彼氏や男友達の女性蔑視が不愉快。反論すると先輩からは「ヒステリックフェミ」のレッテルを貼られ……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室213】
✳️今週のお悩み✳️
彼氏や男友達の女性蔑視について。ごめんなさい、長くなります。今年から大学生です。私はずっと女子校で、大学に入って初めて自分と同世代の男性と交流をしました。最近学校にも慣れてきて親しく話す男友達も彼氏もでき楽しいんですが、日常会話で彼らの女性に対する偏見や差別的な発言を受けるたびに不愉快になるんです。「女子校ってドロドロしてるんでしょ?」と何度言われたかわかりません。それに対して否定しても「でも彼氏できたら女同士の友情って終わるんだろ」とか、「女性は感覚的に決められるかもしれないけど俺らはどうしても理屈っぽくなっちゃうからダメだわー」などと言うので彼らの側の理屈を聞いてみると大概どこか破綻していてその部分を追求すると「まあいろんな考えがあるからね」「理解しにくいかもなぁ~」などといってまともに回答せず逃げます。ずるいです。彼氏に聞いてみると「男は論理的、女は感情的」「女の相談は解決ではなく共感を求めている」というネットなどの情報を並べてきて、彼や男友達はそのまんま信じこんでるようです。私がそういった価値観は偏ってるよ、と言おうとするとある先輩から「ヒステリックフェミ」のレッテルを貼られてもう主張する気力もないです。共学出身者の女友達に相談してもなかなか理解され難く、疲れてしまいました。性別ではなく本人の性質や能力で評価されていた女子校時代に戻りたいです……。
(まうー・19歳・東京都)
宇多丸:
これはいわゆる、「男すんません」回ですね(泣)。
男性として先に言っときます、男、すんません……。
もちろん僕自身、まさに叩きあげの男子校育ちですし、いくら自分じゃそんなことないつもりでも、 無意識につい、性差別的な意識がひょこっと顔を出すような発言をしちゃってること、いまでもゼロとは言いきれないと思います。それこそこの連載でもね。
お恥ずかしい限りだし、できるだけ改善してくよう努力いたしますが。
まして、大学入りたての頃の自分がどうだったかとか考えると、とても偉そうなことは言えた立場じゃないんですけど……。
そこんところは図々しく棚に上げて言わせていただくなら、現状まうーさんの周りにいる男どもが、揃いも揃ってバカばっかり!っていうことに尽きますよね。ちょっと、お付き合いしている顔ぶれが良くないんじゃないの?っていう感じもするくらい。
特にその、先輩とかいうヤツは最悪!
まぁ、そのくらいの年頃っていうのは基本的に、「どこかで聞いた風なクチをきく」以外にできることがない、っていうのもありますけどね。
だって、自分自身で経験して学んできたことっていうのが、まだまだ圧倒的に少ないし狭いし浅いし、そのくせというかだからこそ、自分自分自分!だけはやたらと前に出がちな季節、っていう。
要はやっぱ、基本バカなんですよホント!(笑)
逆に言えば、それゆえに伸びしろがものすごくある、っていうのも若さの特権なわけだけど……。
こばなみ:
大学にあがった頃ってとくに、女子校に行ってたってだけで、こういうこと言われたりしやすい気がするんですよね。私はこんなにもひどいことは言われてないですけど、女子中・高出身でそれが少数派だったからか「女子校ってドロドロしてるんでしょ?」系のことはかなり言われましたよ。
宇多丸:
僕も前はけっこう言っちゃってたかも……、ホントすみません。
じゃあ男子校がドロドロしてないかって言うと、めちゃめちゃドロドロしてるんですけど!っていう(笑)。
まぁさ、「男は~」「女は~」っていうステレオタイプに当てはめていろんなことを言うのって、要は血液型占いみたいなもんで(笑)、みなさんあくまで話のネタとして使ってる面もあるとは思うんだけどね。
「女の相談は解決ではなく共感を求めている」とか、女の人側が嬉しそうにそういうこと言ってる場面だって、全然よくあるでしょ。
血液型占いも「男は女は」論も、その都度正論で返してたらキリがないくらい人口に膾炙しちゃってるという日本社会の悲しい現実もあり……。
ただね、これは完全に僕の個人的な話なんだけど、ちょうどハタチくらいから付き合ってた彼女が、まうーさん同様、性差別とかに対してもしっかりした意識を持ってて、僕とかが言ったことにも勇敢に反論してくるような人で。
そういうときに僕は、これは思い返すだにホントどうしようもないんだけど、なまじ弁が立つもんだから、あの手この手の詭弁を弄して、少なくともその場の議論では、彼女をやり込めちゃったりしてたわけ。よく泣かしちゃってたよねぇ……。
でも、その彼女と別れてから、自分が彼女に対してどういう男だったかを改めて思い返してみて……、オレ、ダメじゃん!と。すっごく恥ずかしくなりまして。
で、本当に遅まきながらなんだけどめちゃめちゃ反省して、今からでも彼女が言ってたことの意味をちゃんと理解しなきゃと思い、入門書レベルだけど、彼女が主張しようとしてたこと、要はフェミニズムについて、自分なりにちゃんと学ぼうとしてみたりはしたわけ。
もちろんさっきも言ったように、いまだに僕も全然わかってない部分だらけなんだろうとは思うんですが……、ひとつはっきり言えるのは、あのとき彼女が僕に正論で立ち向かってくれてなかったら、偏見を正される経験をしないまま歳だけとってしまってたら、と思うと、心底ゾッとするわけですよ。
あ、ちなみに彼女とは、その後もすごく親しい友人同士になれましたけど。
だからね、なぜ恥を忍んでこんな話をしてるかというと、まうーさんが、現状手がつけられないアホばかりに見える周囲の男どもと、それでも踏ん張って正面から「対話」しようとしてる姿勢は、絶対に間違ってない!って言いたいんですよ。
そもそも大学ってさ、生意気なだけでなにもわかってない若者たちが、井の中の蛙段階だからこそできるし、許される議論を山ほどして、そのなかから学んで、成長してゆくための場だったりもするわけじゃん?
だから、周りの男たちの幼い性差別意識を正すような問題提起をまうーさんがして、それでなにかしら有意義な意見の応酬ができるんだったら、それはそれで悪いことばかりとも限らないじゃん、とも思うんですよね。
ひょっとしたらそのなかに、いつかまうーさんの言うことをきちんと受けとめて、反省したり、考えを改めたり、成長したりするような余地がある男も、ちょっとはいるかもしれないし……、かつての僕がそうだったように。
早い話が、若い男という愚かな動物を、すぐには見捨てないであげてくれますか?という、おじさんからのお願いです……(泣)。
ただし、その意味でもやっぱり許し難いのは、そのクソみたいな先輩とやらだよ!
どこで聞いてきたんだか知らないけど、「ヒステリックフェミ」なんて浅薄きわまりないレッテル貼りをすることで、そうやって議論する機会さえ、あらかじめ封殺しちゃってるんだもん。
そういう人、僕は大嫌いです。
どういう関係の先輩なのかわからないけど、とりあえずその人だけははっきり、付き合ってても時間の無駄だからとっとと距離を置いたほうがいいんじゃないかなぁ、と思いますけど。
いずれにしても、今まうーさんが辛いのは、はっきり言っちゃえば、その「共学出身者の女友達」も含めて、周りの連中よりまうーさんのほうが圧倒的に賢いから、ってことなんじゃないですかね。
「いまどきそんな低級な話でキャッキャ言ってて、楽しいかぁ?」っていうさ。
サークルなのかバイト仲間なのか知らないけど、交友関係のレベルが、まうーさんにふさわしくないんじゃないか、という気もちょっとする。少なくとも、そこのつながりだけに依存しなくても済むような、また別の人的軸足みたいなものも探っておいたほうがいいんじゃないかなぁ。
こばなみ:
ほかにも大学で友達がいれば、そっちでまうーさんに合う人もいると思う!
宇多丸:
同世代の男だって、みんながみんなこのていたらく、ってわけじゃないだろうしね。
大学一年なんだし、まだまだもっといろんなところに顔出してみたほうがいい時期なのは間違いないと思いますよ、どっちにしろ。
しっかしその先輩とやらは、腹たつわー!
僕が同じ場所にいたら、泣くまで論破してやるのに(笑)。
こばなみ:
本当に逃さなそうですよね(笑)。
宇多丸:
それにしても、「女の相談は解決ではなく共感を求めている」とかはよく言われがちだけど、改めて考えてみるとホント、与太話以上のもんじゃないよね。
これさ、要は「女の」が要らないんだよね。「一般的に、相談する側というのはそもそも、具体的な解決策とかを教えてほしいわけじゃなくて、ただ話を聞いて、共感してほしいだけだったりするものなんだ」ってこれ、別に性別関係なく成り立つ、普遍的な話じゃん。
男だって、「なにも言わずに聞いてくれ……」っていうときは全然あるんだもん。
むしろ、そういう風にちゃんとフラットなものとして考えたほうが、問題の本質もつかみやすいよね。
こばなみ:
「女子校ってドロドロしてる」も、「学校ってドロドロしてる」でいいわけですね(笑)
宇多丸:
とは言え僕も、軽口レベルではまだまだ、そういう類のこと言っちゃってるかもしれない。
こばなみ:
それいうなら、私達も男のくせに~とか言ってることあるから、お互い気をつけねばですね。
宇多丸:
どう考えたって、性差なんかより個人差のほうが圧倒的に大きいのにね。
映画『ドリーム』は観た?
まさに、性差別や人種差別がいかにくだらない考え方か、それでいていかに人々の無意識に浸透してしまうものなのかということを、ものすごーくわかりやすく楽しいエンターテインメントとして描いてみせた大傑作なので、ホント万人にオススメ!
特にすてきだなと思うのは、どの立場のキャラクターにも、ちゃんと変化や成長の余地を残しているところで。こないだのエマ・ワトソンの国連演説じゃないけど、性差別の克服って、なにも男性をおとしめることではないんだ、っていうような視点も、ちゃんと入ってる。
僕がラジオでやった映画評の書き起こしも番組の公式ホームページに上がっているので、そちらもぜひ参考にしてみてくださいね~。
とにかく、ここまでまうーさんの感じたこと、取った行動、なにひとつ間違ってないと思います。
でも、いまさらもう、「女性しかいない楽園」に戻ることもできないわけで。
だとしたらやっぱり、対話を通じて周囲の理解を高めてゆくか、それも難しそうなら、どこか話が通じる人たちがいる場所を探すしかない。
ただ、幸いにも、まうーさんが今いるのは、「大学」なわけじゃん?
いろんな人との出会いや議論から学び、成長してゆくっていう、まさにそのための場であり、期間なんだからさ。
だからやっぱり、「ヒステリックフェミ」とかくだらないフレーズでわかったような気になってるようなバカはお呼びじゃないってことなんだけど……。
ともあれ、社会で差別の壁にぶち当たるってよりはずっと、前向きななにかが得やすい立場ではあると思うんですよ。
まぁ、まうーさんみたいな人はひょっとしたら、たとえばゼミとか、もうちょっと知的な共通項で集まったコミュニティのほうが、少なくとも現段階では会話のレベルが合う相手を見つけやすいのかもしれないな、とか思ったり。
なんにせよ、大学に入ってすぐたまたま仲よくなっただけのメンツと、ずっと付き合い続けなきゃいけないなんて法はないんで。
こいつらまともに話通じねぇわと思ったら、さっさとほかのもうちょいマシな居場所に移動し続けてなんの問題もない、人生で一番可能性が開けた季節なんですから! バカと時間つぶしてるヒマはない!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年10月28日に公開したものを再編集し、掲載しています。