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まわりに比べて情報を知るのが遅い私。早く知る方法って?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室59】


✳️今週のお悩み✳️
新しい情報にみんな早くて、いつも私が知るのは遅いです。早く情報を知る情報はないでしょうか?
(よまたけ・広島県)


宇多丸:
ちょっと待った! 
「情報」って言うけどさ……。何の情報?

こばなみ:
そうですねぇ。書いてないですけど、こんなモンが流行っているよー、とか?

宇多丸:
それこそ僕は、前から言ってる通り、今はSNSの類いはいっさいやってないですし、いまだにガラケーどころかPHS使ってますから、皆さんみたいに四六時中スマホをいじってる人たちに比べれば、「情報」とやらを知るのが遅い傾向にはあるかもしれない。テレビもたぶん、皆さんよりは観てないし。
人と話してても、「それ何?」「えっ、知らないの?」ってなること、よくありますよ。

でもね。その大半が、僕にとっては別に、やっぱりそんなに重要な情報でもなかったりするんですよね。
そんなもん、知るのが遅かろうが早かろうが関係ないっていうか。

ホントに興味あることや必要なことだったら、とっくに自分で調べてたりもするしさぁ。
で、そこに関してはどう考えても、そのへんのスマホ依存な連中より、よっぽど僕のほうが「情報」処理能力は高いと思うんですよね。
だから、特になんのコンプレックスもない。

つまりさ、よまたけさんも、実はその「新しい情報」とやらに、それほど切実な興味や必要は感じてないってことなんじゃないの?
単にお友達とかから、「えっ、そんなことも知らないのォ~?」って上から目線で言われるのに、引け目を感じてるだけだったりして。

でもさぁ、そう言ってる人だって、別に自分で独自に何かを調べてきたわけじゃなくて、たとえばインターネットでいつか誰かが流したネタを、どこかで拾ったにせよたまたま回ってきたにせよ、何にせよ改めて話題にしてるだけだったりするわけじゃん。
そんなの、「新しい」わけでも「早い」わけでも、なんでもないから!

インターネット上には、古い情報も新しい情報も、それこそ正しい情報も間違った情報も、フラットに漂っているからさ。

実際、「それ、結構前の話なんだけど……」みたいな件がさも最新ニュースであるかのように流通してたりとか、それをまた皆さん、そんなのちょっと調べればいつのネタかなんてすぐわかることなのに、そのひと手間もかけないで無批判に拡散しちゃってたりとか、ホントよく見かける光景ですよ。
なので、本当に「新しい情報にみんな早」いのかっていうと、それも怪しいんじゃないかと思います。

こばなみ:
話は少しズレますけど、私はもともと雑誌やフリーペーパーで記事を作っていて、数年前からWebサイトの記事も作るようになったので、最初は慣れなかったのですが、Webってもともと記事をどっかから引っ張ってくる、という文化なんだなってしみじみ。1つの記事をいろいろ使うのが当たり前なんですよね。まとめサイトしかり。もちろん今はこの記事だっていろんなところに引っ張ってもらってうれしいことではあるのですが。
だけど、最近はまとめる、引っ張るのではなく「記事を作る」サイトが見直されているという話も聞きますよ。それは制作側にとってはうれしい話ですけどね。

ってことで、情報を仕入れたいのなら、新聞を読むのがいいんじゃないですか? 私もあまり読めてないのですが、出元は確実だし。

宇多丸:
確かに、スマホとテレビしか見てない派にはより有効かもしれないね。
たださ、僕はやっぱり「情報」って言い方があまり好きじゃないな……。

情報って、それ自体に価値があるわけじゃないでしょ。
それを「どう使うか」が重要なんであってさ。
その意味で、早い遅いだけを競うのはやっぱり、いわゆる「情報に踊らされている」状態ってことになるんじゃないかと思いますね。

ちなみに、僕の友人知人の「真・情報通」的な人たちはさ、当然のことながら、人があんまり読んでないような文献に当たってたり、実際に現場に行って取材・体感してきてたり、ウェブを使うにしてもものすごーく能動的に、もちろん日本語圏以外の「インター」ネットを最大限活用してたりとか、ちゃんとそういうことをやってますよ。その上で、それに対する自分独自の考えというのもしっかり構築している。そのレベルで初めて、「情報が早い」とかなんとか言えるんでね。
Wikipedia見てまとめサイト見てSNSで流れてきたもの見てコピペしてハイおしまい、なんていう次元ではもちろんないんですよ。

僕なんかはもっぱら、そういう人たちからいろいろ教えてもらう立場ですから。
あえて言えば、それ級の本気でイケてる友人知人を複数持ってれば、そのへんの人たちよりは相対的に「早い」情報は仕入れられるかもしれない。

こばなみ:
でも宇多丸さんだって、音楽とか映画とか詳しいじゃないですか?

宇多丸:
いや、本当に「早い」人たちに比べたらぜんぜんお話にならないです。
とにかく皆さん、特にネットを使う際は、自分が見ている情報が本当にはどのくらいの鮮度なのか、正確さなのか、一応出来るだけ裏取りをするクセはつけたほうがいいよ。

こばなみ:
それ、わかります。記事なんかの企画を立てるときもそうで、ネット情報でチャラっと仕立てたものって、あんまり信用できませんもん。結局、ネット情報って道具でしかないんですよね。または辞書の代わりというか。それも正確度のチェックは必要ですが。

宇多丸:
それとやっぱり、よまたけさんに限らず、「本当にその“情報”は自分にとって重要な、必要なものなのか?」ってことは、ちょっと立ち止まって考えてみてもいいんじゃないかな。

こばなみ:
Facebookもそうかもしれませんが、アプリでも「Gunosy」とか「Antenna」とか、キュレーションマガジンが流行ってるというか、もはや定番になってますよね。自分の興味のあるジャンルに印をつけておくと、そのジャンルのあらゆる情報がどんどん流れてくる。でもそうしてると、自分から能動的に検索しなくなるんですよ。
で、それに満ち足りちゃって、知ったか野郎。知ってはいるけど体験したことないから、頭でっかちになっちゃうことも多いのかもって思います。とはいえ、楽しいし、ぱーっと読めるから、私も活用はしていますが、でもそれは、なにかを作る「きっかけ」にしかならないのかなって。

宇多丸:
うんうん。
たとえば、僕だって最近はそりゃあ、どうしても本はAmazonで買うことが圧倒的に多くなってしまってますが、それでもたまに本屋に行くと、自分がまったくアンテナを張っていなかった方向の本がたまたま目に入ってきて、手に取ってパラパラ見てみたらすげー面白そう! で、思いもしなかったような新たな扉が開かれる……的な、言わば「嬉しいアクシデント」の可能性が、やっぱりより豊かに開かれてたりもするわけですよね。

だから、ヴァーチャルじゃなくリアルな世界を生きろ!的な説教がしたいわけでは決してないんだけども、少なくとも、ネットですべての「情報」が手に入る、というのは完全な幻想だということは言っておきたい。

そこを肝に銘じておかないと、自分の受動性に無自覚になりがちでもあるからさ。
ファストフードはファストフードでぜんぜんいいんだけど、それが食べ物のすべてだと思っちゃうのはちょっとまずいでしょ、みたいな。

よまたけさんの相談の答えに戻ると、一般常識とか古典教養とかだったらともかく、「新しい情報」ならなおさら、「知らない」ということを恥じる必要はまったくないはずだ、とも思うんですよね。
ただ、なんであれ「知らない」ことに対してふんぞり返ったまま開き直るような態度、「シラネ」って言ってる側がなぜか上から目線、みたいな風潮も、僕はあんまり好きじゃない。

それより、たとえ興味がない件でも、いきなり「どーでもえーわ!」でシャットアウトしてしまうのではなく、とりあえず礼儀として「何それ?」→「教えて!」→「面白そう!」の3ワードがスッと口にできる程度には、常にオープンマインドでいるよう心がけることのほうがよほど大事なんじゃないかと思います。

それで話を聞くうちに、ちょっとでも興味が湧いてくれば教えてもらってラッキー!ってだけのことだし、なんにせよ知らないことに対して素直に「教えて!」と言えるような人は、間違いなく周りの人からも可愛がられるはずですよ。プラスしかない。
少なくとも、下手に知ったかぶりするより、10000倍あなたの得になることは確かです!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年8月30日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
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その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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