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5年間全力で応援してきたアイドルが解散、引退。心の支えを失って立ち直ることができません。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室222】


✳️今週のお悩み✳️
私はあるアイドルを5年間全力で応援してきました。最初は友人たちとそのアイドルグループの冠番組を見て楽しんでいた程度だったのですが、次第にライブなどにも行くようになり、いつしか私の生活の支えになっていました。私は仕事上での人間関係が上手くいっておらず、とても辛い思いをしていたこともあり、そのアイドルに生きていく希望のようなものを見出していたような気がします。仕事でどんなにやさぐれた気持ちになっても、そのアイドルを観るたびにRHYMESTERさんが歌っているように「美しく生きよう いや、美しくあろうと願い続けよう」と人間として正しく生きる力のようなものをもらっていた気がします。しかし先日、私が応援していたアイドルグループが解散してしまいました。私はとてもショックで、数カ月がたった今でも立ち直ることができていません。そのアイドルは卒業と同時に芸能界を引退してしまい、もう会うことができないという事実に心が痛みます。ライブなどで楽しかった日々を思い出すと心が痛いです。どのように気持ちを切り替えれば良いでしょうか。
(サーエス・27歳・千葉県)


宇多丸:
僕の友人で、後藤真希がモーニング娘。をやめるって発表されたときに、ショックで仕事を3日休んだ人がいますよ。部屋の隅っこでずっと体育座りをしてたらしい(笑)。

まぁ、僕も彼と同じく2000年代前半のハロプロに熱狂して、メンバーが卒業やら脱退やらしてゆくたびに号泣してたクチだし、それこそ、万が一いつかPerfumeが解散しちゃったら……、などと想像すると、サーエスさんの喪失感の何割かは、なんとか共有できる気がします。

で、どう気持ちを切り替えてゆけばいいかということだけど……。

これはあくまで一般論なんで、今すぐサーエスさんの心の救いにはならないかもしれないですが、基本的にアイドルというものは、旬の活動期間が限られているからこそ、その瞬間の輝きがより増すというか、刹那的だからこそ素晴らしいんだ、というのは本質としてありますよね。

ただ、ちょっと話はずれるけど、前に藤井隆さんのライブで早見優さんにお会いしたら、いまだに……、なんというか、「内側から輝いてる」感じなんだよね。

単なる美人とかじゃなくて、人として、太陽のように輝いている。まさしく、周囲を明るく照らすような存在感。

特に早見さんがそういう方だというのもあるかもしれないけど、これが真のアイドルというものか!と思いましたよ。年齢とか結婚してるとか子どもがいるとか、関係ない。

こばなみ:
サーエスさんにとって、そういう元気をもらえる存在がいなくなってしまったわけですよね……。

宇多丸:
まぁ、早見さんみたいに、いつまでたってもアイドル性を失わずに表舞台に出続けられるような人は、やはりごくごく限られているからね。たださ、ということは、たいていのアイドルには必ず、それを辞めたあとの、セカンドライフというのがあるわけじゃない。だとしたら、ファンとしてはやっぱり、最後はあたたかくそこに送り出してあげるべき、でもあるんじゃないかな。

そもそもアイドルのファンというのは、作品やパフォーマンスから受け取るもの以外に、彼や彼女から具体的な見返りを求めちゃダメだ、と僕は強く思ってて。

今はさ、アイドルと直で接する機会を、身もフタもない言い方をすれば「買う」ことができる……、むしろそっちが主流の時代なわけだけど、そこで「これだけ金をつっこんだんだからそのぶんサービスしろ」みたいなこと言いだしたら、キャバクラや風俗と変わんなくなっちゃうじゃん。

アイドルとは「“魅力”が“実力”を凌駕している存在」で、「そのギャップをファンが“応援”で埋める」構造込みで成り立つもの、というのが僕の考えた定義なんですけど、応援ってつまり、無償のものであるべきじゃないですか。

もっと言えばそもそも、「愛」というのが無償であるはずなんだ、という話かもしれないけど……。

だから、たとえばアイドルの恋愛が突然発覚してそのまま結婚~引退、みたいな流れになったとしても、それが本人の意志によるものである限りは、涙を飲んで祝福して、その後の幸せを祈ってあげる……というのがやっぱり、ファンとして一番美しいかたちではあるだろうと思うんですよね。

たしかに、目の前からその人たちが消えてしまうのは、さぞかし辛いことでしょうけども。

でもさ、大好きだったメンバーはどこかできっと幸せに暮らしていて……、その一方で、彼らの音源とかライブ映像とかは、ずっと残っているわけじゃないですか。

エンターテインメントは時を超える!

彼らの歩みの記録を、言わば「永遠の一瞬」として、今の時代なら何度でも味わうことができるわけだから。

それらを反芻しつつ、現在の彼らの幸せを願いつつ……、それでじゅうぶんだ、と考えられるようならいいんですけど。

解散や引退の仕方とかにもよるかもだけどね。

不仲になっちゃってとか、ネガティヴなやつだと悲しいよね……。

サーエスさんの好きなアイドルが、ホントに前向きな感じの「卒業」をしたんだったらいいですけど。

それこそ……、ライムスターの曲で『LIFE GOES ON feat.Full Of Harmony』というのがあるんですけど、二番の僕の歌詞は、1986年に自殺してしまった岡田有希子さんのことを歌っているんです。

あんな不幸なかたちですべてが終わってしまうなんて……、だから僕は歌詞の最後に、生きててほしかった、という思いを込めて、彼女が亡くなってしまった86年4月8日以降にも、ちょっとはマシに思える日だってあったんだよ、と呼びかけているんだけど。

とにかくそういうことを考えるとやっぱ、会えなくてもどこかで元気に暮らしているなら、まだいいじゃないか、って思うんですよ。

最近だったら、あれはご病気というか突然の体調変化が原因でしたけど、やはり若くして亡くなられてしまった、私立恵比寿中学の松野莉奈さんとかさ。ファンがどうこう以上に、ご本人が一番無念だったでしょうよ。

それにくらべればスキャンダルなんかホントに、どうってことないよ! 「しょうがねぇなぁもう」って、まだ怒ったり笑ったりできるじゃん。

まして恋愛発覚とかはさ、本人が好きな人と一緒にいたいならそれでいいじゃん、って思いますけどね。どうせ俺らが付き合えるわけじゃなし(笑)。

これって、アイドルに限らず、対人関係すべてに言えることかもね。

別れたりフラれたりしても、その人が幸せにどっかで暮らしていてくれれば良し!と思えるかどうか。

こばなみ:
そう思えたら自分も救われるというか、いいですね。

宇多丸:
サーエスさんが応援していたそのグループも、きっと解散したなりの理由はあるはずだし……、無理して続けて、たとえばメンバー同士が完全に不仲になっちゃうとか、精神的に追いつめられてきちゃうとか、そうはなってほしくないわけじゃん? 逆に、限界まで行く前に解散したんなら、いずれどこかで、また!っていう希望が、まだずっと残っているとも言えるわけで。

それに、サーエスさんが夢中でそのグループを応援してた5年間の思い出というのは、これから、一生モノの宝になっていくんですから。

また話はちょっとずれるけど、僕の記憶が正しければ、昔テレビで明石家さんまさんが、「一番大切なものはなんですか?」みたいな質問をされたときに、わりと即答で「思い出」って答えられてたんですよ。

これ、ちょっと意外な感じもすると同時に、ああホントだよなぁ、素敵な回答だなぁって、軽く感動しちゃって。

たしかに、今この瞬間が楽しい!っていうのももちろんあるけども、その体験が本当に価値あるものになるのは、それが思い出になったとき、なのかもしれないなと。

僕も、2001年に、大阪での深夜ライブ翌日に駆けつけてまで(笑)ハロプロ清里コンサートにモーヲタのみんなと行ったときとか、そのときももちろん本当にメチャクチャ楽しかったんだけど、後から振り返るとあれはとても特別な一日だったんだなぁって、今もたまにしみじみ思ったり、当時そこにいた人たちと語り合ったりするもん。

で、あのときモーニングやハロプロに夢中になっててホントに良かったなぁ、と改めて心から思うんです。

そんな感じで、サーエスさんがこの5年間そのグループに情熱を注いできたことも、絶対に無駄にはならないどころか、まさにこれからかけがえのない財産になってゆく、ということでもあると思うんで……。

仲間たちと支えあって、なんとか元気出してこう!

こばなみ:
すぐは無理かもしれないけど、だんだん気持ちをシフトしていけるといいですね。思い出は消えない!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年1月13日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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