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可愛い人や美人を見かけると急に自信がなくなってしまいます……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室403】


✳️今週のお悩み✳️
4月から大学生になりました。同じ授業の可愛い人や美人を見かけると急に自信がなくなってしまいます。もちろん中高にも容姿が綺麗な子はいて、最初は今と同じような気持ちになることもありました。しかし段々とその子の中身を知って人として向き合ったり、自分に少し自信がついたりして、自他ともに容姿以外の部分にもフォーカスして折り合いをつけることができました。ところが大学だと深く関わる機会も少なく、人もとても多いので、自分の中で消化するスピードが追いつきません。なので、折り合いとか言ってたけどやっぱり小手先の強がりで結局芯の部分の考え方の癖はまったく変わってないなと感じます。どうしたらよいのでしょうか?
(らな・18歳・大学生・東京都)


こばなみ:
少し前にテレビで観たんですけど、大学生くらいの女性がインスタで自分の写真をアップしながら、他の人に比べて自分が可愛くないって落ち込んでるっていう話をやっていましたよ。

宇多丸:
なるほど。

いずれにせよ、いかにもSNS時代的な自意識のあり方で……などと、うっかり言いたくもなるところだけども!

実際んとこは、そういうふうに若者が、他人と自分をつい比較して引け目を感じてしまう……、特にルックスとか出自とか「才能」とか、要は持って生まれたもの(っぽく見えるもの)に関してのコンプレックスをこじらせやすいというのは、ホントにむかーしむかしから繰り返しされてきた、ものすごく普遍的な構図でもあるのは間違いないと思うんですよね。

それもホントに、ただただ当たり前の話で。

要は、一部の特別恵まれまくった子たちを除けば、自分自身で何事かを成し遂げたり積み上げたりするような経験も、そもそもその機会も、もっと言えば能力も、若いうちは通常、なかなか得られない立場だったりするわけじゃない? 

そういうスタートラインにつくために必要な、基礎的な勉強や訓練をしてる段階、というかさ。

だから必然的に、「もともと持ってるものですでに輝いて見える人」が余計に目立つし、そこでしか勝負できないような気分にもなりやすい、ってだけのことなんですよ。

逆に、大人になるにつれてなぜあんまりそういう感じじゃなくなってくるかというと、それ以外の評価軸がいっぱい出てくるから、ですよね。

仕事上の実績とかでもいいし、知識や経験の蓄積による内面の充実でもなんでもいいんだけど、自分自身が実感として得てきたものが増えてくるし、価値観もグッと豊富になってる……はず(笑)。

だから、たとえば表面的な「イケてる感」みたいなもののありがたみも、相対的にかなり低下してくものなんだろうと、僕は考えてますけど。

逆に、最初から恵まれてたところだけを頼りに歳ばかり取っちゃったようなタイプは、どっちかと言えば残念な人、ということになってゆきがちだったりもして。

もちろん、いくら歳を取ったって、妬み嫉み僻みから完全に自由になれるわけではまったくないんだけども……、その意味で、「結局芯の部分の考え方の癖はまったく変わってない」というのも、わりと万人に共通の話であって。

ただ同時に、いったん違う角度から考えてみたり、場合によっては相手の美点を100パー素直に認めてしまうなど、冷静になろうと努める習慣やそのための引き出しは、多少豊かになってもいるわけで。

そうやって、湧いてしまった感情を相対化して、わずかでも軽くすることは、前より確実にしやすくなっているはずなんですよ。

要は、たしかにやっぱり、ちょっとは賢くなっている、という(笑)。

なので、これはね、らなさん特有の何かというよりは、誰だって若いとそうなりがち、という話でもあると思う。

こばなみ:
たいてい人が通る道ですよね。

宇多丸:
まぁ、そういう言っちゃえば「隣の芝は青く見える」構造が、特にやはりSNS的感覚の標準化によって昨今はより強化されている、という傾向はたしかにあるんだろうけども。

なんにせよ、そんな中でもらなさんは、かな~りレベルの高い思考をされているほうだと思いますけどね。

一見「持っている」ように見える人も、話してみたら当然それぞれにいろんなもんを抱えているし、自分だってそう捨てたもんじゃない……的な多面的なものの見方を、すでにご自身の経験から、身につけてらっしゃるわけじゃない?

18歳にしてそれは、相当賢いと思いますよ。僕が同い年のころなんか、恥ずかしくて比較もしたくないほどだよ!(笑)

あとこれ、言うまでもなく、大学に入ったばかりのタイミング、というのも大きいですよね。

出会う人の層が、一気に横にも縦にも拡がるから、自分がまさしく井の中の蛙のように思えてしまう局面……、僕もそのころ感じたことだから、めちゃくちゃわかりますよ。

つまりこれも、らなさんだけのことじゃなくて、すごく普遍的な感覚なんだと思う。

そして、まさにそうやって「自分が井の中の蛙であることを知る」ためにこそ、大学だのなんだのってのはあるんですよ!

なので、どうしたらよいのでしょうか?という問いに対しては、そのコンプレックスをこそバネにして、プラスに転じてゆきましょう!なんていう、超つまんない回答するしかないんですよね。

実際、そこから「じゃあ、自分が勝てる武器ってなんだろう?」みたいな方向に考えを持ってけるかどうかは、けっこう大きな分かれ目になると思いますけど。

もっと言えば今後、人生のいろんなタイミングでも、同じように「これまでの自分がちっぽけに思えてしょうがない」瞬間というのは必ず出てくるわけだけど、イコールそれは、成長チャーンス!ってことだから。

だってさ、たとえばせっかく新しい環境に入って、今まで思ってもみなかったような人や価値観に出会えるというときに、「やっぱオレがナンバーワンだぜ!」って思い込んでるだけだったりしたら、バカでしょ?(笑)

その場では本人は楽しいかもしれないけど。

そこへいくとらなさんは、時期にふさわしい「成長痛」を感じてるんだ、ってことですよ。

問題なし!

こばなみ:
さっき宇多丸さん言ってたけど、いくつになっても自信がなくなったりはしますよね。

私も最近、立場が変わり、「自分はまだできてない」っていうの、ひしひしと感じていますよ。

本音を言えば非常につらいこともあるけれど、でもそれは成長チャーンス!だと思って頑張るしか抜け道がない。

宇多丸:
そういうふうに、ちょっと背伸びしてでも次のステージに行かなきゃならない場面というのも、人生そりゃありますよね。

ここが踏ん張りどころ、後から振り返ればあのとき七転八倒しといてホントによかった!ってことに、きっとなるんじゃないですかね。

らなさんだって、大学1年生のこの時期ならではの壁にぶつかったこと、結果的に意義深かった経験として、いずれ懐かしく振り返る日が、絶対来ますよ!

こばなみ:
なんかちょっとキラキラしてますよね。

ぶつかる壁はあるけれども、いくらだってなんとでもできる。頭も柔軟だし、そんなエネルギーは感じますけど。

宇多丸:
逆に、そういう焦りとかをあんまり感じなくなったときこそ、ついに人間としての成長が止まってしまったのかもしれないと、危機感を持つべきかもしれないくらい。

ということで、ともかく現状はその調子で、じゅうぶんに凹み、もがいておくのが、むしろ吉! 

そここそがまさに、のちの伸びしろとなってゆくかもしれないとこなんだから……。

しかしホント、いかにもオトナが言いそうなつまんない答えで、ゴメンねゴメンね~!(笑)

でもこれ、真実ですから、マジで。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。


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