手をつないだり頭をポンポンしてくれる10歳年上のバツイチ男性。これって恋愛対象?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室60】
✳️今週のお悩み✳️
春頃に知り合った10歳年上のバツイチの人を好きになってしまいました。毎回遊んだりご飯に行く時に手をつないでくれたり、頭をポンポンしてくれます。そんな彼の気持ちがわかりません。前に「付き合うかー、いや、俺にはもったいないな!(笑)」って言われて「そんなことない!」って言ったのにほかの話に流されました。次に会うときに告白しようか悩んでいて、また上手に流されちゃうんじゃないかと不安です。
(むた・22歳)
宇多丸:
相手は優しく接してくれているけど、恋愛対象じゃないんじゃないか?ってことですよね。
でもさ、「手をつなぐ」って、結構踏み込んでない?
こばなみ:
こりゃ、気がありますね。
宇多丸:
頭ポンポンはまだ妹扱い感もあるけど、手つなぎはさ、僕からするとかなりはっきりした好意の表明っていうか、ほとんど性的なアプローチにすら感じられるんだけど。
こばなみ:
ちょっといいですか? 頭をポンポンってどう思います? 私はイヤー!!
宇多丸:
馴れ馴れしく触んなよって感じ?
こばなみ:
なんか子ども扱いされてる感じがしませんか? 私は対等でいたい意識が強すぎて、かわいげがないのかもしれませんけど、バカにされてる気がしてイヤなんです……。
そういや、先日酔っぱらったときに、仕事関係の年上の人に帰り際に頭をポンポンとかされて、酔いも一気に冷めましたね。まぁ、私もちょっと弱音を吐いていたのが悪いんですけど、「がんばってるな。俺はわかってるよ」的なあのポンポンが、こんにゃろ~!って。
宇多丸:
むたさんは、「頭をポンポンして“くれます”」って言ってるくらいだから、完璧にプラスに捉えてるよね。
こういう風に、喜ぶ女の人が一定以上いる限り、良かれと思ってポンポンしてくる男もそりゃ減りませんよ。
こばなみ:
世の中にポンポン派の女子は本当に多い! だから得意気にポンポンする男子も多い! ぎゃー!!
宇多丸:
ただでさえ上から目線なところに加えて、「こうやってポンポンされると女の子ってキュンときちゃうんでしょ?」的な決めつけというか、若干のイヤらしい下心まで入ってる感じだもんね。
こばなみ:
そこが腹が立つんですよ。してやってる、しとけばいい気持ちになるんだろうって思ってる感じ。好意がない人はもちろん、付き合ってても、んなことで女の子全員がキュンとすると思ったら大間違い!
宇多丸:
こういう人もいるってことは、男性諸君! ポンポンはむしろリスクが高い行為であると認識を改めるべきですよ! 「相手に好意がなかった場合」と「ポンポン嫌いだった場合」の両方アウトなわけだからさ。
本当にね、前から言ってますけど、特に恋愛関係手前~初期みたいなセンシティブな段階では、常に「相手は迷惑じゃないかな?」と気にしてるくらいでちょうどいいと思うんですよね。
こばなみ:
じゃ、宇多丸さんはノーポンポン?
宇多丸:
ノーポンポン! 人の頭を触るって、国によってははっきり礼儀違反だったりしますし。
はっきりそういう関係の相手で、しかもプライベートな空間でなら、まぁ「髪を撫でる」とかはあるかもしんないですけど。
ポンポンはやったことないし、たぶん今後もやらないな~。
こばなみ:
「撫でる」はエロ系ですよね?
宇多丸:
まぁ完全にそっち系……、恥ずかしいな。
なんにせよ僕は、付き合ってもいない相手にいきなり表でポンポンとか、こばなみと同じく「どんだけ自分に自信あるんだよ? 図々しい!」って思っちゃう。
ただ、それがイイ!って女の人がたくさんいるっていうのも事実なんでしょうからね……、前に、「引っ張ってくれる人が好き♡」的な女の子の言い草に対して、「引っ張ってって、お前は家畜かー!」ってブチ切れたりしたじゃない? あれと通じる話だよね。 やっぱりと言っていいのかわかんないけど、とにかくなんだかんだ言って、男性には上に立って庇護してほしい、なんなら支配してほしい、みたいな需要が、女性側に根強くあるのは事実ってことですよね。
エラソーにしてるのがカッコいいと思ってる男と、それを良しとする女。この構図はまだまだ強固ってことですよ。
こばなみ:
ポンポン派を批難してると炎上とかしちゃうかしら!?
宇多丸:
でもなー。若いうちとかアツアツの時期にはポンポン派でも、そのうちやっぱりイライラしてくるんじゃないかと思うけどなー。相手に対して幻想を抱けてるうちだけでしょ、そんなの。
ちなみにさ、頭ポンポンに通じるソフトマッチョな振る舞いとして、「出会ってわりとすぐに呼び捨てにする」ってのもあるよね。
こばなみ:
絶対にイヤー!!
宇多丸:
こばなみはイヤかもしれないけど、それにキュンと来ちゃうって言ってる人、やっぱ結構いるよ。
これも要するに根っ子は同じ、「男にはグイグイ引っ張ってってほしい派」ってことですよね。
逆に、僕はかなり親しくなっても呼び捨てはおろか基本敬語で話してたりするんだけど、特に若い女の子とかは、そういうの嫌がるって聞いたことがあります。冷たい感じがするとかなんとか。 全体になんか、子供っぽいんだよな~。「引っ張って」も、「ポンポンして」も、「呼び捨てにして」もさ。
こばなみ:
恋愛コラムとかで、モテるにはかわいいピンクの服を着ろとか、そうは言っても男はフリルや巻き髪が好きだとか、おめおめと書いてあるじゃないですか!
宇多丸:
何が「そうは言っても男は」だよ、フリルなんかぜんぜん好きじゃねーよ! 勝手にひとまとめにしないでくれる?
こばなみ:
そういうのが恋愛バイブルみたいになってるのが腹立たしいんですよ。「まずは男の人の好みに合わせて気に入ってもらうのが必勝法!」みたいなよくわかんない教えが、引っ張って欲しい志向とかポンポン派にもつながってる気がする。
宇多丸:
オシャレって別にさ、「異性にアピールするため」だけのもんじゃないじゃん。
自分が着てて心地いい服を着る、「なりたい自分」になる、そういう側面のほうがむしろ大きいわけで。
じゃあ何、「モテるために」不本意な格好もしろっていうの? そんな犠牲を払ってまで、そこまでしてみんな「モテたい」のか? それってホントに楽しいのか?
確かに、女性ファッション誌の中吊り広告で見たことあるよ、「愛されコーデ」とかさ。 でもさ……。 「愛され」ってなんだよ!(怒) 愛されるよりも愛したい真剣(マジ)で!
こばなみ:
真剣(マジ)で!!
宇多丸:
ひたすら受動的に「愛され」待ち。
ただただ無条件でチヤホヤされたいだけ……。
そんなの長続きするわけないし、そもそもそこに引っかかるような男自体、ロクなもんじゃない可能性が高いよ!
こばなみ:
いや~、今日はなんだかアドレナリンが大噴出! では、ここらで本題に戻りますか。
宇多丸:
僕の見たとこ、彼はむたさんに気があると思いますけどね。
最初に言った通り、「手をつなぐ」っていう、かなり大胆なアプローチをすでにしてるわけだしさ。
少なくとも、好意というか、そういう目でまったく見てない、見られたくもないような相手と、手はつながないでしょー!
いろいろある肉体接触のなかでもかなり持続的なほう、つまり一定時間ずっとピッタリ触れ合っている状態なわけだし、「親密さ」の表現として、実はかなりディープな部類に入ると思うんですよね。
あと、「付き合うかー」のあと、間髪入れず自分で突っ込んで冗談めかしてるでしょ。 僕は逆に、そこに彼の本気を感じる。
ホントに冗談のつもりだったら、むたさんがそこに乗ってくるのを待つはずでしょ。 で、「付き合おうか~」「いいわね! もうジイさんだし、たっぷり保険金かけさせてもらうね~」「いや~まだまだカラダは二十台だよ、試してみる~?」とかなんかさ、しばらくそのネタを転がし合ったりするもんじゃん。
でも彼は、むたさんが答えるスキを与えずに、あわてて自分でツッコミを入れて、言ってみれば予防線を張っている。 それだけ、むたさんからのちゃんとした回答に向き合うのを怖がってるってことですよ。もっとはっきり言えば、決定的に断られちゃうのを、それで今の関係が壊れてしまうのを怖がってる。
なんでかと言えば、それはおそらく、自分が10歳も年上でバツイチで、というところに引け目を感じているからですよね。 「俺にはもったいないな!」というのは本心だと思うよ。
なので、むたさんの「そんなことない!」が流されたのも、「優しいからああやってフォローしてくれてるだけで、こっちが実はマジだと知ったら、途端に引かれちゃうかも……」みたいに、要はやっぱり決定的な回答みたいなところに話が行くのをちょっと怖がってるか、もしくは、実は内心あまりにも「俺、なんてことを言っちまったんだ!」的に動転しすぎてて、むたさんの言ってることを真正面から受けとめる余裕がなかったか、まぁそんなとこじゃないですかね。
だから、むたさんからのもう一押しで、フツーに上手く行くんじゃない?って気がしますけど。 また彼が冗談っぽく流そうとしたら、「冗談で言ってるんじゃないの! 真剣に聞いて!」なんつって、真正面から彼の目をじっと見つめるっていう……。
こばなみ:
なんかお悩みっていうか……。ねぇ? 幸せ目前じゃないっすか。
宇多丸:
せっかく手をつないだりはすでにしてるわけだからさ、今度のデートのときにはちょっとだけ指を絡めてみるとか、思いきって腕を組んでグッと身体を寄せてくとか、とにかくむたさん側からそういう雰囲気を積極的に作っていけば、より成功率は上がると思いますよ。
仮にそのときすぐ成果が出なくても、彼がむたさんを好ましく思ってることだけは間違いないから。まぁ悪い結果は出ないはずですよ!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年9月6日に公開したものを再編集し、掲載しています。