40代のわりに貯金もなく、投資の知識もない。老後のことを真剣に考えられないのは変?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室369】
✳️今週のお悩み✳️
自分のことをバカなんじゃないか、なにかぽっかりと抜けているんじゃないか、と心配になることがあります。とくに金銭面なのですが、たとえば私は歳のわりに貯金がありません。でもなんとかなるという根拠のない自信があり、とくになに何もしていません(計画的ではなく、余裕があるときに貯金をしている程度)。投資などの知識もなく、まだそちらもなにもしていません。わりと行き当たりばったりで生きてきました。友達との割り勘なども適当ですし、家計簿もつけたことはありません。まわりの友達がきっちりライフプランをたてている人が多いだけに、自分って変なのかな?と思うときがあり、心配になってしまいます。とくに40代になってから、まわりの人とは老後のことを話すことが多いのですが、いまいちピンとこず、真剣に考えられません。やっぱり変なのでしょうか?
(サーモン・41歳・会社員・東京都)
宇多丸:
サーモンさんの気持ち、僕はまるで自分のことのようによく理解できるし、そういう人は普通にたくさんいるはずですから、少なくとも「変」ってことはないと思いますよ。
こばなみ:
私もお金のことはざっくりしか考えてないですね。
宇多丸:
そんな我々ですから、今回はたぶん、サーモンさんが言ってることのまわりをぐるぐる回るだけ、という感じにはなってしまうかと思いますが。
サーモンさんは、歳のわりに貯蓄がないというところから話をされてますけど、そもそもホントに「お金のことがわかっている」タイプっていうのはたぶん、ただ貯めこむだけじゃなくて、適切に「回す」ことができる人たちなんだと思いますけどね。
資産を着実に増やし、目減りさせないシステムを知っているというか。
要は、「ルールブック」を熟知している人たち、というのが、社会には一定量いらっしゃるわけですよ。代々のお金持ちとか、逆にプロの「ワイズガイズ」の方々とか……(笑)。
一方我々は、そのルール自体をよく知らない、だけじゃなくて、知る気もロクにないわけじゃないですか。
当然、ある程度割高なというか、損な条件でのもろもろの契約に甘んじるしかなかったりして……、どっちにしろ、ただ働いて人から給料をもらうだけでは、たいしたゲインは見込めないわけですよね。
こばなみ:
身近な運用というなら、iDeCo(個人型確定拠出年金。節税しながら資産運用ができ、月額5,000円から始められる。掛金を60歳になるまで積み立て、60歳以降に受け取る仕組み)とか、あとは保険とか、そういうものですかね。私もだいぶ面倒くさがりなので、この前やっとiDeCoの申し込みを途中までやって、年金番号がわからなくてそのままになっています……。あとは銀行の人に勧められるがままに、毎月1万円の投資信託くらい。資産運用っていうけど、適当に選んでそのままにしてるから実感もないですけどね。
宇多丸:
僕なんか、今こばなみが言ってることにも感心しちゃってるレベルだもん。ちゃんと勉強してんじゃん……。
こばなみ:
でも、結局私は、ファイナンシャルプランナーに取材したときに言われたのですが、お金の優先順位が低いんじゃないかって。だからいまいち真剣になれないし、行動できない。
宇多丸:
まぁそういうことだよね。
こばなみ:
みんな早くやったほうが得っていうけども、でもとにかく面倒くさいんですよ。
宇多丸:
わかります。
要は、やりゃいいのはわかってるつもりでも、そもそもその労力を惜しむ程度にしかお金に関心がないんだよね。
こばなみ:
ちなみに、さっきネットで調べた記事では、投資で利益を出しているアラフォー女性は7割!ですって。
宇多丸:
えー、ホントかなー?
なんもしてない人、もっと比率としては多いんじゃない?という気が、体感としてはしますけども。
そのデータとかもさ、どうせ金融系の会社が出してるものだったりするんじゃないの?
そうやってこっちを焦らせて、自分らの仕事を増やすのが目的でもあるわけだから。鵜呑みにしないほうがいいかもですよ。
こばなみ:
さっき言ったiDeCoとかをやってる人はちらほらいるけど、投資している人が7割っていうのは極端だな、という感想です。
やっぱり年金が少なくなるし、資産運用して自分で増やしたほうがいいから、国もやれやれって言ってて、やってる人は増えているのかもしれないけど……。
宇多丸:
本来は公的な保障としてやるべきところが追いつかなくなってきたから、「みなさん最近は自助に備えてがんばってますよ、あなたはいいんですか?」とか焚きつけだしてる感じだもんね。
やっぱいいカモなんですよ、我々は。
こばなみ:
私は長生きしたいけど、実際はどこまで生きられるかわからないですし、そもそも老後のための貯金や資産運用とはいうけど、老後ってなんなんだろう、と最近は思いますよ。
宇多丸:
僕がよく言ってるのは、いきなり職がなくなっても、1~2年は普通に暮らせるくらいの蓄えがあれば、もろもろの心持ちに違いは出てくるかなと。
あと、いつでも引越しができるとか、急に病院に入っても大丈夫とか。そういう様々な事態に対処できる程度のお金や備えがあれば、さしあたってはいいんじゃない?という風に僕は考えてますけど。
そうやって、具体的に「なんのためにいくらくらい要る」っていうのが見えてないと、やる気なんか出ないの当たり前だと思うんですよね。
要は、一応転ばぬ先の杖は用意しとくと気が楽かな、ってことだけど、だからってあんまり先回りして杖の心配ばかりしているのも、本末転倒な感じがしちゃうしね。
例えば、老後にホームに入るためのお金を稼ぐために、いま働く……って、もちろんそれで安心が得られるのもわかるけど、一度きりの人生、そういう徹底して守備的な考え方を真ん中に置くのでいいのかな?とはどうしても思っちゃう。
要はやっぱ、いつも言ってるけど、自分の人生とか生活のプライオリティを、みんなもっと明確に意識化すべき、ってことに尽きるんじゃないですかね。
例えばさ、その人が本当にギャンブルが好きなんだったら、それはもう、しょうがないじゃん。
そのときにこそ最高の幸せや充実を感じるのであれば、それを我慢したり取りあげられたりしてまで「堅実に」生きたとしても、その人にとってはあまり意味がないわけだからさ。
だからサーモンさんも、ご自身にとって大事なことを優先すりゃいい、というより、そうするしか結局ないんじゃないかなぁ。
お金にまるで興味ないのに中途半端に運用だの貯蓄だのやったって、たぶんたいしたプラスにはならないどころか、時間という最も貴重なものを浪費するばかりかもしれませんから。
あと、貯金もなんもしてないけど、そのぶん働いてシコシコでも稼ぎ続けりゃあいいんでしょ、という生き方だってもちろんありますからね。
こばなみ:
だから私は、健康のが大事かなぁ。
宇多丸:
まぁ、健康が一番だというのは当然として、その維持や向上もやっぱり金次第、という面は、正直あるはありますけどね……、やっぱそのための保険になる程度の資産くらいは持っておきたいもの、ではあるかもだけど。
こばなみ:
日経ウーマンとかも読むと、貯金額とか載ってて、みんなこんなにあるんだって凹みますよね。
宇多丸:
それもさっきの話と同じで、そもそもバイアスかかったデータかもしれない、という点はいったん疑ってかかったほうがいいよ。
貯蓄額のアンケートにペラペラ答えてる時点ですでに、ちょっとでもそこに自信ある人が多くなりやすいだろ、とかさ。
それと、話はだいぶ軽くなるけど、友達との割り勘なんか、むしろざっくりやって当たり前の件だと僕は思いますけどね。
そういうときにそれこそ一円単位でやろうとする人、僕は逆にイライラしちゃうかも。「この店のランチなんかだいたいみんな1,000円でいいだろ!」って(笑)。
家計簿を律儀につけてる人だって、そんなに多数派というわけではないと思うけどねぇ……。
こばなみ:
なもんで、私は宇多丸さんが言ってた、なにかあったときに、1~2年暮らせるくらいのお金だけは貯めとくってことを実施していますよ。
宇多丸:
そのくらいでもう、我々にしては上出来なんじゃない?
とにかくホント、世の中のお金の動き、僕には謎なことばかりですよ。
例えば一等地の一軒家、何やって稼げばそんな物件が自力で建てられるところまで行くわけ?とか。
こばなみ:
すごいわかります。いま物件をぼちぼち探してるので、すごく思う。給料だけではとても買えない。遺産とかなのかな?
宇多丸:
もともと地主の血筋か、あとは大会社の役員とか?
とにかく、我々みたいに時給ナンボで働いてるうちは、間違いなく無理な話ですよね。
つまり、「お金のことを真剣に考える」っていうのは、ああいう土俵に乗る気があるかどうか、そのために努力できるのかどうか、って次元の話なんじゃないかと。
それは、サーモンさんや我々がちょっとやそっと小金を毎月節約したところで、永久にタッチできない領域ですから。
なので、半端にやきもきするのはホント無駄!
ちゃんとご自身が真に望む生き方というのを考え直して、やるならやる、やらないならやらない!(笑) 改めて胸張って、ビシッと選びとればいいんじゃないですかね。
すいませんね、何しろ完全に同類だから、開き直りのロジックばっかりで……。
こばなみ:
でもとにかく「変」じゃないってことはたしかですよ。もちろんバカでもない!