上司への卑猥な妄想が止まらず困っています。どうすればやめられますか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室402】
✳️今週のお悩み✳️
28才、既婚、子どもが2人いる女性です。今年第二子の育休より復帰したのですが、指導係の上司への卑猥な妄想が止まらず困っています。上司は私より少なくとも10歳は年上だと思います。お互い既婚者ですし、そもそも上司への恋愛感情はありません。なのに100%下心で上司のいやらしい妄想をしてしまい、自分で致してしまう始末です。主人とはセックスレスではありません。ですが、一度も絶頂は迎えたことはなく、快感を得るためというより心のつながりを感じるものだと思っています。主人が初めての彼氏でそのまま結婚したので、他の人と経験したことがないというのも妄想を膨らませる要因の1つかもしれません……。しかし家族のことが本当に大切で不倫は絶対にしたくありません。このまま性欲が理性を上回ってしまうのではないか……と思うと怖くてたまりません。どうすればこの妄想をやめられるか、自分を制御出来るのか、教えてください。
(ちゃんこ鍋・28歳・東京都)
宇多丸:
「自分で致してしまう始末」って言い回しが、昭和のオヤジ向け週刊誌みたいで面白いよね(笑)。
で、これはたぶん、皆さんまずは思うことだろうけど……、別に妄想だったら、いくらでも勝手にすればよくね?というのはある。
こばなみ:
いまのところはそうですよね。で、妄想がどんどんエスカレートしてしまったら、本当に上司をお誘いしてしまうんじゃないかということを心配しているってこと?
宇多丸:
でもさ、単なる妄想と、現実の性的な交渉って、そんなシームレスにつながってるようなもんじゃまったくない、どころか、なんなら正反対のもんだろうと僕は思うんだけど。
前も言ったかもだけど、いわゆるマスターべションとセックスって、同じ性的行為ということで近似ジャンル的に語られたりしがちだけど、文字通り己の欲望のおもむくまま、他者性ゼロで自己完結する前者と、まさにその他者とリスク込みで向き合って、非常にセンシティブなコミュニケーションを積み重ねていかなきゃならない後者って、実はほとんど180度違う代物って言っていいくらいだと思うんですよね。
ちゃんこ鍋さんの妄想も、少なくともそのままのかたちで現実化することなど、まずありえないわけですよ。
こばなみ:
お誘いしたら何かできる前提だけど、上司の気持ちもありますし、そんなことはわからないですもんね。
宇多丸:
だし、仮にホントに性的な関係になったとしても、実際の相手は、妄想の中のようにひたすらこっちに都合よく振る舞ってくれたりは、絶対にしないわけじゃんよ。
一挙手一投足、匂いのひとつとったって、「思ってたのと違う」ことばっかりなはずですよ、現実は。
推察するに、その上司って、かなり歳上の既婚者っていう、むしろ言ってみれば「一見、生々しい色恋沙汰にはなりにくそう」な対象だからこそ……、つまり、距離感がそれなりにある、ぶっちゃけ安パイ寄りな相手だからこそ、ちゃんこ鍋さんも思うぞんぶん妄想をはばたかせやすい、というところも、正直あったりしないですかね。
少なくとも文面からは、その人自身がリアルに発散している性的魅力とか、ちゃんこ鍋さんもそこにメロメロになっている、というような要素が、まったくと言っていいほど感じられなかったので。
やはり、あくまでちゃんこ鍋さんが脳内で勝手に熟成してるだけの話、という感じが強くするんですよね。
それに現実問題、同じ職場の既婚者同士という高すぎるリスクが、いいストッパーになってもいるのかもしれないですしね。
これがなまじ、本気で実現可能性が高いような、フリーの肉食系セクシーガイが対象だったりしたら、もうちょっとマジで危なっかしい話だった可能性もあるけど。
こばなみ:
たしかに!
宇多丸:
でも、ちゃんこ鍋さんの現状は、そうやってホントに浮気してしまう、みたいな地点とは、けっこうな断絶がある段階のように見えますよね、やはり。
いくら性欲が爆発してたって、妄想を実行に移すというのは、また次元がまったく違う話。よっぽどはっきり思いきって行動を起こさない限り、そんな飛躍は普通起きないですよ。
しかも、仮にいざ、本当にそうなってみたところで、「あれ、実際はこんなもんか……」の連続となることは目に見えてる、という。
こばなみ:
妄想をやめられるか、ってことですが。
宇多丸:
やめる必要、あるのかなぁ?
そのオカズに飽きるまで、好きなだけ妄想ぶっこけばいいじゃん、って思うけど(笑)。
なんにせよダンナさんとはうまくやっていて、不倫する気はない。密かな欲望も、自分で処理/発散してるんだから、事実上コントロールできてるわけで。
何がいけないかさっぱりわかんないよ。
どうかな、ほかの回答ってある?
こばなみ:
ない、ない。
宇多丸:
ちなみに、ダンナさんとの行為にはそこまでガツンとした手応えがないのに対して、上司をオカズに「自分で致してしまう」ときは、我ながら会心の……、というような比較のニュアンスも少し感じますけど、はっきり言ってそれも、当たり前のことっていうか。
さっきも言ったように、ただひたすら自分がアガるようにやればいいアレと、言ってみれば他者に気を遣いまくってナンボのアレの違い、というのがやはりあるわけだから。
当然、仮に万が一、上司と実際にどうにかなるようなことがあったとしても、結局は同じように、そうそう思い通りにはゆかない「現実」と、やはり必ず直面することになる。
あと、経験が少ないことに引け目めいたものを感じているからこそ、ダンナさん以外との性交渉に過大なファンタジーを抱いてしまいがち、という面もひょっとしたらあるのかもですが……、じゃあ、たくさんの人と関係を持った人が、みんな豊かな性体験をしているかって言うと、無論そうとも限らないわけで。
一方、どれだけよろしくない欲望であっても、自分の中だけにとどめておく限りは、完全に無害、ノーリミットで行くとこまで行っちゃって、なんの問題もないわけですから。
その点、ちゃんこ鍋さんの今の妄想は、何度も言いますがよほど積極的にこちらから迫りまくったりしない限りは、そのまんま実現はなかなかしないであろうものであるように、僕らには感じられますし……。
もちろん、できることならそうしたい!というのならまた話は別ですが、今回のケースは、そういうことですらないわけだから。
だからなんつーか……、このままで、大丈夫なんじゃないですかねぇ?(笑)
こばなみ:
卑猥な妄想をすることだって、誰でもあることだと思いますし! 念押ししますが、私もこのままでぜんぜん大丈夫だと思います!!