマリッジブルーなのか、幸せより不安が強いです。100点満点を取りたい訳ではないので、手を抜いたらいいんだ、と思う一方で、疲れて帰った彼を手料理で迎えてあげたい気持ちもあります。彼の仕事の忙しさを考えると家事分担はあまり期待できないのに、フルタイムで仕事を続けることを求められるまま、結婚して大丈夫でしょうか? 結婚までもう一ヶ月しかないのですが、もう少し何か彼と話し合うべきことや、心構えなど教えてください。ちなみに彼は実家暮らしで、今まで一人暮らしをしたことがありません。
(sakuranbo・35歳)
宇多丸:
ものすごーく細かく丁寧に、ご自身の心の揺れを伝えてくださってますけども。
ただこれ、最後の「ちなみに彼は実家暮らしで、今まで一人暮らしをしたことがありません」っていう一文で、一気にすべてが腑に落ちるというか、「あ~なるほど、そういうことね……」ってなる感じはあるよな。
こばなみ:
彼も30半ばですよね。それまで実家暮らしって……。
宇多丸:
僕も30歳までは実家住まいしてたから、偉そうなことは言えないんだけどさ。
それにしても、こっちはまだまだバリバリ働きたいのに結婚したら家に入れって相手に言われて悩んでる、みたいなのはよく聞くけど、こういう風に、自分はホントは専業主婦になりたいのに……っていう、まったく逆のパターンもあるんだね。当たり前の話だけど、やっぱり人それぞれなんだなぁ。 ちなみにこばなみは、専業主婦願望ってある?
こばなみ:
まったくないですね。とくに仕事をしてからは。ここまでやってきた仕事を辞めたくないし、それにお小遣いは月に1万円ね、とかになったらイヤですもん。旦那さんがうんと稼ぐ人だったらまた別ですが、1人の給料だけでやってけないと思いますし、節約レシピとかで毎日過ごすのも……。それにもし共働きでも、稼いだお金を全部うちに入れろとかだったら、ふ・ざ・け・ん・な!って感じかも。まぁ、そんなこと言ってるから、まだ嫁に行けてないのかもしれませんが(苦笑)。
宇多丸:
こばなみぐらいびっちり働いてたら、そう思うのも当然なんじゃない?
その意味ではsakuranboさんだって、少なくとも彼と同じくらいには、全然バリバリに働いてる人なわけでしょ。
帰りが彼より早めだとか、休日出勤がないとかはあるにしても、やっぱりヘトヘトになるくらい大変な仕事をしているのには変わりないわけで。
でもそこでこの彼はさ、「協力する」とは言ってるけど、それに続く言葉が「お惣菜とかでいい」って……、結局sakuranboさんに、ご飯は用意してもらうんかい!
別に、自分で料理するなんてレベルまでは求めないにしてもさ、それこそ「お惣菜とか」くらい今どきコンビニでも24時間売ってるんだから、自分で買ってきて勝手に食えよ! いい大人なんだから、外でさくっと食ってくるとかだって、いくらでもできるはずなのにさ。
なのになぜか、なんだかんだ言ってsakuranboさんが何かしてくれるっていうのが、改めて言うまでもないくらいの前提になっちゃってるっぽいじゃん、この彼には。 そう考えると、「協力する」っていう言い方もなんだかなぁ……、sakuranboさんに家事全般やってもらうのはやっぱり基本として、僕もできる限り手を貸しますよ、ってだけのことだもんね。「当然、僕も半分は分担する」とかじゃないんだもん。なんでそんなに偉そうなんだよっていう。
なんかこういうところに、生まれてこのかた実家暮らしで、言っちゃえばお母さんにパンツも洗ってもらえる環境でここまで来ちゃったがゆえの、「甘え」みたいなのが感じられるんだよな~。ま、僕もかつてはほぼ同類だったからわかることでもあるんだけど……。
たぶん、sakuranboさんの「家事(≒あんたの世話)とフルタイム仕事の両立はキツいんですけど」っていう訴えも、その切実さが本当には理解できてないんだと思いますよ。だからいまいち真剣に取り合ってくれない。
こばなみ:
それと私、序盤の共働きで住宅資金を貯めたいっていうくだりの「お義母さんにもそう言われています」というところに、ものすごい黒い背景を感じてしまいました。
宇多丸:
あー、そうだよね。姑プレッシャーの強さもちょっとここから感じ取れるよね。
だいたいフツー、義理のお母さんがそんなことまで口出してくるものなの? 息子も息子で、それをまたよく許してるよな……。
なのでsakuranboさん、「結婚して大丈夫でしょうか?」って……こっちが心配になりますよ!
「 結婚までもう一ヶ月しかない」ってことだから、この回答が掲載される頃にはもう、すっかり後の祭りかもしれませんけども……。
こばなみ:
あともう1個ですね、気になるワードがあるんですよ。「お弁当」ってあるけども?
宇多丸:
げっ! 弁当も作ってあげるの?
も~彼氏よぉ、昼飯くらい外で食えよ!
こばなみ:
本当にそうですよね。でもそういう外食できるような環境じゃないのかな? もしくは節約?
宇多丸:
貯金して家を建てたいっていう一応の目的があるから、まぁそうやって倹約してる部分はあるのかもしれないけど。
でもさ、相談文をよく読むと、それもあくまで「彼の夢」や義母の要望であって、sakuranboさんも心から納得して夫婦で共有している目標、って感じでも別にないんだよな。もしそうだったら、そもそもsakuranboさんのモチベーションも、もっと高いはずだと思うしさ。
だからはっきり言ってsakuranboさんは、家事≒旦那の世話っていう、限りなく「お母さん」的な主婦業を当然のように負担させられつつ、同時に、やはり主に彼側の希望を満たすために、フルタイムで働いて金を稼ぐことも要求されているっていう、要は彼側にとって二重に都合のいい役割を押しつけられているってことなんだと思いますよ。 sakuranboさんは、「家に入りたい」つまり前者に徹したいっていう、大きく言えば「私はこう生きていきたい」っていう要望をちゃんと伝えてるのにさ。事実上それは無視してるわけじゃん。本来ならちょっと怒っていいくらいの話だとすら思いますけどね。
ただ、sakuranboさん側にもつけ込まれるなりの理由はあって、「疲れて帰った彼を手料理で迎えてあげたい」とか言って、結婚生活や「理想の奥さん像」的なものに、ファンタジーを抱いているところがあるんだよね。 「100点満点を取りたい訳ではない」とご自分で書いてるけど、そもそもその「100点満点」って何?って感じはします。さっき言ったみたいに、もっぱら彼側にとって都合のいい女であり続けるってこと? そんなの、最初のうちは「頑張ってる私、輝いてる!」的にちょっとばかりいい気分になれても、遠からず、たとえば彼がこっちの努力になんの感謝も敬意も 払ってないことに気づいたりして、すぐにただの苦行に変わっていっちゃうのがオチだと思いますけどね……、sakuranboさん自身もそれを予感してるからこそ、「幸せより不安が強い」ことになっちゃってるんでしょうけど。
いずれにせよ、恐らくもう結婚はしちゃってるんでしょうから、今後のためにも、彼に対するなんらかの意識改革は、絶対に必要なんじゃないですかね。 要は、毎日家事をこなすってことがどれほど大変なことかというのを、きちんと骨身に沁みてわかってもらう。
たとえばさ、曲がりなりにも「協力する」とは言ってるんだからさ、ウソついてでもいいから、「これから一週間、緊急のプロジェクトで毎日帰りがかなり遅くなるので、今週だけ家事を全部あなたがやってください」ってことにするんですよ。 これとこれとこれ、全部いつも私がやってることだから!って、リストとか渡してさ。
こばなみ:
実際にやってみないと家事の大変さってわからないですもんね。とくに洗濯! 一人暮らしなんて、自分で洗わなければ明日着ていく服、なくなりますからね。
宇多丸:
つっても、洗濯機だって今は全自動だろうしさ。仕事がかなり忙しいらしい彼だって、洗剤と柔軟剤入れてボタン押すくらいできるだろう?って。
その意味では掃除だって料理だって、だいぶ簡略化は進んだほうなわけだからさ。
なのでとにかく、sakuranboさんがガンガン指示を出して、彼に自分でやらせる習慣をつける! どうせお母さん化しちゃうなら、彼を「教育」し直して、家全体を仕切る立場になってくしかないですよ。
こばなみ:
このままの状態で時は経って、彼が定年になってずーっと家にいるようになんてなったら、それこそ大変ですしね。
宇多丸:
その前にもう、sakuranboさんから愛想を尽かされちゃうんじゃないの?
だから彼のためにもさ、今のうちに鍛え直したほうがいいんだよ。家事ブートキャンプ!
ただまぁ、sakuranboさんも彼や姑のことを決して悪く言おうとはしてないところを見ると、普段の関係はそこそこうまくいってるんでしょうしね。 二人でお金を出し合って家を建てるってことだから、このお義母さんも、そこまで干渉してくるタイプってわけでもないのかもしれないし。
こばなみ:
ただ、お義母さんがこっちの家に入ってきちゃったらイヤですよね。ひょっとして二世帯だったりして……!?
宇多丸:
わ! それは絶対ツラくなるからやめたほうがいいと思いますよsakuranboさん!
しかしそうやっていろいろ考えてくると……、sakuranboさん、やっぱり今後も、仕事は辞めないほうがいいんじゃないかという気がしてきました。
それは彼のためにじゃなくて、ご自分のためにね。
新婚ホヤホヤの人に縁起でもないこと言って申し訳ないけど、これから万が一ね、たとえば結婚したら急に姑と折り合いが悪くなったとか全然よくある話ですけど も、そんなこんなが積み重なって彼との結婚生活にsakuranboさんが限界を感じるようなときが来たとしたら、完全に専業主婦になっちゃってるより、 余裕で自立できるくらいの生活力は保ってたほうが、その後の選択肢が広くなるじゃん? 少なくとも、ホントは嫌で嫌でしょうがないけど自分だけでは食っていけないので仕方なくそこにいる、みたいな事態は避けられるでしょ。
こばなみ:
実際、専業主婦にとっぷり浸かっちゃうと復職するのは大変ですし、ましてや子どもが生まれたりしたら、職場にもよりますけど、けっこう復職のハードルはまだまだ高いと思いますし……。
宇多丸:
そういう意味で、sakuranboさんにとって、いずれ仕事が命綱にもなるかもしれないですよ、とは一応言っておきます。
そのためにもやっぱり、旦那再教育が目下の急務ですね!
それにブツクサ文句言ってくるようなら、今度こそこっちがキレて良し!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年4月4日に公開したものを再編集し、掲載しています。