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友人の結婚が羨ましく、妬みや差別意識がわいてきて……。素直に友人の幸せを喜べない自分が嫌です。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室346】


✳️今週のお悩み✳️
私の悩みは、他人の結婚が羨ましくなってしまうことです。私は今年の頭に結婚しました。夫は優しく誠実で価値観も合い、最高のパートナーだと思っています。夫と私は同じぐらいの学歴と年収で、育ってきた家庭環境も似ています。基本的にはずっと共働きで、家事は折半していく予定です。私が望んだとおりの結婚の形なのですが、いわゆる「羨ましがられる結婚」をした友人たちから近況を聞くと、モヤモヤしてしまいます。年収2000万の男性と結婚して専業主婦をしている友人、海外の男性とスピード婚をしてダブルのお子さんがいる友人などです。ただ羨ましく感じるだけならいいのですが「自分は短大卒でずっとニートしてて、大して美人でもないくせに若いってだけでそんないい男と結婚できるなんて!(お相手は10歳近く年上です)」とか「相手の年収すごく低いし出会いはナンパだったらしいけど、白人男性だったから結婚したんでしょ?」とか醜いことを考えてしまいます……。学歴や年収なんて人間性と関係ない、家事も仕事の一つである、ルッキズム・エイジズム・レイシズム滅びろ、出会いの形がどうであろうと二人が幸せならそれでいいじゃない!と普段は本気で思っているはずなのです。前者の友人のことも、短大卒だからどうのこうのとか、結婚する前は考えたこともなかったです。それとも私はただの偽善者で、実際には昭和の価値観丸出しの保守的な人間なのでしょうか……。「二人がいいならそれでよし」と心の底から思いたい、他人のことを気にしないで生きていきたいです。何より、友人の幸せを素直に喜べない自分が嫌です。おそらく、このような醜いことを考えてしまうのは、お世辞にも容姿がいいとは言えないからこそ、勉強と仕事をそれなりに頑張ってきた自分のプライドが揺らぎそうになるのを保っているんだと思います。そして一時期海外に住んでいたころ、非白人男性とお付き合いしたときに周りの日本人女性から言われた酷い言葉を内面化してしまい、白人至上主義のケがあるのかも。私はどうしたらいいでしょうか……。
(め・32歳・会社員・神奈川県)


宇多丸:
めさん、本当に真面目で誠実な方ですよね。

良識やモラルというものを人一倍大事にされているからこそ、自分のなかにそれと反する感情、妬みとか差別意識がわいてきてしまうことが許せず、悩まれているわけでしょう。

僕は、そうやって「あ、いま私、良くない考え方しちゃったかも」と自覚して、己を厳しく戒めることができている時点で、人としてじゅうぶん……というより、現実的に人間が目指せる境地のかなり上限のほう、と言っていいくらいなんじゃないかと思いますけどね。

ネガティヴな感情や考えをまったく抱かないなんて、完全な悟りの域、それこそブッダとかレベルの話だよ!

それにしたって、いきなりその域に達したわけじゃないでしょうしね。

たとえば、めさんがおっしゃっているような「ルッキズム・エイジズム・レイシズム」とかにしたって、そういうのを抱いている悪い人とまったく抱かない善人とがぱっくり分かれてる、みたいなことじゃなくて、残念ながらまだまだそれらを構造的に内包する社会に生きてしまっている以上、誰の心にもある程度は染みこんでしまっている、なんなら差別される側さえ内面化してしまっているようなもの……だからこそ厄介なんだし、だからこそ意識化・言語化して問題をあぶりだし、少しずつでも正してゆくことが必要だし、大事なわけでしょう。

むしろ、今回のめさんのような謙虚な自己反省もなしに振りかざされる正しさは、単に人を攻撃するための道具に、簡単に成り下がってしまいますから。そっちのがずっと怖いですよ。

いっぽう、僕ら含めたいていの人たちは、妬みの裏返しとしての見下し、みたいなことを、ほとんど無自覚なまま、実質毎日ダダ漏れさせてる状態ですからね(笑)。

自分とはなんの関係もないはずの有名人の失態やら謝罪やらに大喜びで群がるのとか、まさにそういうことでしょ?

それで適宜、いわゆる「ガス抜き」してる感じですよね。

もちろん決して褒められたもんじゃないけど、一種の生きる知恵では間違いなくある。

こばなみ:
言われてみれば私も芸能人のスキャンダルを普通に見てますね。妬みつつ、でも芸能人だってダメなところもあるじゃん!とかってツッコミしながら。いろいろ酷いこととかも思うんだけど、バチが当たって自分に返ってきそうだと思うと怖くなってやめて、でもまた考えてって、その繰り返しで悶々……。

宇多丸:
そういう後ろ暗さを同時にちょっと感じてる人も、実は多いのかもしれないですよね。

要はさ、感情や欲望は「わいてきてしまう」ものだから、はなから完全に抑えこむというのは生き物として不可能に近いし、それが生じたなりの理由はあるわけだから、ただないことにしようとしても、それはそれで精神によろしくないものを蓄積してしまって、明らかにあまりいいことにはなってゆかない。

大事なのは、それらをいかにコントロールしてゆくか、ということなわけで。

そしてそのためには、いったんわいてきてしまったモヤモヤの正体を、理性や知性で、しっかり見きわめる必要がある。

そこから、「あーこれは、コンプレックスの反動でつい過剰に攻撃的になってしまったんだな」とか、身もフタもない自己分析まで行ければもう、じゅうぶんすぎるほどで。

めさんは、すでにそこまでちゃんとできてはいるんだから、人としての徳は現時点でもう、かなり高いほうですよ。

少なくとも「昭和の価値観丸出しの保守的な人間」は、こんな風に己を省みたり、絶対しないですから!

逆に、めさんがこうやって、冷徹に自分の中の負の側面を見据えて、反省し苦悩していること自体が、時代が進歩しているということの、なによりの証明だと思いますよ。

たとえばルッキズム・エイジズム・レイシズム、以前はきちんと問題視すらされてこなかったから、そういう言葉も浸透していなかったけど、今はこうして、一般的な議論の俎上に乗るようにはなってきたわけでしょ。

ただ、めさんは、さっき言ったように「わいてきてしまう」、根本の心情的な部分からご自分に厳しすぎるきらいはあって、そこはできれば、もうちょっとゆるく構えられるようになってもいいのかな、とは思います。

こばなみ:
これ読んで、少し楽になってほしいですね。

宇多丸:
ぶっちゃけ、どんなに内心ではよからぬことを考えていようが、それを表に出さない、出すもんじゃない、という最低限の矜持さえ守れていれば、なんの問題もないでしょと思うんですよね。

それすらできてない人もたくさんいるっていうのに……、アリかナシかのジャッジを的確にして、ちゃんとブレーキかけられてるんだったら、それはもうはっきり、善良と言っていい部類の人間でしょ。

なので、めさんも、「……という風に、誠実に悩める私って素敵!」くらいに考えといていいですよ。

そのくらいのナルシシズムは、実際の善行で許されます!

それと、「容姿がいいとは言えないからこそ、勉強と仕事をそれなりに頑張ってきた自分のプライドが揺らぎそうになるのを保っている」というめさんの今の気分にぴったり来て、なおかつ元気も出てくるであろう作品として、映画『ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー も強力に推しておきたいですね。

外側から見ると何も考えてなさそうだったり、何考えてるかわかんないようなやつらだって、当たり前だけどそれぞれの事情や苦悩があって、日々を必死に生きているだけ! 

だから……、みんなに幸あれ!と本気で思えてくる、青春映画の新たなクラシックです。

とにかく、誰だって他人のことは、「けっこうなご身分ですよねぇ」とか「ホニャララのくせにうまくやりやがって」とか、大なり小なり一方的に決めつけることで、精神の安定をはかったりはしてるもんですからね。

そこに無感覚になりすぎるのもどうかと思うけど、自分だけが醜いかのように考えてしまうのも、やはり違うんじゃないですかね。

こばなみ:
人のことを羨ましいと思わない人なんているんですかね……?

宇多丸:
いないいない!

石原さとみだって誰かのことは妬んだりしてるはずだよ! いつも勝手に例に出して申し訳ないけども……。

という感じで、めさんもさ、たまには気の置けない友達と、人には死んでも聞かせられないような悪口大会とかしなよ!

いわゆる「人間の業の肯定」というやつが、我々にはやっぱり、一定量要るんじゃないかと思います。



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年12月26日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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