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女性活躍というより、一人の「職業人」として尊重し、個別の事情に寄り添った働き方を提案。

2030年までに“女性活躍”という
言葉がなくなる世界をめざして、
リーダーとして働く女性を応援する
F30プロジェクト。

今回は
女性活躍を推進する企業を評価する
「WOMAN’s VALUE AWARD」
「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」
での輝かしい受賞歴を持つ、
株式会社Playce(以下プレイス)
の代表取締役 秋山 由香あきやま ゆかさんに、
具体的な取り組みや思い、
そして今後についてなどをお伺いしました。

プレイスは、広告宣伝物、WEBコンテンツなどの企画編集、ライティングなどを手掛けるクリエイティブプロダクション。従業員の9割を女性が占め、さまざまな面から女性活躍のためのサポートやD&Iに取り組まれています。


<History>

〜秋山さんが起業したきっかけとプレイスの歩み〜

■2007年 9月 家庭と仕事を両立しながら長く働くために、起業を選択
新卒で編集プロダクションに入社し、出版社を経て、フリーランスの編集ライターとして5年間活動。29歳で結婚したことで「家庭と仕事を両立しながら長く働くためにはどうすべきか」「40代、50代になっても最前線で働きたい」と考えるようになる。同じくフリーランスとして活動する同世代の女性クリエーターとともに、2007年9月に株式会社Playceを立ち上げる。

■2016年 出産で代表者不在というピンチで、会社の方針を再考する
39歳で高齢出産をすることになり、一時は代表者不在という緊急事態に陥るが、秋山社長に代わってマネジメントスタッフが全力で会社を守って事なきを得る。この経験により、女性のライフイベントでの課題に対して、どんな制度や施策、戦略が必要であるかを改めて考えることに。

■2017年 環境を整え、さらなる成長のためにM&Aを実行
創業10年目である2017年、クリエイティブ系企業を擁する持ち株会社である株式会社日本創発グループ(東証JASDAQ上場)の一員となる。その理由は、「経営者が子育てや疾病などで万が一会社を空けることがあっても支障がないように」「子育てと会社の成長を両立させる」ためには安定したパートナーが必要と考えたこと。

■2021年 WOMAN’s VALUE AWARDにて準優秀賞を受賞
「男性だから、女性だからではない職業人としての活躍——真の女性活躍を推進」していることが評価され、第三回WOMAN’s VALUE AWARDにて準優秀賞を受賞。

■2022年 Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2022にてW受賞
最も輝く女性、最も女性が活躍する会社を評価する、日本最大規模の女性アワード「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」において、経営トップ実行力ランキング 第1位、企業総合部門 第9位のダブル受賞をする(いずれも従業員100名以下の部)。



「結婚・出産を機に、仕事を辞めざるをえない人がこんなにもいるのかと驚きました」


——2021年には「WOMAN’s VALUE AWARD」、2022年には「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」を受賞されました。いずれも、どのような点が評価されたとお考えになっていますか?

正直、とても驚いています。何かを受賞できたらいいなくらいに考えていたので、こんなに上位に評価されるとは思いもしませんでした。社員たちもびっくりしたのが先で、後から喜びがわいてきました(笑)。何が決め手になったのかはわからないのですが、自分たちが必要と思って進めてきた施策や取り組みが評価されたことは光栄だと感じています。


——評価の理由でもある、御社ならではの女性活躍やD&Iへの取り組みについて教えてください。

コロナ禍前からテレワーク制度の導入、東京と地方を行き来する2拠点勤務スタイル、子連れで出社したときに安心して授乳やおむつ替えができる多目的スペースの設置などに取り組んでいます。


——起業は2007年ですが、その当時から女性の働きやすさについて考えていらっしゃったのでしょうか?

起業のきっかけは、結婚でした。29歳だったのですが、徹夜をするなどかなりのハードワーカーでした。今は若いからできるけれど、10年後20年後に同じような環境で働けるか、子育てしながら働けるか?などを、うっすら考えるようになったのです。

では、まわりはどうしているかと見まわすと、同業者の既婚女性のほとんどが会社を退職してフリーランスとなって仕事をセーブしたり、まったく異なる職業に転職したり。結婚・出産を機に、仕事を辞めざるをえない人がこんなにもいるのかと驚きました。同世代の同業者も、みんなモヤッとした不安を持っていることを知り、だったら一緒に仕事をしようか、となったのがはじまりです。



「まさに倒産か否かという経験を通じて、働き方の仕組みを変えざるをえなかったんです」


——その当時から、会社として“両立”に力を入れていたのでしょうか?

当時はあまり明確なビジョンはなく、司法書士の友人に勧められて、ゆるっと法人化をしました。仕事についても、互いのフリーランス時代の仕事を法人で継続していただけだったんですよね。創業3年目頃から業務も増え、人手が足りなくなって採用をしてから、会社らしくなってきました。とはいえ、いろいろ経験不足で、リスクヘッジなどをきちんとしきれないまま経営をしていたため、当時のスタッフとぶつかったり、契約の継続を断念せざるを得ないこともありました。これは会社としてよくないと考えはじめたのが創業から7、8年目頃でした。

正直なところ、「こういう制度を作ろう」「こういう就業ルールを設けよう」というような、経営に対する高い意識はあまりなかったんですよね。「出産するスタッフがいたら、その人に合わせて何かする」、そんな感じで、どうにかやりくりをしていました。


——それが、どうして今のような取り組みをするようになったのでしょうか?

大きなきっかけは、自分自身の出産と産休です。不妊治療を経て、39歳で出産をしました。40歳前後の女性は、産むか産まないかも含めて、出産や今後のライフプランに関して、悩み焦る時期ですよね。

一緒に会社を立ち上げたメンバーも同世代だったため、みんなが一気に出産・産休やライフクライシスを迎えてしまったのです。親の介護問題で仕事をセーブしなくてはならないメンバー、妊活に集中したいと考えるメンバー、「ここで勝負をかけたい」と独立を志すメンバーもいて、混沌とした状態に。女性は男性よりもライフステージの変化が激しいということを実感しました。「これは、もしかしたら会社が倒産してしまうかもしれない……」、そんな危機感を抱いて、真剣に組織の在り方や働き方の仕組みを変えていかなければならないと思ったのです。



「誰しも事情を抱えているもの。支える側の人にも寄り添い、取り残すことがないように」


——秋山さんの実体験から女性にやさしい制度が生まれたのですね。後から続く女性たちはうれしいですね。

でも、すべての女性が出産・育休を必要とするわけではないので、非常にナーバスな問題だと感じました。出産はしたいけれどなかなか機会に恵まれない人もいますし、そもそも出産する気のない人、結婚しないと決めている人もいます。なかには「会社を一生懸命支えているのに自分には何も支援がない」と取り残されたような複雑な気持ちになる人たちもいるんですよね。そのようなことを見聞きし、知って、すべての女性、すべての社員に寄り添うことの必要性を考えるようになりました。

つい子育てや介護に直面している人に目が行きってしまい、それを尊重しがちですが、みんな大なり小なり何かしら事情は抱えているはずなんです。育休などで誰かが休んでいる間に、その穴を埋めてくれている人がいる。支えてくれている人がいてこそ、育休などの制度が成立することをしみじみ実感しました。だから、子育てとか介護とか何かの属性で特別扱いをするのではなく、一人ひとりが特別だと思うようになったのです。それで、まずは一人ひとりが抱える事情を把握して、個別の事情に合わせてみんなに光が当たる制度を整えていこうと考えました。


——2017年にはM&A で、上場企業の傘下に入りました。どのような背景から決意をされたのでしょうか?

先ほど申し上げた自身の出産・育休時に陥った会社の危機が大きく影響しています。その際は当時のスタッフたちが必死で会社を守ってくれましたが、小さな会社の不安定さを目の当たりにしました。

子育てをしながら会社を維持することはできるけれど、成長させていくのは難しいかもしれない……と考えていたときに、私たちに価値を感じてくれたのが現在の親会社です。M&Aというと、買収とか乗っ取られるといったイメージがあるかと思いますが、ホールディングスということもあり、そんなことはまったくありませんでした。売り上げや利益といった面で困っていたわけではなかったのですが、傘下に入って経営のノウハウをシェアしてもらい、支援を受けながら成長できると感じたのです。また、経営に関する価値観が合ったことも決断する後押しになりました。


——社員のみなさんの反応はいかがでしたか?

通常、M&Aは両社のトップ同士で内密に進められ、合意してから社員に発表するケースがほとんどです。でも、私たちは当初からオープンにしていました。みんなで自分たちの未来を考え、議論したのです。そのおかげで、社内全体で会社の将来を考える意識が根付く結果に。あんな真剣に、会社の将来のことをみんなで考えた経験は初めてでした。

——一般的に、社員は自分の将来は考えますが、会社の将来までは考えないですよね。自分の将来に合わない会社だったら、辞めてしまえばいいだけですし。

そうですよね。会社への不満が出るときって、「なんで自分がこんなにやっているのに、会社は何もしてくれないんだろう」など、受け身になってしまっているときだと思うんですね。M&Aを通して多くのメンバーに重要な場に参加してもらい、みんなで自分ごととしていろいろ考えられたのは、会社として一体感を得るには最高の機会でした。



「みんなが特別扱いされるのが理想。制度ありきではない、真の公平性をめざして」


——たしかに制度は、必要でない人には還元されないものですよね。

そうですね。だからこそ、できるだけ公平性を担保することが大切だと思っています。制度ありきではなく、Aさんは子育てが大変だからテレワークで時短にしましょう。Bさんの事情を聞いてみたら、テレワークより出社のほうが働きやすそうなので、そうしましょう。そんな風に軽やかに考えています。

個別の事情を聞いて、ベストな方法で対処するようにしていくと、「私も何かあったときに聞いてもらえるんだ!」という安心感が芽生えると思っています。特定の属性のための制度にしてしまうと不満が出てきてしまいますが、「社員みんなに配慮していますよ」という目線で取り組むと、心理的安全の担保へとつながっていく気がしています。

とはいえ、まだまだ足りない点も多いです。制度という点では大手企業には叶いません。当社らしい制度で、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を提案しながら、社員一人ひとりを尊重していくことがベストなのだと思っています。


——今年は創業16年目です。これから、どんな企業として成長していきたいとお考えでしょうか?

株式会社なので成長することは使命なのですが、売り上げや利益ばかりに目を向けず、とにかく丁寧によいものをコツコツときちんと作っていきたいと思っています

そして、プレイスと一緒に成長したいと思われるような、愛される会社にしたいという気持ちが強いかもしれません。同時に、社会に何か還元してご恩返しもしたいです。自分たちだけが成長するのではなく、社外の人たちも巻き込んで、みんな一緒に豊かになるのが理想です。その根底には、みんなでいいものを誠実に作っていきたいな、という気持ちがあるのだと思います。


——なんとなく起業したとおっしゃっていましたが、現在までのモチベーションにつながっているものは何だと思いますか?

やっぱり仕事が好きなのでしょうね。さらには人と関わることも好きだから続けているのだと思います。まだまだ課題はありますが、「100年続く会社」をめざしていきたいです


——私たちF30プロジェクトは「女性活躍推進」という言葉が必要なくなるくらい当たり前になることをめざしています。そのために、どのようなことが大切だと感じていますか?

私たちは、男女の性別関係なく「職業人」としての活躍を支援するために、さまざまな制度や仕組みを取り入れています。女性が活躍する会社、というイメージが強いかもしれませんが、「女性の活躍を支援している」というよりは、「特定の属性・考え・状況の人が不利にならないようフラットに活躍支援をしている」といったほうが適切かもしれません。

だって、ライフステージが変化するのは男性も女性も老いも若きも同じですから。性別や年齢といった属性にとらわれず、一人ひとりが尊重される働き方を支援することが大切だと感じています。私たちがめざすのも、それに尽きます。



プレイスのオフィスは、玄関で靴を脱ぐスタイル。
一角が授乳やおむつ替え含めゆったり休憩ができる多目的スペースになっている。



<お話を伺った人>

株式会社Playce代表取締役
秋山 由香あきやま ゆかさん

1977年生まれ。大学を卒業後、編集プロダクションに入社。その後出版社に転職。
2002年に独立してフリーライター/編集者として活動。
2007年、業務の拡大化に伴い法人化し、(株)Playceを設立。「WOMANʼs VALUE AWARD」で第三回準優秀賞を受賞したほか、「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2022」の従業員100名以下の部にて、企業総合部門9位、経営トップ実行力ランキング1位を獲得。
著書に『売れるゲームのUI/UX』(発行:MdN/共著)、『ホームページで伝わる日本語』(発行:MdN/旧姓の佐々木由香名義で出版)、『Webデザイン コミュニケーションデザインの実践』(発行:CG-ARTS協会/共著)などがある。


<Company Profile>

株式会社Playce
【設立】
2007年9月10日
【事業内容】
・広告宣伝物、Webコンテンツ、動画コンテンツ、出版物の制作
・ファシリテーション:各種ワークショップや専門家会議などのファシリテーション、ヒアリング、デプスインタビューなど
・教育・研修
・インタビューや原稿執筆に関する研修の企画、講師派遣
【従業員数】
20名(女性18名、男性2名)※2022年12月末現在
【男女比率】
女性9:男性1



取材・文:佐々木 美穗/撮影:鈴木 愛子





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