夫はバツイチ。一緒に住む際にかなりの量の前の奥さんや子どもの荷物を妊娠中の私が片付けました。数年経ってもそのときの怒りや悲しみが消えず、夜眠れないことも……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室400】
✳️今週のお悩み✳️
私の夫はバツイチなのですが、別れる際に前の奥さんが着の身着のまま子どもを連れて家を出て行ったようで、数年後に私と出会って結婚し、一緒に住むときに、まだかなりの荷物が残っていました。私と結婚する時点で綺麗に片付けておくのがマナーだと思うのですが、夫曰く、ゴミの分別が非常に大変だったことや処分に困るものも多数あり、なかなか手がつけられなかったようです。見るに見兼ねて、私がお尻を叩きながら、何度も手伝って片付けをしましたが、確かに本当に大変で、片付けるのに一年以上かかりました。早く片付けたいのになかなかすべて片付かず、燃えないゴミの前日なのに夫が仕事で帰りが遅いときなどは、妊娠中の私が一人で何キロもあるゴミを持ってゴミ捨て場を往復したり、前の奥さんの使用済みの生理用品(なぜかトイレの棚の上に残っていました……)を片付けたりと、かなり辛くしんどい思いをしました。
もうすぐ産まれてくる我が子を前の家族のものが沢山ある状態で迎えたくなくて、割り切って淡々と作業していたのですが、数年が経ち、ゴミがすべて消えた今になっても、そのときの怒りや悲しみが消えません。
育児休暇中で暇なせいもあるかもしれないのですが、一週間に一度は思い出して、嫌な気持ちになったり、体調が悪いときにはそのときのことを思い出し、夜眠れなくなったりします。夫との何気ない会話の中でもこのときの恨み節が出てしまうことがあり、多くの場合は「あのときは本当に申し訳なかったね」と謝罪してくれるのですが、「今はその話関係ないでしょう」と呆れられて気まずい雰囲気になる時もあります。実際、直接関係ない話題のときに過去の恨み言を何度も持ち出されて、夫が気分を害するのはよく理解できるのですが、私一人でこのモヤモヤをずっと抱えて生きていかねばならないのも不平等で解せず、つい言ってしまいます。
普段はとても優しくて、子育ても積極的にしてくれる大好きなパートナーです。この人に出会ってなかったら、一生独りだっただろうという確信もあり、かけがえのない大事な人です。しかし、どうしてもこの過去の出来事だけが許せません。とはいえ、何度もこのときの話を持ち出して、夫婦関係が悪化するのも怖いです。この時期の記憶だけ消えてくれればいいのにと思います。これからもパートナーと良い関係を築いていくたために、どのようにして自分の気持ちに折り合いをつけていけば良いでしょうか?
(まるやん・40歳・ 会社員 ※育児休暇中・東京都 )
宇多丸:
まるやんさんは、片付けをさせられたその家に、今も住んでるんだよね?
まず何より、そもそもそれがよくないんじゃない?という感じがすごくしますが。
そこに住んでる限りはどうしたって嫌なことを思い出してしまうだろうし……。
こばなみ:
忘れようったって、毎日「現場」にいるわけですもんね。
宇多丸:
まさにそれ。
まぁそれ以前に、前の奥さんと住んでたところにそのまま次のパートナーを迎える、という彼のそのズボラなスタンス自体、ちょっとどうなの、という感じも否めないけどね。
もちろん、相手もそんなのまったく気にしないというタイプなら別に問題ないかもしれないけど、まるやんさんは明らかに、そっちじゃないっぽいわけだし。
ということで、とりあえず引っ越し!からじゃないですかね。
それでまるやんさんの気持ちが完全に晴れるという保証もないけど、少なくともこのままそこに住み続けたら、事態が好転することはまずないのは、間違いないんじゃないでしょうか。
なので、まずはその前に、改めて彼との話し合いの場を設けて、まるやんさんが実はそこまで思い悩んでいたのだということをしっかり伝え、自身の責任と問題の切迫度を痛感していただかないといけない。
なにしろ、妊娠中に一人でハードな尻ぬぐいさせられたというのもかなりひどい話だし、あげく「前の奥さんの使用済みの生理用品」って……。
こばなみ:
これはびっくりですよ!! 人のものっていうだけでもキツいのに、元奥さんのですよ。しかも時間も経ってるんだから想像しただけでかなり辛い……!
いくら旦那さんがルーズな人にしても、まるやんさんを呼ぶ前にできることはあっただろうに。
宇多丸:
だからやっぱ、そんな目に遭わされた家にまだ住まわされているというだけでもう、まるやんさんが具合悪くなっても当然、という感じがします。
こばなみ:
買った家だからとかで、そういう流れになっちゃったんでしょうかね。
宇多丸:
持ち家なのかどうかはこの文面からは判断しかねるけども、仮にそうだったとしても、じゃあ売れや!ってだけの話ですよ。
新しいパートナーからしたら、前のままの人生設計スライドさせてくんなよ、私に合わせてそれも組み直せよ、ってことじゃないですか。
旦那はそこで、まるやんさんのためにひと手間割くのを、面倒だったのか後回しにしてしまった、もしくは避けてしまったわけでしょう。
そのせいで現にまるやんさんがこれだけ苦しんでるわけだから、ここからは言わばその贖罪として、たとえば引っ越しにまつわるもろもろのコストというのを、彼が率先して負っていってナンボ、なんじゃないですかね?
そう考えると、なーにが「今はその話関係ないでしょう」だよ!ってことでもあるんだよな。
お前がかたちばかり謝るだけで結局何もしてくれてないせいで、常に「その話」が頭にチラついて、こっちは苦しんでんだよ!って話なのに。
なんにせよ、まるやんさんが感じている不平等感は、まず最低限、そういう問題意識を彼側にきちんと共有することからしか、あらゆる意味で解消しようもないものだと思います。
ビシッと言って聞かせたうえで、やらせようぜ、引っ越し!
こばなみ:
でもかなり旦那さん、ルーズな人だから、できるのかな……。
宇多丸:
だからってそこで甘やかしてたら、永久に彼はそのノリのまま終わるだけ、というのは絶対にたしかですから。
まるやんさんだって、それじゃもう、持たないでしょう?
こばなみ:
眠れないとか、体にも影響が出ていますからね。
宇多丸:
さっきこばなみが言ったように、だって「現場」に住み続けてるんだから、そりゃそうもなるだろうと思いますよ。
とにかく、マジで「引っ越すor別居」ぐらいのことを突きつけていい案件だと僕は思う。
それでオール解決ではなく、そこからがようやくスタートライン、くらいに考えておくべき話ですよ。
「夫婦関係が悪化するのも怖い」と臆病になってしまう気持ちもわかるけど、そうやってまるやんさん一人がひそかにこの怒りを抱えこんでるからこそ、「何度もこの時の話を持ち出して」むしろ不毛なギスギスを増してしまってもいるわけで。
本質的な解決を求めるならばやはり、どこかで勇気をもって一歩踏み出して、問題の所在を明らかにする以外にないだろう、と僕らには思えますね。
こばなみ:
ズボラで汚部屋に慣れている私でも、この状況は相当キツいと思ってしまったので、旦那さんと早く話せるといいですね。そしてくれぐれも自分だけで我慢しないでくださいね。