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声の大きい上司の意見が通る会議、その構図を変えたい! でも勇気が出なくて発言できない私は情けない……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室421】


✳️今週のお悩み✳️
いつも楽しく読ませていただいています。東京で働く会社員でいわゆる中間管理職です。よくこのお悩み相談連載でも会議のやり方の話は出ていると思うのですが、そのことで相談があります。仕事上のチームの会議、部署単位の会議で、必ずと言っていいほど、声の大きい上司の意見が通ります。ですが、たいしたことを言っていなかったり、ありきたりの案だったりもします。しかし圧力もあり、地位もあり、上司の意見で決まってしまったりします。その構図を変えたいのですが、私は声が小さいのと、勇気が出なくて発言できないこともあるんです。情けないです。そんな私に宇多丸さん、喝を入れていただけないでしょうか。なぜ発言できないのだろうと考えてみると、変なことを言ったら恥ずかしい、声でか上司につぶされるのが怖い、自分の意見に自信がない、ということが挙げられると思います。どうしたらその壁を打ち破ることができるでしょうか。
(のりちゃん・39歳・会社員・東京都)


今や社員さんたちの上に立つ役職であるこばなみ、どうですか?


私も声の大きい上司になりつつあるのでヒヤッとしております……(苦笑)。


もちろんそれは、僕のような立場の人間こそ気をつけてゆかなきゃいけないことでもありますよ。
どうしたって一定の「ベテラン圧」は出ちゃってるんだろうから……、まずいね!


で、おそらくなのですが、この声の大きい上司って、けっこう気分で言ったりしているところもあるのかなと思うので、あんまりそれにひきずられないで、順序立てて話してみる、質問してみる、などはどうでしょうか。

上司が真っ向否定しないでほしいと願うばかりですが。


ただそれ以前に、大前提として、萎縮してしまう側が悪いんじゃなくて、萎縮させてる側が悪いんだから、のりちゃんさんもご自分を責めることはないですよ、というのは言っておきたいですけどね。

上司と部下でもなんでもいいけど、力関係的に弱いほうが強いほうにモノを言いづらくなってしまいがち、というのは容易に予見できることなのだから、立場が上の側こそがそうした構図に陥らないよう配慮をする責任があるわけですよね。

いまどきそこに無自覚に乗っかったまま権力を行使し続けている人なんかは、それこそパワハラとして告発されうる領域に、思いっきり足を突っ込んでいる状態、ってことでしょ。

なので、のりちゃんさん的にもまずは、「何も言えなくて情けない」という考え方をグイッと反転させて、「言いづらくさせやがってフザけんな!」って、言わば「義は我にあり」モードで闘志を高めてゆくことから始めたりするのがいいんじゃないですかね。

悪いのはあっちなんだから、こっちが遠慮する必要いっこもないよ!っていう。


上司は、みんなはどう思う?とか聞かないんですかね。

出席者が発言するチャンスがないなんて、会議する意味がなくなっちゃうと思うけども。


まぁ、そこが気になんないような人だからこそ、こうなってるんでしょうけど。

もちろん、会議での発言なんてものは本来、玉石混淆でむしろあるべきなのに、それを恥ずかしいだの怖いだの思わせてる時点でダメじゃん、というのは言うまでもないことですが。

ともあれ、いくらこっちは悪くなくても、このままただ黙ってるだけではやはり、まず何も変わってゆかないだろう、というのも明らかでしょうからね。

だとしたら、さっきこばなみが言った論点整理など、声のデカさ勝負とは違う準備をしっかりとしといたうえで、とにかくまずは一回だけでも突破口を切り開く、ってことから始めるしかなさそうですよね、やっぱり……。そこだけはちょっと、思いきって一歩踏み出す必要がどうしてもある、というか。

でもホント、それで少しでも「おや? のりちゃんさんが言ってることのほうが、実はけっこう理があるのでは?」という方向に場の空気が変わったりするだけで、たとえそのときは結局またその上司につぶされて終わったとしても、「ああやって意見するの、ありなんだ」という可能性をその場にいる人たちの頭に植えつけることは最低限できるわけで、それ以降はもろもろのハードルが、だいぶ下がる気がするんですよね。

のりちゃんさんと同じく不満を抱えてきたような人たちは、「あの案、良かったと思います! その場で加勢できなくてすみません……」みたいに、潜在的な味方になってくれるはずだし。

直接そういう話ができる人がいるならば、「今度のプレゼンのときは、いいタイミングで助け船なんか出してくれたりすると嬉しいかな」とか、ある程度の根回しをしといてもいいかもしれない。

もうひとつ勇気が出ることを言っておけば、その上司みたいなイキり散らかし屋、自分をデカく見せたがり屋というのは、イコール実際には小心者で、打たれ弱いです、例外なく!

内心怖くて怖くてしょうがないから、過剰に威嚇的に振る舞っているわけで。

出来ることなら、バカのふりしてでもしつこくしつこくトライし続けて、根負けさせてやればいいと思いますけどね。

「またお前か……、もうわかったから勘弁してくれーっ!」ってさ。


こういうとき、バカのふり作戦は強いですよね。


そうそう。無神経にはそれを上回る無神経で対抗する、っていう(笑)。

そして、いつも言ってることですけど、自分がこの人なんだかなぁって思ってるような人はたいてい、他の人からも、ほぼ間違いなくそう思われてるもんですから!

のりちゃんさんが先陣を切ったら、パタパタと一気に旗色がひっくり返っていく可能性だって、ぜんぜんあると思う。

ちなみに、ご自分に対しておっしゃっている「声が小さい」って、物理的な声量のことですよね?

だとしたらそれは、人に話を聞いてもらうにあたっては、決してマイナスな資質とも言えないと思いますよ。

姜尚中さんや荻上チキさんなどがまさにそうだけど、決して声を張らない、一定の穏やかなトーンで話されるからこそ、グッと引き込まれるし、本物の知性と説得力を感じさせる、というタイプの話者の方ってたしかにいらっしゃって、僕は自分と正反対だからこそすごく憧れます。

のりちゃんさんも、そっち系を目指せばいいんじゃないですかね。

なんにせよ僕は、のりちゃんさんはすでに、めちゃくちゃ「強い」人だと思うんですよね、ご自身の自己評価に反して。

だって世の中、なんなら「できるだけ自分の意見をはっきり表明しない」という処世術で日々をやり過ごしているような人が、どれだけ多いことか……、それ自体が悪いこととも言わないけどさ。

それに対してのりちゃんさんは、現状を変えたいという意志やビジョンははっきりあったうえで、そこに立ち向かうリスクが怖くて尻込みしてしまいがちなので、いいからケツを叩いてくれ!って話をしているわけでしょう(笑)。

自らの地位にあぐらをかいているだけのその上司もそうですが、ただただ事なかれ主義だったり、長いものに巻かれたいだけだったりする人たちと、体を張ってでも物事を改善したいと考え続けているのりちゃんさん。

どちらが「強い」人間なのかは、言うまでもないでしょう。

あなたはすでにじゅうぶん、強い!


上司側も部下のこういう意見を聞いてほしいですね。

もしくは「だったら言ってよー」とかもあるかもですが。自分に置き換えても、そう思うことあるかも。


そうかもね。
上司の立場からすると、ひょっとしたら「ガーン! そんなふうに思ってたの?」ってことかもしれないよね。

「みんな、オレの意見がいいと本気で思ってくれてるんだと思ってた……」ってことかもしれない(笑)。

ま、だからそういう独り相撲にならないためにも、発言の風通しを良くする配慮を上司たるお前から率先してしとかんかい!って話ではあるんだけどさ。


よく上司へのお悩みの相談が届きますけども、胸が痛いけど、でもこういう意見があるたびに本当に気をつけようって思いますね。


そうだよねぇ、ホントに。

僕も正直さ、もともとは思いっきり「言いたいことあるなら言えばいいじゃん!」っていうタイプですからね。

この上司のことも、ホントはあんまり言えないのかもしれない。

この連載を読んでいる方のなかでも、身につまされる人はけっこういるんじゃないですかね……。

組織にとってはむしろ、のりちゃんさんみたいな人材こそが宝ですよ!


本当にそうですよ! こんな社員ほしいですよ!

2022年、あと少しですが、えいや!と一歩踏み出せることを祈っております。

めちゃめちゃ応援しています!!


【今週のお絵描き】

画・(宇多丸さん風邪だったため)代打こばなみ



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※日本ヒップホップ・シーンの正統が、伝統JAZZクラブに降り立つ日!
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SOIL&”PIMP”SESSIONSにRHYMESTERを添えて「初恋の悪魔 -Dance with The Devil-」(日テレ系ドラマ『初恋の悪魔』最終章テーマ曲)が発売中!

※ワンマンライブの新シリーズ「ライムスターインザハウス」やその他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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