6人のママ友でLINEのグループトークをしてたけど、実は私以外の5人グループもあって盛り上がってるらしい……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室46】
✳️今週のお悩み✳️
こんにちは、宇多丸さん。私は30代、小学校に通う姉妹の母です。ママ友とのお付き合いのことで、最近悩んでいます。
仲の良いママ友グループ6人で、いつもLINEで会話をしているのですが、話が盛り上がると、LINEの受信音が鳴り止まないこともあります。たまに、本当に鬱陶しく思ってしまうことも。私は仕事もしているので、こまめにLINEをチェックしたり返信することもできず、既読スルーしてしまうこともしばしば……。
既読スルーが続いてしまったある日から、あきらかにグループトークが激減。どうしたのかな?と思っていたら、どうやら私以外の5人で他のトークルームを作って、そこで盛り上がっているみたいなんです。それを1人の友達からこっそり聞いてしまい、すごく悲しい気分に。それからはあまりランチにも誘ってもらえず……。
こんなLINEでのママ友付き合い、これからどうやってお付き合いしていったらいいでしょうか? みんないい人なので、お付き合いは続けていきたいのです。
(くうすけママ・30代)
宇多丸:
こないだ、80代も半ば近い僕の父が、ついにLINE始めたって言ってましたからね。
僕がやってないのに……、SNS時代、ここまで来たか!って思いましたよ。
こばなみ:
メールよりLINEで連絡をとりあってる人、多い気がします。私は未だにメール派なんですけどね。
宇多丸:
他の5人のママ友たちは専業主婦ってことなのかな? くうすけママさんが仕事してる間も、昼間っからガンガン、やりとりしちゃってるんでしょうね。
こばなみ:
グループがあって、そのなかの数名でまた別のグループをつくってLINEをするって、学生とかの間でもあると聞きますよね。それがちょっとしたいじめに発展する、なんて話も聞いたことがあります。
宇多丸:
直接的にいじわるされるとか無視されるとかじゃななくても、知らないところで実は自分以外の全員が通じ合っていた、なんてのを後から聞いちゃうと、それはやっぱり当人にとっては「いじめ?」ってことになっちゃうもんね。
これ、SNSに限らず、昔から普遍的にある状況ですよ。
こばなみ:
自分が集まってるほうのグループにいたとしても、なんだか言いにくいですよね。でも言わないものナンだし…。
宇多丸:
くうすけママさんがそれでも「みんないい人なので、お付き合いは続けていきたい」ってフォローするくらいだから、たぶんだけど、彼女たちにも、実はそれほど悪気はなかった可能性も高いと思うんだよね。
それこそ、くうすけママさんが自分たちより多忙なのもわかってるから、迷惑をかけないように別のグループを作って……っていう、ひょっとしたら本気の心遣いから始まったことなのかもしれない。
でもさ、そのなかに、「まぁずいぶんとお忙しいことで……、ウチらヒマ人のバカ話なんかいちいち読んでもいられないでしょうからね!」的な、かすか~な悪意のようなものがまったく混じっていなかったかというと、そうとも言えないかもしれない。 人間が何人か集まればさ、関係性のちょっとしたバランスの崩れで、こんなことはいくらでも起こりうるわけじゃない?
問題は、そこに生じた「かすか~な悪意みたいなもの」の扱い方だと思うんだよね。 くうすけママさんが「これっていじめじゃん!」と思えば思うけど、本来「かすか~な」「のようなもの」に過ぎなかったネガティブ要素が、どんどん確定的なものになっていっちゃう気もするんですよ。
逆にね、くうすけママさんだって、彼女たちのやりとりを「本当に鬱陶しく思ってしまうことも」あったわけでしょ。 つまり、決して彼女たちのことが嫌いなわけじゃないけど、一瞬ネガティブな気持ちを抱いてしまったのも事実。 だとしたら、彼女たちだって実はそれを敏感に察知していたのかもしれないよ? 「これって、ウザいと思われてるんじゃない?」と。 そういう意味では、お互い様なのかもしれない、って考え方はできないですかね。
さっきも言ったように、人間同士の関係性なんて常にグラグラしてるもんなんだから、少しバランスが崩れただけで、うっかりネガティブな感情が生じてしまいがちなのはもう、仕方のないことだと思うんですよ。 ただ、そこを鋭くキャッチして、「問題」視すればするほど、バランスの崩れはどんどん大きくなってっちゃう気がするんです。 まして「仕返し」なんてしちゃったら……、5人のママ友たちは、無意識的にせよ、そうしてしまったのかもしれないわけですが。
そこでこちらは、どう対処すべきか? 一番賢明なのはやっぱり、ミもフタもない結論ですけど、「気にしないようにする」ってことじゃないですかね。 くうすけママさんもさ、「ま、実際それどころじゃなかったし、しばらく放っておいてもらえて助かったかも!」くらいにいったん考えてみる。 で、「ようやく仕事がひと段落つきました~! しばらくロクに参加もできずスミマセン……」とかなんとか言って、何ごともなかったようにまた輪に入っていけばいいんじゃないですかね。
こばなみ:
それでも何か嫌なことがあったとしたら、そんな無理して友達でいなくてもいいですしね。
宇多丸:
それはもちろんそうですよ! でもまぁ、さしあたって「お付き合いは続けていきたい」という部分を尊重するならば……、いつもこのお悩み相談コーナーでは、なんだかんだで「本人にちゃんと言え」って結論に行きつくことが多いですけど、場合によっては「ないことにする」のも知恵なんじゃないかってことですね。
僕自身もね、前は本当に年がら年中ツルんでたような仲間の集まりに、最近は僕だけあんまり参加できてなかったりもして、「どーせオレの悪口ばっか言ってんだろ!」とか牽制したりはしてるんだけど、だからって仲が悪くなったってわけではまったくなくて、行ったら行ったでまた全然フツーに盛り上がるであろうこともわかってる。 要は友達なんてさ、付き合いが長ければ長いほど、比較的疎遠な時期があったりするの、別に当たり前のことじゃない?っていう。
こばなみ:
気になっちゃうのは逆にそこまで友達じゃないからでは?
ママ友って、幼稚園とかって毎日会ったりする人のことを指す場合が多いと思うのですが、学校っぽい気もするんですよね。たまたま近くに住んでるとか、同じスクールバスを使っているだけで友達ということになっているような。
宇多丸:
たまたま集まった者同士、強制的にそこにいなきゃいけないっていう、学校に近い状況だよね。一番いじめが起こりやすいシチュエーションとも言える。
ただ、くうすけママさんは別にいやいや付き合ってるわけじゃないみたいだから、まだいいほうなんだろうけども。
こばなみ:
ところで、LINEって終わり際がわからないですよね。スタンプの押し合い、いつまで続くの?って。
宇多丸:
僕はLINEはやってないけど、iPad買ったときに親しい友人相手にメッセージ機能使ってみたら、なるほどこれは終わりどころが見つけづらいなとは思った(笑)。最後は「もう出かける時間だから!」とか言って強制的に終了するしかなかったですけども。
だから、「そろそろ仕事に戻りまーす。また後ほど~」とかライトに伝えればいいんじゃないの?
こばなみ:
でもiPhoneがブーブーなっちゃいますよね。設定で知らせナシにはできるっちゃできるけど、アプリを開いたときには膨大な未読がたまっているという……。
宇多丸:
「みなさん盛り上がりすぎ、読みきれないw 誰かこれまでの流れを要約して!」みたいに、ギャグっぽくツッコめば?
こばなみ:
そんなことを言えたら、こんな悩みを抱えないのでは?
宇多丸:
気が置けない仲ってところまではいってない……だとしたらやっぱり、ホントに友達とは言い難いのかもね。
だいたいさ、「ママ友」って名称が良くないよね。 「友」って言われるとなにか自然な絆があるように錯覚しちゃうけど、実態はただの「ママ知り合い」でしょ!
こばなみ:
確かに「友」までいってない仲でも「ママ友」ってくくっちゃってますからね。
宇多丸:
「“友達”なんだから、こうしてよ」とか「こうしなきゃ」みたいな人間関係プレッシャーを余分に生じさせてるとしたら、ホントに有害だもんね。
ぜひiPhone女子部発で、「ママ友」という呼称は廃止、「ママ知り合い」を浸透させていきましょう!
こばなみ:
ちなみに、友達のなかで他のみんなは知っていたのに自分だけ聞いてないってことってあるじゃないですか。誰かが結婚するとか。悪意なんかなくって、ただ単に言うタイミングがズレただけなんだけど、その感じですよね、今回のって。
宇多丸:
うちの奥さんも先日ちょっとぷんぷんして言ってました。親友の結構重要な発表を、Facebookで初めて知ったって。
こばなみ:
ありますね。この時代、SNSで知ったわーってこと……。
宇多丸:
でもさ、友達みんながなんでもかんでも自分にいの一番に報告してくるなんて、そんなことはありえないわけだからさ。
もしそんなことに実際なったら、絶対うっとうしくてしょうがないよ! 村の長老かっての!
友達との距離感なんて、さっきも言ったけど常に変わってゆくものだし、それでも根本的な信頼はおいそれとは揺るがないっていう、そういうもんじゃないの?
それに、誰かと疎遠になった分、別の親しい人ができたりもしてるわけでしょ。
こばなみ:
全員と親しく、なんて無理ですからね。
宇多丸:
だからね、前も言ったと思うけど、「友達が多くて、みんなから好かれている」というのを理想とするような考え方が、まるで常識のように世の中に浸透してるのが問題だと思うんだよ。
昔インタビューか何かで読んだショーン・ペンの言葉ですごく好きなのがあって、正確な引用じゃないけど、「誰からも嫌われてない人というのが本当にいたとしたら、その人はきっと、何かがものすごく間違ってるんだと思う」っていう。 まさにその通りで、「みんなから好かれている」なんて、そんなヤツはいないから! いたとしても、絶対ロクなもんじゃない。 だから、そこを目指したって当然まともな人ほどただ疲れるだけなんだけど、そこで疲れてしまう自分が悪いのかも……とすら思わせてしまう「友達100人できるかな」幻想が、いい大人の間でも非常に根強いわけでしょ。それで必要以上にゲッソリさせられたり、自己評価が低くなっちゃったりしてる人も多いんじゃないかと思うんです。
それこそグループLINEなんてさ、そもそも言っちゃえば「余剰のコミュニケーション」を取るヒマや欲求がある人が使うツールなんで、くうすけママさんのように、そんな余裕のない人がそこを煩わしいと感じるのは当たり前。本来責められるようなことではまったくないはずなのに……。
こばなみ:
Facebook断ちする人もいるみたいですよ。
宇多丸:
前から思うのはさ、みんなもっとライトに「孤独を味方にする」術を身につけておいたほうがいいよ。
孤独を楽しめるようになれば、人生少しだけラクになるというか……。
僕がよく言う「みんな他者だと思え」というのとも通じるけど、人間、結局はそれぞれがお一人様、本質は孤独な存在なわけですよ。
でも、それを骨身にしみて理解していればこそ、他者とのコミュニケーションの大事さ、その価値もよくわかる。
つまり、「完全な相互理解」などと同じく、「完全な孤独」なんてのもまた幻想、一種の甘えだってことを、ちゃーんと知っているわけです。
要は「人間は、そこそこひとりで、そこそこひとりじゃない」ということ。 そういう適度の諦念を身につけてさえいれば、過剰に他人に期待することから生じる失望とか憎しみに溺れてしまうことも、ゼロとは言わないけど絶対に減るし、たぶん騙されにくくもなったりするし、いいことづくめ!
こばなみ:
シンプルに付き合えればいいですよね。といっても、私も悩むことはありますが…。
宇多丸:
これは勝手な想像だけど、くうすけママさんは、自分が仕事をしてるっていうことに関して、他のお母さんたちにはストレートにアピールしづらい、はっきり言えば「嫌みに聞こえちゃうんじゃないか」っていう懸念があったりするんですかね。まぁ、あくまで他の人たちが専業主婦などだったとして、という仮定の上ですが。
こばなみ:
それと、「マウンティング女子」って少し流行ってましたけど、たとえばこの場合でも、「働いててすごいね」=「うちは働かなくてもやってけるくらい裕福なのよー」とかって、謙遜しておいて、実はその逆だ、ってこともあるかもしれない。勝手な想像ですけど。
宇多丸:
でもさ、それがマウンティングかどうかは、こちらがそう取るかどうかにもかかってるじゃんよ。
「はっ! これってもしかして、マウンティング?」と思ったとして、
・相手に本当に悪意があった場合→まんまとその手に乗ってしまっている
・相手に実は悪意がなかった場合→勝手に相手に悪印象を抱いてしまっている
で、どっちにしろあんまりいいことにならないじゃん!って感じがしちゃうんだよなぁ。
そもそもそんな、悪意かどうかの見極めが難しい程度の微妙なことだったらさぁ、さっきも言ったけど、自分だって時にそういう態度取っちゃってることだってあるかもしれないんだからさぁ。 「人間だもの!」と思って極力引っ張らないようにするというのが、やっぱり一番いいんじゃないかなぁ……。
ま、実際には僕も、本当につまんない、細か~いことを、いつまでもウジウジ気にして根に持ってしまったりすることが、まったくなくなったわけではないけどさ。 そういうときはね、 世界の紛争地域のこととか、歴史的な大量虐殺のこととかが書いてある本を読みますよ! 『ジェノサイドの丘』とか、『冬の兵士』とか、『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』とか……。別にこれはネタで言ってるわけではなくて。視点のスケールを変えてみる、というのは知性の大事な使い方でしょ? とにかく、さっきまでチマチマ悩んでいた件が「心底、どーでもいい」と思えるまで、人類の暗部の極限を見つめてみる。 フツーに勉強にもなるので、一石二鳥ですよ!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年5月31日に公開したものを再編集し、掲載しています。