相手の好意を感じる誘いを断れません。どうしたらいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室252】
✳️今週のお悩み✳️
私は、なかなか誘いをキッパリ断れないことで悩んでいます。この前、晩ご飯を彼氏が家で作ってくれているのに、帰り道の途中で友人にばったり会い、夕食に誘われて断れずに食べに行ってしまいました(その後帰宅して、彼氏の手料理もごめんねと謝りながら食べましたが、私は何をしているんだろうと情けなく悲しい気持ちになりました)。また、サークルの男子の先輩から、「ライブに2人で行かない?」と誘われた時も、あまり気は進まないのですが「日程が合えば」などとごまかして、キッパリ断れませんでした。先輩に対しても失礼だし、彼氏に対しても誠実ではないし、こんな自分に嫌気が差します。宇多丸さん、こばなみさんは誘いを断りたいとき(特に相手の好意を感じるとき)、どのようになさっていますか?
(ポテ子・23歳・大学生・京都府)
宇多丸:
今回は、特に前半のエピソードが強烈ですよね(笑)。
おうちで彼が夕食を作って待っているのに、友人に誘われたら断れなくて、外でご飯食べてきちゃう。
しかも、後から彼の料理も無理して詰め込んでみせるって……、こんなことってある?
こばなみ:
ポテ子さん、大学生ということなので、半同棲みたいになっていて、彼氏がしょっちゅうご飯をつくってくれているって状況なら、少しわかる気がしますけど。でも、2回夕飯は食べないかな……(苦笑)。
宇多丸:
たとえば、サラリーマンの旦那が勝手に仕事相手とメシ食ってきちゃって、うちでご飯作って待ってた奥さんが「外で食べてくるなら言ってよ!」って怒る、的なアレってこと?
たしかにそう考えると、やる人はやることではあるのか、昔から。特に男は、わりとやり散らかしてきた歴史があるわけですね。 無論、どっちにしろ超ダメはダメなわけですけど。
ただ、ポテ子さんの場合は……。
こばなみ:
食べてるんですよね、家でも。
宇多丸:
倍、食ってる(笑)。
彼のほうは実際、どんなテンションなんですかねぇ。ちょっと想像がつかない。
ひとつよくわからないのは、お友達にばったり会ってせっかくならとお食事に誘われました、そこで「いや、今日は家で彼が待ってるのでまた今度」って言うのって、そんなに気まずいこと? 前も言ったかもだけど、「先約がある」って、ほとんどオールマイティな断り文句だと思うんですけどね。
だってこれ、「彼と映画に行くために待ち合わせしてたのに、途中でたまたま会った友達とそのまま映画行っちゃって、その後さらにずっと待たせてた彼ともまた映画に行く」、みたいな話ですよ。まぁ、待たせてるのがおうち、という違いはあるけども。 でもやっぱ、これはやっちゃダメでしょう?
こばなみ:
なんなんだろう?
宇多丸:
極度に気が弱いのかなぁ。
こばなみ:
逆にそれがみんなを傷つけますね……。
いっぽう、後半の先輩に対しての断り方はいいと思うんです。 宇多丸さんもよく言ってる「いずれまた」とか「日程があえば」とかと同じですよね。
ただ、なんかもやもやしちゃうのは、先輩に彼氏がいることを言えなかったということに悩んでいるのか?という……。
宇多丸:
明らかに先輩側は恋愛寄りの好意から言っている、というのがわかっているのに、っていうことだろうね。
ただ、とは言え言葉上はまだ単にライブに誘ってるだけなので、こっちから「いや、彼氏いるんで!」みたく言い出すのもおかしい気がするし、みたいなことだよね。
こばなみ:
自分が勘違いしてるかもしれないし、自意識過剰って思われるのも嫌だし。
宇多丸:
そうそう。
これ自体は、ものすごくよくある、普遍的な話だと思いますけど。
こういうときに、気が強いのかなにも考えてないのかわからないけど、とにかく最短距離で正論を言える人だったら、「え、なんで2人でなんですか?」とか、いきなりズバッと本質を突くことで、逆にそれ以上のこじれをあらかじめ回避できたりもするんだろうけどね。
こばなみ:
「なんで?」って問いはいいですね! 好意かどうかが明らかになってくるから、自意識過剰かもと悩む問題はすこしクリアになるし。
宇多丸:
でもでも!
ポテ子さんは、彼氏が待ってるのに断れなくて、友達とご飯に行っちゃう人ですよ!(笑)
こんなこと言えるわけないよね。
てか、僕らだってここまでズバズバとはなかなか言えないですよ、やっぱり。
こばなみ:
彼氏がいても2人でライブに行くくらいはいいんじゃないかとも思ってしまいますが。
だけど、ポテ子さん、気乗りしないんですもんね。
宇多丸:
そうそう、そこなんだよ。
ホントは行きたくないのに断れなくて……というのは、突きつめてゆくとけっこう危険な性分ですよ。
こばなみ:
みんなに好かれたい、のかな?
宇多丸:
そうかもね。
いわゆる八方美人。
でも、みんなに好かれたい、誰にも嫌われたくないっていう、その気持ち自体が悪いってわけじゃないというか、みんな大なり小なりそういうところあるだろ、とも思うんですよね。
たださ、何度も言うけどポテ子さんは、特に前半のエピソードから判断する限り、そういうときのNoと言えなさっぷりが、ちょっと常軌を逸したレベルだから。
こばなみ:
悩んでいるところ大変申し訳無いのですが、何度読んでも「謝りながら食べた」って……、お腹パンパンですよ!
宇多丸:
いっそ、八方美人方向をもっと徹底させるというか、全方位的に皆さんを立てる手はないのかな?
たとえば、そのばったり会っちゃった友達には、「じゃあ、彼氏が家でご飯作って待ってるから、良かったら来て一緒に食べる?」って、誘い返しちゃうとか。 もちろん彼の了承は必要なんだけど。 まぁそれ以前に、よっぽど図々しい人じゃない限り、「えっ、そんなのお邪魔しちゃ悪いし、当然そっちを優先してください! 食事はまた今度にしよう!」って普通になると思うけど(笑)。 そしたらそれはそれで、問題解決じゃん。
その先輩にも、「あっじゃあ、彼も連れてっていいですか?」って聞けばいいんじゃないかな。 こちらも、彼の了解取るのは当たり前としても。
要はさ、本当には何を優先させるべきだったのか?を改めて考えてみよう、ってことじゃないかな。 ポテ子さんは、両エピソードに共通して、「ホントは何より彼を最優先したいのに、気が弱くてそうできなかった」ってことにモヤってるわけでしょ。 だから、いきなりスパッと断わったりするのが苦手なら、「なにはさておきファーストプライオリティは彼!」っていう一点は見失わないようにしながら、できるだけ相手の気も悪くはさせない、みたいなバランスを目指していくしかないんじゃない?
そこをぽんやりさせたまま、この調子で人に流され続けてると、最悪、いろんなものにハンコを押させられまくったりしかねないよ(笑)。
こばなみ:
そっか……。友達に宗教とか化粧品とか保険とか、勧誘されたら断れなさそう。
宇多丸:
いやホント、そうなるともう、笑えない領域だからね。
だから、自分がその時点で本当には何を一番大事にすべきなのかを常に意識しながら、人からのオファーを検討してゆく、ってことですよね。 たとえば、誰かをすでに待たせてる状態なら、普通はそちらを優先させます! それを覆すに値するほどのものなのかどうか、しっかり考えてみてくださいよ。
でもこれ、たとえば多忙さや惰性に流されて、気づいたら自分がホントには何したかったのか見失ってる……みたいなのって、誰でもあることじゃない? 自分が自分でいるために、なんらかの芯はしっかり持っておかないと、っていうのは、ポテ子さんに限らず、我々みんなに言えることですよね。 じゃあ自分はちゃんとできてんのか、と言われれば、ぜーんぜん心もとなかったりしますし……。
こばなみ:
ほーんとに! 最近わたし、日々のことに流されて見失ってましたよ(猛省)。悩んだら、優先順位は何なのか、そこに立ち返ろう、お~っ!!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年9月22日に公開したものを再編集し、掲載しています。