気になる男友達。告白するべき?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室14】
✳️今週のお悩み✳️
小さい頃から幼馴染が気になっていたのですが、なかなか気持ちを伝えられないまま、ここまで来ました。そんななか、私は半年後から海外留学をすることに。今まで伝えられてない気持ちを伝えるべきか、言わずに去るべきか、悩んでいます…。
(ゆう・23歳・東京都)
宇多丸:
おおお〜っ、うっ、あー!! な、なんだよ! 少女漫画!?
これは、一般論的にいえば、気持ちを伝えた方がいいですよ。うまくいくかいくまいが、悔いが残らないように言った方がいい。
だ・け・ど。
あのねぇ、いやらしいことを言ってもいいですか?
もうちょっと俯瞰でみて、44歳、おじさんのメタ的な視点から言いますと。
幼なじみが気になって、気持ちを伝えられず、言おうか言うまいか、って・・・
これはあえて、言わないほうが、「おはなし的には」ぐっとくるよね!
言わないで、実はずっと後悔してるってほうが、この件はぐっとくるよね!!
海外にいって、こっちはこっちでいい人とあって、幼なじみも他のひとと結婚して・・・。
でも、あのとき言ってれば・・・!? みたいなさ。
これってマジな話だけど、
「あの時、気持ちを伝えてれば!」というのは、後悔とも言うんだけど、それと同時に「気持ちを伝えていれば、こうなってたかもしれない」などと想像したりできることは、人生にとって「救い」だったりもするんですよ。
リアルに幼なじみと付き合って、そしたらその先には当然リアルなすったもんだがあって、当然それを乗り越える尊さもあるんだけど、美しい成就しなかった想い出としてとっておくというのも、僕は人生の宝箱のひとつだと思うんだよね。
でも、それは44歳おじさんの俯瞰した意見だからなぁ。
ゆうさんと同じ目線で考えるなら、「気持ちを伝えなよ」って言うけど。
にしても、おじさんはね、
想い出をネブネブとたまに宝箱からとりだしては舐める喜びを知ってしまっているのでねぇ。
「あぁ〜、こうしてれば今頃こうだったかなぁ」と思い返しては、愉しんでるわけですよ。
だからね、たとえば、初恋なんていうのは、実らない方がいい。
「実ってたらなぁ〜」って考えるのがいいんだよ〜。
こばなみ:
男友達に気持ちを伝えるか?伝えないか?という相談で、こういうお悩みもありましたよ。
✳️今週のお悩み2✳️
ずっと好意を示してくれている私にとって友達のような人がいます。最近その人のことが気になっています。けれど、もし上手く行ってもすぐに別れがあることを考えてしまいます。いつか好きな人(likeでも)と気まずくなったり、離れてしまったりする可能性があるのなら友達でいるべきなのか。ネガティブ思考な私にアドバイス下さい!
(ななみん・兵庫県)
宇多丸:
はいはい、よく言われますね、これは。友達は別れがこないけど、恋人は・・・って。
僕はフツーに男女の友情は成り立つと思ってるんだけど。
たまーにだけど、別れた後でも、こっちのほうがいい感じ!なんていって、また友達に戻るってパターンもあるくらいでさ。付き合ってるときが一番ケンカしてたなぁ~って関係性も、稀にあるんで。
こばなみ:
友達に戻るってなんだか照れません?
宇多丸:
もちろんある程度、時間は必要だろうけど。
あと、別れ方にもよるね。あんまりイヤな感じで別れちゃってるとダメだし。
ちゃんとお互いを尊重した別れ方ができてるかどうかっていうか。
でも、それができないようじゃ、そもそも友達になんか絶対なれないよねぇ。
いったん成立したら友情のほうが恋愛よりタフというか、耐性がある、壊れにくい。だから過去にちゃんと友情が成り立っていれば、恋愛になってそれがダメになろうと、関係性は終わらない、ということがたまにはあるんだよ。
こばなみ:
宇多丸さんはそういうことあるんですか?
宇多丸:
あるある。
もちろん、さっき言ったようにある程度の冷却時間は必要だし、お互いその後の恋愛がちゃんと順調とか、それなりの条件はあるかもけど、「でもぜんぜんこっちのがいいじゃん!」ていうのありますよ。
むしろざっくばらんに恋愛相談できるくらいの相手になったりすることもあるから。
こばなみ:
ななみんさんの場合、「友達のような」ってありますけども、そこまでガッツリ友達!って感じじゃないのかもしれませんね?
宇多丸:
質問の「好意を示してくれる私にとって友達のような人」っていうあたり、ななみんさんの相手は、ふつうに異性として好意があるっぽいなぁ。なんとなく。
男女の間に友情うんぬんって話の例でよくあるのが、最初、友達風にみせてるけど、実はそうじゃないってパターン。
それは友達としてではなく、異性としての緊張感があるから楽しいわけでしょ?
恋人未満みたいな?
友達とはちょっと違うんだよね。
こばなみ:
これって、よくある恋愛が始まるパターンじゃないですか?
宇多丸:
もっと気のおけない感じを想定してたんだけどなぁ。「おまえちょっと、着替えるならそこでやるなよ~」「なに言ってんのいまさら~」みたいな。
そういう感じではないね、これ。おそらく、
そーゆーの(異性として狙ってる)じゃないよみたいな感じの好意で近づいてるけど、たぶん「そーゆーの」ですね!
だとすると、ななみんさん、
別れたら壊れてしまいそうだと感じるのは、実はまだ友達としての関係がちゃんとできあがってないからなんじゃないの。友達関係が強固にあると、恋愛はダメでも関係は残ることも、なくはない。あくまで「なくはない」だけど。
こばなみ:
なるほど~。
宇多丸:
この男は勃起してますね!
こばなみ:
ひょー!? 一応、女子向けサイトなのにぃ~!!
宇多丸:
ま、だから、それは好意だっつーのって話なのかな。
男女間の初期にありがちな欺瞞ですよ。
微妙な距離感で、「いや、そういうんじゃないから!」っていうやつ。
そういうんだっつーの!!!
こばなみ:
結局、ななみんさんはどうすれば?
宇多丸:
ソッコー、やるべきでしょう。
こばなみ:
言い切りましたね。
宇多丸:
あとね、「もし上手くいってもすぐに別れがあることを考えてしまう」っていうのは、思い上がりだよ。
僕も一時期、付き合った瞬間に「あ〜、ダメになるんだろうな」って頭に浮かんじゃって、もう付き合うのとかめんどくせーなって思ってたことがあるの。
でもね、せいぜい自分の20〜30年くらいの経験のなかで、どうせこうなるからダメだとか言ってるけども、いろんなことがもっとあるよって言いたい。いろんな人だっているし。
そして自分も年を重ねていくと、前よりは学んでるじゃんってこともあるしね。
前だったらここでケンカになってたのに、いまはならない、とか。
ここでちゃんと謝れるようになったか、俺!とかさ。
ちゃんと進歩もしてるから、「どうせ上手くいっても別れる〜」みたいな考えは捨てて、ななみんさんは、
とっととぶちゅーっといっちゃってください!!
こばなみ:
一見、似たような相談に感じましたが、読み解いていくと、答えはいろいろでしたね。
宇多丸:
あ、そうそう、楳図かずおの短編で、『夏の終わり』というのがあってね。
好きな人がいたんだけど、そうじゃない人と一緒になってしまって不幸な人生を送ってしまった女性がいて、
もうおばあちゃんの姿になった時に、「もう一度人生をやりなおしたい、あの時から~!」っていうと、奇跡がおきて、もう一度、若い頃からやり直すの。
ところが、やり直してみると、その好きだった男がそうじゃない男以上の下衆野郎だった、ということがわかってしまって・・・。もう一度、おばあちゃんになった時に、以前と同じ岸壁に立ってさ、
「わたしには、もう後悔する過去すらない。それすら消えた」
といって自殺するって話なんだよ。
こばなみ:
うわわわわーわーわー!! こわーいーーー!!
宇多丸:
僕が今回、1つめの相談で言いたいのはそういうこと。成就しないこともひとつの財産なんですよ、と。
あと、2つ目の相談に関しては、『ワン・デイ 23年のラブストーリー』という映画がオススメです。
友情と恋愛っていうのも、ある程度の年や経験を重ねると、境目なんかわかんないよね。親愛の情みたいなものになって。
こばなみ:
観ました! 超ざっくり説明すると、男女の23年にわたる恋と友情を毎年7月15日にスポットを当てて描いているラブストーリー、ですよね。
親友として23年間一緒に過ごしてきた男女がそれぞれの恋愛や結婚や仕事の悩みや、いろんなことがありつつも最後は一緒になるけど・・・。なんで最後それーーー?? えーーー!! というような。
宇多丸:
あれこそ、友情ありきの恋愛だよね。それにね、彼女が他の時期に付き合ってた男の人のこともちゃんと尊重してるじゃない。あれって僕、いいなぁって思うんですよ。本命の彼と付き合っていない、ほかの人生の時期も無駄だったわけじゃないよってのがちゃんと描かれていて、いいなぁって。
にしても、楳図かずおのやつは強烈でしょ?
結論:
一般論的には思いは伝えるべき。
だが。成就しないこともひとつの財産。
思い出小箱を大人になって愉しむのも悪くない。
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2013年10月5日に公開したものを再編集し、掲載しています。