仕事の進め方について上司がうるさい。結果よければやり方は人それぞれでよくない?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室291】
✳️今週のお悩み✳️
私は20名前後のWebデザイン系の会社に勤めているのですが、最近上司(男性・30代後半)になった人に注意されてばかりいます。成果物に対してというより、仕事の進め方についてです。確認のメールはもっとこまめに打て、時間を決めてやらないとダメだ、報告をするのはフォーマットを使って、などなのですが、細かいし、自分の型(成功例?)にはめてくるのが辛いです。デザインの仕事なので、結果がよければ別にやり方は人それぞれでいいじゃないかと思っている派なのですが、お二人はどう思いますか?
その上司(転職してきた)は私からみて、デザイン的にいけてるとは思えません。どちらかというと、しっかりやる派でして、私がはみだし野郎気味なので、だからやり方論を押し付けてくるのだと思います。一度、真正面から話した方がいいのか、それとも「はいはい」と流して、しれっと適当にやればいいのか、迷っています。にしても、毎日ガミガミとうるさいのは嫌です。
(M・33歳・東京都)
宇多丸:
ま、上から目線で、こっちからしたら的外れとしか思えない小言を四六時中浴びせられりゃあ、そりゃ誰でもうんざりはしてしまいますよね。
僕なんかそういうのが嫌でまともに就職しなかったようなもんですから(笑)、気持ちはわかりますよ。
ただ、「確認のメールはもっとこまめに打て、時間を決めてやらないとダメだ、報告をするのはフォーマットを使って」って、これ自体はそこまで変なこと言ってるわけでもないんじゃん?という気もちょっとするというか……。 要はその上司、Mさんの仕事の中身がどうこうじゃなくて、あくまで「周りの人が業務を進めやすいようにする」配慮としてのもろもろ、のことを言ってるんじゃないかなぁ。 結果が良けりゃいいでしょ、って言うけど、少なくとも現状は、自分ひとりで仕事してるわけじゃないんだからさ。
こばなみ:
上司がどの部分のことで言ってるのかは謎ですが、組織としてデザインを出し、その先にはクライアントもいるでしょうからね。
宇多丸:
ガミガミ言ってくる上司のことをそもそもリスペクトしていない、というのが先にあるから、話を素直に聞けなくなってる、というのはあるっぽいですよね。
でもまぁ、さっきも言ったように、ひとりで動いてなんとかなる仕事じゃないんなら、周囲も円滑に、気持ちよく働けるよう、やり方にもそれなりに気を使いましょうね、っていう言い分そのものは、そんなに間違ったこと言ってるわけじゃないよね。 それが嫌なら、フリーでやんなさいよ、ってことになっちゃうわけでさ。
あるいは、そんなことは百も承知だけども、それにしたって上司の押しつけてくるやり方がいくらなんでも不合理、非効率でやってらんない……というレベルの話なのかもしれないけど。
こばなみ:
上司も辛い……、ですね。
私だったら……、大枠のルールは言いますね。 フォーマットに入力してください、とか。
自分が部下だった場合、ここをこうしてああしてこう!みたいなやり方論になっちゃうと、たしかにごちゃごちゃ細かいところまで言われるのは嫌だから、そこまでは言わないようにしていますね。
あと、Mさんみたいなタイプではなく、やり方まで細かく言うと、考えないでそのままにやっちゃって、どんどん自分で考えなくなっちゃう人もいるので、なかなか難しいところですね。
だから私はちょっと、結果良ければいいじゃんとは思ってるところはあるかもしれないです。 成果物っていうだけではないけど、その仕事全体的に、結果良ければいいじゃんっていうような。 Mさんの会社がどこまでを請け負ってるWebデザイン会社なのかにもよりますけど……。
ただ、仕事において、確認メールを出すとか、時間を守るとか、基本的ルールはもちろん守るべきだとは思いますけどね。
宇多丸:
要はさ、間違いなくこの上司がよくない点がひとつあるとしたら、なぜその指示が大事なのかという理由、必要性を、Mさんにじゅうぶん納得させられてないまま、ヘタすりゃちゃんと説明もしないままに、事実上頭ごなしに押しつけているだけ、になっちゃってるということなんじゃないかな。
こばなみ:
たしかに! 大目的を達成するための方法なのだ、ってのが伝わってないんでしょうね。あるあるですね。
宇多丸:
Mさんだっていずれは、同じように指導義務がある立場に置かれて、うまく意思疎通ができなくて苦悩するってことがあるかもしれないんだから、この件からはご自身も学ぶことが多いんじゃないですかね。
ということで、ご自分でもおっしゃってますけど、「一度、真正面から話した方がいい」、まさにそれだと思います!
こばなみ:
必要性がわかって納得できて、いまみたいに結果よければ最高じゃないですか!
宇多丸:
もちろん、上司のやり方が完璧ってこともないだろうから、私は絶対にこっちのがいいと思う、というならちゃんとそう主張して、有無を言わさないような結果を出してゆく、というのも、できるんだったらひとつの手ですよね。
あいつぜんぜん俺の言うこと聞かないんだけど、ぶっちゃけ仕事できすぎてなんにも言えないんだよね、という存在にしっかりなる、という。
それこそ、フリーになる力がある、ってことですけどね。
あの人〆切まるっきり守らなくていつもホント迷惑してるけど、上がってくるものがスゴイから……みたいな調子で売れっ子でい続けてるような人も、まれにですけど、いるはいますよね。 もちろんそれは、ホントに途轍もなく高いハードルを何度も何度も超えてナンボ、な話なんで。 凡人がマネしても、ただ誰にも相手にされなくなるだけです!
ちなみに僕も、たとえば、依頼通りの〆切に間に合わせるために寝ないで原稿書いて提出したのに、御礼や感想どころか、たしかに受け取りましたの確認メールさえ返してこない相手とか、なんなんだろうなとはやっぱ思っちゃいますよね。 あと、向こうのたっての依頼で受けた取材企画なのに、いざ収録とかが終わると、同じくその後の進捗とかはまったく伝えてこない人とか……、ホント失礼だなと思うけど、実際意外と少なくないんだよなー。 どちらも、無事に記事が掲載されたとかという意味で「結果がよければ」いいじゃん、という言い方もできなくはないけど……、少なくとも僕は、その過程であんまり気持ちよく仕事できなかったような方とは、さっき言ったみたく、よーっぽどその人ならではのすごさみたいなものが明確に出ているとかでない限り、その後も積極的にお手合わせ願おうとは、あんまり思えないですよねぇ、やっぱり。
Mさんのお仕事だって、その向こうにクライアントだなんだってのが当然いるんでしょうから、いわゆる「ほうれんそう」も、やっぱりまるっきり無意味ってことはないんじゃないですかね。
こばなみ:
たとえフリーであっても、仕事の規模にもよるかもですが、たったひとりで制作しているってことはないですしね。
宇多丸:
ということで、もういっかいまとめておくと、やはり一度、その上司と腹割って話してみればいいんじゃないですかね。
それだけしつこく注意してくれるということは、少なくとも面倒見は悪いほうじゃないんでしょうから、そういう話し合いの場にも、めんどくさがらず付き合ってくれるでしょう、きっと(笑)。
そのうえで、やはり私は私のやり方を通させてもらいます!って感じなら、その言い分もしっかり伝えたうえで、ごちゃごちゃ言わせないくらいのハンパない仕事ぶりで証明してゆく。これしかないでしょう。
こばなみ:
いい仕事をしようという大目的は同じだと思うので、良い結果になることを祈っております~!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年8月24日に公開したものを再編集し、掲載しています。