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数年前に夫がゲイだと気付きました。ただ夫と上手くいかないだけで、その他は本当に幸せ!と思いたいけど……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室344】


✳️今週のお悩み✳️
私は結婚して20年を超えましたが、数年前、夫がゲイだと気付きました。結婚前に彼から「自分はバイセクシャルだ」と打ち明けられたことがあります。そのときの私は「それってライバルが普通の2倍いるってこと?」と驚きましたが、今、彼は私のことを好きなのだから問題ないと思ったのを覚えています。しかし彼は、「自分は彼女よりも友達を優先する」と言って、結婚してからも家を空けることが多く、私は一人で寂しい思いをしました。また、私は二人で過ごしたいと思うのに、いつも友達を家に連れてきていたし、旅行に行く計画もいつの間にか彼の友だちカップルとの4人になっていて、「私と二人になるのは嫌なのかな」と感じていました。新婚旅行でも夕食に行った海外の居酒屋で、彼は現地のおじさんたちと肩を組んで上機嫌。私は一人取り残されて、どうしたらいいのか途方にくれました。妊娠したら変わるかな? 子どもが生まれたら変わるかな?と思いながら、でも好きな夫に気に入られたいという気持ち、また、結構言葉のきつい人なので怒られるのが怖いという気持ちから、平気なふりをしていたかなと思います。今思えば私自身、とても幼かったし、そこで気持ちを伝える努力をしなかったなと反省。
彼は家事が得意で、何でもテキパキこなします。私もフルタイムで働いていますから、特に子どもが小さかったころは助かりました。でも「こんなに家事をしているのに、何が不満なのか」と言われたときには、違うという気持ちでいっぱいでした。
数年前、スーパーで働く私の知人からこんな話を聞きました。「あなたの夫が、毎日、店に来る。店の男性従業員に『来ちゃった♡』と言い、他の従業員からも『愛人が来たよ』と冷やかされている。どうかと思うよ」と。 別の知人も、先の男性従業員と夫は「僕から見ても羨ましいくらい相思相愛ですよ」と。でもそのことを夫に問うことはできませんでした。
ここ数年LGBTという言葉が浸透し、当事者の方が書かれた本も数冊読んでみました。すとんと胸に落ちる言葉がありました。「偽装結婚」。恋愛対象は同性。でも20年以上前にそれを貫くのは厳しかった。いろんな条件から、私を選んだ。 そう言えば、若い頃、なぜ私を選んだのかと尋ねたときに「言うことを聞きそうだったから」と答えた夫。 冗談が過ぎると思ったけど、本音だったのか。思い返せば、いつも会って食事をする男友達は決まっていて、でも一定期間過ぎると、その人とはまったく会わなくなって別の友達が現れる。あの人たちにも思いを寄せていたのだな。
子どももいるし、ずっと体は求め続けられていたから、逆にセックスを断り続けていたのは私で「法律でセックスが認められているのはお前だけなんだから」という言葉も、私の中に違和感をもって残っていて。夫の求めに応えらえないことが申し訳なくもあり、でも、友達と食事も、時によってはお風呂も済ませて、子どもが寝てから帰って来ることの多い夫に、顔を合わせると体を求められるのが嫌で、子どもを寝かせ付けながら一緒に寝てしまったことにして逃げていた。怒られるのが嫌で、子どもたちにも「お父さんが帰って来るから、その前に片付けて!」「お父さんが帰ってくる前に寝てないと!」とびくびくしていました。何度も話し合おうとしてみましたが、話すたびにきつい言葉が返ってきて、私が泣いて終わる。 怒らないでほしいと言うと、「怒ってる怒ってると言うけど、僕は怒っていない。こういう言い方なのだから早く慣れてくれ」と怒る。
3年前くらいから、私は夫と目を合わせることも口をきくことも避けるようになりました。すると、さすがにまずいと思ったのか、怒られなくなりました。私はそれで精神的にラクになりました。でも、子どもにとっては大事な父親ですし、父母がこんな不仲なのは申し訳ないと思っています。
数カ月前に、一生分の勇気を振り絞って、夫に直接「恋愛対象は男性なのに、どうして私と結婚したのか」と問いました。意外なことに、怒られませんでした。「全然好きじゃなかったわけじゃない」という答えでした。私が「子どもが高校を卒業して家を出るまでは頑張るけど、その後はわからない」と言うと、「僕はそんなつもりはなかったけど、離婚届を取ってきてあげようか」と。
その日は、ずっと封じ込めていた思いを口にできたことで満足でした。けれど、何だか悲しくて悲しくて、それから何度も泣いてしまいます。 子どもたちはとってもかわいく、たくましく育ってくれているし、職場の仲間にも恵まれている。ただ一人、夫と上手くいかないだけで、そのほかは本当に幸せ!と自分を納得させる日もあります。でも、やっぱり悲しい。この悲しさは、夫と私は結局のところ本心を伝えあってこなかった、パートナーではなかったということの悲しさ。また、全力で投げたボールをきちんと投げ返してもらえなかった、すかされてしまった悲しさだと思います。
あの後、もう一度LINEで問いかけてみましたが、完全にスルーでした。夫婦なんて、多かれ少なかれ我慢しあっていて、みんな努力で一緒にいるものだよねと思ってやってきましたが、こうして書いてみると、これはマズいですね。とほほな内容に自分で驚いています(泣き笑い)。 長文、お読みいただきありがとうございます。ずっと、書こうかどうしようか迷っていたのですが、ご縁があってRHYMESTERの「人間交差点」を聞き、背中を押された気がしました。
(R子・48歳・公務員・岡山県)


宇多丸:
もちろん、20年前とかはまだ、自分の本質を偽らなければ生きてゆけないと考えてしまうくらいには、異性愛以外に対する社会の偏見も強かったのは間違いないと思うし、その点に関してはダンナにも同情の余地がないこともないけど……。

ただ、そのためのかりそめのパートナーに、しかもはっきりした同意もなしに選ばれた側は、当然たまったもんじゃないよね。

これは相当辛いよ……、R子さん、大変でしたね。

こばなみ:
20年間ですか……、ただなんか、最初からいろいろひどい言い方や態度ですよね。

宇多丸:
そうなんだよね。

少なくともこの文面から判断する限り、彼のR子さんに対する言動は、初期から一貫して実に感じ悪い。

それって実は、彼のセクシュアリティとは関係ない話じゃない?

R子さんの心を傷つけるようなことを平気でするし、それがすんなり通らなかったり抗議されたりすると、逆ギレか開き直り、あげくはだんまり。

「時によってはお風呂も済ませて」って……、どういう神経?

仮にもパートナーに対して……というか、誰に対してだって、これはやっちゃだめな態度でしょう。

「法律でセックスが認められているのはお前だけなんだから」だの「全然好きじゃなかったわけじゃない」だのも、かつての「言うことを聞きそうだったから」とも重なって、つまるところR子さんのことはさしあたって都合がいい存在として利用しただけ、としか受け取れない、本当にひどい発言で……、そんな考えが露骨に見えるような相手とは、いくら求められても、交渉を持つ気になれないのは当たり前ですよ。

「申し訳なくもあり」なんて思わなくてよろしい!

彼がここまでねじまがってしまった背景に社会の問題があったのだとしても、なんの責任もないR子さんを半恒常的にあざむき軽んじ傷つけていい理由にはならないですよ、言うまでもなく。

さらには、長年苦しんできたけど子どものことを考えてしばらくは我慢しようかと思う、その先は夫婦関係の状況次第だけども……というR子さんの率直な訴えに対する、「僕はそんなつもりはなかったけど、離婚届を取ってきてあげようか」っていう言い草も、マジで腹立たしくて。

要はこれ、ひたすら「あくまでこれは君が言ってること、君が決めることだからね」って、一方的に責任を負いかぶせようとしてるだけでしょう。僕は悪くないからね? 僕が言いだしたんじゃないからね?って。

卑怯すぎて会話になってない。

最終的には、めんどくさくなってきたのか、完全ゼロ回答。

とにかく、端的に冷たい人っていうか。すごく身勝手な人って感じますよね、この相談文を読む限り。

しかもそれが、わりと最初からはっきりそういう人だった、って感じじゃない?

こばなみ:
怒ってるような言い方に慣れろ、とか、それ自体がもうおっかない。

私、男の人が怒るのが極端に怖くて、耐えられないんですよ。って、そんなのみんな嫌だろうけども……。

宇多丸:
ねぇ。彼がそんなんだからこそ、R子さんも言いたいことが言えないような関係になってっちゃったわけだから、夫婦間のコミュニケーションの欠如に関しても、R子さんが責任感じる必要ないんじゃないですかね。

言ったら言ったで案の定、あっちは聞く耳持ってなかったわけだしさ。

ま、彼は彼で、本当にはどうしたいのか、どうしたらいいのか、自分でもよくわかってないままズルズルとここまできちゃった、みたいなところもあるのかな、とは思うけど。

ゆえに、他者の気持ちにまで考えが回らない、って感じなのかもね。

なんであれ、だからって許される話じゃないけど。

実際やってることは昔ながらのクソ男と何も変わらないもんね。平然と愛人見せびらかすわ浮気するわ、みたいな。

繰り返しますが、彼が性的マイノリティであることと人として感じ悪いのは、まったくの別問題ですから。

そんな感じなので、実際R子さんのこの文自体、もはや「相談」というような段階ではないんだよね。

彼がパートナーとしてかなりひどい仕打ちをしてきた、というのはR子さんにとってすでに動かしがたい事実であって、勇気をふりしぼって問題を顕在化しても、彼が反省したり歩みよってくれることはなかった。

その態度が改善する気配もない、どころか悪化するいっぼう……。

個人的には、そんなのとこれ以上無理して一緒に生き続けるメリット、ある?とはやっぱり思っちゃうけどな。

こばなみ:
お子さんも、詳しいことまではわからなくても、嫌な感じだなとか、お父さんひどいとか、わかってると思いますけどね。

だったら、みんなで無理してるほうが辛くないのかな?って。

宇多丸:
僕も、ちゃんと話せばきっとお子さんたちはわかってくれるし、お母さんの味方になってくれるはず、っていう気がします。

むしろ、自分たちのためにR子さんが人生を犠牲にしたとか、我慢して不快な人物と生活を続けていたとかいうほうが、お子さんたちにとっても結局は、「そんなこと望んでないよ!」ってことになるんじゃないかなぁ……、年齢にもよるけど、大人が思ってるよりはずっと、子どもというのはしっかりしてるし、しっかりしてくるもんだと思いますけどね。

とにかく、子どもを理由にいろいろ先延ばしにしてゆくのは、あんまりいいことになってゆかないんじゃないかという気がします。

あとはやはり、一度弁護士に相談してみるのがいいと思いますよ。これはわりとはっきり。

親権や養育費、慰謝料などをきっちり確保してゆくためにも……、こういうケースだとどうなるとか、もろもろ相談に乗ってくれるはずですよ。

いずれにせよ、現状からは何かしら踏みだしていったほうがいいと思うなー。

ここままだと、心が腐ってっちゃうよ。

R子さんは何も悪くないんだから、まずは良くない関係を精算してゆくという感覚で、前に進むのが吉、だと思います!

こばなみ:
私もそう思います!

そしてもし、弁護士のあてがない、よくわからない、ということであれば、国によって設立された法的トラブル解決のための案内所「日本司法支援センター・法テラス」なんかもあるので、活用してもいいかもしれません。地方事務所もあるので。

大変だと思いますが、早めのはじめの一歩を。私たちはみんなで、R子さんのことを応援していますよ。



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2020年12月5日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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