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友人からの頼まれごとを忘れてしまった私。謝って許してもらったと思ってたのに陰ではまだ怒ってたみたい……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室63】


✳️今週のお悩み✳️

実は友人からある頼まれごとを受けて承諾しました。友人は「最近忙しいと聞いているから余裕があるなら頼まれて欲しい」とのことで、相手も私が最近忙しいと把握していました。それから多忙な日々が続き、友人からの頼まれごとをすっかり忘れていました。これに関しては本当に申し訳ないと思い、何度も謝りました。 友人は「いいよ、大丈夫! そっちも忙しかったしね!」と言ってくださったんですが、実際は「頼みごとを断るなんてありえない! 許せない! しかも最近私に対して嫌な態度をとってる。私は心あたりがないから私は悪くない!」と別の友達にこぼしていたそうです。 正直、本人の考えていることがよくわかりません……。友人関係がこじれるのは避けたいんですが、これから彼女に対してどう接していけばいいんでしょうか?
(春香・23歳)


宇多丸:
これ、忙しくてやむなく頼まれごとを断った、というだけなら、そんなにムカつかれるようなことじゃなかったはずだけども。

「承諾しました」ってあるから、無理を押していったん引き受けたはいいけど、結局忘れちゃってたってことだよね? 
つまり、その点に関して春香さんの落ち度は明らかなわけだ。
一応ムカつかれるなりの理由はちゃんとあるってことですよね。

こばなみ:
ただ、友人も「いいよ、大丈夫!」とは言ったんですよね。「言ってくださった」という書き方が少々気にはなりますが……。

宇多丸:
たぶんお友達も、春香さんが忙しいのはわかった上での頼みごとだったから、そこに対する引け目はあるわけですよ。だから、面と向かって頭ごなしに非難するのは気が引けたと。
でも、やっぱりちょっと春香さんに腹が立ったのも事実だし、なまじそれを本人の前では飲み込んでしまったぶん、釈然としない気持ちを余計に引きずることにもなっちゃったんじゃないか。
で、それをつい、また別の気の置けない友人の前で吐き出してしまった……、ま、概ねそんなところじゃない?

怒りを飲み込むつもりが逆に溜め込んじゃって余計にモヤモヤって、この気持ちの流れ自体は誰だって経験あるだろうし、全然理解できるものでしょ。
この友人自体は、別に聖人ではなかったというだけで、やっぱりそんなに悪い人ってわけでもないような気がするんですよね。

それよりこの相談文で一番気になるのはさ……。
この「別の友達」って人だよ!

「誰々があなたのことを悪く言ってたよ」みたいなことをわざわざ伝えてくる人って、何重かの意味で信用ならないと思うんですよね。
ライムスターの『余計なお世話なバカヤロウ』という曲のなかでも、「頼んでねぇのに陰口わざわざ告げ口すんなよバカヤロウ」っていうラインを書きましたけども。

こばなみ:
わざわざ言わなくていーじゃん!ですね、ホントに。

宇多丸:
陰口叩くってこと自体、もちろん褒められたものではないけども、まぁ人間だからそういうかたちでストレスを吐き出したいときはどうしたってある、っていうかそういうときも絶対必要なんだとは思うんですよ。

でもさ、それをあえて吐き出してるってことは、その場にいる人には、すごく気を許してるってことじゃん!
 つまり、この人なら理解してくれる、味方になってくれると信用してるからこそ、よそでは絶対見せないような弱さや醜さまで、さらけ出してるわけじゃんよ。

それをさ……、一番伝えちゃいけない相手、つまりまさにその陰口の対象に、わざわざ伝えて回って親切ヅラしてるわけでしょ!
 だからまずその時点で、コイツは人の信頼を平気で裏切るヤツなんだな、と思わざるを得ないしさ。

加えて、そんなこと伝えられた側はじゃあ、どうしろっていうの?っていうさ。
とは言え直接攻撃されたわけじゃないから具体的に何ができるわけでもなく、基本ただただ嫌な気持ちを抱え込まされるだけっていう……。
恐ろしいのは、実際にはそんなこと言ってなかったり、言ってたとしてももっと親しみとかユーモアがこもった軽口だったとしても、いったんそうやって第三者から悪印象を植えつけられちゃうと、どうしてもその後のその人の言動すべてに対して、疑心暗鬼にはなってしまうということ。
当然、両者の関係はよりギクシャク、ピリピリしたものになってゆく。
んなもん聞かされたっていいこと一個もないよ!

たとえば、その「別の友達」とやらが、本当に春香さんのためを考えているとか、両者の仲を心配してるとかいう人なんだったらさ、陰口を聞いた時点で、「そんな子じゃないはずだよ、きっと誤解だよ」とか必死でフォローしつつ、あくまでそれとなく春香さん側の真意を探りながら、「どうやらこういうことだったみたいで、でも本人もすごく申し訳ながっていたよ~」などとやんわりその友人の怒りを解いていく、なんなら三者で会う自然な和解の場をセッティングする……等々、とにかくできるだけ互いを傷つけず、波風立てないように処理しようとする、はずでしょう?

でも、ぶっちゃけこういう「陰口告げ口」野郎は、まさにその波風が立つ様をこそ楽しんでるんだから!
 たとえ本人の中では心から良かれと思ってやっていることだとしても……っていうか、だからこそよりタチが悪いんだけども。

ということでね、春香さんも「正直、本人の考えていることがよくわかりません」とか言ってるけど、そもそも又聞きなんだからさ、よくわからないのは当たり前なんだよ。
しかも、いま言ったように、いろんな意味で信用できない人物からの、又聞き。

たとえば、ホントにこんな言い方してたのか?ってのも疑っていいと思いますよ。

こばなみ:
だから私、又聞きネタは話半分で聞いてますよ。あんまり信じないことにしています。直接聞かないとどんな温度感で怒ってるのかとか、わからないじゃないですか。

宇多丸:
ねぇ?

実際はさ、「忙しいのわかってて頼んだ私も私なんだけど、春香ちゃんもやっぱりちょっとひどいよね……、一応本人には大丈夫って言っちゃったけど、正直まだ許せないって気持ちもあるんだ、ダメだね私……、ひょっとして私、春香ちゃんに嫌われてるのかな? 心当たりはないんだけど……」くらいのテンションだったのが、その「別の友達」が悪意たっぷりに盛りまくった結果、相談文みたいな感じで春香さんには伝わっちゃったのかもしれないしさ。

こばなみ:
その可能性はあると思います。おもろネタとか話す時も盛っちゃったりしません? だから正確にテンションなんて伝えられないのかな、と。だから又聞きはいい事だけ信じたほうがいいですよ。

宇多丸:
「あの人、陰であんたのこと、すごく褒めてるんだよ」とかね(笑)。そっちのパターンは、残念ながらあんまり聞いたことありません!

ま、とにかく春香さんも、気持ちはわかるけど、この時点であんまりモヤモヤしたり疑心暗鬼になるのは、本当にやめたほうがいいよ。

それより、最初にも言ったように、今回の件に関しては、そもそもの落ち度が春香さんにあるのは明らか、そこに友人が腹を立てること自体には理があるし、その上でなおかつ、それを春香さんに直接は伝えられず、飲み込もうとした結果余計に引きずってしまったのだろうというのも、想像に難くないわけでしょ。
だから春香さんは、友人に本当の意味で許してもらうまで努力するのと同時に、実は春香さんへの怒りを解消できないでいるのかもしれない友人を、それこそ「許してあげる」ことが大事なんじゃないですかね。そもそも悪いのがこっちなのには変わりないんだからさ。

ちょいちょいムカつくこともあるけど、許し合えるし、理解し合える。友人ってそういうもんでしょ。
仮に春香さんとそのお友達だけの関係だったら、なんの「問題」も生じてなかった可能性もあるよ。
たとえば、数週間後には自然に「やっぱちょっと私、自分勝手に怒りすぎだったな……、直接春香ちゃんに言わなくて良かった~!」とか思い直してたかもしれないしさ。

こばなみ:
こじれさせてるのはもっぱら「別の友達」だと。

宇多丸:
しかしこういう人はさ、こっちが「あ、あの人そんなこと言ってた? 本人に確かめてみるね!」って返したらどうするんですかね。

ま、それも告げ口の告げ口になっちゃうから、実際にはあんまやりたくないことではあるけど。

こばなみ:
ただ、自分が「陰口告げ口」野郎になっちゃってることもありますよね?

宇多丸:
どうかな~。
「そうかそうか、それはヒドいね~」とか、愚痴として聞いてあげることはあっても、それをわざわざ対象の人に伝えたりは、僕はやっぱりしないかな~。
単純に、自分が言ったことで目の前の人の顔が曇るのとか、見たくないじゃん!

こばなみ:
もちろん3人の関係性にもよりますけどね。「もー、すごい怒ってたよー! 早く仲直りしちゃいなよー!!」とかって、ぶっちゃけて話したこと、私はあるかな。

宇多丸:
でも今回のは、そんなサバサバした感じでもないからねぇ。
まぁそう言ってる僕らも、それこそ又聞きの又聞きだから、実際のところはホントにわかんないですけど。

こばなみ:
さて、どうしましょうかね、これから?

宇多丸:
そりゃあ、春香さんが本当に悪いと思ってるってことを、そのお友達に改めて、誠意をもって伝えていくしかないですよ。

これは、仮に実はやっぱり大して怒ってなんかいなかったとしても、マイナスになりは絶対にしないことだからさ。

それこそ前の「仕事をしっかりやってるのに認められないのは、上司に媚びないから?」の回答にも通じるけど、「ごめんね、これ、この間のお詫び!」とか言ってお菓子のひとつも持っていくとかさ。「ホントに悪いと思ってる」「悪気や敵意などあるはずもない」っていうのをカジュアルに表現する方法は、いくらでもあるわけじゃん。

そしたらどうしたって相手も、「もー、そんなに気を遣わなくていいよー!」ってなるはずだし。
少なくとも、本当に今後もお付き合いを続けていくに値する人なら、それで必ず態度は軟化してゆくはずですよ。

逆に、それでも頑なに怒り続けてるような人なんだったら、そのときこそ、こっちから付き合いを見直すいい機会だって考えればいいよ。まぁ、そんなことないと思うけど……。

いずれにしても、問題の「別の友達」こそ要注意なのは間違いない。いつかご友人と、コイツのコウモリ野郎ぶりを肴に笑い合える日が来るといいですね!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年9月27日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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