実年齢より若く見られるので仕事ではナメられます。なにかいい服装や振る舞いはありますか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室187】
✳️今週のお悩み✳️
私は自分でいうのもなんですが、年齢より若くみられます。実年齢より5~8歳は若く見られます。それはとれもうれしいのですが、仕事のうえではちょっと困っています。打ち合わせなどにいくと、ナメられるというか、下っ端扱いされてしまうのです。プロジェクトが始まれば、じきにみなに理解されるのですが、打ち合わせの機会があまりないプロジェクトだと、下っ端のままといいますか……。顔が童顔で、服装もカチッとしてないのかもしれません。仕事はイベント企画なので、服装は比較的自由です。なにかいい服装、または振る舞いなど、ありますか?(coco・43歳・東京都)
宇多丸:
これ、あるあるですよね。
僕のまわりの、たとえば放送局とかでも、いまやプロデューサーとかで全然偉い立場のはずなんだけど、なぜかペーペー感というか、AD感がどうしても抜けないっていう人(笑)、ちょいちょいいらっしゃいますよ。
むしろ、会う度に出世してるのに、小物感は増してくいっぽう、みたいな(笑)。
「逆に頭下げる機会が多くなってきて……」とか言ってましたけど、とにかく僕らの間では、それが久しぶりに再会したときとかのお約束的な話題になってたりする。
逆に、これはひょっとしたら男性に限るのかもしれないけど、歳より老けて見えることが、うまい具合の箔づけになってる人、っていうのもいるよね。
古い知り合いのマネージメント事務所社長さんとか、初めて会ったときはお互いまだ20代前半だったのに、その頃からすでに30代後半~40代に見えたもんね(笑)。異常に貫禄あるから、実はまだそんな歳なのにクラブの店長とか任されていて。で、やっぱり「完全にこの見た目で得してる」って言ってましたよ。
女性の場合は、また別なのかな?
こばなみ:
そうですね。そこを活かしている人って、あまり聞いたことがないかもしれません。
私もどっちかっていうと、cocoさんと一緒で、プロジェクトの責任者であったとしても、あんまり偉い感じには見られないですね。
服装とか職種によると思うのですが、どっちかっていうと、営業っぽい人のが立ち位置が上に見られるから、そういう扱いされている気も……。
宇多丸:
映画とかでもよくあるけど、見た目でこっちの人が偉いんだろうと判断して先に挨拶したら、いやいや、ホントに上役なのはあっちの人です、みたいな。
こばなみ:
そうそう。cocoさんのイベント系のお仕事もそうかもしれませんが、クリエイティブ職とかマスコミ職ってそういうところ、あるんじゃないですかね。
宇多丸:
銀行とかだったら役職の上下ははっきりしてるだろうけど、マスコミとかだと、「プロデューサー」ってつく肩書きだけでもいろいろあったりして、外部の人間には誰が上役なのかよくわからないところがあるのはたしかかもね。
でもまぁ、やっぱ服装とかメイクの感じじゃん? 一番差が出るのは。
いくらホントは役職的にはムチャクチャ上でも、ほかの人がビシッとスーツ着てる横で、すっぴんでくたびれたパーカに軍パンはいてたりしたら、そりゃ下っ端だろうと思われても仕方ないだろ!っていう。
スウェットパーカでも明らかに上の立場って、NIGOさんとファレルしかいないよ(笑)。
こばなみ:
あと靴ですかね? 私の感覚ですけど、カジュアルな格好をしてても、ヒールを履いてると大人に見えるというか。ぺたんこ靴だとどうしても偉そうには見えない。
宇多丸:
まぁね。でも、いっつもヒールも大変でしょうから……。
靴は、とりあえず小綺麗にしとけばいいんじゃない?
スニーカーだってさ、ピカピカの、しかもよく見たらグッチですね?みたいなのは別にいいわけじゃん。
要は、格好にちゃんと気を使ってる感じが出てればいいと思うんだけど。
そんな堅苦しいフォーマルじゃなくても、ハイファッションとかだって、カッコいい!ってなれば全然いいわけで……、あ、そうか。ひょっとしたら、どの方向にせよ「カッコいい感」がキモなのかもしれないね。
ということでcocoさん……、いつもスウェットだったりしないよね?(笑)
万が一ホントにそんな感じなんだったとしたら、そこらへんもうちょっとキチッとするだけで、だいぶ印象が違ってくるのは間違いないんじゃないかな。
ただね、ちょっと角度を変えると、cocoさんのいまの状況、考えようによっては、プラスに転じる部分もあるんじゃないかって気がするんですよね。
実際の立場とか能力とかより、ナメて見られがち。
ということは、ある意味、人の振る舞い方というものを、より客観的な視点で観察する機会が多い、ということでもあるわけじゃないですか。
「あの人って、相手のほうが格下と見切ると態度がまるで変わっちゃうんだぁ」とか、逆に「この人は本当に分け隔てなく人と接するんだなぁ」とか、とにかく一歩引いた視座からみんなを見ることができる。
それって、実は観察されていた!側からすれば、けっこうな脅威にもなりうるわけですよ。
なんつーか……、「遠山の金さん」とか「水戸黄門」的なスタンスですよ!(笑)
実際の身分を隠して、市井の人々にまぎれて物事を見ているぶん、上から眺めるだけではわからない真実を見極めることができる。
で、後からホントの地位を知ると、みんな余計に平身低頭するしかないっていう。「お恥ずかしい、すべてお見通しでございましたかぁーっ!」って(笑)。
cocoさんのナメられがち体質も、むしろそういうような「正体ステルス能力」として、確信的に使いこなしていく、って方向もあるんじゃないかな、と。
前に話した「鼻毛が見える」と同じく、一種の超能力ってことにしとく!(笑)
それに、考えてみたらさ、逆に、パッと見は歳も食っててエラそーなのに実は若くて下っ端!みたいな人は、いずれ遠からず真の身のほどがバレて、「お前、見た目だけは立派そうだけど、結局全然使えねぇな!」とか、後から評価を下げてしまう可能性のほうが高いわけじゃん? さっき言った後の事務所社長とかは、実力とハッタリでなんとかそのギャップを埋めてこれたんだろうけどさ。
普通は、cocoさんみたいに、当初は下に見られがちだけども……というほうが、最終的には得することが多いんじゃないかな。
こばなみ:
損して得取れ、みたいなことですね。
宇多丸:
あの人、頼りなさそうに見えるけど実はすごいのよ!みたく、ギャップがプラスに働くこともあるはずだしね。
ある種、実力以上の「底知れなさ」感すら演出できるかもしれない。
あとは、最初に挨拶する時点で、「私、いつも下っ端に見られがちなんですけど、実はこのプロジェクトの責任者です(笑)。ま、いい歳して貫禄がなさすぎるのがいけないんですけどっ(テヘペロ)!」とかって、つかみのお約束ギャグ的に使うとかね。
そしたら、先方にもより強く印象づけられるし、仮にうっかりまた軽い扱いされるようなことがあっても、「ほらほら! これなんですよぉ~(笑)」とかって笑いのネタにすることで、それはそれでコミュニケーションを深める機会に使えるじゃん。最初に言った僕の知り合いのAD感抜けない人なんか、完全にそういう感じですよ。
で、実際仕事もちゃんとできるなら、親しみやすいのに実は超優秀な人!って、一番オイシい評価が得られますよ。
こばなみ:
いい方向に転じられそうですね。
ちなみに、宇多丸さんはどう見られることが多いですか?
宇多丸:
もちろんラップ業界のなかでは言わずと知れた最年長の部類なんだけど、テレビとか、僕のことあんまりよくわかってないような場所に行くと、やはり自分で言うのもなんだけど若干の年齢不詳感もあいまって(笑)、わりとこう、若手寄りの扱いをされたりすることもありますよね。まぁ当然、世間的にはそれほど知られてる存在ってわけじゃない、というのもあって。
でも、僕はそれ、わりと悪くないことだと思ってて。
生涯ぺーぺー感が取れないほうが僕にはむしろ居心地がいいっていうか、なんか、伸びしろがある感じがするんですよね。
逆に、変に大御所!みたく扱われるのってあんまり……。
なんにせよ、同じくらい仕事ができる人なら、ハナから妙にエラそーなバイブス発散しまくってるようなタイプより、知らない相手からはややもするとナメられがち、くらいのほうが、人としては好感持てると僕は思いますけどね。
cocoさんも、今後TPOによっては、立場年齢相応のバリッとした勝負服・メイクとかをもうちょい意識してもいいのかもしれないけど、童顔&下っ端キャラを根本から変えるのも今さら難しいんでしょうから(笑)、普段はそこを逆手に取って、むしろ戦略的に利用することを考えてもいいんじゃないでしょうか?ということで!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年4月15日に公開したものを再編集し、掲載しています。