男女間の揉め事で友人グループが崩壊! 原因のA男に「もう来ないで!」と言っていい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室145】
✳️今週のお悩み✳️
根はいい人って? 学生時代からの友人(男女)数人でたまに集まります。気の合う者同士今まで楽しく飲んでいましたが、男女間の揉めごとがありました。A男とB子が付き合うことになり、C子がそのことにショックを受け集まりに来なくなってしまいました。A男がB子と付き合う前まで2人にそれぞれ気がある行動(2人で遊びに行く、積極的なボディータッチ、個人的にプレゼント)をしてたことが発覚したのです。それを知ったB子も怒りA男と別れてしまいました。A男は普通に集まりに参加してます。周りも事情を知っていますが、集まりの時は今まで通り普通に接しています。A男が参加しなければB子とC子は参加すると言っているので、私はA男が来なくなればいいと思っているのですが、周りは「A男は根はいい人なんだけどね……」と。来るなとは言えないと言います。相手を傷つけても根はいい人は許されるの?と思ってしまいました。参加するしないは個人の判断ですが、A男が周りに甘えているだけのように思えてしまうのです。「もう来ないで!」とA男に言っていいのでしょうか? 長々と失礼しました。
(桜・31歳・東京都)
宇多丸:
狭い人間関係のなかで、無節操かつ中途半端に色目を使った結果、案の定これ以上ないほど典型的な「二兎を追う者は一兎をも得ず」な結果に終わった……というのは彼の自業自得としても、周囲を無意味に傷つけ気まずくさせたことに、反省のそぶりも見せてないっていうんだから、少なくともこの一件に関しては、A男がとにかくひたすらどうしようもないヤツだっていうのは間違いないし、桜さんが彼を許せない気持ちになってるのも当然でしょう。
ただ、その「集まり」のほかのメンバーも、特に彼を責めたりはしてないってことだから……、よっぽど人望があるってことだよなぁ(笑)。いやマジな話。
こばなみ:
これもよくこの連載で話題になりますけど「いい人」っていったい何なんですかね。みんないい人っちゃいい人ですからね。根はいい人じゃない人を、そんなに見たことないですよ!
宇多丸:
まぁ、ほかの人がどう言おうと、桜さんにしてみたらヤツは決して「いい人」とは言い難い、というのと同様に、はたから見れば許し難いような人物でも、特定の人たちにとってはそれでもやっぱり、揺るぎなく「いいヤツ!」だったりするっていうのも、当たり前っちゃ当たり前の話ですからね。
またまた手前味噌で恐縮ですけども、ライムスターの『POP LIFE』っていう曲の僕の名ライン(笑)「こちらから見りゃサイテーな人だが、あんなんでも誰かの大切な人」っていうのもつまり、そういうことを言っているわけですけど。
とにかく、ほかの人たちにとってA男が「いい人」だからと言って、桜さんもそう思わなければならないというわけではもちろんないけれども、それとまったく同じように、桜さんがA男を許せないからと言って、ほかの人たちにまで同じように考えるよう強制はできない、ということですよ。
でね、さっき人望って言いましたけど、そこまでご立派なもんじゃないにしても、ことの成り行きからなんとなく感じるのは、A男って、なんだかんだ言ってこのグループにとっての中心的人物って感じだったりするんじゃないの?
こばなみ:
そうかもしれませんね。男子もみんなA男を慕ってるんでしょうね。もしくは怯えてるとか!?
宇多丸:
うーん、仮にそんな恐怖政治的なパワーバランスだったら、「根はいい人」なんて表現は出てこないんじゃないかなぁ。むしろ桜さんの訴えに対して、ちょっとは陰口で応えるくらい、しそうなもんでしょ。
だからやっぱ、ホントに人気者ってだけのことなんじゃないの? 普通に考えれば。
なんなら、そもそもA男を中心とした、コアな親友チームありきの「集まり」だったりするくらいなんじゃないのかな。 だからこそ、調子こいてB子C子事件のようなことも起こすし、多少のチョンボじゃおとがめなしだったりもする……と考えると、いろいろ腑に落ちやすいんですけど。
ちなみに、グループ中に何人女性がいるのかわかんないけど、もし仮に、全部で3人しかいないなかでこの事件が起こったのだとしたら……、僕が桜さんの立場なら、「あっそ! アタシは対象外ってことね!」ってとこにも、正直ちょっとイラッと来ちゃうかもしんないです(笑)。
こばなみ:
あるかも~!
桜さんとA男が友達として仲が良かったらまた別だけど、そういうわけでもなさそうだし、私だったら、イライラもそうだし、ちょっと落ち込みますね。おいおい私は無視かいっ!って。
こういう一種の疎外感って、学生時代の男女グループなんかだとありがちなことではありますよね。社会人になるとあんまりないけど。
宇多丸:
はっきりしてるのは、その他のメンバーは現状、わざわざ波風立ててまで、B子さんC子さんを呼び戻そうとする気はなさそうってことですよね。
たとえばそこで、桜さんが改めて問題提起して、A男に詫びを入れさせるとか、A男排除=B子C子復活の方向に持ってくとかっていうのも、もちろん考えられなくはないし桜さんの言い分のほうが正しいのはたしかなんだけど……、率直に申し上げて、そんなことをしても、ただ単に桜さんが現行メンバーから煙たがられて終わっちゃう可能性も高いんじゃないか、って気がしちゃうんですよね。
こばなみ:
力関係的にそうなってしまいそうですよね。
宇多丸:
すでになんとなく「A男>B子+C子」ってことにはなっちゃってるわけだからね。
それは桜さん的には許せない不正義だろうけど……、友達って、正義の度合いで選ぶわけじゃないからさ。
むしろ、だらしないけど憎めないとか、口は悪いけど面白いとか、そういう人としての歪さにこそ、友人ならではの親密さって感じたりするもんじゃない? たまに本気でムカッと来るようなことがあったとしてもさ。 それを「正しさ」ベースでハタから頭ごなしに否定しようとするような人は、かえって疎んじられてしまいますよ、そりゃ。
そんな感じで、少なくとも残ったメンバーたちにとってA男は、たとえB子C子を傷つけ、桜さんを怒らせ、グループ内にしこりを残した張本人だとしても、だからと言って、制裁として遠ざけたり、まして嫌いになったりはしないしできない、っていうくらい、やっぱり友としての魅力が相当に強い人物なんだってことで すよね。そこは認めざるを得ない。
なので、たとえ仮に、相談文にもある通り、桜さんがA男に直接「もう来ないで!」と告げて、A男も素直にそれを了承したとしても……、A男擁護派は結局、別の場所で彼込みの集まりを開くだけなんじゃないかって気がするんだよね。つまり事実上、桜さん抜きの会が別個にできるだけっていう。 それもなんだか、アホらしいし悔しくない?
ことほど左様に、現行グループではA男排除=B子C子復活の方向での「改善」が歓迎されないのはほぼ間違いないわけだから、それをゴリ押ししてかえって孤立してしまったりするよりは、桜さんは桜さんで、B子C子が来やすいような場を別に設けてあげて、そっちに参加したければみなさんもどうぞ、くらいにしといたほうがいいんじゃないかな~、と僕は思いますけど。
要はちょっと桜さん、「同じメンツ」ってことにこだわりすぎなんじゃないのかな。
それを言ったら、学生時代からよく集まるメンバーがいるっていうのはけっこうなことだけど、31歳にもなって、いまだにいっつも同じ顔ぶれ、とかってほうが、ホントは少し不自然なんだと思いますよ。 なんかそういう、「ずっと友達だね!」みたいな幻想って、みなさんお好きなのかもしれないけど……。
こばなみ:
『愛という名のもとに』みたいなことかな? 古い?
社会人になれば、ほかの友達もできて、そっちのが楽しくなったりして、そこまで会わなくなりますけどね。1年に1回会って楽しいね、くらいで逆にいい感じになるっていうか。
宇多丸:
人というのが成長して、つまり変化してゆくものである以上、友人関係だって変わってって当然なんですよ。
逆に言えば、「ずっと友達だね!」イズムっていうのは、成長からの逃避=退行願望の一種とすら言えるんじゃないかと個人的には思いますけど。
桜さんだって、明らかにA男のことは、友人としてもそんなに好きじゃないじゃん? 我慢してまで彼と友達ごっこ続けろなんて、誰も言ってないんだからさ。
だから、さっき僕が提案したように、桜さんにとって本当に大事なのがB子C子との関係のほうなのだとしたら、そっちを中心にした集まりを勝手に開けばいいだけの話で。 元はと言えば悪いのはA男だってのはみんな承知なんでしょうから、そこに関してなにひとつ後ろめたく感じることはないはずだしさ。 その上で、残りのメンバーのなかでもB子C子と会い続けたい人はこっちに来る、逆にA男抜きでは集まる気がしないっていう人は来ない、それでなんの問題もないでしょ?
で、A男だって、そうやって少しずつ人が離れていって初めて、ようやく自分の愚かさ無神経さに気づいて反省しだすかもしれないしさ……。
ただ、可能性としてゼロではないめっちゃ腹立つ展開として……、せっかく桜さんがA男及びグループから距離を置いたのに、肝心のB子C子が、いつのまにか、な んとなーく、シレーッとあっちに復帰してやがった!みたいなことも、残念ながら、まるっきりあり得ないことではないですよね(苦笑)。
こばなみ:
嫌な展開。でも、なくもなさそうな……。
宇多丸:
万が一そうなったら、桜さん的にはいよいよ、「あれ、この人たちってホントにまだ私の“友達”なのかな?」と考え直す、いい機会だとでも考えましょうよ。
ただまぁ、それ以前に、今回の件で直接傷ついた当事者はあくまでB子さんでありC子さんなんだから、第三者である桜さんが義憤を感じて行動するにしても、ほどほどにしとかないと……ってことに尽きますね。
下手すりゃB子C子にとってすら、余計なお世話!ってことになりかねない、というような懸念は、常に頭の片隅に置いておいたほうがいいかと思います。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年5月7日に公開したものを再編集し、掲載しています。