ついつい余計なことを言ってしまって後悔。いつもその繰り返し……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室76】
✳️今週のお悩み✳️
私は、余計なことをついつい言ってしまうタイプで、いつも後悔しています。もともと空気が読めないのもあるんですが、人と話すのが苦手で、話をするときに つい舞い上がってしまい余計なことを言ってしまったり、自虐ネタで自分のイメージを悪くしたり……。自意識過剰かもしれませんがまわりから、頭悪い、イタイ 人、と思われていそうで後から落ち込みます……。考えはじめると、過去のいろいろな失敗ばかり思い出し、無気力になってしまいます。それにもかかわらず、また同じことを繰り返してしまいます。いっそしゃべらなければいいのに、そのときの空気でしゃべってしまいます。どうしたら良いのでしょうか。
(おろち・29歳)
宇多丸:
前にも「話すのが苦手」って相談がありましたけど、今回は、だからこそあわててしゃべりすぎちゃって、さらに墓穴を掘ってしまいがちというパターン。
僕も似たようなタイプですからね。気持ちは痛いほどわかりますよ。
要は沈黙に耐えられないんだよね。 だから、よく考えずに「とりあえず」話しだしちゃって、後から「なんであんなこと言っちゃったんだろう……」と後悔したりする。 いつもその連続! ま、沈黙恐怖症はラジオパーソナリティ向きって言ってくれる人もいますけど……、でもやっぱ、うかつにしゃべりだしちゃうのは考えもんだよな。
こばなみ:
これ、わたしもどっちかっていうとそのタイプですね。会議とかイベントとかで、緊張のあまり、内容がズレたり、思ってもないのに否定から入っちゃったりして、いろいろ余計なこと言っちゃいますもん。またそれを指摘されたりね……。けっこうドスンと気にしちゃうんですよね……。
宇多丸:
またそういう失態シーンって、後から不意にフラッシュバックしてきたりもするんだよな。
特にシャワー浴びてるときとか、多くない?
で、反射的に「あーもう、ダメだダメだダメだダメだ!」とか口走ってしまうっていう。
こばなみ:
それと「自虐ネタで自分のイメージを悪くしたり」ってところにも激しく同意ですね。一発笑いでも入れてその場の雰囲気をほぐそうと思ってるのが全然ウケず、逆に「かわいそうですね……」ってなっちゃったり。むむむ、空回り……。
宇多丸:
たださ、こうやって改めてお互いの話をしてみると、どうやらみんな同じような思いを抱えてるっぽい、ってのもわかってこない?
一緒にラジオやってるしまおまほさんも、毎日のようにやってるって言ってたよ。さっき言ったみたいに、シャワー浴びてるときにいきなり失態フラッシュバックが来て、思わず「あーもうダメだダメだダメだダメだ!」とか口走ちゃうってやつ。
だから、コミュニケーションってことに関して言えば、実は誰もがおろちさんと同じように、「またやっちまった……」って自己嫌悪に陥ったりとか、全然してるってことなんじゃないのかな。
だって、他人が何考えてるかなんて、結局「本当には」わかんないことなわけじゃん。 つまり、コミュニケーションっていうのは本質的に、誰だって「探り探り」取ってくしかないものってことじゃんよ。 その結果、なんかぎくしゃくしちゃった……とかが生じるのもある意味当たり前で。と言うのは、はっきりした「正解」がない世界だからさ。 なので、そうやって失敗を重ねながら少しずつ精度を上げていく以外に、「上手くコミュニケーションを取る」方法なんかないってことですよね。
そう考えると、逆に、コミュニケーションになんの不安も感じない、いわゆる「物怖じしない」「人見知りしない」人っていうのはさ、僕ら緊張しぃからすればちょっとうらやましい存在ではあるけど、本来理解しがたい存在である「他者」に対する畏れをあんまり抱いてないって、言い方を変えれば、単にクソ図々しいヤツってことなんじゃないの?
こばなみ:
動じない人のほうが、ちょっと普通じゃない感、ありますよね……。
宇多丸:
要はそれって、「他者」に対して積極的に想像力を働かせようとしてないから、とも言えるわけじゃんよ。
それより、おろちさんみたいに、「あのコミュニケーションは上手くいかなかったな」ってことをしっかり覚えてて、客観的に、厳しく分析もできてるってことのほうが、真の意味での「コミュニケーション・スキル」の向上のためは、よっぽど大事なんじゃないですかね、 「他者」はなかなか理解できないもの、だからこそ、トライ&エラーを繰り返しながら恐る恐る間合いを詰めていくしかない……、それを「小心」と呼ぶなら呼べ!ってことですよ。 図々しいよりは全然いいと僕は思うけどね。
こばなみ:
とすると、ご自身は自意識過剰かもと書いてありますが、自分が思ってるほど失敗してないかもしれないですね。
宇多丸:
これだけ気にしてる時点でね。
ただ、ちょっと気になるのは、「もともと空気が読めないのもあるんですが」ってとこ。
これ、誰かにそう指摘されたことがあるってことなんですかね?
こばなみ:
どうなんでしょう。ただ、空気が読めない人に「あんた、読めないねぇ」とかって言わないですからね。
まず、本当に読めない人とはそういう会話にならないし。
宇多丸:
て言うかそもそも、「空気が読めない人」っていう固定的な存在がいるわけじゃ、別になくない?
さっきから言ってることにも通じるけど、誰だって「空気が読めない」言動を図らずもしてしまった瞬間なんて、いくらでもあるわけでしょ。
たとえば、人の会話に途中から参加しようとしたはいいけど、完全に内容を勘違いしたまま話に加わろうとしてたことに途中で気づく、とかさ。 「ここまで調子に乗っていろいろ言っちゃってたんですけど……、早く教えてよ!(恥)」みたいな。 僕とか早合点が本当に多いから、こういう恥ずかしいこと、よくやっちゃってますよ。
でも、そんな感じのトンチンカン言動を、まったく取ったことがない人っていうのも、また絶対にいないわけだからさ。 ある場所では「空気が読めない」ことが多いような人も、別の場所ではすんなりコミュニケーションが取れてたりするかもしれないし、その逆もあるかもしれない。
たとえば、今いる場所では見事に「空気が読める」ような人も、いきなりまったく違うコミュニティ、それこそ外国とかに連れてかれたりしたら、途端に、どう振る舞えば適切かまるっきりわかってない人、すなわちその場における「空気が読めない」人になってしまうかもしれないしさ。
とにかく、そういう点と点を恣意的につなぎ合わせて「空気が読めない人」認定なんてしても、実はあんま意味ないんじゃないかと思うんですけどね。
こばなみ:
空気を読める読めない問題って、おろちさんみたいに空気が読めてないかも!?と心配している人の方が全然いいですよね。というのは、自分は空気を読めると思ってるけど、でもみんなにそう思われてないって人って、たまにいるじゃないですか。そっちのほうが、本当の意味でつらいと思う。
宇多丸:
さっきの「物怖じしない、人見知りしない人」の件と同じだよね。
これもさっき言った「正解」がないっていう話と通じるけど、「空気を読む」って言うけど、もちろん、文章みたくホントに「読める」ものがそのへんを漂ってるわけじゃ、別にないんだからさ。
だから、それを「読めない」と感じるのは真っ当なことなんだよね、実は。 逆に「自分は読めている」と確信しきってるような人こそ、どうかしてるというか、単に勘違いしてるだけの可能性が高いんじゃないですかね。
ということで、コミュニケーションに不安を感じたり、後悔を抱えたりすること自体は至って普通のこと、まともな人の証明なので特に問題ナシ! むしろそうやってウジウジし続けることこそ、コミュニケーションの大事なプロセスなんじゃないですかね。
ただ、僕らみたいな「あわてて話し出しちゃう」派は、無用な失言のリスクが高いからなぁ……、そこだけは確かになんとかしたいところかもしれない。 とりあえず、口を開く前に軽く深呼吸するクセでもつけてみますかね。
こばなみ:
ス~ハ~。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年12月27日に公開したものを再編集し、掲載しています。