大好きだったけど今は好きかわからない。付き合って4年の彼とこのまま結婚してもいいのか……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室384】
✳️今週のお悩み✳️
4年ちょっと付き合っている彼氏との関係について相談です。3年目まで私が彼のことを大好きで同棲したい!結婚したい!といった感じでなんとも愛が重く、自分のやりたいことにも時間を使えないということで、彼から付き合って3年目ごろに別れを告げられました。私は考え直して欲しいと言って1カ月距離を空けて話し合うことになりました。彼からは気持ちは変わらないけど……と言われていましたが、彼の体調が悪くなってしまい連絡が来て、そのサポートなどもあり結果距離を空けたのは2週間ほど、その後やっぱり大切だ、もう一度付き合いたい、とのことだったので承諾しました。
ただ、私は前までの大好き!な温度感ではなく、もっと落ち着いた感情になり、彼を好きではあるのですが、その差に自分で驚きました。周りには長く付き合えば落ち着くものよ、新たなフェーズに来たのでは?と言われて、なるほどと思っていました。が、それから1年が経ち、最近は彼から聞く仕事での対応などから人間として尊敬は出来ないかも……と思い始めてしまい、なんだか一緒にいても楽しいと感じない日が出てきました。そんな時、彼から同棲しないか?と言われました。私は今の自分の気持ち(前みたいに楽しい!と思えないことがあること、好きの温度感が変わったこと、同棲したいタイミングなどが合わないこと)を伝えました。彼はドライ(?)な人なので、気持ちの変化に嫌と思うなら別れることも考えた方がいいかもねと言われました。その通りだとは思うのですが、嫌いではないのです。しっかりしてるし、どこが嫌なのかなぁ、自分は欲張りなのかなと思い始めました(趣味とかは合わないけど、一緒にやろうとはしてくれたりします)。
でも好きかわからない、このまま結婚してもいいなかなぁと考えてしまいます。自分のこともあるけど彼は30歳になるので早く決めないととも思ったり、私はなかなか合う人が今までいなかったのでこんなに長く付き合える人はいないのかもと思ったり……。まとまりがなくてごめんなさい。ただ考えすぎてしまって自分でもよくわからなくなってしまっています。
(しろくま・27歳・会社員・神奈川県)
宇多丸:
先週の一回お休みを挟みまして、今回が今年一発目ということになりますね。
今年もみなさま、よろしくお願いいたします!
こばなみ:
2022年も元気にやっていきたいと思います。お悩みも随時募集中ですので、よろしくお願いいたします!
宇多丸:
で、早速今回のご相談ですけども。
ぶっちゃけ、しろくまさん側の気持ちは明らかにすっかり冷めてるんだけど、次に進むふんぎりもつかないしどうしよう、というくらいの、シンプルな話にも思えるんですけどね。
特に気になったのは、「人間として尊敬は出来ないかも……と思い始めてしまい」という部分で。
もはや人としてどうかという風にしか思えなくなってしまった相手と、わざわざ今から半永続的パートナーにならなきゃいけないと考える理由が、僕にはよくわからない。
すごく好きだったころの余韻と、当初はこちら側からお願いしたことだから……という負い目でズルズルここまで来てるだけ、という感じにも、正直見えてしまいますけども。
しかも、なんとその彼は、そんなしろくまさんの気持ちの変化を、一種仕方のないこととして受け入れる、とも言ってくれているんだよね。
それでもしろくまさんは、「嫌いではない」くらいの理由で、別れには踏みきれずにいる。
こばなみ:
この感じの相談は過去にもありましたね。
「なかなか合う人が今までいなかったのでこんなに長く付き合える人はいないのかもと思ったり」というあたり。
別れてしまったら、次の人が見つからないかもしれないってことだと思うけど、そんなこともないでしょうしね。
宇多丸:
だから結局これって、しろくまさんは意識してないかもしれないけど、損得勘定の話になっちゃってるんだよね。
実はそんなに合わない人とそれでも「これ以上損したくないから、やむなく」パートナーでいる……って、これほどむなしく、さびしくなることもないと思うけどなぁ。
27歳なんてあなた、まだまだこれからもいいとこなのにね。もったいない。
次を探しに、コリドー街でも行けばいいじゃん!
こばなみ:
今、コリドー街ってどうなってるんですかね!?
宇多丸:
なんにせよ、少なくとも「このまま結婚してもいいなかなぁと考えてしまいます」っていうのは、いや~どうでしょう?って感じだよね。
こばなみ:
私だったら、やめるかなぁ。
次の人が見つからないかもしれない不安が募ってるんだろうけど、今後すごく合うパートナーができるワクワクな可能性だってあるわけじゃないですか。
それにやっぱりしろくまさんが楽しくないんだったら、彼もそれほど楽しくないんじゃないかなぁって。お互いにとって時間がもったいなくないですか?
まぁ、とはいえ自分が当事者だったら、そういう気持ちになっちゃうかもしれないですけどね。気持ちはわかるけど、そこはもうちょい冷静に!
宇多丸:
そもそも、内心妥協を重ねてまでパートナーをキープすることが、ホントに自分の幸せにつながることなのか?というのは、しろくまさんに限らず、「つがい」願望が強いみなさん全員、改めて考え直してみたほうがいいことなんじゃないかと思いますけどね。
個人的には、不確定要素しかないそういう外部要因に「幸せ」のファーストプライオリティを置く考え方は、むしろ不幸を感じる可能性を間違いなく高めているだけだから、それ以前に、「自分で自分を幸せにできる」セッティングをしっかり確立しておくことが何より大事、と思いますけども。
恋愛対象とかはそこから先の、あくまでプラスアルファ、いたらいたでいいかもね、くらいの比重で済むようにしておくべき、ということですね。
こばなみ:
結果、そのほうが人としても魅力的に見えたりもするのかなという気がします。
宇多丸:
間違いない。そのほうが確実にモテると思います!(笑)
で、仮にパートナーを求めるにしても、自分だけでもぜんぜん楽しいし幸せにやっていける同士が、互いの楽しいや幸せを持ち寄って、ときに共有ときに独立独歩、むしろ苦しいときにこそ支え合いましょう、くらいの関係性というかね。
それこそ、映画とかの趣味はいっさい合わないけど一緒にいるとなぜか心地いいから、日々の生活や、ひいては人生はなんならシェアします?みたいな、そのくらいのテンションが望ましいと僕個人は考えていて。
その意味では、彼のスタンスは比較的、そっち寄りなのかもしれないですよね。
しろくまさんはそれを「ドライ」と解釈しているけども、要は自分のための時間も大事にしたいとか、嫌々付き合い続けても意味ないよねとか、単にフラットな正論を言ってるだけとも取れるわけだから。
ま、「フラットな正論」をいつでもどこでも開帳すればいいというものでもないでしょうけど……。
もういっこ、「彼は30歳になるので早く決めないと」っていうのも、百歩譲って彼がそう言ってるならしょうがないけど、しろくまさんが勝手に焦っている根拠がよくわからない。
そして、もし百歩譲らないならば(笑)、そもそもそうやって人生にもろもろのタイムリミットを設定してゆくような考え方も、必然、いちいち不幸を感じやすいはずだろうと思いますけどね。
なんにせよ、全体的に今のしろくまさんは、パートナーと身を固めるということが過剰に目的化しているきらいは、明らかにあるように感じます。
真の孤独は、「誰かといるのにさびしい」ことだというのに!
こばなみ:
それは恐怖!
宇多丸:
彼からしてみたら、「嫌いではない」程度の気持ちで、実は妥協の結果のパートナーに一方的にされ続けるのって、なかなかキツいというか、ヒドい話でもあるわけじゃない?
しろくまさん同様、彼にだってもっと合う人がいるかもしれないんだからさ。
とにかくパートナーなんて、いてもいいし、いなくても別にいい、ってくらいに考えとかなきゃ、誰しも人生、あんま良くないことになってゆきがちだと思いますよ。
お一人様もいいし、お二人様もいい。でも、バイブス合わないお二人様ほど最悪なものはないから、やっぱりお一人様もいい。
あるいは、三名様もいい、四名様もいい。ただし、騒がしいのは疲れるから、やっぱりお一人様もいい。
つまるところ、人生いたるところに青山あり!
なんだけど、基本はやっぱり、お一人様で無問題、をデフォにしておくことなんだと思う。
こばなみ:
まずは自分で自分を幸せにする、ってことですね。
宇多丸:
その通り。
人生がなんでこうもままならないかと言えば、無数の他者や偶然が影響しあう、不確定要素のかたまりだからじゃないですか。
そのなかでせめて、自分とその生活だけは、できるだけ心地いい状態をキープすること、ある程度のコントロールが、可能なものなんだからさ。
だったらまずはそこをしっかりやろうよ!というね。
しろくまさんも、彼と過ごすまぁまぁな時間よりも、もっとずっと有意義なご自分なりの時間の使い方、というのは必ずあるはずだし、まずはそっちをしっかり見つけて育ててゆく、というのを優先したほうがいいんじゃないかという気はします。それは彼にとっても同様でしょうが。
なんせこうしている間にも、寿命というのは着々と減っているので!
こばなみ:
にしても、こういうお悩みは多いですよね。
宇多丸:
仮にこれでたとえば、このまま結婚したとしてですよ、後から振り返ってみれば、もっといろいろ選択もできたのに、ほかの可能性もあったのに、とか、後悔ばかりがつのることにもなりかねないと思うんですよね。
これもいつも言ってますけど、人間誰しも「今が一番若い」んだから!
あなたもあなたもあなたも、常に今が一番若い。若者!だからね、我々全員が、今のうちにできることを全部やっておかなきゃ、と思っておくべきなんですよ。
ということで、少なくとも今のこの感じのまま結婚なんてのは、とてもおすすめできないですよね。
何度も言うけど、パートナーなんてのは、いてもいいし、いなくてもいい。
子どもも、いてもいいし、いなくてもいい。
視力でさえ、良くてもいいし、悪くてもいい……、悪けりゃ悪いで眼鏡ファッションが楽しめる上に、眼鏡を外すと、世の中の細かい汚いものとかを、見ないで済む(笑)。場末の温泉などに行くときに、重宝な能力ですよ!
こばなみ:
どっちだって、なんだって、自分が幸せであるように、自分を持って行ったり、維持していく。
2022年もそうありたいですね!