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夫婦別姓を批判する彼。広い視野で世の中を見てほしかったのでいち意見を言ったら「俺の名字にしたくないのは俺のことが好きじゃないから」などと言われ……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室357】


✳️今週のお悩み✳️
長く付き合ってる彼氏と道を歩きながらの軽い会話で、「嫁って言うといま叩かれるらしいよ!」と私が言ったら、驚いたあとに「ほかに何か例ある?」と言われたので、「私は夫婦別姓制度に賛成。賛成というかどっちでもいいんだけど自分の名字に愛着があるし、変更手続きが面倒くさい」と言ったら、ちょっと理解できない、長男&ひとりっこだから名字を守りたい、妻が別姓だとまわりから理解されない、その考えだったら俺とは無理だと思うと批判されました。何か例ある?と言われたので軽い感じで言ったのにムキになられたのも理解不能ですが、長男うんぬんという理由は私も長女だし私だけが名字を捨てるの?となるので理由にならないし、手続きの面倒くささを女性だけが負担してることを理解してもらいたかったのですが話が進まず。私が少数派なのはわかっている、だけどこういう意見が出てきているということを理解して欲しい、実際はそっちの名字にすると言っても、それだとイヤイヤ受け入れてもらった感じで嫌だと言われ。私が通り名は彼氏の名字にして、本籍だけ別姓にするのは?と提案しても拒絶。俺の名字にしたくないのは俺のことが好きじゃないからと言われ、そうじゃないのですが確かに彼氏の名字の字面が嫌なのはあります(笑)。私の家は父が婿養子で母方の名字です。それを言うといままで驚かれなかったことがなかったので、イレギュラーなのは承知です。なんかこんなはずじゃなかったのに……、トホホって感じで議論するのも疲れました(笑)。ただ広い視野で世の中を見てほしかったのでいち意見を言ったらこうなり、やっぱり嫁入りって染みついている彼氏の価値観を変えるのは難しいですよね? 私が議論を諦めるのが一番の解決方法だと思ったのですがモヤモヤしたので相談させていただきました。彼氏から私の意見を友達に相談したと言われ、フェミニスト彼女と思われてそうで嫌です(笑)。ちなみにその友達は、そういう意見もあるよね、ただ少数だよねとのことでした。
(しゃもじ・29歳・会社員・埼玉県)


宇多丸:
僕自身の意見としても、少なくとも「選択的」夫婦別姓に反対する人って、いったいなんなの?って、普通に思っちゃう。

こばなみ:
選ぶのすらダメっていうのは、どういうことなんでしょうね。

別姓によって家族の一体感が損なわれる、子どもの姓の安定性がなくなる、だから旧姓の通称使用の拡大で不利益をなくすのが現実的だと、反対派は主張していましたけども。

宇多丸:
高市早苗さんとかの言い草ですね。

とにかく論拠が希薄だし、要は「前からのしきたりに一律自動的に従うほうがなんとなくみんな安定した気分になるじゃん?」程度のことしか言ってないと思いますけど。ただの思考停止的な、「昔はよかった論」ですよ。

個人がいま現に発している具体的な痛みや苦しみや不都合の訴えよりも、そっちのが大事なんだってさ!

じゃあ、そういうシステムを取ってない国は、家族が成り立ってないんですか?って話だよ。バカバカしいにもほどがある。

こばなみ:
妻が別姓だとまわりから理解されないって……。

宇多丸:
その「まわり」っていうのは、要は家族を中心とした、彼が生まれ育った環境のことですよね。

間違いなく、旧態依然とした価値観にカチコチに凝り固まった家風なんでしょう。

そして彼自身、そこになんらの疑問を抱くこともなく、それこそが万人に普遍の真理であると心底信じ込んだまま、ここまで来ちゃった人でもある。

だからそんなふうに、最低限いまどきそういう議論があることくらいは知ってろよ!とも言いたくなるような、素で驚いちゃってるような反応が出てくるわけで。いま、その段階から話しはじめなきゃダメ?みたいな。

ま、一部政治家の発言とかも、まさにそういう感じだったりするけどね……。

個人的には、しゃもじさんには悪いけど、この一件だけでもう僕、その彼氏のこと、すっかり嫌いになっちゃってますよ。友人としても嫌。

だって、パートナーが直接伝えている気持ちより、やっぱりしきたりが優先だって言うんだから。大きな言い方すれば、平気で他者の人権を軽視できる男、ってことじゃない? 人として嫌いですよ、そんなの。

とにかく、そんな人とこのまま結婚していいのかな……とは思っちゃうんですよね、正直。

だって、しゃもじさんは現状、この名字の件ひとつですら、話の通じなさを苦痛に感じてるわけじゃない?

結婚したら、彼のそのノリが、生活とか、人生のすべてを支配してくるわけですよ。

たとえば、子どもを産む、産まない……、男の子が産まれなかったら、彼の家族にやんわりきっちり責められ続ける、とか。

こばなみ:
嫌だよー!

宇多丸:
ぜんぜんありうる話だよ。

彼が主張しているのって要は、男系の存続が何より優先される、っていうイズムなわけだから。

それで出てくるのが、「私が議論を諦めるのが一番の解決方法」っていうのも、あまりに悲しすぎる結論ですよね……、それってつまり、まさに森喜朗元首相が言うところの、「わきまえている」女性ってやつじゃないの?

その意味では、「フェミニスト彼女と思われてそうで」って言い方も、要は「わきまえていない女」は嫌われる、みたいな論理を、しゃもじさん自身がある程度まで内面化しちゃってもいる、ってことの表れでもあるわけでしょう。悲しいなー。

でもさ……、しゃもじさん、あんたそれでホントにいいんかい?

こばなみ:
長く付き合ってたら、そういうところ節々に感じなかったのですかね?

宇多丸:
いやでも、こういうことってぜんぜんあると思うよ。

長年一緒にいて相手のことはなんでも知ってるつもりだったのに、あるトピックについて話しだしたら、不意にギョッとするような思想性が出てきた、みたいな。

これ、こばなみならどうする?

こばなみ:
いやいや、私はこれ級のことに遭遇してしまったら、ちょっと無理です。結婚なんてなおさら、付き合っていくのも厳しいなと思っちゃうかも。

ちなみに、実は私は、偶然オットと同じ名字だったので、結婚前後で何も変わらず生きておりまして。手続きの大変さもなければ、アイデンティティの変化もなかったのですね。たまたまですが、名字が変わらない利点を感じることができました。ただ反面、たまたま同じ名字というだけで戸籍以外の手続きの変更がないのは、名字の軽さって言うんでしょうか、逆に名字ってなんなんだろうって思ってしまって。

私の場合はレアケースですけど、反対派の「同じ名字だと家族の一体感がある」論理も、もっとよくわからなくなってきました。

宇多丸:
たまたま姓が同じというだけで「どちらの家系の“小林”か」は手続き上も問われないなら、じゃあやっぱり姓の統一というのは、そもそもそんなご大層な意味があるわけじゃなくて、ただただ便宜上の慣習でしかないんじゃん、という本質が、はからずも露呈するようなエピソードですよね。いいかげんなもんだなー本当に。

それなら単純に、その人にとって便宜がいいほうを選ぶということでいいじゃん、となるわけだから。

なんにせよ彼は、しゃもじさんからのせっかくの問題提起も、たとえばちゃんと勉強し直してから改めて考えてみるとか、彼なりの誠意をもって受けとめようと努力するようなそぶりすら、いまんとこまったく見せてませんよね。

やったことと言えば、明らかに自分に同調してくれそうな同性のご同類に、おそらくは相談という名の愚痴をたれたあげく、「一般的な意見ではない」なんて都合のいい言質をわざわざ取ってきてみせただけ。

しゃもじさんの考えや気持ちを理解しようとする気はさらさらないですよね、明らかに。

だいたいその友達とやらが言っている、夫婦別姓賛成は少数派って、ホントか?

こばなみ:
自民党内でも大揺れですが、選択制夫婦別姓の賛成の議連に100名以上参加表明したといってましたよね。そして世論調査は7割など、断然賛成が多いのに……。

宇多丸:
やっぱそうだよねぇ。

つまり、世間一般の趨勢レベルからさえも大幅に遅れちゃってるのに、自分ではまーったく気づいてもいないわけですよ、その彼氏たちというのは。

なのに、人の話をまともに聞く気もなさそうで。だからもう本当に、つける薬がない。

いまは若いからまだ気にならないかもしれないけど、このまま歳をとったら、ホントに森喜朗的な、手のつけられないおじさんになるだけだよ、確実に!

「俺の名字にしたくないのは俺のことが好きじゃないから」とか、よくもまぁ恥ずかしげもなくこんなガキみたいなこと言えるもんだと思うし……、それを言ったら、私が嫌だということを強制してくるのは私のことを本当には大事に思っていないから?ってほうが、よっぽど説得力あるよ!

そしてやっぱり、彼のそういう面に目をつぶったまま結婚なんかしちゃうと……、たとえば彼側のご両親とか、長男というのをこれだけ特別視するような教育を当たり前のようにしてきたくらいだから、こっから先の「嫁」のありようすべてにも、あーだこーだと口を出してくるのがもう、目に見えてますよね。

まして「わきまえない」部分に関してなど、まぁどんな言われ方をするのやら。

こばなみ:
親族一同からも言われそうですね。

宇多丸:
たとえば、山内マリコさん原作のあのこは貴族とか、ちょっとエグい描写もあるけどSwallow/スワロウとか、要はどちらも、何よりまずは家父長制の存続のために生きるよう要求される「嫁」が、どんなに裕福でもそんなのもううんざり!となって、やがて自分自身の人生を取り戻してゆく映画なんだけど、いまのしゃもじさんにはぜひ、おすすめしておきたいですね。

まぁ僕らは、彼のいいところを知らないから、ちょっと過剰に厳しい物言いにはなってしまってるかもですが……、それにしても、ねぇ。

こばなみ:
彼の考えが変わることは難しいのですかね?

宇多丸:
それはもう、彼次第ですよね。

彼が無批判に継承しようとしている「古き良き」家父長制的家族像というのは、実際のところ女性側に一方的に我慢や諦めを強いることでなんとか成り立ってきたものであって……といった道理を、いずれは理解し受けいれるような余地が、今後の彼にあるのかどうか。

ひとつ言えるのは、彼はいまのところたぶん、これがそこまで重い、深刻な話だとは思ってないんですよね。

下手すりゃ「女がわがまま言うようになった」くらいのことだと考えてるかもしれない……、事実、本気でそんな感じに思っているのであろう政治家や芸能人の発言、いまだに後を断ちませんしね。

果たして彼は、そうした無知ゆえの醜悪な段階を乗り越えて、最低限パートナーとの本気の対話に向き合うことが、可能性としてできる人なのか……、そこはさっきも言った通り、この相談文から得られる情報だけで僕らがジャッジしきれることじゃないですからね。

最悪、改めて話し合ってみたところで出てくるのは結局、「跡継ぎは当然必要だし、男の子はやっぱり産んでほしいなー」とかばかり、だったりして。

こばなみ:
ひゃー!

宇多丸:
あるいは逆に、いざちゃんと話してみたら、やはりさすが私の好きになった人、しっかり自分の非を認めて考えを改めてくれた!みたいな展開にならないとも限らないけど。

いずれにせよそこから先は、彼の人となりをよりよく知っているはずの、しゃもじさんが決めることですから。

こばなみ:
にしても、これだけいろいろニュースとかになっていても、それでも少しも揺るがないものなのですね、自分の考えって。

宇多丸:
まずやはり育った環境が、相当にガッチガチなんでしょうねぇ。

ニュースとか見ても、「しもじもの者どもが、なんだかえらく騒いでいることだなぁ。はぁ世も末じゃ、おそろしや」とかしか思わないし、思わないで済んでいる人たち、ってことなんじゃないですか?

に、したって彼のこの天然の意識低さ加減は、ぶっちゃけ基本的な知性まで疑いたくなるレベルですけどね。

しゃもじさん、彼で本当にいいのだろうか……。

こばなみ:
しゃもじさんが心配です。

宇多丸:
心配ですよ!

極端な話、あなたはいま、この先「わきまえる女」として生きてゆくかどうかの、重要な岐路に立っているのかもしれませんよ。

仮にこのままの彼を黙って受けいれて、結婚生活を表面上つつがなく送れたとしても……、歳月が経って、隣にいるのは、森喜朗ですよ!(笑)

要はああいうような人と生涯を過ごすんだ、とは覚悟しといたほうがいい。

あくまで、彼がまったく変わらないようなら、ですけどね。

個人的な意見としてはやはり、黙ってこのまますべてを我慢するだけ、なんてのは、絶対反対ですね。

なぜなら彼の反論の仕方には、他者に対する不寛容と想像力の欠如、無知と思考停止ゆえの権威主義、無自覚な性差別意識など、なかなかに重大な問題がこれでもかとばかりにつまっていて、少なくともパートナーという立場にいるならば、それを看過、黙認したままというのは、僕なら自分自身が耐えられないと思うから。

なので、彼の「再教育」を試みるにせよ見限るにせよ、もう一度しっかり話して互いの価値観を突きあわせる機会を持つというのは、必須じゃないかと思いますよ。

結婚まで行こうというならなおさら!

まぁこれは、生きるうえで何をプライオリティの上位に置くかという、個人の人生観の問題でもあるので、しゃもじさんがもし「いや、そこまで大げさな話にもしたくないんですが……」的なテンションなんだったら、もちろんそれはそれで、ということではあるんですけど。

とにかく僕らサイドは、わりとはっきりそういう意見だ、ということです!

とはいえ好きではあるのだろう彼のこと、勝手にボロクソ言って、ごめんなさいね……。

こばなみ:
なかなか厳しい局面かもしれませんが、しゃもじさんのモヤモヤが晴れるような話し合いができることを祈っております。またモヤモヤしてしまったら、遠慮なくご連絡くださいませ。


【今週のお絵描き】

画・宇多丸



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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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