友人に金銭感覚と人間性を否定され、自信を失い、これから人付き合いをすることが怖くなってしまいました。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室287】
✳️今週のお悩み✳️
高校時代からの友人2人に私の金銭感覚と人間性を否定され、自分の自信を失い、これから人付き合いをすることが怖くなってしまいました。
まず友人Aはドタキャンが多く遅刻が多い人でした。その友人を含めた複数人グループでの旅行があったのですが、出発の2日前にAの祖母が危篤状態になったという理由で旅行をキャンセルしました。キャンセル料は払うと言ってくれていたのですが、以前からのドタキャン等のことがあったので、信用することができませんでした。そのためグループLINEで、キャンセル料はいつ払ってくれるのか、どういう方法で払ってくれるのかを問い詰めてしまいました。私の態度に腹を立てたAは私のLINEをブロックし、他の友人には「配慮の言葉もなく、お金のことしか話してこないのはあり得ない」と話していました。確かに私もAに対して思いやりの気持ちが無かったので、信用することができなかったこと、問い詰めてしまったことを反省し、他の友人経由でLINEで謝罪をしたのですが、返ってきたのはもう金輪際関わることも拒否するような内容でした。 ほかの旅行のメンバーは、私が問い詰めたことも悪かったけど、Aも気難しい人だからしょうがないよと言ってくれました。
友人Bとは、渋谷で2人で食事をしたときのことです。いざお会計となったとき、Bがお財布を落として手元に無いことに気づきました。その時に私にお願いする態度が、「あ~失くしたわ、払って」と、あたかも払って当たり前のような態度でした。その態度を注意したところ、「困った人が目の前にいたら助けるのが当たり前でしょ?」と言われ、あまりにも横柄な態度に腹が立ってしまい、食事代を2人分払ってBの交通費を渡さずに帰ってしまいました。後日、Bから言われた言葉が、「交通費500円も渡さないなんてケチだね。私なら助けるのに」でした。
こういったことが立て続けに起き、しかも長い年数付き合いがあった友人なのでショックが大きいです。もう大人なので、付き合いづらい友人とは距離を置けば良い話ですが、数少ない友達だったのでなかなか気持ちを切り替えることができません。ほかの友人も私の金銭感覚や人間性を我慢して付き合ってくれているのかな?と思ってしまいます。
お二人にお聞きしたいのは、私は友人達に対して間違ったことをしていたのでしょうか?
また、これからの人間関係を築いて行く上で、金銭感覚と人間性で気をつけておくべき点を教えて頂きたいです。よろしくお願い致します。
(ラッフィー・24歳・埼玉県)
宇多丸:
こばなみはこれ、どう思う?
こばなみ:
Aさんのほうは、やっぱりキャンセル料の話の前にひとこと入れるべきですよね。大変だね、とか。それなしに話し始めるのはちょっと……。
でもBさんのほうは、ラッフィーさんと同じように腹が立つ気持ちはわかる。そんな態度ないだろうって!
宇多丸:
たださ、腹が立ったとしても、そこでさらに相手がホントに困るような、追い討ちの仕返し的なことまでしちゃってるのが、やっぱりちょっと大人げないんだよね。
Bさんが財布失くしてダメージ受けてることには変わりないのに……。
こばなみ:
カーッときやすいんですね。
宇多丸:
ポイントはどちらも「正しさを背負った怒り」だっていう点でしょうね。
それゆえに、ブレーキをかけてくれる要素がないというか、いったん相手の気持ちや立場も考えてみるっていう余地がなくなりがちで、逃げ場を与えないタイプの怒り方をしちゃう、っていう傾向はどうやらあるんじゃないかと。
とはいえAさんとBさんのケースはそれぞれ違うところも多いと思うんで、ひとまず一個ずつ考えていきましょうか。
まず、前のほうの話。 Aさん側だってきっと、一緒に旅行したかったのはやまやまなはずなんですよね。 それをキャンセルしなきゃいけないっていうのも当然辛かったろうし……、そもそもAさんにとって、そのおばあちゃんがどれくらい大切な存在だったのかとか、こちらにははかりしれないことなわけじゃん?
もちろんラッフィーさんにしてみれば、積もり積もった不信感、みたいなものがあったんだと思うんです。この文面からはそこまではわからないけど、それなりの酷さはあったんでしょう。 でもそれを、よりによってその人が一番弱りきっているときに、一気にぶつけるというのは……、僕はやはり、「正義は我にあり!」型の怒りならではの危うさ、怖さを感じてしまいますね。
「それ、いま言う!?」というショックと怒りでAさんが心を閉ざしてしまったのも、まぁ無理からぬ話かなっていう感じは、申し訳ないけどやっぱりします。 たぶんだけどAさんは、ラッフィーさんにそこまで信用されてなかったのか! 今までも本当はそんな風に思われていたんだ!という部分でも、人間関係的な不信を抱いてしまったんじゃないかな。
こばなみ:
ラッフィーさん、反省はしてるんですよね。
宇多丸:
たしかに反省してるし謝罪もしてるんだけど、どこかでやっぱり、「でも、もともとは私の言ってることが正しいんだし、逆にそっちがそんなに怒ってくるのは筋違いなんじゃないの?」的な気分が、まだ根底にある感じもしますけどね。
Aさんに関しては、ラッフィーさんにはキツいこと言うようだけど、やはりかなり深く傷つけてしまっている可能性も高いので、ぶっちゃけあちらの気が晴れるまで、こちらも謝罪の意を伝え続け、待ち続けるしかないですよね。 謝るってそういうことじゃない? 途中でこっちが逆ギレしたら、全部が台無しになるっていう。 そんなの嫌だ、耐えられないというなら、やっぱ少なくともしばらくは、距離を置くしかないんじゃないかな。
いっぽう、Bさんの話。 こっちはさ、別に縁切るとかは言ってないんだよね?
こばなみ:
後日「ケチだね」とかは言われてるので、会話はしてるんでしょうね。
宇多丸:
まぁこれもさ、Bさんの立場に立ってみれば、さっきも言ったように、財布を失くしてすでに相当量のダメージを食らってて、心の余裕もない状態だったんだろうからさ。
たとえちょっと口の聞き方が悪かったとしても、路頭に迷わせるような突き放し方までしなくても……という言い分は、まぁわからないでもないですよ。
そりゃあ、よっぽど態度も悪かったのかもしれないけどさ(笑)。
たださ、「人間性を否定され」って、Bさんは別に、そこまでのことは言ってないよね。 ちなみにどちらもこれ、「金銭感覚」の問題ではないだろうという気もしますが。
とにかくBさんのケースに関しては、どっちにも悪かったところがあって、その不満を互いに直接伝えあってもいるんだから、現段階ではまだ、ただの仲いい友達同士の言い合い、ってくらいのもんなんじゃないの? Aさんとのことがあった直後でナーバスになってたから、こっちも深刻にとらえすぎちゃってるんじゃないかな。 もちろん、双方の心がけ次第では、この段階からさらにこじれて、決定的な不仲に至ってしまうっていう可能性も全然あるわけですが。
それこそ「もう大人なので」って言うなら、こっちから「私も悪かった」ってテヘペロでもして歩み寄れば、向こうもおそらくそこまではまだ態度を硬化させてはいないと思うんで、「いや、私こそ」って歩み寄り返してきたりして、意外と即解決する話なんじゃないですかね? こっちの件は。
こばなみ:
「も」って何?みたいなので、また言い合いが始まったり(笑)。
宇多丸:
そうやって言い合ってるうちは、全然友達じゃん。
その意味でBさんは、図々しかったりズケズケした物言い含めてだけど(笑)、ラッフィーさんに、自分の気持ちをすごくカジュアルに伝えてくれている人なわけだよね。
たぶんだけどその人は、大切にしたほうがいい友人なんじゃないかな。向こうだってきっとそう思ってるよ。
Aさんについては……。 とりあえず今は、たとえ正しさを背負った言動であっても、いやだからこそなおさら、いったん立ち止まって相手の状況や心情に想像力を働かせてみる、という思考の冷却プロセスを通すようにしないと、ときにはこうして、取り返しがつかないほど誰かを傷つけてしまったりもする……というこの現実を、ただただ厳粛に受け止めて、今後の人生の戒めとしてゆく、ってことしかないんじゃないかなぁ。
これはもちろん、僕ら全員が例外なく、胸に刻んでおくべきことでもありますが。
いつかAさんの気持ちが落ち着いてきたときに、お互いの怒りや不信の出どころについて忌憚なく話し合って、許し合えるといいんですけどね。
でもさ、誰かを深く傷つけたことが一度もない人なんてどこにもいないはずだし、場合によっては一生嫌われたままとか、生きてりゃ全然よくあることではあるでしょ。 いくら気をつけていてもやっぱ、やらかしちゃうときはやらかしちゃうだろうし……。 ただ大事なのは、そこでちゃんと心底反省して自らを成長させてゆくのか、それとも「私は悪くない!」のまま終わっちゃうのか、ですよ。 そういうのの積み重ねこそが、その人の人間性というのをかたちづくっていくわけじゃん?
だからこれ、ラッフィーさんだけの話じゃないよ。 過ちを犯してしまうのは人間だから避けえないとして、それをしっかり受け止めて、なんとか糧にしてゆこうとするような人になれるかどうか。
こばなみ:
ですね。ホント、内容は違えど、人を傷つける側になるって話、よくあると思うし。私も受け止める人でありたいです。
宇多丸:
なんにしても、やはりせめてBさんとは、仲良くしてほしいな~。
それこそBさんに、さっき言ったテヘペロ和解後、「私って、ぶっちゃけこういうところあるかな?」って相談してみるとか、より友人としての絆が深まる有意義な話し合いになったりするんじゃない?
こばなみ:
それ、すごくいいですね! Aさんともそうなることをじっくり待ちつつ、1つ1つ考えて受け止めてどっこい生きていくぞ~!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年7月20日に公開したものを再編集し、掲載しています。