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自分の物差しで部下に指示・命令するなど、凝り固まった老舗の大手企業のなかで、この先の会社をつくっていく若い人たちのために、私ができることは?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室347】


✳️今週のお悩み✳️
今の会社に中途入社して10年弱、アラフィフ間近。年齢も相まってか、平社員ながら、自分よりも若い世代の社員から、業務、プライベート関わらず、様々な相談を受けることがあります。ここ最近、特に女性社員から、男性上司からの業務指示が納得いかない、受け入れられないという相談をよく受けています。今いる会社はいわゆる老舗の大手ということで、いわゆる根性論が当たり前だった男性社員中心で構成されていた時代の人たちが役職についています。ここ数年、時代の流れに乗り、会社の枠組みにも改善がなされ、コンプライアンス、ダイバーシティ、ハラスメント、ライフワークバランスというようなものが、会社の取り組みとして導入され、今まではなかったハラスメント相談窓口が開設、パワハラなどの相談数が徐々に上がっていると言うようなレポートも配信されるようになりました。が、現場では、まだまだ大きな変化は起こっていません。マネージャーは、研修(本人たちから行きたくないよー、研修嫌いだー、というコメントをよく聞く)を必須で受けるのですが、研修後にそれを本気で実践しようとしている人は少なく、今まで通り、自分の物差しで部下に指示・命令を続けている光景が続いています。
例えば、「もうそこそこ良い年なので、体力的にも精神的にもこれ以上残業時間が増えると精神か身体が壊れます」とはっきり話しても、「そんなこと言ったら俺の方が年上だよー(苦笑)」と自身と比較したり、残業推進をしているわけではないと言いながら、残業時間が30時間を越えている状態の人に向かって、「そんなに言うほど残業していないよね?」というように、上司自身と比較して判断されてしまう。また、評価面談の際、昇格や昇級にそれほどこだわりがないと言うと、「昇格させてやろうと、今まで責任ある仕事を渡してきたのに」と、ガッカリされ、望んでいない、上司自身の価値を押し付けられた、などの相談もありました。
いろいろと聞く相談内容を整理しながら考えていたところ、自分の中で一つの結論が出てしまったのです。この会社には、一般的なマネージメントが実践出来ている人がほとんどいない。かつ、数千人の社員がいるにもかかわらず女性のマネージャーの割合は1割未満、そのため、男女平等の名の下に、男性基準での業務指示や評価がされている、と。マネージャーに上がるのは、メイン業務で功績を挙げた人や、年次が進んでいる人が選出されており、マネージメント能力での判断は二の次というのが実情です。マネージャーになってからマネージメント研修を受けています(苦笑)。これはおそらく、世の中で今たくさん起こっているのだろうなということも、想像がつきました。なんなら、まだハラスメント相談窓口があるだけ進歩している会社という話なのかもしれません。というところで、この先の会社をつくっていく若い人たちのために、私がこの会社で出来ることはなんなんだろう?という悩みに自身がぶつかってしまいました。微力ながら、ボスマネージメントや、人事に実情を報告するなどのアクションはとっているものの、会社規模からすると本当に微風以下の風しか起こせておらず、悔しいとまで考える日もあります。極論、自分がマネージャーになり、見本となって微風から弱風に力を強めて改革を推し進めるか、なんなら独立して自分の会社をつくるくらいしないと、自分が望んでいるような理想の会社にはならない。と言ってもマネージメントが理想的でも会社が成功するのは別の問題だ、という答えが出てきて、あっというまに無理だなと諦めてしまうのですが……(苦笑)。
長々と書いてしまいましたが、このアラフィフ間際世代が、若人たちへ夢のある未来をつなげるには、どういう考え方やアクションを起こせば、凝り固まった世代に効果的であるのか、まさに上司世代と同じ世代にも関わらずアップデートを怠らない宇多丸さんと、相談に来る女性と私の間の世代にいる、こばなみさんに、何かしらヒントがもらえないかなと思いメッセージいたしました。よろしくお願いします。
(猫まみれ・ アラフィフ・会社員・東京都)


宇多丸:
まさに会社組織ど真ん中にいるこばなみ、どうですか?

こばなみ:
うちは、そもそも20人規模の小さい会社なので、一人ひとりの意見が通りやすいといいますか。困ったことがあったら、話し合って解決、ということがやりやすい環境だとは思います。若い頃から、先輩に言ったり、社長に言ったりはしてきました。

規模もそうだけど、個人プレーも多いっていう業種の特徴もあるので、男女もかなり平等。業界全体でも比較的そういう平等な感じはあるんじゃないですかね。幸いにも、困ったと感じたことはなくって。

ただ、お察しの通り、業務時間はけっこうハードですけどね。でもこの仕事が好きだし、時間通りに終わるもんでもないと思っていたし、結局そんな人が集まってる業界ではありますよね。

なので、この文章を読んで、猫まみれさんの環境を想像するに、それはそれは大変なのだなと思いました。

宇多丸:
まぁ、要は自分を取り囲む環境やシステムとどう折り合ってゆくか、というのは、ヒトが社会的存在である限り、誰でも大なり小なり必ず直面する、大変普遍的な問題でもありますよね。

特に、そこで気に入らないことがあった場合、戦って変えようとしてゆくのか、だとしたらどこまでやるのか、あるいは損得勘定的にスルーしといたほうがいいのか、みたいなことって、その集団の母数の大きさとかそのなかでの地位とかによっても当然変わってくるわけだけど、常に悩みどころではあるよね、万人にとって。

その意味で、猫まみれさんのところは「老舗の大手」ということで、会社組織としてはわりとガチガチというか、今さら何か働きかけてどうこうなりそうな気配があまりしないほう、ではあるのかもしれないけど……。

それでも、対国家体制ほどではないはず!(笑)

いや、それすら本来は、「戦って変えようとしてゆく」権利があるはずなんだからさ、主権者たる我々には。

その点、猫まみれさんが求めているのは要は合理性なわけで、それは企業の論理とも矛盾しないはずだよね。これまた「本来は」、という話にはなっちゃうのがアレだけど……。

とにかく、なんかしら良くしてく余地はぜんぜんあるんじゃないかと思いますけど。

こばなみ:
大きい会社だからこそ、猫まみれさんと同じような考えの人がいるはずだと思います。スイミーの絵本じゃないけど、小さい力が集まって、変えていくことは不可能ではないんじゃないかって。

大企業の人事系の部署に勤めている友達に聞いたら、企業の方針もどんどん変わっていっているから、こういう上司もどんどん淘汰されていくのでは?と言っていました。

友達の会社は、部下が上司を評価するそうです。なので、こういうこと言ってる上司がどんどんいなくなっていくそうですよ。

宇多丸:
そうなんだ!

それは世の中の着実な進歩ですね。

あと、こと労働条件に関することは、ホントは組合で交渉すべき案件じゃない?という気もするけど……、こばなみがさっき言った「小さい力が集まって」っていう、まさにそのためにあるもんでしょ、労働組合って。

ただ、今どきはすっかり弱体化していたり、形骸化していたりするところも多いんですかね、やっぱり。

僕自身はサラリーマンだったことがないから組織のなかの立場がどうこうとかはあまりよくわかってなくて申し訳ないんだけど、雇い主に対してより弱い立場とも言えるフリーでずっとやってきた身として、自分なら理不尽な状況にどう対処するか考えてみると……。

まずやっぱり僕も、なにか不満や改善案がある場合はすぐ、はっきり言いますね。もちろん言葉選びは気をつけますけど。

そうすると、その場ですべてが解決するわけじゃなくとも、こちらがそういう主張をしたという事実は、先方の頭にも、少しずつ蓄積されてゆくわけでしょ。

たとえばぶっちゃけた話、どんな人だってさ、文句は言われたくないわけじゃん?

だから、仮に最初の時点では意見が対立していたり理解してもらえなかったとしても、次からは、あっちだってめんどくさいことにはなりたくないんだから、少なくともちょっと「気にする」ようにはなってくるもんだろうと思うんですよね。無意識的にせよ。

逆に、何も言わないままでいたら、向こうはそこに問題が存在することすら気づかない、なんなら現状が肯定されたと判断してしまう可能性が大なわけだから。

その点、猫まみれさんの会社は、残業パワハラはダメですよっていう社会の流れに、一応の建前上ではあっても、乗っかってるわけじゃん?

そこは最大限、盾にできるあたりなんじゃないかと思いますけどね。

「あの窓口は建前上つくっただけ、ということでよろしいんでしょうかぁ?」「そういう実態が外に漏れたら、今どきどれだけ非難が集まってしまうことか……」とか、ガンガン炎上恐喝すればいいんじゃない?(笑)

なんにせよ時流が味方というのは、これまでの時代とはまったく違うところですからね。

無論、すっごく厄介なやつ扱い、最初はされるでしょうけども……。

物事を変えてゆこうってときにはどうしたってそれは避けえないでしょうし、特にこの猫まみれさんの場合は、主張自体の圧倒的な正しさと、繰り返しますがそれを後押しする世間的な潮流というのがあるわけですから、こばなみが言うような社内の同志も、見つけやすいんじゃないですかね。

こばなみ:
友達の会社では、そういう改革のような動きを支店レベルでしているうちに、良かったので評価されていって、会社全体の取り組みになったこともあるって言っていましたよ。

宇多丸:
なるほど。そういう成功例も現実にあるよと。

なので、文中で想定されているなかで言うと、「自分がマネージャーになり、見本となって微風から弱風に力を強めて改革を推し進める」なんてことが実際にできるなら、おそらくやはり、それが一番話が早いのは間違いないかと。

そのあとの「独立して自分の会社をつくる」にしても、そこまでに猫まみれさんに賛同するメンバーを一定量集めて、言わば票を固めておかないといけないのには変わりないわけだしね。

ただ言うまでもなくそっちに関しては、ご自身も書いているけど、マネージメント効率うんぬん以前にまた別の大きな賭けをしなきゃならないわけで……曲がりなりにもそこが選択肢に入ってくる猫まみれさんって、能力的にも胆力的にもホントにすごい人なんだろうなー!と、素直に感心しちゃいました。

特に、今いる組織には男性中心主義が染みついちゃっててそこだけはどうしようもない、という感じなら、それしか本質的な解決策はない、という部分もあるのかもしれないですよね……、まぁそんな会社はきっと、順につぶれてゆきますよ、この時代!

とにかく、さっきも言ったけどいまどきの企業って、世間様から叩かれることを、異常なまでに恐れてもいるわけじゃん?

だからやっぱ、ことあるごとに脅してきゃいいんじゃないのかね(笑)。こんなん放置しとくと炎上しちゃいますよ~って。

正しいのはこっちなんだから胸張ってカマしてきゃいいよ!

それに猫まみれさんは、下の世代に対する責任まで、しっかり考えられていて……、長い目で見たら、これほど会社思いの社員もいないよ! 上の連中は感謝すべき!

逆に言えば、今の時代的なタイミングのなかでなお、猫まみれさんたちの世代が特に動こうともせず、負の遺産をただただ次世代に先送りするばかりだったりすると、事実上その前の世代とも同罪ということで、のちのち恨まれちゃうかもしれないですよね。

現にいま、相談窓口ができた途端に、訴えを寄せる人がどんどん増えているっていうんでしょ。

つまりすでにもう、具体的な被害者が社内にいるわけじゃん。

だとしたらやっぱり、そこは立場が上の者から率先して、「言うべきことを、言うべきときに、言うべき相手にはっきり言う」スタンスを体現してみせる、というのは、それだけで意義あることなんじゃないかなぁ。

後進に背中を見せるというかさ。

こばなみ:
そうですね。

猫まみれさんのような女性の先輩がいたら、頼もしいだろうなって思いました。

宇多丸:
それで、私もガマンしないでいいんだ!って思える人が増えるだけで、すでに実質すごいプラスなわけだからね。

あとはその、ハラスメント相談室とも連携して動いてってもいいかもしれないよね。

法律的な専門家もいるんでしょうし。

頼れる組合がないならそうやって、自ら強力な圧力団体を形成してゆく、というのはどうですかね?

で、それでもどうしてもらちがあかなければ、相談文にもあるように、その軍団を引き連れて独立!みたいな一大ジャンプも視野に入れてく、みたいな。

もしそんなんが成功すれば、それこそ世の中全体に対しては一番、いいエフェクトを与えることになるかもしれないですけどね。

なんにせよ、それもこれも、まずは日々の小さな一歩から、少しずつでも声を上げることから、でしょうから。

ちなみに、「凝り固まった世代に効果的」というあたりで言うと、これは交渉術全般に言えることでしょうけど、人前であからさまにメンツをつぶして逆に意固地にさせてしまったりしないよう、相手の立場や逃げ場も計算に入れて話を運ぶ、たとえば、向こうの言うことをまずはいったん「まさにおっしゃる通りで……」などと肯定してみせることで心を開かせてゆく、といったテクの数々も、一応あるにはありますが……。

それも、正されるべき歪みの度合い次第ですよね。セクハラでもなんでもいいですが、一発アウト級というか、ポーズであっても絶対に譲るべきでない一線というのは、当然あると思います。

とまぁ、いろいろ話してきましたけども。会社勤めしたこともないおっさんが自分の経験則だけでベラベラと偉そうにアドバイスめいたものなどして、ホントずうずうしかったかもですね……、すみません!

こばなみ:
私もすみません。大きい会社の状況がわからず言いたい放題でしたが、でも何かしらのヒントになってくれるといいなと思い、取り上げさせていただきました! 追加でご相談があれば、いつでも連絡くださいませ。大変だと思いますが、応援しています!!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2021年1月9日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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