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私はとてもせっかちで、自分が異常だという自覚があります。この性格、ストレスとどう付き合っていけばいいですか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室389】


✳️今週のお悩み✳️
私はとてもせっかちで、人に対して基本的に何事も「遅いなあ」と感じることが多いです。食べるのも早いですし、返信もすぐ、長蛇の女性トイレの列も順番をすぐに回せるように……、などとにかく早く済ませ、ゆっくり何かをしたり、待つことがとても苦手です。
大人になるにつれて自分が変だという自覚はあって周りに対して「遅いなあ」と思うことは多々あるものの、そのほとんどが仕方ないものと受け入れていますが、ただ……、いまだに「約束した日の待ち合わせ時間や場所を決めること」に関してだけは許容できません。
自分から約束した日の2~3日前には「どうする?」と投げかけることでなんとか解消していますが、自分からばかり聞いてて疲れている自分がいます。
かといって放置しているとギリギリまで連絡がこないことの方が多く(これは限定した人じゃなく、恋人や友人はじめ、会社の人とプライベートで会う時も度々あります)、そのイライラに苛まれるくらいなら自分から連絡した方がマシ!と半ばストレスを感じながら連絡していることの方が多いです。
待ち合わせの場所と時間を決めるだけでこんなに疲弊してるのも変な話かもしれないですが……。
周りの多数の人間がそういう感じなので自分が異常だという自覚はあります。この性格というか、ストレスと、どうやって付き合っていけば良いでしょうか?
助言をお願いいたします。
(やまだうち弁当・30歳・会社員・大阪府)


宇多丸:
今回やまだうち弁当さんが訴えているような、約束というものに対する意識の差については、RHYMESTERマネージャー小山内さんがとてもよくわかる!と申しております。

マネージャー小山内:
なぜ返信をすぐしないんですかね?

あと、スマホのLINEとかメールのところに、何個も数字がついて既読になってない人いるじゃないですか?

あれとかよくわからない。

宇多丸:
僕もあれ、不思議なの。

1万件とかそのままになってる人、結構いるじゃん?

なんでそんなになってるのに平気なの?って聞くと、迷惑メールが多いから、とか言うんだけど……、じゃあそのアプリごと消せばいいじゃん!

どうせもう使ってないんだから!

こばなみ:
それ、私のスマホですよ。

せっかちの人やきちんとしている人に、そうやってガンガン言われるのが怖いんですよ……。

もう使ってないからいいやって放置してるだけなんですけど……。

宇多丸:
じゃあ消せよって!(笑) 全消しなら簡単だから!

こばなみ:
のように、私はせっかちではない、むしろのろまなほうなので、この相談でいうと、とくに「長蛇の女性トイレ列も順番をすぐに回せるように」というところとかもドキドキしちゃって。

前に相談でもありましたけど、野外フェスとかのトイレに並んでいて、どこか空いたのだろうけど見つけられずノロノロしていると、後ろから怒気を感じる。一生懸命探しているんだけど遅いので、怒らないで!って思うわけです。

でも私、メールはわりとすぐ返しますよ。

宇多丸:
こばなみの場合、そこは仕事のうちだもんね。

とにかく、少なくとも待ち合わせなどを含む約束事に関しては、やまだうち弁当さんのような人にとっては、いよいよ厳しい時代になってきてることは間違いないですよね。

スマホでいつでも連絡が取れるようになって、みんなそのへんが本当にルーズになった。

前にあった相談にも近い感じだと思うので、参考にしていただいてもいいかもしれない。

やまだうち弁当さんがかわいそうなのは、周りの人よりきちんとしてるだけなのに、自分が異常なんだ、と思いこむ域まで悩んじゃってるところですよね。

マネージャー小山内:
異常なんてことないよ!

宇多丸:
そうだそうだ! むしろ正義はこちらにあるのだーっ! ……と、我々カリカリしがちサイドとしてはつい、噴き上がってしまいますが(笑)。

でもホント、ご自分を責める必要はまーったくないですから!

こばなみ:
やまだうち弁当さんの周りにのんびり派が多いのであって、別に異常じゃないのでは?と思いますけどね。

私などは、周りにせっかち派のほうが多いです。

現にこの場も2対1でせっかち派が多く、そっちが主流な感じだと思っていますよ。

自分が変、ていうかダメな人なのだと……。

宇多丸:
そう思わせてしまってたら申し訳ないけど、今はとりあえずやまだうち弁当を元気づけたいところなので、もうちょっと我慢してね(笑)。

のんびり派を責めたいわけではもちろんなくて……、より正確に言うと「ルーズ派とかっちり派」の問題だよね。

で、後者のほうが肩身せまく感じるのもおかしな話だろう、くらいの感じですよ。

まぁせっかち派かっちり派、いずれにしても、ひとまずはポジティブにとらえるとするならば、要は、「頭の回転が速い」わけじゃん?

人より思考のスピードが速く、なおかつそのベクトルが直線的だから、会話などのコミュニケーションにおいても「目的地」に人より早めに着いてしまいがち、ムダに待たされていると感じがち、という。

クイックシルバーみたいなもんですよ!(笑)

マネージャー小山内:
世の中の人は、なんでこんなに焦ってないんだろうなとは思いますよね。

宇多丸:
そうね。

ただしこれ、一足先にたどり着いたそこが一番いいゴールとも実は限らない、というか……、むしろ、最短距離の目標をすぐ見つけていきなりフルスロットルで向かっちゃうから、意外ととんちんかんな場所に来ちゃってる、みたいなことも少なくなかったりして。

つまり、前にも言ったけど、「頭の回転の速さ=頭の良さ、とは必ずしも言えない」という、やや悲しい能力でもありまして(笑)。

逆に、ひとつのことを長時間じっくり考え続けるスタミナには欠ける、みたいなところもあるかもしれないし。

なんにせよ、ひとつたしかに言えるのは、そういった「時間」に対する感覚や、ひいては、貴重なそれを互いに融通しあう「約束」という一種の契約行為に感じる倫理的な重みといったことに関しては、一般に思われている以上に、各人まるっきり、実際には基準がバラバラなんだ、ってことでしょうね。

だとしたら、お互い思考のギアの回転数がまったく違うかもしれないんだ、というのを念頭においてコミュニケートしあう、ということこそが、社会生活の基礎をなす、マナーなのかもしれないですよね。

その意味では、のんびりに甘えすぎて人に迷惑かけるのも、かっちりを押しつけすぎてバイブス悪くするのも、どっちもマナー違反、ということになる。

こばなみ:
やまだうち弁当さんは、自分から聞いてばっかりいるのが疲れるんですよね。

いつ決めんだよ!みたいなことにイライラしてるってことですね。

宇多丸:
つまりそれも、このくらいのタイミングではこのくらいのことは当然決めておくべきでしょ、という部分のコンセンサスが、先方とまったく取れてないことから来るイライラなわけですよね。

もちろん、かなり事前にちゃんと予約を取らなきゃならないお店とかに行くなら、現実問題としてそんな悠長にかまえてらんないだろ!となるのもごもっともだけど……。

でも、ひょっとしたら先方は、そんなにキリキリしてまでそういう店に行きたいとは、思っていない可能性だってありますからね。

当日行けたらでよくない?みたいな……、こっちからしたら、その調子じゃ一生行けねぇよ!って話なんだけど(笑)。

つまりそれは、そもそもそういう店に、そいつは誘うべきじゃなかった、ってことでしょ。

要は、相手が悪いんじゃなくて、目的とメンツがフィットしていないことから生じた問題、というか……、なかなか予約が取れないようなところに行くなら、ちゃんとその価値がわかってて、事前のテンションも一致しているような人をツレとして選ぶべき、ということなんじゃないか。

僕自身、なんで時間に比較的正確なのかなと考えてみると、それはたぶん、映画によく行くからで。

アバウトに行動してたら、映画なんか行けないから。

そこで平気で時間に遅れてきかねないようなヤツとは、そもそも映画の約束なんか絶対にしないよ!

そういうのが念頭にあるからこその、基本は単独行動主義、でもあるかもしれない。

マネージャー小山内:
だから私は行くところは全部自分で決めちゃうけど。

宇多丸:
「なんでいつも私ばっかり!」的な不公平感がつのってきたりしないのなら、別にいいんじゃない?

ムダにやきもきする時間ももったいないし、さっさとこっちで仕込みは済ませておいたほうが自分自身も気がラク、みたいに自然に思えるならば。

それでイライラするくらいなら、いっそやっぱり、ひとりで行動したほうがいいですよ、僕と同じく。

マネージャー小山内:
たとえば恋人とデートでルンルン♪ と思っていて、15時に待ち合わせしましょうって言ってたのに、前日とかに、2時間後、17時にしようと言われたら、こっちは、え?と思うけど、別に向こうはそこは何も考えてないみたいなことですよね。

宇多丸:
そうそう。

たぶんきっと彼的には、「夕方くらい」の幅の中に15時も17時も入っているから、そこまで重大な変更じゃないと思ってる、みたいな感じだよね。

そして、そういう考え方だって別に、それはそれでありうるわけだから。

遊びの日の予定なんかあんまり事前にキチキチ固めたくないよ、という気持ちも、まぁわかるはわかるじゃん?

事程左様に、時間感覚、ひいては約束というものに対する感覚は、つくづく本当に人それぞれなので、少なくとも一方的にイライラしたり怒ったりするのだけは、間違いなくあまりよろしくない態度だ、とは言えるんじゃないでしょうか。

僕はその点、言っちゃえば「他人に期待するのをやめた」んですよね。

そしたら、すごくラクになった。

だからって、人と会ったりすること全体に絶望してるわけでも全然なくて……。

たとえば、仮に待ち合わせ周辺のすりあわせがあまりうまく行かず、そこでは多少イラッとしたとしても、そんなのはその人と会って生じることの、ごく一部なわけじゃん?

それ以外の大半は楽しかったり、プラスに感じられることなんだったなら、ほんの一部のマイナス面にばかりこだわり続けなくても、いいんじゃないかな、と。

こばなみ:
ちなみに私の場合、夫がせっかちなんですけど、結婚する前にね、水族館に行ったんですよ。

普通に現地で待ち合わせて。私も遅刻せず、普通に行ったんですけど、なんと! 早く着いたからって夫が先に入っちゃってて!

すごいびっくりしました。

宇多丸:
ダンナさんのロジックとしては、先に着いたぶんいっぱい見た方が、ただ待ってるだけより、効率的じゃない?ってことでしょう。

こばなみ:
そう。そうなんだけど、その時はこの人、信じられない!!と思ってしまって。

宇多丸:
ただ僕はやっぱりちょっと、ダンナさん側の理屈も、わかるなぁ。

それに、水族館の中で待ち合わせなんて、考えようによっては、ロマンチックとも言えなくない?

それこそスマホ時代の今なら、それでもちゃんとお互いを見つけることができるんだからさ。

こばなみ:
そうプラスにとらえられたら良かったんでしょうけど。
やっぱりちょっと驚きましたけどねぇ。

現在も、たとえば一緒にどこかに出かけるとするじゃないですか。
で、たしかに私がモタモタしているときもあって。
そうすると、夫は家で待っていられない。だから先に出て、駅でお茶したりするんですよ。

宇多丸:
え? 同じ家にいるのに、一緒に出発するんじゃなくて、駅で待ち合わせるってこと?

こばなみ:
そう。せっかちだから家で待っていられないのです。

宇多丸:
なるほど……、かなり振りきったせっかちさんっぽいことはたしかなようですけど、ただ僕は、それって意外と、ホントに合理的なやり方かもしれないな、とも正直思いますね。

さっきから言っているように、人それぞれ思考や行動のギア回転速度が全然違うのだとしたら、こばなみのダンナさんは、こばなみより高速で回りすぎちゃうのがハナからわかっているからこそ、そのぶん「駅でお茶」といった追加タスクを設定することで、最終的な待ち合わせに向けて、言ってみれば「回転数の帳尻を合わす」工夫をしているわけでしょう。

それって、そんなに悪いことじゃなくない?

こばなみ:
まぁ、そういうことになるんですかねぇ……。

宇多丸:
せっかちの押し付けが息苦しい人がいるのと同様、のんびりの甘えが苦痛な人もいるんだとしたら、両者の中間地点に折衷ポイントを作ろうよ、
というのはやはり、悪くないやり方なんじゃないかという気が、僕はしますけどね。

あと、そのギア回転数のメタファーで言えば、やまだうち弁当さんよりさらにもっとずっと回転が速い、こちらの基準をはるかに超える超絶せっかちさんに、我々レベルからは理不尽としか思えない「早くしろ」プレッシャーを苛烈に受け続ける、みたいなシチュエーションを想像してみる……というのはどうですかね。

「半年前には予定を固めるのが常識でしょう? こっちも体調の調整とかあるんで!」みたいな(笑)。それに「いや、そんなにカリカリしなくてもよくない?」的に思ったとしたら、それこそがルーズ派やのんびり派が、日ごろ我々カリカリ派におそらく感じていることなわけで。

なんにしても、この問題はつまるところ、「他者」問題なんですよね。

誰もがお互い根本的な考え方からしてまるで違うかもしれない独立した存在同士、だからこそ、コミュニケーションを取り合ってできる限り歩み寄ろうとしなければ、軋轢や衝突が起きるばかりなのも当たり前のことでしょう?という。

やまだうち弁当さんの場合も、「たまにはあなたから率先して動いてくれてもいいんじゃないかな、と正直わりと強く思っている」といった本音を先方に伝えたうえで、改めてあちらの考えも聞き、なんとか両者の妥協点を探る……というような、超正攻法なコミュニケーション・プロセスを経ることがやはり、少なくとも一方的なイライラを解消するには、最良の道ではあるはずでしょうね。

あるいは僕のようにそれも面倒だから、ハナから他人への期待値を下げに下げ、それでも残る美点をこそ愛でようとするか……、もしくは単独行動をこそ愛するようになるか。

さっきから言っている「プラスアルファのタスクを設定して回転数の帳尻を合わせる」作戦も含め、あくまで自己完結型、という方向ですね。

こばなみ:
にしても、このせっかち問題、定期的に届きますね。

宇多丸:
意外とせっかち派のほうが悩んでる、ってことじゃない?

そっちサイドのほうが、そもそも「問題の所在に敏感な側」なわけだから、当然といえば当然なんだけど。

ともあれ、いつも以上にダラダラと話してしまいましたが、やまだうち弁当さんがイライラモードを脱するのに、参考になりそうな部分が少しでもあれば幸いです!

僕や小山内さんは完全に同類ですから……、お互いがんばろうね、ホントに。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸




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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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女子部JAPAN こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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